上位語・下位語の概念についての以前のエントリー。
http://blog.goo.ne.jp/zenconundrum/c/e91615d2028e4a9eb97d76681eb9601f
例えば「哺乳類」というカテゴリーの下に「犬」や「猫」といったサブカテゴリーが存在し、さらに「犬」というカテゴリーの下には「ブルドッグ」や「チワワ」などが存在する。また、「哺乳類」という言葉自体もその上の「動物」といったより大きなカテゴリーのサブカテゴリーとなっている。つまり、単語のネットワーク(のうちの一つ)は、上下関係と並列関係のマトリックスになっているのだ。
実は、上記のような重層性は学術的研究のあらゆる場面で極めて重要なものであり、論理的な思考・分析には欠かせないものである。そもそも、「分かる」という言葉自体、分類・カテゴライズを思わせる言葉なのだから。論文の構成においても、より広い漠然とした抽象概念から具体的なものへ階層的に絞り込んでいくパターンがよく見られる。
当然、大学入試の素材となる論説文を読み進める場合にも、抽象→具体、漠然→明確の道筋は押さえておいた方がよい。と言っておいて以下のパッセージを見て欲しい。ある論説文のイントロである。
1) How have computer technology and the Internet changed the way people and companies work? 2) For one thing, they have made it possible for many people to work from any place they like, including their homes. 3) And they have brought about important changes in the way companies do business.
本文では、このあとに2つの具体例が続く。1つめは、アメリカの会社が24時間電話対応するために、インターネットと時差を利用してオーストラリアなどの他国で顧客からの電話を受けるようにしているというものだ。
もう一つは、やはりアメリカの会社がインターネットを利用してインドでコンピュータの専門家を雇うというものである。雇われたプログラマーは自国にいながらインターネットを通して仕事ができるというわけだ。
ここからが本題。
元のパッセージに戻って考える。先に述べたように、1) の文は主張するポイントへ絞り込むため、より上の階層、分かりやすい言葉で言えば、より大きな「箱」を疑問文の形で提示したものと考えられる。この「箱」がカバーする範疇は「コンピュータとインターネットが人や会社の仕事の方法を変えた」ということだ。
そして、2)は1)をさらに絞ったもの。ここで小さくなった「箱」では「労働者が就業する場所に制限を無くすことが可能になった」ということがカバーされている。
問題は3)(コンピュータとインターネットは会社が事業をする方法に重要な変化をもたらした)である。木村先生の勉強会で授業をされた先生方のうち複数の方が、And ≒ For another (For one thingに対して)と説明された。私はこの解釈は間違っていると指摘した。
もし、And ≒ For anotherならば、2)と3)は並列の関係になる。たとえて言えば、1)という大きな箱の中に、2)と3)という2つの箱が横に並んでいることになる。仮にそうだとすれば、この後に出てくる2つの具体例は、どちらの箱にはいるのか。
2つの例を読めば、これらは「(労働者が就業する場所に制限がなくなった)ことにより(会社が新しい企業活動を営めるようになった)」ことの具体例であることが分かる。すなわち、これらが入るべき箱は2)+3)であり、この両者の間に境目はないのだ。
さらに核心をつくと、For one thing, がかかっているのは、 they have made it possible for many people to work from any place they like, including their homes. と And they have brought about important changes in the way companies do business. の両方なのである。
蛇足ながら、二つの解釈の違いを強めに表現して日本語訳してみる。
「コンピュータやインターネットは、どのように人々や会社が働く方法を変えただろうか。第一点として、人々が自宅を含む好きなところで就業することを可能にしたことがあげられる。第二点としては会社が企業活動を営む方法に重大な変化をもたらしたことがあげられる。」
「コンピュータやインターネットは、どのように人々や会社が働く方法を変えただろうか。いろいろある中で一つあげられるのは、人々が自宅を含む好きなところで就業することを可能にし、それによって会社が企業活動を営む方法に重大な変化をもたらしたことがあげられる。」
私の持ち時間で、もしFor anotherが本当に存在するとすれば、どのような続きが予想されますかと逆に問いかけさせていただきました。A型の蠍座ですから、ご容赦を。私が考えたのはネットマーケットなど。すべてを見通していらした木村先生はアングラ・ビジネスを想像してしまったと仰っていました。
http://blog.goo.ne.jp/zenconundrum/c/e91615d2028e4a9eb97d76681eb9601f
例えば「哺乳類」というカテゴリーの下に「犬」や「猫」といったサブカテゴリーが存在し、さらに「犬」というカテゴリーの下には「ブルドッグ」や「チワワ」などが存在する。また、「哺乳類」という言葉自体もその上の「動物」といったより大きなカテゴリーのサブカテゴリーとなっている。つまり、単語のネットワーク(のうちの一つ)は、上下関係と並列関係のマトリックスになっているのだ。
実は、上記のような重層性は学術的研究のあらゆる場面で極めて重要なものであり、論理的な思考・分析には欠かせないものである。そもそも、「分かる」という言葉自体、分類・カテゴライズを思わせる言葉なのだから。論文の構成においても、より広い漠然とした抽象概念から具体的なものへ階層的に絞り込んでいくパターンがよく見られる。
当然、大学入試の素材となる論説文を読み進める場合にも、抽象→具体、漠然→明確の道筋は押さえておいた方がよい。と言っておいて以下のパッセージを見て欲しい。ある論説文のイントロである。
1) How have computer technology and the Internet changed the way people and companies work? 2) For one thing, they have made it possible for many people to work from any place they like, including their homes. 3) And they have brought about important changes in the way companies do business.
本文では、このあとに2つの具体例が続く。1つめは、アメリカの会社が24時間電話対応するために、インターネットと時差を利用してオーストラリアなどの他国で顧客からの電話を受けるようにしているというものだ。
もう一つは、やはりアメリカの会社がインターネットを利用してインドでコンピュータの専門家を雇うというものである。雇われたプログラマーは自国にいながらインターネットを通して仕事ができるというわけだ。
ここからが本題。
元のパッセージに戻って考える。先に述べたように、1) の文は主張するポイントへ絞り込むため、より上の階層、分かりやすい言葉で言えば、より大きな「箱」を疑問文の形で提示したものと考えられる。この「箱」がカバーする範疇は「コンピュータとインターネットが人や会社の仕事の方法を変えた」ということだ。
そして、2)は1)をさらに絞ったもの。ここで小さくなった「箱」では「労働者が就業する場所に制限を無くすことが可能になった」ということがカバーされている。
問題は3)(コンピュータとインターネットは会社が事業をする方法に重要な変化をもたらした)である。木村先生の勉強会で授業をされた先生方のうち複数の方が、And ≒ For another (For one thingに対して)と説明された。私はこの解釈は間違っていると指摘した。
もし、And ≒ For anotherならば、2)と3)は並列の関係になる。たとえて言えば、1)という大きな箱の中に、2)と3)という2つの箱が横に並んでいることになる。仮にそうだとすれば、この後に出てくる2つの具体例は、どちらの箱にはいるのか。
2つの例を読めば、これらは「(労働者が就業する場所に制限がなくなった)ことにより(会社が新しい企業活動を営めるようになった)」ことの具体例であることが分かる。すなわち、これらが入るべき箱は2)+3)であり、この両者の間に境目はないのだ。
さらに核心をつくと、For one thing, がかかっているのは、 they have made it possible for many people to work from any place they like, including their homes. と And they have brought about important changes in the way companies do business. の両方なのである。
蛇足ながら、二つの解釈の違いを強めに表現して日本語訳してみる。
「コンピュータやインターネットは、どのように人々や会社が働く方法を変えただろうか。第一点として、人々が自宅を含む好きなところで就業することを可能にしたことがあげられる。第二点としては会社が企業活動を営む方法に重大な変化をもたらしたことがあげられる。」
「コンピュータやインターネットは、どのように人々や会社が働く方法を変えただろうか。いろいろある中で一つあげられるのは、人々が自宅を含む好きなところで就業することを可能にし、それによって会社が企業活動を営む方法に重大な変化をもたらしたことがあげられる。」
私の持ち時間で、もしFor anotherが本当に存在するとすれば、どのような続きが予想されますかと逆に問いかけさせていただきました。A型の蠍座ですから、ご容赦を。私が考えたのはネットマーケットなど。すべてを見通していらした木村先生はアングラ・ビジネスを想像してしまったと仰っていました。