東京新聞より転載
安全面、募るいら立ち 放射性焼却灰 手賀沼一時保管 間もなく1年
2013年12月12日

一時保管場所となっている県の手賀沼終末処理場=昨年2月、本社ヘリ「おおづる」から
指定廃棄物と呼ばれる高濃度の放射性セシウムを含む焼却灰を、県が昨年十二月二十一日から手賀沼終末処理場(印西、我孫子両市)で一時保管を始めて間もなく一年。安全面への懸念を訴える周辺住民はこの間、公害等調整委員会で県との調停を続けてきた。だが、進展がないことへのいら立ちは募り、住民らは調停が不成立の場合、灰の撤去を求めて訴訟に踏み切る方針を十一日に固めた。安全確保を強調する県の主張と、住民らの不安と不満は法廷で争われることになりそうだ。 (白名正和、三輪喜人)
「この辺りはもともと全部手賀沼で、干拓してできた土地。土地も低いし地盤も弱い。危険物を保管するには向かない」。一時保管に反対する広域近隣住民連合会代表の榎本菊次さん(73)=我孫子市=が強調する。
同処理場は手賀沼から延びる手賀川と利根川の合流地点近くにある。周辺は田んぼと民家が点在するが、利根川が氾濫した場合、我孫子市の想定でも一帯の浸水は五メートル以上とされている。
元沼地という立地条件だけでなく、住民らは保管方法も問題視する。県は一時保管場所として、工事現場で使われるテント倉庫を設置し、灰はビニール製のフレキシブルコンテナ(フレコン)に入れて保管している。テント周辺は土を掘り下げた側溝に防草シートを敷くが、それでも簡易な構造。今年は台風被害なども免れたが、雨水がテント内に浸入する懸念は拭えない。
調停で住民側の代理人を務める及川智志弁護士は、保管方法について「柏市は、市の施設での保管はドラム缶に入れ、コンクリート容器で密閉する厳重なボックスカルバート方式を採る。安全性を確保するため、搬入分も同じようにさせるべきだが、県は市に指導すらしていない」と批判する。
これに対し、県は調停でも「安全性は確保されている」と繰り返す。一時保管の安全対策は国のガイドラインに沿っているというのが根拠だ。
住民らは、セシウムを含んだ雨水が地中に浸透する恐れも指摘する。「住民には適切な説明をしている」と主張する県の姿勢に対し、「説明しようという気は感じられない」(榎本さん)と不満を強める。
一時保管は、国が最終処分場を設置する二〇一四年度末までと、県は説明してきた。だが、最終処分場選びのスケジュールはすでに当初予定から一年以上遅れ、一時保管の期限も長期化する可能性がある。平行線をたどってきた県との調停も行き詰まり、「県としては手続きに問題ないということになるのだろうが、安全性は危険なままだ」(及川弁護士)と不安と不満は残ったままだ。
安全面、募るいら立ち 放射性焼却灰 手賀沼一時保管 間もなく1年
2013年12月12日

一時保管場所となっている県の手賀沼終末処理場=昨年2月、本社ヘリ「おおづる」から
指定廃棄物と呼ばれる高濃度の放射性セシウムを含む焼却灰を、県が昨年十二月二十一日から手賀沼終末処理場(印西、我孫子両市)で一時保管を始めて間もなく一年。安全面への懸念を訴える周辺住民はこの間、公害等調整委員会で県との調停を続けてきた。だが、進展がないことへのいら立ちは募り、住民らは調停が不成立の場合、灰の撤去を求めて訴訟に踏み切る方針を十一日に固めた。安全確保を強調する県の主張と、住民らの不安と不満は法廷で争われることになりそうだ。 (白名正和、三輪喜人)
「この辺りはもともと全部手賀沼で、干拓してできた土地。土地も低いし地盤も弱い。危険物を保管するには向かない」。一時保管に反対する広域近隣住民連合会代表の榎本菊次さん(73)=我孫子市=が強調する。
同処理場は手賀沼から延びる手賀川と利根川の合流地点近くにある。周辺は田んぼと民家が点在するが、利根川が氾濫した場合、我孫子市の想定でも一帯の浸水は五メートル以上とされている。
元沼地という立地条件だけでなく、住民らは保管方法も問題視する。県は一時保管場所として、工事現場で使われるテント倉庫を設置し、灰はビニール製のフレキシブルコンテナ(フレコン)に入れて保管している。テント周辺は土を掘り下げた側溝に防草シートを敷くが、それでも簡易な構造。今年は台風被害なども免れたが、雨水がテント内に浸入する懸念は拭えない。
調停で住民側の代理人を務める及川智志弁護士は、保管方法について「柏市は、市の施設での保管はドラム缶に入れ、コンクリート容器で密閉する厳重なボックスカルバート方式を採る。安全性を確保するため、搬入分も同じようにさせるべきだが、県は市に指導すらしていない」と批判する。
これに対し、県は調停でも「安全性は確保されている」と繰り返す。一時保管の安全対策は国のガイドラインに沿っているというのが根拠だ。
住民らは、セシウムを含んだ雨水が地中に浸透する恐れも指摘する。「住民には適切な説明をしている」と主張する県の姿勢に対し、「説明しようという気は感じられない」(榎本さん)と不満を強める。
一時保管は、国が最終処分場を設置する二〇一四年度末までと、県は説明してきた。だが、最終処分場選びのスケジュールはすでに当初予定から一年以上遅れ、一時保管の期限も長期化する可能性がある。平行線をたどってきた県との調停も行き詰まり、「県としては手続きに問題ないということになるのだろうが、安全性は危険なままだ」(及川弁護士)と不安と不満は残ったままだ。