逸材
ディズニーランドのシンデレラ城に
シンデレラのフェアリーテイル・ホール
というアトラクションがあります。
シンデレラ城のなかに
シンデレラにまつわるアート作品や
シンデレラの物語を語った絵や
王座の間
ガラスの靴を合わせて写真がとれるような仕掛けなど
お姫様感いっぱいの展示があります。
娘はそこが好きで何度も行きたがります。
わたしは暇なので
死んだ目で妄想しておりました。
シンデレラの物語を追った絵。
巧いなー。
これは
壁に描かれていて
この下にその場面の説明が短い文章で書かれています。
お父さんが迎え入れた新しいお母さんとお姉さん。
お父さんが死んで
「シンデレラは屋敷の召使にされてしまいました」
広い広い屋敷のホールをひとりで床拭きする
シンデレラの絵。
次の絵は
屋根裏部屋で動物に囲まれるシンデレラが描かれています。
「それでもシンデレラは優しさと思いやりを失いませんでした」
そこで
は!
と私は気付く。
こいつは、やべえ。
と。
ただもんじゃねーな、シンデレラ。
ふつう
毎日毎日蔑まされ、いじめられていたら
自信をすっかり失って、
誰にも優しくなれないだろうし
殻に閉じこもると思うんです。
あまりの精神的ダメージにより
動物たちとお話できるようになっちゃった
という別ストーリも展開できますが、
そうではないと
わたしは思います。
反骨精神と、備えもった気品があったからこそ
新しいお母さんは
必要以上にシンデレラの芽をつもうとしたんだと思うのです。
映画を見れば分かりますが
いじわるなお姉さんふたりは
いじわるはしますけど、
頭はからっぽです。
で、お母さんはそのことをよく分かっている。
女がよく見えているのです。
美人で野心があり、たくましいシンデレラを
いじわるなお母さんはよく見抜いていたのだと思います。
だからこそ、塔に軟禁していたのです。
この妄想を強固なものにしたのは
もう一枚の絵。
シンデレラが初めて
王子様に連れられて
新居であるお城に馬車からおりたった絵があります。
そのときのシンデレラの立ち姿です。
背筋をぴんと伸ばして、
王子にエスコートされています。
感嘆の表情をしながらも
目はまっすぐで
強い光を放っています。
もし
蔑まれているただの女なら
あんなに堂々とできません。
わたしなら
「ひ、ひー!こんなあたしが、こんな豪華なお城にっ。無理無理無理!
似合いません、あたしにはこんなとこ似合いません」
と、卑屈全開でびびってしまいます。
シンデレラには
当然、自分がそれを手に入れるだけの自信を器をもっている
と自分で分かっているんだね。
あいつは、ただの女じゃない。
そしてあの話は
清く正しい心を持っていれば
必ず幸せになれる
って話ではない。
ひとが最初から持っているもの
生まれたときから備わっているもの
は、ちょっとやそっとの逆境じゃ消えてなくならない。
そのひとが手に入れることができるものってのは
最初から決まっている。
そしてあのお母さんもそれが分かっていて
それでも抗おうとしたんだと思うんだ、自分なりの性根のくさったやり方で。
妄想がつきないな。
絵をちゃんと写真に収めればもっと説明も上手にできたんですけどね。
シンデレラのアート作品は
なかなか面白いですよ。
お気に入りは木彫り。
顔がなんとも味わい深い。
こういう渋いものある。
かわいらしい紙細工もあります。