「ううう‥」

雪は携帯を握り締めながら小さく呻いていた。
先ほど久しぶりに連絡をくれた萌菜が食事に誘ってくれたのに、
グルワの集まりの為に断りのメールを入れなければならなかったからである。
「どーして会おうって連絡はこんな時ばっかり来るの‥萌菜‥申し訳ない‥」

雪は溜息を吐きながら、携帯越しに教室内の風景を眺めてみた。
段差のある講義室の上段に座った雪からは、下段に座った学生達が良く見えるのだ。

特に目につくのが、一人で座る糸井直美と、彼女を見てヒソヒソと話をする黒木典とその友人だ。
「オフレコ」は今日中にも皆に広まるだろう。雪はじっと彼女らを眺めている。

糸井直美は所在なさそうに座っていた。
いつもは典を始めとした友人達とワイワイ楽しくやっているのに。

すると雪の視線を感じたのか、おもむろに彼女は後ろを振り返った。
そして雪が自分の方を見ていることを知ると、悔しそうに歯を食い縛って下を向く。

「‥‥‥‥」

直美は勢い良く前を向くと、それきり雪の方を見ようとはしなかった。
雪の心の中に、モヤモヤとした感情が膨らんで行く。
一体どういうことだろう

私が学科長に話をすると耳にした途端、訪ねて行って大騒ぎしたという柳瀬健太。
どう考えても愚かな泥棒のパターンなのに‥

でも、実際過去問を破いて捨てたのは糸井直美‥

何度考えてみても、辻褄が合わない。
雪は机に突っ伏して低い声を上げる。
「あ~‥頭イタ‥」


雪は頭を机に付けたまま、ぼんやりと皆の方を眺めてみた。
皆この間の騒ぎなど無かったかのように、すました表情で座っている。
皆‥

皆はどう考えてるんだろう

雪は再び、一人で座る糸井直美の後ろ姿をじっと見つめた。
幾分投げやりな気分が胸を掠める。
このまま直美さんが盗んだということにしようか
そしたら、誰もそれ以上興味を示さないだろうか

このまま心に蓋をして、今の流れに身を任せるのも一つの方法だろう。
何をどうすべきかなんてマニュアルは無い。
雪自身も、明確な信念があるわけではないのだ。
ていうか、怒りを感じて私なりに誘導してみたけど、
絶対に捕まえて何をどうこうしようってのは無かったわけで‥

雪自身にも迷いが出て来ていた。
胸と頭の中に、モヤモヤとしたものが依然としてあるのは変わらない。
でも‥それでも‥

それでも心の奥で、「それはおかしい」と声がする。
いつだって雪は誤魔化せないその叫びに、翻弄されながら生きているのだ‥。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
<噛み合わない真実(1)>でした。
短め記事で失礼しました!
モヤモヤしますね~‥。ここ最近ずっとですねこんな展開‥。早く脱出してほしい‥!
次回は<噛み合わない真実(2)>です。
☆ご注意☆
コメント欄は、><←これを使った顔文字は化けてしまうor文章が途中で切れてしまうので、
極力使われないようお願いします!
人気ブログランキングに参加しました
人気ブログランキングへ
引き続きキャラ人気投票も行っています~!

雪は携帯を握り締めながら小さく呻いていた。
先ほど久しぶりに連絡をくれた萌菜が食事に誘ってくれたのに、
グルワの集まりの為に断りのメールを入れなければならなかったからである。
「どーして会おうって連絡はこんな時ばっかり来るの‥萌菜‥申し訳ない‥」

雪は溜息を吐きながら、携帯越しに教室内の風景を眺めてみた。
段差のある講義室の上段に座った雪からは、下段に座った学生達が良く見えるのだ。

特に目につくのが、一人で座る糸井直美と、彼女を見てヒソヒソと話をする黒木典とその友人だ。
「オフレコ」は今日中にも皆に広まるだろう。雪はじっと彼女らを眺めている。

糸井直美は所在なさそうに座っていた。
いつもは典を始めとした友人達とワイワイ楽しくやっているのに。

すると雪の視線を感じたのか、おもむろに彼女は後ろを振り返った。
そして雪が自分の方を見ていることを知ると、悔しそうに歯を食い縛って下を向く。

「‥‥‥‥」

直美は勢い良く前を向くと、それきり雪の方を見ようとはしなかった。
雪の心の中に、モヤモヤとした感情が膨らんで行く。
一体どういうことだろう

私が学科長に話をすると耳にした途端、訪ねて行って大騒ぎしたという柳瀬健太。
どう考えても愚かな泥棒のパターンなのに‥

でも、実際過去問を破いて捨てたのは糸井直美‥

何度考えてみても、辻褄が合わない。
雪は机に突っ伏して低い声を上げる。
「あ~‥頭イタ‥」


雪は頭を机に付けたまま、ぼんやりと皆の方を眺めてみた。
皆この間の騒ぎなど無かったかのように、すました表情で座っている。
皆‥

皆はどう考えてるんだろう

雪は再び、一人で座る糸井直美の後ろ姿をじっと見つめた。
幾分投げやりな気分が胸を掠める。
このまま直美さんが盗んだということにしようか
そしたら、誰もそれ以上興味を示さないだろうか

このまま心に蓋をして、今の流れに身を任せるのも一つの方法だろう。
何をどうすべきかなんてマニュアルは無い。
雪自身も、明確な信念があるわけではないのだ。
ていうか、怒りを感じて私なりに誘導してみたけど、
絶対に捕まえて何をどうこうしようってのは無かったわけで‥

雪自身にも迷いが出て来ていた。
胸と頭の中に、モヤモヤとしたものが依然としてあるのは変わらない。
でも‥それでも‥

それでも心の奥で、「それはおかしい」と声がする。
いつだって雪は誤魔化せないその叫びに、翻弄されながら生きているのだ‥。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
<噛み合わない真実(1)>でした。
短め記事で失礼しました!
モヤモヤしますね~‥。ここ最近ずっとですねこんな展開‥。早く脱出してほしい‥!
次回は<噛み合わない真実(2)>です。
☆ご注意☆
コメント欄は、><←これを使った顔文字は化けてしまうor文章が途中で切れてしまうので、
極力使われないようお願いします!
人気ブログランキングに参加しました



そんな事になっていたとは。。。
心情の描写とか、言葉のチョイスとか流石です!!
ありがとうございます!!
そして数カ月分を一気ですか!お疲れじゃないですか~?(最近の内容が内容な分‥)
また遊びに来て下さいね~^^