最後のオーディブル感想です。
アガサ・クリスティー『満潮に乗って』を聴いたあとで、
一度内容を知っているものを聴いても、あれ、だな、
と思い、
絶対的未読と確定している作品をついに聴くことにした。
『そして誰もいなくなった』
ミステリー小説の超有名本。
私はこれに手を付けていなかった。
理由は、
あまりにも有名すぎる、ってことと、
こわいじゃん
っていうことで。
私がクリスティーにハマった中学生のときから
オチがタイトルになっているって時点で、
みんな死ぬじゃん
と怖くてしょうがなかった。
それでもなお、
ベストワンにあげる人が少なからずいる
というのは、
なにか私が想像しえないものがあるのかと、気になってはいた。
このまま手を付けずに、
ってことはないので、
ここはいっちょ!とついに挑むことにした。
結果、めちゃくちゃよかった。
あらすじだけではわからない、
細かい配慮が随所にあり、
本当に無理なく「誰もいなくなるのか?」という疑念の一切が
払拭された。
すごくスムーズに
なんの疑問もなく
納得の展開で
いなくなった。
ちゃんとミスリードにひっかかったし、
こっそり隠されたヒントは最後まで頭の片隅にあり、
なぞが明かされたところで、「ああ!なるほどあれが!」と思う仕掛けになっている。
私はクリスティーが、
人の潜在的な悪意を繊細にくみ取るところ、
が大好きなんだけれど、
この作品にもそれが反映されていた。
誰でもが心に持つ犯罪を犯す可能性。
100年前も現代も中身の醜さでは、
そう変わらないところに、いつも感銘をうけてしまう。
ちょっとだけネタバレ。
犯人が
罪の軽さの順に殺す
と言っていて、
これが犯人の、
ひいてはクリスティーの考える罪の重さの順番か
と知り、鳥肌が立ちました。
一見すると、議論の余地ありの順番だ。
そりゃ、怖いは怖かったけれど、
それ以上の傑作。
ありがとオーディブル。