Trapped in me.

韓国漫画「Cheese in the trap」の解釈ブログです。
*ネタバレ含みます&二次使用と転載禁止*

白い靄

2016-01-10 01:00:00 | 雪3年4部(賭け~温かな痕跡)


空が夕焼けに染まる頃、美大の一室。

「めーぐみ」「ん?」

「あたしさっきアンタの彼氏見たよー?」



同期はそう言って、毎日のようにデートする恋人達に言葉を贈った。

「今日も学校前でデート?ラブラブだね~」「へ?」



しかし恵はその言葉を聞いてもピンと来ない様子だ。

「え、蓮が?今日は会う予定ないよ?」「え?」



そんな恵の返答に、同期の子は目を丸くした。

「え?さっきこの近くで見かけたけど‥」「あ‥」



二人の会話はすれ違う。

そしてそれ以上に、恵は蓮の行動の意味が分からなかった。

「そんなこと言ってなかったけど‥どうしたんだろ‥?」



くりくりとした大きな目が、その真実の在処を探す。

小さな頃から知っている、幼なじみであり今は恋人のその人の。

そしてその頃当の本人は、路地裏で頭を抱えていた。

「クッソーー!俺の足踏みまくって、キンカンにもちょっかい出しまくってるヤツなのに!!

てか何で隠れた俺?!何でビビった俺?!元々ンなことなかったハズなのに!!」




蓮が悔いているのは、昼間大学で出くわした柳瀬健太に取った自身の態度のことだった。

あの巨体を見かけた途端、考えるより先に物陰に隠れた自分‥。







蓮は声を上げながら、頭を更に深く抱えた。

そしてその隣には、寒さに震える河村亮が蓮の嘆きを聞いている。

「ううう‥!」



「柳瀬健太とかいうヤツ‥

名門A大生だし、姉ちゃんの話だと良いトコに書類パスして面接まで進んでるって‥」




蓮は涙目になって深く息を吐き出した。

寒さが身に沁みるのは、低い気温のせいだけではないようだ。

「‥アイツだけの話じゃないよ。

この世には立派なヤツが山程居るんだ‥俺の恵が‥俺のキンカンが‥




話せば話すほど覚える焦燥。

蓮は涙で目を潤ませながら、亮に向かって問い掛けた。

「俺よりイケメンにかっさらわれたらどーしよう?!どーすればいいの?!」

「んだそりゃ」



「俺だって‥」



声を震わせながら、蓮は自分の気持ちを口に出す。

亮はそんな蓮に呆れながらも、黙ってそれを聞いている。

「俺だって変わりたいのに‥。

家のこと一生懸命手伝って遊ぶの止めたら、「蓮は変わった」って皆喜ぶと思ったのに‥。

なんかそれ、間違ってたみたいで‥」




そう言って両膝の間に顔を埋める蓮を、亮は彼が本格的に泣き出したのかと思ってじっと見つめた。

しかし次の瞬間、彼は歯と白目を剥きながら強く主張する。

「あー!だけどさ!マジでマジでさ!アメリカには戻りたくないんだよ~~!!」



蓮の脳裏に、思い出したくもない場面が次々と浮かんで来た。

あれはアメリカに居た頃の、コンプレックスに押し潰されそうだった頃のこと。

「あの場所では俺、何も手に入れられなかった。俺、何者にもなれなかった」



「ここには何もかもがあるのに‥」



そう言って見上げた夜空は、建物の間から僅かに見える切れ端ほどのものだ。

アメリカの方がこの何倍も、何十倍も広かったけれど‥。

「友達も‥家族も‥キンカンも‥」



蓮の言葉が、気温の低い空気の中で白い靄となって消える。

その靄は亮の心にも、どこか当てはまるものだった。

「亮さん」



「亮さんも、ここにずっとずっと居てよね」



縋るような目付きでそう訴える蓮と、亮は目を合わせることが出来なかった。

前を見つめながら、居心地悪そうに舌打ちする。

「‥チッ」



そして亮は、蓮の頭を軽く小突いた。

「知るかよ」「ええ?」「甘えんじゃねーこの野郎

「イテッ!亮さんが俺にそんなこと言うなんてぇ~!」「離せっての」



「ぐわっ!冷てーの!」



じゃれ合うように言い合いを始める二人。

するとそんな二人を、物陰からじっと見ている男が居た。



亮が地方で働いて居た時の、あの同期の男だった。

思わず目を丸くする亮と、訝しげな目付きで男を見る蓮。




「‥‥‥‥」



やがて男は、プイと彼らに背を向けて駆けて行った。

どこにでもある監視の目。ここにずっと居ることが出来ないことを、改めて思い知らされる。



「知ってる人?」

「中入って仕事手伝え」



蓮のその問いには答えずに、亮はそっけなくそう言ってその場から去って行った。

何かを抱えるその背中を、蓮はポカンと口を開けてただ眺めている。



「???何だろ?」



赤山家特有の鋭敏さで、蓮はその異変を感じ取る。

けれど既に亮の背中は夜の闇に溶け、蓮の心の中には白い靄がいつまでも揺蕩っていた。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

<白い靄>でした。

「ここには何もかもがあるのに」という蓮の吐露。

それが亮の心情にも重なるものがありますよね。

何もかもがある場所から、踏み出さなければならない時がいつか来ることを、どこか感じさせてくれる回でした。


次回は<晴れない心>です。


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3 Comments

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あーあー (むくげ)
2016-01-13 15:42:25
蓮もグダグダ何時までいってるんだか
まあこの展開ならいずれ恵に捨てられますね
というか約束もないのにウロウロってうんざりじゃないですか
さて恵どうする?
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りんごさん (Yukkanen)
2016-01-13 14:10:14
コメ0撲滅運動ご参加ありがとうございます‥!
蓮は本当いつまでグチグチ言ってんだって感じになって来ましたね‥。
キンカンもといワンコロも愛想つかしちゃうぞ!
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Unknown (りんご)
2016-01-11 21:50:38
申し訳ないけど、弟のどうしょうもない様子はもうおなかいっぱいだ…!笑
弟なりに苦悩してるのはわかるのですが…。

こんなときでも日本語版ではワンコロと呼ばせるのかそこはちょっと気になるけれど…
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