「!」
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蓮は思わず仰け反った。
数メートル先に、あの男の姿が見えたからだった。
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柳瀬健太。度々嫌がらせをしてくる相手だ。
蓮はヒッと息を飲みながら、建物の陰へと身を潜める。
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「‥‥‥」
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頭を抱えながら、健太が去るのをじっと待つ自分。
しかし蓮はそんな自分自身が、一番信じられなかった。
「ちょ、どうして俺隠れてんの?!」
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悪いことをしたわけでもないのに、どうして隠れてしまうのだろう。
蓮はそんな不可解な自身に首を捻りながら、恵の居る美術科の方へとトボトボ歩き出した。
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慣れない建物内を歩く蓮。
一つ一つの教室が、全てよそ行きの顔をしている様な気がする。
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蓮はキャップのツバを上げながら、彼女の姿を探した。
けれど心の中は、どんよりと重い。
キンカン‥怒ってるよな‥
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でもアメリカに戻んのだけは‥死んでも嫌だ‥
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先日恵に言われた言葉が、チクリと心に刺さる。
「蓮、蓮は何をしているの?」
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忙しい時は店を手伝って、そうじゃない時は恵とデート。
確かに今の自分は、それ以外にしていることは無い‥。
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どんよりと重い気持ちのまま、恵の居る教室の前に着いてしまった。
蓮はドアに身を寄せながら、そろりと中を窺う。
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教室の中では、恵とその友達がワイワイとお菓子をつまみながら談笑していた。
しかし彼女らは遊んでいるわけではなさそうだ。
恵の隣に座る男子学生が、恵の絵を見ながら話すのが聞こえる。
「やっぱり小西の絵には独特のタッチがあるよな」「そう?」
「この感じ好きだよ」「わー!ありがとう!」
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男子学生に絵を褒められた恵は、屈託のない笑顔を浮かべて礼を言った。
そして彼女らは、学科のことや勉強のことを話し始める。
「てか蒼君はTOEICの点数上がった?」
「ううん、前と大して変わってなかった」「そっかー」
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そう言って溜息を吐く蒼君に向かって、向かいに座っている女の子がこう聞いた。
そしてそれをキッカケに、皆はそれぞれ意見を口にする。
「ねぇ、英語の勉強ってマスト?絵だけ上手に描けたらよくない?」
「将来どんな職業に就きたくなるか分かんないんだから、準備はしとくべきだよ。
英語は基本だし。何を今更‥」
「そうだよー。てかアンタもウェブデザインの授業聴いてるじゃない」
「うう‥でも英語はイヤー じんましん出そ」
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「期末終わったら、恵も英語の授業にエントリーするって言ってたよね?」
「うん!やっぱネット講義より実際の授業受けた方がイイよねぇ?」
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「だなー」
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ドア一枚を隔てた向こう側と、今自身が隠れているこちら側。
そのたった数歩の距離が、蓮には恐ろしく長く感じられた。
羽の付いた靴を履く恵と、足に合わない靴を履く蓮の距離。
それはもう知らないフリをすることが出来ないくらい、明確に離れている‥。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
<隔たり>でした。
短い記事で失礼しました!お正月休み、ということで‥(?)
蓮と恵、だんだんと二人の距離が開いてきたように感じますね。
そして初登場の時から思っていましたが、
恵の美大仲間、チャンビン君(ブログ内では「蒼君」としています)がイケメン‥
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蓮、ピンチじゃー!
そして韓国ではついに!本日からドラマの放映開始ですね!
キャスト全体ポスター、名前振ってみました↓
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日本で放映されるのを楽しみに待とうと思います~
次回は<揺れる容疑者>です。
☆ご注意☆
コメント欄は、><←これを使った顔文字は化けてしまうor文章が途中で切れてしまうので、
極力使われないようお願いします!
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蓮は思わず仰け反った。
数メートル先に、あの男の姿が見えたからだった。
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柳瀬健太。度々嫌がらせをしてくる相手だ。
蓮はヒッと息を飲みながら、建物の陰へと身を潜める。
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「‥‥‥」
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頭を抱えながら、健太が去るのをじっと待つ自分。
しかし蓮はそんな自分自身が、一番信じられなかった。
「ちょ、どうして俺隠れてんの?!」
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悪いことをしたわけでもないのに、どうして隠れてしまうのだろう。
蓮はそんな不可解な自身に首を捻りながら、恵の居る美術科の方へとトボトボ歩き出した。
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慣れない建物内を歩く蓮。
一つ一つの教室が、全てよそ行きの顔をしている様な気がする。
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蓮はキャップのツバを上げながら、彼女の姿を探した。
けれど心の中は、どんよりと重い。
キンカン‥怒ってるよな‥
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でもアメリカに戻んのだけは‥死んでも嫌だ‥
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先日恵に言われた言葉が、チクリと心に刺さる。
「蓮、蓮は何をしているの?」
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忙しい時は店を手伝って、そうじゃない時は恵とデート。
確かに今の自分は、それ以外にしていることは無い‥。
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どんよりと重い気持ちのまま、恵の居る教室の前に着いてしまった。
蓮はドアに身を寄せながら、そろりと中を窺う。
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教室の中では、恵とその友達がワイワイとお菓子をつまみながら談笑していた。
しかし彼女らは遊んでいるわけではなさそうだ。
恵の隣に座る男子学生が、恵の絵を見ながら話すのが聞こえる。
「やっぱり小西の絵には独特のタッチがあるよな」「そう?」
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「この感じ好きだよ」「わー!ありがとう!」
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男子学生に絵を褒められた恵は、屈託のない笑顔を浮かべて礼を言った。
そして彼女らは、学科のことや勉強のことを話し始める。
「てか蒼君はTOEICの点数上がった?」
「ううん、前と大して変わってなかった」「そっかー」
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そう言って溜息を吐く蒼君に向かって、向かいに座っている女の子がこう聞いた。
そしてそれをキッカケに、皆はそれぞれ意見を口にする。
「ねぇ、英語の勉強ってマスト?絵だけ上手に描けたらよくない?」
「将来どんな職業に就きたくなるか分かんないんだから、準備はしとくべきだよ。
英語は基本だし。何を今更‥」
「そうだよー。てかアンタもウェブデザインの授業聴いてるじゃない」
「うう‥でも英語はイヤー じんましん出そ」
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「期末終わったら、恵も英語の授業にエントリーするって言ってたよね?」
「うん!やっぱネット講義より実際の授業受けた方がイイよねぇ?」
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「だなー」
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ドア一枚を隔てた向こう側と、今自身が隠れているこちら側。
そのたった数歩の距離が、蓮には恐ろしく長く感じられた。
羽の付いた靴を履く恵と、足に合わない靴を履く蓮の距離。
それはもう知らないフリをすることが出来ないくらい、明確に離れている‥。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
<隔たり>でした。
短い記事で失礼しました!お正月休み、ということで‥(?)
蓮と恵、だんだんと二人の距離が開いてきたように感じますね。
そして初登場の時から思っていましたが、
恵の美大仲間、チャンビン君(ブログ内では「蒼君」としています)がイケメン‥
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蓮、ピンチじゃー!
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そして韓国ではついに!本日からドラマの放映開始ですね!
キャスト全体ポスター、名前振ってみました↓
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日本で放映されるのを楽しみに待とうと思います~
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次回は<揺れる容疑者>です。
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初コメありがとうございます!なんて熱いコメ‥!驚き&嬉しさでビックリしております^^
蓮には頑張って欲しいですよね。
ちょっと打たれ弱いですが、根は素直で優しい子だと思うので、そこを伸ばしてなんとか今の壁を突破してくれると良いんですが‥。
それにはきっと恵の言葉や行動がキーになるんだと思うんですが‥どうでしょうね‥。まさかの「何年後かにもう一度」の遠藤&秀紀兄さんパターン‥?!
チートラ、新しい単行本の出版(韓国語版だけど‥)やドラマの放映(韓国のドラマだけど‥)で最高に盛り上がってますね!
日本でもリメイクドラマ作ればいいのに~といつもキャストを妄想している私です。
熱いコメ、ありがとうございました!
これからもよろしくお願いします!
確かに今のままの蓮じゃ、
恵ちゃんと釣り合わないのかな…
でも、蓮くん!
恵ちゃんのこと諦めたくないなら、
やっぱり何かしら身に付けるべきなのではないかなぁ!
私も他人のこと言えないけどさぁ!
でも、そのための努力は、私は応援するよぉぉ
と、蓮くんに言いたいです(笑)
あと、映像化されるそうで。
雪ちゃんおいくつ…雪母と似すぎてる…
あと、ポスターの配置から妄想すると、
雪ちゃんと最終的にくっつくのは亮さんなのだろうか…
気になる…
でも、なぜか健太先輩だけは納得しました(笑)
ゲス感……
yukkanenさん、
あけましておめでとうございます!
昨年からLine漫画のチートラをよんでドはまりしまして、単行本でも買ってやろうか、とネット検索したところ、このホームページが出てきました。
その時からずっと読んでます!
1日置きの楽しみありがとうございます。
もう何処かの出版社にかけあって、yukkanenさんが翻訳本出しちゃえばいいのに
とさえ思っています(笑)
あつかましくてすみません!!
でも、そのくらい分かり易いですし、多分ファンの方着実に増えてると思ってます。
お子さんもいらっしゃるとかで、負担にはなっていないのかな、と思いつつ、ここの更新楽しみにしています。
無理はなさらずに…
失礼しました!