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鬼気迫る表情で雪が相対しているのは、終わらせなければならない課題達である。
集中! 集中! 集中!
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燃え上がるゴォォという音が聞こえそうなくらい、雪の気迫は凄まじかった。
けれど心の中にある靄が、その炎を小さくする。
直美さんが‥うう‥気になるけど‥とりあえずPass
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過去問盗難事件の容疑者が、雪の頭を悩ませる。
しかしそれとは関係なしに、目の前に積まれたタスクが彼女を追い詰めるのだ。
まだこんなに残ってる。終わらせにゃ‥
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うああー
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そしていつしか空が明るくなるまで、雪は勉強に励んだ。
鳥の囀りが朝の空に響く。
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雪の父はむっつりと黙りこんだまま、いつまでも椅子に腰掛けていた。
持病の腰痛がこのところ特にヒドイのだ。
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そんな父とは対照的に、母は出掛けるための準備に着々と取り掛かっていた。
家のことと自分のことを要領良くこなしていく。
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そして母は、心配そうな顔で夫に声を掛けた。
「あなた、腰はどう?今日は家で休んで‥」
「!!」
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すると夫は、クワッと目を見開きながら妻に対してこう言ったのだった。
「お前一人で店に立たせられるか!」
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お前一人で行かせはしない、共に店に立とう‥!
そんな夫の言葉に、妻は目を潤ませる。
「あなた‥」
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ジーンと感動する妻と、気まずくて咳払いをする夫。
そんな仲睦まじい夫婦の隣を、寝不足の娘が通り抜けて行く。
「学校行ってきまーす‥」
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クマで目の下は真っ黒だ。店のことや父の腰のことは気になるが、
やるべきことが山積している今は、そうも言っていられない‥。
気掛かりだけど‥さ‥
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雪は後ろ髪を引かれながら、大学へ登校した。
そして一限が始まる前の時間、この二人が肩を並べて座っている。
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佐藤広隆と小西恵だ。
本来もう一人隣に座るはずなのだが、佐藤の右隣にはまだ誰も居ない。
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チラチラと空席を見る佐藤に、小西恵が声を掛けた。
「静香さん来ないみたいですね」
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思わず佐藤の口から、「はは‥」と乾いた笑いが漏れる。
するとそのタイミングで、携帯がメールを一通受信した。
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急いで文面を確認する佐藤。
しかしそれは願っていた相手からではなかった。
先輩、静香さんどこに居るか知りませんか?
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赤山雪からの、静香の所在を尋ねるメール。
佐藤はメールを見ながら、心の中がモヤモヤと煙っていくのを感じる。
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彼女がどこに居るのか、もう授業には出てこないつもりなのか、それともこのままフェードアウトしてしまうのか。
尋ねたいことは佐藤の方こそ沢山あった。
佐藤は誰にも聞こえない声で、不貞腐れたようにこう呟く。
「‥知らないよ」
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そして佐藤は携帯をポケットに仕舞った。
一方雪は、鳴らない携帯を持って首を傾げている。
「どうして返信が無いんだ?本渡さなきゃなのに‥」
「雪ちゃん!」
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すると同期の子が、後ろから声を掛けて来た。
「おはよ」「うん、おはよう」
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「アンタ今日も朝ごはん抜いて‥?」
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そう問う雪の質問には答えずに、同期は険しい表情をしながら身を屈めるようにして隣の席に座った。
そんな同期の様子に眉を潜める雪に向かって、その子は突然話を切り出した。
「直美さんだったらしいじゃん?」
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雪の肝がヒヤリと冷える。
「‥へ?」
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しかし同期は雪の様子には頓着せず、耳にした最新の情報を口にし始めた。
「直美さんだったんでしょ。そんな人だと思わなかったわ~。マジで極悪じゃない?
アンタにあんなこと出来るなんてさぁ」
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「あたしたちが直美さんとトラブったのにも、ちゃんと理由があるんだからねー?」
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雪は固まりながら、その同期の子が話す言葉の一部始終を聞いていた。
そういえば、以前彼女達を見て自分が思ったことは‥。
三年生になってから直美さんと離れた子達。
変なゴタゴタがあったって聞いたような‥
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元々彼女らが持っていた直美への不信感が、今回の事件で火が付いたようだった。
仕掛けたのは自分だが、事態はいつだって予測不能な方向へと転がって行く。
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雪は苦々しい、晴れない気持ちで同期の話を聞いていた。
事が運んで行く程に、心の中が靄で煙って行くようだ‥。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
<晴れない心>でした。
いたわり合う赤山夫婦でほっこりした回でしたね~
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けれど物語全体としては、モヤモヤ~っとしたものが漂う回でした。
早くキッパリスッパリした話が読みたい‥!
次回は<芯>です。
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自分の言ったことが発端で真実の追及が難しくなっていく~
うまく画策したつもりでその罠にオロオロしちゃってるじゃん!
しょせん気にしぃの雪ちゃんに先輩の真似は無理ですよ…
ケンタ何を隠している?今回は簡単にシッポ出しませんね。
ドラマ開始で引き延ばし?
1から10まで説明しながら雪との友情(?)を感じる子。
でも雪はそんな友情に興味あるでしょうか。
先輩はモノローグあんまりないですけど、それが余計に計算通りに事が進んでいた印象。淡々とそして華麗に計画を実行されてる様子はもはやその道のプロですよ。(←どの道)
雪ちゃんは、その場その場で探りながら動いてみるものの予期せぬ方向で本人も読者も悩ましい…。
先輩のように筋書き通り事運んでる方がよっぽど怖いですけどね。。
ところで、この雪の緑のベストは萌菜デザインですよね…?!ついつい目がいっちゃいます…ぷは
熱が冷めやらず検索をかけたところ、こちらのサイト様に辿り着きました。
先ほどやっと最新記事まで読み終えました!
凄く丁寧で惹き込まれる文章のおかげで、よりチートラへの理解が深まりました。
途中までコメント欄に気づかず、皆さんの面白い解釈を見逃しているので、早速明日から2巡目をしようかと思っております!
最新まで読めば落ち着いてるかと思った雪ちゃんの周りの人間関係にも、変わらずハラハラしっぱなしです‥。
とりあえず早く(憎き)健太先輩が痛い目みないかなと‥‥!思わず心の声が漏れてしまいました‥
育児しながらの翻訳と記事作成、大変かと思いますが、これからも応援しております。
伝えたいことが多すぎて勇気をだしてコメントしたら、長くなってしまいました‥長文失礼致しました。
本当どうすれば雪ちゃんがストレスを感じることなく生きていけるのか‥。
1部や2部みたいに先輩が同じ空間に居て助け舟を出してあげるのがベストなのかもしれない‥と最近思ってます(^^;)だから同じ会社に雪ちゃん呼んでんのかな‥先輩‥
CitTさん
この外ハネの子、ちょくちょく出てきますね。お母さんがガンの手術した子でしたっけ?結構良い子の印象だったので今回の件でちょっとがっかりなような‥。
りんごさん
先輩はモノローグあんまりないですもんねぇ。というか心の中であまりものを考えないような気さえするという‥。
このベスト萌菜デザインですか?!知らなかった‥!流行のカーキだな~と思って見てたくらいでした(^^;)韓国でもアースカラーが流行ってるんでしょうかね‥。
えぬ村さん
はじめまして!勇気を出してコメント‥!ありがとうございます!
今月3日からはまられたということは、まだ
チートラを知って10日なのですね‥!それは熱いですね~!睡眠不足は大丈夫ですか?
このブログはコメ欄が本当に面白いので、どうかお時間あれば二巡目をオススメします!
本家が読めるように韓国語の勉強を始めるのも楽しいですよ~(巻き込む)
これからもどうぞよろしくお願いします~!
師匠ブログの『鍵の行方』のとき萌菜さんが同じようなの着てますよね。
きっと萌菜デザインに違いありません!
えぬ村さん。約10日で漫画とブログの読破を成し遂げたというのに、さらに2巡目に入ろうとされているなんて…!(白目)
驚きでついついコメしてしまいました。初めまして。
しかし私もチトラにハマりブログを見つけたときの喜びったらハンパなかったです。
二巡目応援してます~。笑