人望が厚く人気者で優等生の青田淳は、亮に向かってこうエールを送った。
「頑張れよ」と。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/4a/fe/d6bb10a5eaa3fbd5ed8e4c5b3a5e0c34.jpg)
その淳の”表の顔”を見て、亮は思わず強く息を吐き捨てた。
飽きるほど見てきたその虚飾の笑顔が、亮の神経を逆撫でする。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/33/5d/4c1bd51a65d51d336b3f600cbee81d09.jpg)
亮は淳に向かって、心のままにその苛立ちをぶつけ始めた。
「おいお前、インターンに行ってんじゃなかったのかよ。何で大学来て飯食ってんだ」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/10/11/54d992fc237ded6a5655c14b639c0a03.jpg)
大学に来ることもあるさ、と淳はそっけなく返すが、亮は尚も彼に絡み続ける。
「へ~え、気の向くままにねぇ。それって坊っちゃんだから出来るんだろ。
お前みたいに心のままに行動出来んなら、世界中の人達皆がバケーション取んだろーなぁ?お前の親父も頭が痛いだろーよ」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/3a/da/f74b265ceb587629073238c9a0939015.jpg)
亮が父親のことを口にすると、淳の表の面が幾分軋んだ。
しかし誰もそのことには気がつかない。雪は早く食べてこの場をどうにかすることに必死だったし、
教授も訳もなく喧嘩を売っているように見える亮を叱っていた。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/6a/d6/e0267f354cf4403f0c1f056d67ef95e0.jpg)
淳の顔に張り付いている表の面を、貼り付けている糊が徐々に剥がれていく。
淳は暗い色を帯びた瞳で、じっと亮の手を眺めている。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/60/e5/87f63c90827f9cc5cd46f8a8948da745.jpg)
あの左手。希望から絶望まで、全てを知ったあの左手‥。
すると次の瞬間、その左手が凄い勢いで淳と雪の方に向かって伸びた。
ヒュッ!
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/25/e6/2935a139285d917bf0f67619625542d7.jpg)
その手は、雪の顔数十センチ横まで鞭のように伸び、何かを掴んだ。雪は、驚きのあまり小さく叫ぶ。
「キャッ!」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/3c/15/db542f2e11d18b49f3f4da4cf20961a7.jpg)
突然の出来事に、雪は顔を青くしてただ固まった。
顔のすぐ近くに、握られた亮の拳がある。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/66/ca/80e8d29f406a3ce36398d835300d525e.jpg)
「な、な、何‥っ?!」と動揺する雪に向かって、亮はケロリとした顔でその理由を口にした。
「ハエまで食う気か?メシが足んねーのかよ」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/5e/73/c6acae94221933a0bd4fc7c9e3504ae0.jpg)
ほら、と言いながら亮は、左拳の中に捕まえたハエを雪に見せた。
雪は未だ心臓を高鳴らせつつ、俯いて亮に不満を覚える。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/2f/bf/510b2140ffbe11f76419b1d004e8dc14.jpg)
淳は雪に視線を落とした後、再び亮の手をじっと見つめた。
ハエを掴むほど回復したその左手。一時は使い物にならなかったその手が、今再び力を取り戻している‥。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/74/5c/8fd47c02a3d65cd06ca683facc357b5f.jpg)
雪はやはり亮と淳との問題を何とかしなければならないと考えている最中だった。
一旦ご飯食べてから、まずは先輩と河村氏との話からしよう‥
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/47/1d/15e3cd567be70ee668f1544a09434bd0.jpg)
すると淳が、雪の手に向かって自分の手を伸ばした。
「ついちゃった?ちょっと手を見せて」 「えぇ?」
「あっ、先輩の服にもついちゃった!」 「大丈夫だよ」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/57/75/7d0baff5821ad942b64d12f3f0a1b1e7.jpg)
彼の服に汚れがついてしまったことを、雪は申し訳無さそうに何度も謝った。
淳はそんな彼女を優しく見つめながら、何度も大丈夫だと繰り返す。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/09/47/48898101d9b190e246a5e220f04116e7.jpg)
そんな二人のやり取りを見ていると、亮は心がくさくさして行くのを感じた。
ケッと吐き捨てながら、目の前のカップルから目を逸らす。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/48/8d/c4a2db6ddef5c638809ec972afaac5d8.jpg)
すると亮のポケットに入れていた携帯電話が鳴った。
もしもし、と言い出すそばから、電話の向こうで蓮の声が響く。
「亮さん亮さん亮さ~ん!」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/26/bd/67075f03bc91a8dbdae015a8d55e74ef.jpg)
亮は口だけ動かして「弟」と雪に告げる。
家に何かあったのかもしれないと、雪もそちらに意識を向けた。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/34/03/decd1b326fb7fcfb2e1073e5c57ef23b.jpg)
電話の向こうの蓮の声は大きく、その内容は皆に筒抜けだった。四人は耳を澄まし、蓮の話に耳を傾ける。
「後で店来る時さぁ、キッチンで使う大きめのボウルと、トイレットペーパーのパック買ってきてよ!分かった?」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/6f/ae/d6f3d220098ae330d4d180e20ca999f2.jpg)
何の事はない、それはお使いの電話だった。亮は頷きつつ、一つ蓮に確認する。
「ボウルは前に行ったとこで買やいいの?」
「あ~俺らで行ったとこ?そこどうやって行くんだっけ~?
俺もよく分かんないんだよねー。近くに姉ちゃん居る?姉ちゃんに聞いてみてよ」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/34/c5/17ff4cb3c0a8c93ea7db9d3bac42fc66.jpg)
その蓮の言葉を聞いて、雪は思い出したことがあった。
亮が話を切り出す前に、雪はすぐさまそのことを口に出す。
「おいダメージ、ボウルー‥」
「その店ではもう買わないって言ったじゃん!何で度々その店が出てくるのー?」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/56/f3/df9e05364598929afa85db4e4170b496.jpg)
え?と言って首を捻る亮に向かって、雪は困ったように話を続けた。
「どうしてお母さんがそんな‥もう~。テレビでやってたんですよ、その店の商品に良くない物質が入ってるって‥」
「いやお前の母さんはそれが楽だって‥」「ダメですからね!変にお母さんの味方しないで!」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/3e/cb/cc44438507e5f43a24fbbc8b485f3cef.jpg)
どうやら雪の母が気に入っている店の商品は、有害物質を含む物を売っているとテレビで明らかになったらしい。
割りと有名な話らしく、教授も「私もテレビで見た」と言って頷いていた。
しかし蓮も亮も、そして母親もいまいちピンと来てないので、雪は困っているのだった。
「もう直接話すから、電話代わって!」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/2e/cd/d29e963514c84073794ba23e3f9d61d2.jpg)
そう言って雪は亮に手を伸ばした。そのやり取りは自然で、随分と気安い。
亮も何も気を使うことなく、「やだよ」と言って蓮と会話を続けた。
「なんか良くない物質が入ってるんだと。もう一回それ伝えてから連絡‥え?」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/05/14/0329e7b81b733be7e91d6f1d830a506f.jpg)
亮は蓮の話に耳を傾けながら、その内容が雪に伝わるように復唱する。
「二人が出掛けた?いつ?一緒に?良い雰囲気だって?」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/1d/06/954699a5a4caa672083416503e15076f.jpg)
その言葉に、思わず雪の耳がダンボになる。
亮は蓮と話を続けながら、雪に向かってOKサインを作って見せた。
「そりゃ、もうほぼほぼ仲直りだな!」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/5c/11/534b80440c1a836acfb62a2911fb5b0e.jpg)
雪は亮の言葉を聞いて、パアッと明るい笑顔を浮かべた。両親が和解したことは、雪にとって今何よりも嬉しいニュースだ。
亮はそのまま、蓮とシフトの時間についてまた相談しようと言って話を続けている。
雪は両方の手を握り締めて、喜びに打ち震えた。
「うわ~~~!!」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/08/8c/76357a761c8da963a676377d38f1329a.jpg)
そして雪は隣に座る彼の肩に触れ、こう声を掛けた。
「先輩聞きました?!二人が仲直りー‥!」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/61/0b/69475be39e11762df2596f54dbe6c72c.jpg)
しかしそこで、予想だにしないことが起きた。
隣に座る彼は微動だにしないまま、その大きな瞳を雪に向ける。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/60/74/f78f39e67f22e6aa3a4d6e78ebfd74ba.jpg)
その瞳を見た途端、言葉は咄嗟に喉の奥へと引っ込んだ。
雪は顔に笑顔を貼り付けたまま、彼のその表情を見上げている。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/4f/b2/7e38711010c7adffdd5836677fd2f9d6.jpg)
ベリベリと、彼の表の面が剥がれて行く。
人望が厚く人気者で優等生のその面が。
心を押さえ付けていたものが外れ、隠していたものが徐々に顕になる。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/2d/12/69d4a9404ae40705318155b91b6b74f9.jpg)
目の前で見せつけられた雪と亮の関係に、淳の中にある限界点が触れた。
表の顔を保っていられるその点を越えた今、彼の裏の顔が剥き出しになる‥。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
<限界点>でした。
雪の悩みに力になりたい淳と、一人で解決しようとする雪。
するりと人の懐に入ってその中に溶け込む亮と、いつの間にかそんな亮と気心の知れた仲になっている雪。
これが淳の心の沸点に触れてしまった、という印象ですね。
皆からひっきりなしに挨拶をされる程顔が広かったり、友人(柳)から良い奴だと太鼓判を押されたり、淳は他者からの”表の顔”の評価によって、
暗黙的にその顔の保持を余儀なくされて来ました。
(自業自得だと言ってしまえばそれまでですが、彼の生い立ちを考えるとそれはあまりに厳しい意見では、とも思います)
けれどそれは彼の一部でありながら、”本当の彼”全てじゃない。
そんな彼のもう一つの面が、次回現れます。
<彼の裏>です。
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「頑張れよ」と。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/4a/fe/d6bb10a5eaa3fbd5ed8e4c5b3a5e0c34.jpg)
その淳の”表の顔”を見て、亮は思わず強く息を吐き捨てた。
飽きるほど見てきたその虚飾の笑顔が、亮の神経を逆撫でする。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/33/5d/4c1bd51a65d51d336b3f600cbee81d09.jpg)
亮は淳に向かって、心のままにその苛立ちをぶつけ始めた。
「おいお前、インターンに行ってんじゃなかったのかよ。何で大学来て飯食ってんだ」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/10/11/54d992fc237ded6a5655c14b639c0a03.jpg)
大学に来ることもあるさ、と淳はそっけなく返すが、亮は尚も彼に絡み続ける。
「へ~え、気の向くままにねぇ。それって坊っちゃんだから出来るんだろ。
お前みたいに心のままに行動出来んなら、世界中の人達皆がバケーション取んだろーなぁ?お前の親父も頭が痛いだろーよ」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/3a/da/f74b265ceb587629073238c9a0939015.jpg)
亮が父親のことを口にすると、淳の表の面が幾分軋んだ。
しかし誰もそのことには気がつかない。雪は早く食べてこの場をどうにかすることに必死だったし、
教授も訳もなく喧嘩を売っているように見える亮を叱っていた。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/6a/d6/e0267f354cf4403f0c1f056d67ef95e0.jpg)
淳の顔に張り付いている表の面を、貼り付けている糊が徐々に剥がれていく。
淳は暗い色を帯びた瞳で、じっと亮の手を眺めている。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/78/4f/ce48f6071cc232abac4fdc1d54682ae1.jpg)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/60/e5/87f63c90827f9cc5cd46f8a8948da745.jpg)
あの左手。希望から絶望まで、全てを知ったあの左手‥。
すると次の瞬間、その左手が凄い勢いで淳と雪の方に向かって伸びた。
ヒュッ!
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/25/e6/2935a139285d917bf0f67619625542d7.jpg)
その手は、雪の顔数十センチ横まで鞭のように伸び、何かを掴んだ。雪は、驚きのあまり小さく叫ぶ。
「キャッ!」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/3c/15/db542f2e11d18b49f3f4da4cf20961a7.jpg)
突然の出来事に、雪は顔を青くしてただ固まった。
顔のすぐ近くに、握られた亮の拳がある。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/66/ca/80e8d29f406a3ce36398d835300d525e.jpg)
「な、な、何‥っ?!」と動揺する雪に向かって、亮はケロリとした顔でその理由を口にした。
「ハエまで食う気か?メシが足んねーのかよ」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/5e/73/c6acae94221933a0bd4fc7c9e3504ae0.jpg)
ほら、と言いながら亮は、左拳の中に捕まえたハエを雪に見せた。
雪は未だ心臓を高鳴らせつつ、俯いて亮に不満を覚える。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/2f/bf/510b2140ffbe11f76419b1d004e8dc14.jpg)
淳は雪に視線を落とした後、再び亮の手をじっと見つめた。
ハエを掴むほど回復したその左手。一時は使い物にならなかったその手が、今再び力を取り戻している‥。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/19/e2/d1ba68af1e2d7696b3a9588d2d2cbb62.jpg)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/74/5c/8fd47c02a3d65cd06ca683facc357b5f.jpg)
雪はやはり亮と淳との問題を何とかしなければならないと考えている最中だった。
一旦ご飯食べてから、まずは先輩と河村氏との話からしよう‥
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/47/1d/15e3cd567be70ee668f1544a09434bd0.jpg)
すると淳が、雪の手に向かって自分の手を伸ばした。
「ついちゃった?ちょっと手を見せて」 「えぇ?」
「あっ、先輩の服にもついちゃった!」 「大丈夫だよ」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/51/f7/5a98c07275d0f658a6b0a11326d9fcc4.jpg)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/57/75/7d0baff5821ad942b64d12f3f0a1b1e7.jpg)
彼の服に汚れがついてしまったことを、雪は申し訳無さそうに何度も謝った。
淳はそんな彼女を優しく見つめながら、何度も大丈夫だと繰り返す。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/09/47/48898101d9b190e246a5e220f04116e7.jpg)
そんな二人のやり取りを見ていると、亮は心がくさくさして行くのを感じた。
ケッと吐き捨てながら、目の前のカップルから目を逸らす。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/48/8d/c4a2db6ddef5c638809ec972afaac5d8.jpg)
すると亮のポケットに入れていた携帯電話が鳴った。
もしもし、と言い出すそばから、電話の向こうで蓮の声が響く。
「亮さん亮さん亮さ~ん!」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/26/bd/67075f03bc91a8dbdae015a8d55e74ef.jpg)
亮は口だけ動かして「弟」と雪に告げる。
家に何かあったのかもしれないと、雪もそちらに意識を向けた。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/34/03/decd1b326fb7fcfb2e1073e5c57ef23b.jpg)
電話の向こうの蓮の声は大きく、その内容は皆に筒抜けだった。四人は耳を澄まし、蓮の話に耳を傾ける。
「後で店来る時さぁ、キッチンで使う大きめのボウルと、トイレットペーパーのパック買ってきてよ!分かった?」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/6f/ae/d6f3d220098ae330d4d180e20ca999f2.jpg)
何の事はない、それはお使いの電話だった。亮は頷きつつ、一つ蓮に確認する。
「ボウルは前に行ったとこで買やいいの?」
「あ~俺らで行ったとこ?そこどうやって行くんだっけ~?
俺もよく分かんないんだよねー。近くに姉ちゃん居る?姉ちゃんに聞いてみてよ」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/34/c5/17ff4cb3c0a8c93ea7db9d3bac42fc66.jpg)
その蓮の言葉を聞いて、雪は思い出したことがあった。
亮が話を切り出す前に、雪はすぐさまそのことを口に出す。
「おいダメージ、ボウルー‥」
「その店ではもう買わないって言ったじゃん!何で度々その店が出てくるのー?」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/56/f3/df9e05364598929afa85db4e4170b496.jpg)
え?と言って首を捻る亮に向かって、雪は困ったように話を続けた。
「どうしてお母さんがそんな‥もう~。テレビでやってたんですよ、その店の商品に良くない物質が入ってるって‥」
「いやお前の母さんはそれが楽だって‥」「ダメですからね!変にお母さんの味方しないで!」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/3e/cb/cc44438507e5f43a24fbbc8b485f3cef.jpg)
どうやら雪の母が気に入っている店の商品は、有害物質を含む物を売っているとテレビで明らかになったらしい。
割りと有名な話らしく、教授も「私もテレビで見た」と言って頷いていた。
しかし蓮も亮も、そして母親もいまいちピンと来てないので、雪は困っているのだった。
「もう直接話すから、電話代わって!」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/2e/cd/d29e963514c84073794ba23e3f9d61d2.jpg)
そう言って雪は亮に手を伸ばした。そのやり取りは自然で、随分と気安い。
亮も何も気を使うことなく、「やだよ」と言って蓮と会話を続けた。
「なんか良くない物質が入ってるんだと。もう一回それ伝えてから連絡‥え?」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/05/14/0329e7b81b733be7e91d6f1d830a506f.jpg)
亮は蓮の話に耳を傾けながら、その内容が雪に伝わるように復唱する。
「二人が出掛けた?いつ?一緒に?良い雰囲気だって?」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/1d/06/954699a5a4caa672083416503e15076f.jpg)
その言葉に、思わず雪の耳がダンボになる。
亮は蓮と話を続けながら、雪に向かってOKサインを作って見せた。
「そりゃ、もうほぼほぼ仲直りだな!」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/57/54/4c9da23a15ff9af4d64964e48e0d71d9.jpg)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/5c/11/534b80440c1a836acfb62a2911fb5b0e.jpg)
雪は亮の言葉を聞いて、パアッと明るい笑顔を浮かべた。両親が和解したことは、雪にとって今何よりも嬉しいニュースだ。
亮はそのまま、蓮とシフトの時間についてまた相談しようと言って話を続けている。
雪は両方の手を握り締めて、喜びに打ち震えた。
「うわ~~~!!」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/08/8c/76357a761c8da963a676377d38f1329a.jpg)
そして雪は隣に座る彼の肩に触れ、こう声を掛けた。
「先輩聞きました?!二人が仲直りー‥!」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/61/0b/69475be39e11762df2596f54dbe6c72c.jpg)
しかしそこで、予想だにしないことが起きた。
隣に座る彼は微動だにしないまま、その大きな瞳を雪に向ける。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/60/74/f78f39e67f22e6aa3a4d6e78ebfd74ba.jpg)
その瞳を見た途端、言葉は咄嗟に喉の奥へと引っ込んだ。
雪は顔に笑顔を貼り付けたまま、彼のその表情を見上げている。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/4f/b2/7e38711010c7adffdd5836677fd2f9d6.jpg)
ベリベリと、彼の表の面が剥がれて行く。
人望が厚く人気者で優等生のその面が。
心を押さえ付けていたものが外れ、隠していたものが徐々に顕になる。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/2d/12/69d4a9404ae40705318155b91b6b74f9.jpg)
目の前で見せつけられた雪と亮の関係に、淳の中にある限界点が触れた。
表の顔を保っていられるその点を越えた今、彼の裏の顔が剥き出しになる‥。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
<限界点>でした。
雪の悩みに力になりたい淳と、一人で解決しようとする雪。
するりと人の懐に入ってその中に溶け込む亮と、いつの間にかそんな亮と気心の知れた仲になっている雪。
これが淳の心の沸点に触れてしまった、という印象ですね。
皆からひっきりなしに挨拶をされる程顔が広かったり、友人(柳)から良い奴だと太鼓判を押されたり、淳は他者からの”表の顔”の評価によって、
暗黙的にその顔の保持を余儀なくされて来ました。
(自業自得だと言ってしまえばそれまでですが、彼の生い立ちを考えるとそれはあまりに厳しい意見では、とも思います)
けれどそれは彼の一部でありながら、”本当の彼”全てじゃない。
そんな彼のもう一つの面が、次回現れます。
<彼の裏>です。
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先輩からしたら
裏の顔もダメ、表の表面だけの振る舞いもダメ、ほんとうに嬉しくて笑うのもダメ、ってじゃあどうしろと言うんだってはなしですよね(笑)おまけに雪ちゃんとめっちゃ仲良くなってるところなんか見たら…(^_^;)
>一旦ご飯食べてから、まずは先輩と河村氏との話からしよう‥
雪ちゃん…まずは自分と亮さんとのことを話すべきですよ…亮さんと先輩との話をしたところで結局丸め込まれるだけ…
言わなければいけない時にほしい言葉が出てこないのは本当に困りますね。。ゆくゆく面倒なことになりますし。。。柳先輩とモナさんはこれ上手そうですよね(^^)
横山の件次週で片付きそうですし、そろそろモナさん来ますかね。
横山の件の黒幕がきっかけで新しい扉が開くとかさらに問題が増えるとかになってもモナさんならいいスパイスになってくれそうです(^^)
どの展開にしても、夏には終わらなさそうですねっ!♪
>淳は暗い色を帯びた瞳で、じっと亮の手を眺めている。
>あの左手。希望から絶望まで、全てを知ったあの左手‥。
>ハエを掴むほど回復したその左手。一時は使い物にならなかったその手が、今再び力を取り戻している‥。
Yukkanen師匠~!(ToT)/ 淳が亮の手を見る描写!すごすぎます!トリハダですっ!
壊れた手が回復するに従い、影を潜めていた本性を現す亮。
自信家で傍若無人で周りを振り回し、いつの間にか人の懐に入り込み、自分の欲しいものは力づくで奪い取る。
そんな魔の手。
淳も横山も、亮にとっては欲しいモノに付き纏うハエ。
潰されたハエが淳に見えました。
亮の恐ろしい左手は徐々に回復してきている。
亮の左手に自分の存在を握り潰される・・・。
淳にはそんな未来が見える。
その力はすでに雪にまで及んでいる。
ただ静かに、雪さえそばにいてくれればよかったのに・・・。
今回は思い切り、亮を悪役にしてみました・・・。
ぽこ田さん。
>雪ちゃん…まずは自分と亮さんとのことを話すべきですよ…
私も全くそう思います。ずれてるというか、責任転嫁というか・・・。
雪ちゃん、自分のことには敏感なのに。
むくげさんの言う通り、鈍感力を発揮してますよね・・・。(-“-)
ギョンファンでもインホでも、普通に人間味のある人間ならできることを、ユジョンだけはどうしてもできないですねえ。ここで際立っているのは、ソンソルでもペクインホでもなく、ユジョンの人としての異様さ・不気味さだと思います。
(ここのところのユジョンに対しては、ドSモードを禁じ得ません…笑)
そんな目をしてる暇があれば、まずはKARAのアルバムを全部買って(以下自粛
青さん、私も絵だけ見た時は、同じようにチッチェーと(少しだけ)思ったんですが、この亮との会話をよくよく知って、先輩の立場でその場にいたとしたら、私もまず「え?なにこの流れ?この距離感!」て思ったハズだと。
いくら優等生で金持ちだからって、若輩者が人んちの家庭の事情にまで介入出来る度量なぞ持ち合わせてなぞおらんだろうに、あんな申し出をして断られた上に(まぁそれは置いといたとしても)、あの亮が普通に自分より深く関わってて、目の前でその解決の瞬間を雪とともに喜んでる姿を見たら、まずソッチにショック受けるんじゃないー?
いくら先輩が完璧でも(誰もそんなコト言ってないかw)コレは、過去も加味してなんら不思議ではない反応に思えました~。つか、人間臭くていージュ~ン!とすら(笑)
まぁ、この後の睨目はちと引きますがね。笑
私が淳だったら、あそこまでないがしろにされた後に喜んでみせる自信は・・・、ないかもです・・・。
だから淳の肩を持ちたくなってしまうのですね。どちらかというと、相手を嫌な気持ちさせる確信犯な亮と、気遣いもなく無邪気にはしゃぐ雪のほうがどうかと思ってしまいますので・・・。自分の内面に落ちてゆく淳に共感しちゃうんですよね・・・。
自分とは異なる考え方や感じ方など、語り合えたらいいな、と思います・・・。
衝突(?)することもあるかもしれないけれど、そういうのって結構大事ですよね!?
ちょびこさん、CitTさん。
雪ちゃんは自分と亮さんとのことをまず話すつもりだったのですね。(雪ちゃんゴメン。誤解してた。)
でも、すでに遅し・・・。淳さん傷ついちゃいました・・・。(T_T)
ほんと最近どんぐりさんに激しく同意(続)ですよ
お亮さんを悪役にって仰いますがそもそもこの場面だって淳は受け流して笑顔で対応してるのに
子供のように突っかかって文句たれてそのくせお金はきっちり受け取ってて申し訳ないですが器小さ過ぎですよ
ちっちぇーオトコは寧ろお亮さんですよ
馬鹿みたいにケンカ打ってさー
自分の感情だだ流ししてもう少し社会性身につけろと
皆様ほんとにほんとにお亮さんに萌えてるのかしらん
もー最近イライラしてしまっていいのは顔だけみたいな
ポコ田さんでしたっけ?どなたか仰ってましたがチートラメンバー極端過ぎる
青さん淳にも少し愛の手を(笑)
こんな我慢し続けてこれじゃ寿ぐなんて出来ません
祝詞は唱えられませんわよ
しかし雪ちゃんの鈍感力はどこまでなのか
自分のことも鈍感ならいいけど自分は過敏なのにって面倒くさ過ぎる
頭いいけど頭でっかちになって仕事とか案外出来なさそうな
ま、亮さんもわざわざいらんひと言ぶっこまんでもええのにとは思いますけどねw
事の発端は、雪ちゃんとこで働くのをしぶしぶながら了承しちゃったところに淳の落ち度があったかもしれないですよね~
子供じみてでも、「お前の店で働いてほしくない!」(とお前呼ばわり)くらい言っときゃまた結果も違ったかもですね。
あ、あと怪我後の亮は青田家からお金一切受け取ってないと思います。
ちなみに育てられてる時も裏目の金ですが。
裏目の金で飯おごる…と、ようは久々に言ってみたいだけ。
まぁ、淳アンチな青さんですが、分かるところもあります。(KARAのアルバム以外)
彼の思い通りの道を外れた雪を見る目が・・・なんというか・・・
まるで知らない他人を見るような目?
こわっ
あ、それでも私は淳派ですけど(ハート
二次元だから問題無し!苦労は雪ちゃんが代わりにしてくれる!