Sixteen Tones

音律と音階・ヴァイブ・ジャズ・ガラス絵・ミステリ.....

スケッチは3分 - イメージ記憶術

2009-08-30 07:54:37 | お絵かき
山田 雅夫 「スケッチは3分」 光文社新書 (2006/11)

J 子が買った本だが,著者紹介に核融合科学研究所客員教授とあった.専門は建築家らしい.絵を描くというより,透視図を描くという視点,いわば「図学」に基づいたスケッチ入門.ただし同じパターンなら省略しろとか (製図でもそうするけれど),スケッチしにくいものはやめろというアドバイスが新鮮.

題材も,工業製品や町並みが大部分.
最後のほうに人物のスケッチが現れるが,この部分は はっきり言って生彩がない.

3分スケッチでは,対象が3分間は動かないことが前提.

ところが (ここから 話がずれますが)
世の中には目で見たものをそのまま映像として記憶出来るひとがいる.こう言う人にとっては,スケッチは写真を絵に移すようなものだろう.

2枚の似たような絵の,数カ所のちがいを指摘するというクイズ?がよく雑誌に出ている.われわれは2枚を交互に見比べながら違いを見つけるが,1枚目をじっと見つめて映像として大脳メモリに収納し (たのだと思う),やおら2枚目で違いを次々に指摘した人がいた.この人は画家だった.

音楽家では,ミルト・ジャクソンは楽譜を映像として記憶するのだと言っていた.MJQ のレパートリーの中にはほとんど楽譜どおりに演る曲もあって,ジョン・ルイスはやたらに蛍光ペンでマークした楽譜と首っ引きで演奏したが,ジャクソン氏は暗譜だった.
楽譜の汚れなども記憶しちゃうんだとか.でもカメラのように一瞬にして,とはいかず,何分かは見つめる必要があるとか.
千住真理子も似たようなことを言っていた.

この映像記憶術 天才だから出来るというものでもないだろう.映像として目に浮かぶ大事な手紙など,誰にもひとつやふたつありそうだ.この能力を伸ばす訓練法の開発は可能性がありそう.

ところで (また話がずれますが)
画家が描く絵にはすべてスケッチがも原図として存在すると思い込んでいたが,最近はそうばかりでもないようだ.絵になりそうな題材を見つけたら,まず携帯のカメラで撮る人が多い.
では,3分スケッチは何のため? 受け狙いのデモンストレーションという一面も否定出来ない?
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裏から 表から

2009-08-28 09:24:14 | お絵かき
どうせ透明な板なら,裏表で違うように描いてみようかと.

新聞に出ていたメバルの幼魚の写真をもとにした.記事によれば,立ち泳ぎの姿勢が好きで,好奇心も強いという.今頃は大きい魚に食べられちゃってるかも.
色は想像.あぶくは思いつき.

サインがAOで裏表がなく好都合.
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緊急地震速報の誤報

2009-08-26 08:43:08 | エトセト等
関東地方に緊急地震速報は出たが何ごともなかったそうだ.原因は地震計のデータ処理ソフトを業者(M 電気)が無断でいじくった所為だと言う.20年以上前にお付き合いしたことがある,あのM 電気さん?

それはそうと,1台の地震計からのデータをまるごと信用して速報するのかよ? と思って,気象庁のウェブを見たら,確かにその通りだった.どこか1カ所の地震計が大きく振れたら,とりあえず第一報は出してしまうらしい.信頼性よりも緊急性を優先,フェイルセーフである.

しかし間違ったデータが送られるのは地震計ソフト改ざんが唯一の理由ではない.企業の生産現場の制御用センサだったら冗長性を持たせるのが常識だろう.この場合だったら,地震計を複数台置くことになる.大きな揺れを観測するだけなら,高感度・高価格な地震計は必要ではない.ソフトなんか介在する余地のない素朴な機器が良い.はやいはなしが,ビールの空き瓶かなんか置いといて,これがひっくり返ることもあわせて,第一報発信の条件にしても良いのでは.
なんちゃって,門外漢の無責任発言です...

それはそれとして,地震計は約25kmおきに設置されているらしい.地震p波の速度は秒速5ないし7kmとのこと.数秒経てば,最初のとは別な地震計からも刻々とデータが入り,最初のデータがおかしかったことは分かるはず.実際 上記ホームページにも「緊急地震速報とは、第1報発表の迅速性は確保しつつ、時間とともに精度を上げながら複数回発表されるものです」と書いてあるが,ちゃんと「誤報速報」も流したんだろうか.
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音楽の聴き方

2009-08-25 12:21:19 | 新音律
岡田 暁生「音楽の聴き方―聴く型と趣味を語る言葉」 中公新書 (2009/06)

著者は京都大学人文科学研究所准教授.いかにも京大准教授らしい本だ.こんな漠然としたテーマを一冊の本にしてしまうところが凄い.人文系のセンセーも大変だ.でも面白かった.

帯に曰く
「お好きなように」と言われても お困りのあなたに
惹句としては上手いが,この本そのものはクラシック音楽に『通な』人たちに話題を提供するほうが目的な感じ.

5章から構成されていてそれぞれ,感性あるいは生理に訴えるものとしての音楽,音楽を語ることば,音楽の持つ言語としての構成,複文化のなかの音楽,をテーマとして来ているのだが,個人的には最後の「第5章 アマチュアの権利 -してみなければ分からない」に興味を感じた.
ただし,「してみる」といっても,アマチュアが楽譜どおりにクラシックを演奏することにとどまっているのはやや不満.「踊る阿呆に見る阿呆...」を実感出来るのは,やっぱりジャズでしょう.
岡田先生もジャズがお好きらしく,この本にもセロニアス・モンクとか,南博とかが登場するんだけど...

J 子が絵を描いているのを見ると,また自分で CD ケースにいたずら描きなんかしてみると,「してみなければ分からない」のは音楽ばかりじゃないと思う.
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MacBookを新調

2009-08-23 08:28:23 | エトセト等
広島では 梅雨が明けたら 秋だった...という感じ.

退職記念に買った MacBook G4 がいやに遅くなったように感じられる.識者に聞いたら,OS を忠実に更新したので,計算機の性能に対して重くなってしまった結果だと言う.

校費で MacBook Pro を購入ということに.
1.5GHzから2.66GHzへ,PowerPCからIntel Core 2 Duoへ,512MBから4GBへ,ハードディスクも60GBから300GBへ,12インチから15インチへと 大躍進.

引っ越しもお仕着せのソフトであっさり.

目方が重くなったのが,ちょっと応える.USBポートがふたつだけというのもちょっと不満.

古い MacBook で,ジャズ研でコンピュータ・ミュージックを...という企みだが,midi ケーブルその他必要なものが四散していて憂鬱.
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ボウイングとピチカート,ジャズベースの巻

2009-08-21 08:17:57 | 新音律
バイオリン-ビオラ-チェロとコントラバスは楽器として系列が異なるらしい.

クラシックのコントラバスは地味な楽器で,ソロが聴ける有名曲といったら,サンサーンス「動物の謝肉祭-亀」くらいなものである.シャズでも,地味と言えば地味だが,ベース目当てのファンがいたりする.
ジャズではピチカートが主流.弦を弓で擦って音を連続させ,音色も華やかにするという弦楽器の特性を,ジャズでは放棄してしまったのはなぜだろうか.

クラシックのコントラバスのピチカートはスタッカートと言い換えても良いようなもの.ピチカートの魅力を開拓したのはジャズのベーシストだったんだろう.でもジャズでボウイングが使われないわけではない.

ジャズ・ベーシストから評論家に転向した本多俊夫氏は「体験的モダンジャズ入門」スイングジャーナル社(1981) のなかで,「指ではじいて正確に聴こえる音でも,それとまったく同じポジションで弓弾きしてみると,えらくフラットしたりシャープしたりすることを認識させられる」と言っている.

指弾きと弓弾きのスペクトルを比べると,弓弾きのほうが高調波が多いので,明るい音色になる.これはバイオリンの測定例だが,ベースでも傾向は同じだろう.単純に,スペクトルの違いによるようなものなら,弓弾きはシャープしたように感じられるいっぽうと思う.

ジャズベーシスト佐藤有介氏曰く,ピチカートは減衰するのでなにか違うのでは.確かに弾いた瞬間には音程はなく,音程を感じるにはある程度の時間が必要なことは,不確定性原理である.音程を耳が追いかけているうちに,音は小さくなっていくのは困るかも.
解放弦でもボウイングとピチカートで違う音程に感じられるのだろうか?

本多氏はベースのボウイングの音程について「あえて名前は挙げないが,彼ともあろうプレイヤーが... これはひどい! という場合がよくある」とも言っている.内外のウェブで漁った限りでは,意外にもロン・カーターのボウイングの音程の評判が悪い.幸か不幸か,家には彼のボウイングが聴けるCDがない.

佐藤氏によれば,ボウイング・ピチカートそれぞれに適した弦があるとのこと.バッキングはピチカート,ソロはボウイングという持ち替え自体に無理があるのかも.

本多氏はポール・チェンバースがお好きだったらしい.写真のアルバムの冒頭のYesterdaysはボウイングのソロの名演とされている.このアルバムは実は借り物のベースで録音したと聞いたことがあるが,真偽は知りません.
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芥川賞「終の住処」磯崎憲一郎

2009-08-19 17:19:52 | 読書
文春9月号.

受賞作では,主人公も妻も結婚したときにはとうに30歳を過ぎていて,
主人公は浮気をしたり,離婚を切り出そうとしたら子どもが出来たり,家族と11年も口をきかなかったりするが,
会社ではモーレツ社員みたいになって順調に出世して,マイホームも建て,
海外赴任から帰ったら娘はおらず,
結局は妻の手のひらはお釈迦様の手のひらでそこから逃れられないのだという,
あきらめハッピーエンドに終わる.

こう書いてしまうとみもふたもないが,妄想と現実がごっちゃになった書き方で退屈はしない.

受賞者は三井物産人事総務部長とのこと.インタビューはずいぶん会社に気をつかっているなぁという感じ.

ところで,場所をとるので,2003年3月-2009年3月の(2004年9月号を除く)芥川賞掲載号12冊をYahooオークションに3000円で出してみたが,さっぱり反応がない.IT製品はすぐに捌けちゃうんだけど...
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準周期アンジュレータの「音」

2009-08-17 10:23:54 | 新音律
加速器学会で,広島大学教授のS先生が,準周期アンジュレータの講演の中で,放射光のスペクトルを音に変えたらどうなる...ということをちょっと話題にされた.

加速器を電子が回ると,接線方向に光が出る.シンクロトロン放射光である.この加速器の一部に電子の軌道を波打たせる装置を入れると,光が線スペクトルになる.この,ふつうのアンジュレータ(定周期アンジュレータ)からは基本波・2倍波・3倍波...が規則正しく発生する.弦の振動と同じである.

ところが応用面では,2倍波以降(以高?)の高次光は邪魔になることが間々ある.そこで,高調波波長を整数倍からずれたものとし,モノクロメータの回折条件をフィルタとして利用して,基本波だけをとりだす方策をとる.整数倍からずれた高調波を発生する挿入光源が準周期アンジュレータである.カットの図は原子力機構のHPから拝借した.

こちらの青線が実際の準周期アンジュレータの周波数スペクトル.赤線はふつうのアンジュレータの場合.
これを「音」に直すときにはに Max/MSP を使ったが, Mathematica でも可能.
こちらをクリックして出るのがふつうのアンジュレータ光の音階版.こちらのへんてこなのが,準周期光の音階版.

S先生のご講演の主な話題は,準周期アンジュレータの設計法であった.ここで思い出したのが,純正律のように響く平均律.これも整数数倍からずれた高調波を出すという点で共通している.電子音なら簡単だが,アコースティックな楽器からこうした音が出たほうが面白い.
そこで楽器の設計に,準周期アンジュレータの設計が応用できないだろうか..と思っただけで,真面目に考えてはおりません.
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新型インフル?

2009-08-16 06:23:26 | エトセト等
2 週間ほど大阪-東京-東海など回遊して帰った翌日38.8度に発熱.
さては 豚インフルか? でもどうすれば良いの? と J 子があちこち電話して,結局普通にお医者さんに行けば良いということが分かった.

「このごろ子どもに流行っている.でも年配の方は確率が低いよ」などと言われつつ 簡易検査.鼻の奥の奥まで試薬付き綿棒を突っ込まれた.鼻くそをほじってくればよかったと,すこし反省.結果は陰性.ただし翌日症状が悪化するようだったら再度検査するとのこと.

解熱の頓服 - ロキソプロフェン
抗生物質-クラリスロマイシン
喉痛用-トランサミン
の3種類を処方されたが,頓服が怖いくらい効いて36度へ急降下.すごく汗をかいた.蒸発熱を奪われて体温が下がったというのが実感.

再検査もなく,4日で全快した.

今朝の朝刊には,「新型インフル初の死者」の見出しがあった.
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ボウイングとピチカートの周波数スペクトル

2009-08-14 20:18:41 | 新音律
図の(a)と(b)はバイオリンのD弦を指で弾いた時と弓で擦った時の0.5秒間の振動波形(弦の変位・すなわちマイクロフォンに流れる電流) である.演奏はT田T人氏.指で弾いた音は減衰するがこれは(a)にも表れている.もちろん(b)は擦っているかぎり継続する.

こちらの図(c)・(d)はそれぞれ(a)・(b)のスペクトルで,横軸 (周波数) で左から等間隔に並んでいるのが基本波(293.6Hz)・2倍波・3倍波….である.個々の線の高さは各高調波の強度を示す.
 (a)・(c)対と(b)・(d)対を比較すると, (a)は (c) に比べ滑らかだ.(c)はギザギザしている.弓に拘束された弦が,弓から弾性で逃れる瞬間に「跳ぶ」ためである.不連続点がある波形をフーリエ解析すると,理論的には高調波は無限に続く.じっさい,(d)の図の横軸は途中で切れているが,測定ではまだ右側に,10000Hzを越えて高調波列が続いている.いっぽう (b)の指弾きでは高調波は3000Hz当たりで消えてしまう.

一般に高調波が少ないと音がこもって感じられ,多いと音が明るく感じられる.これについては,また回を改めて...

ところで,いまの西洋音階のもとになっているのは,3倍波 (ピタゴラス) ,せいぜい5倍波 (プトレマイオス) だが,ハリー・パーチは7倍波から11倍波までを動員して43音からなる純正律を実践した.しかし本を読むと,彼は擦弦楽器がピアノと同じくらい嫌いだったらしい (ひとつの理由はヴィブラートかもしれない).

しかし,彼が使った鍵盤打楽器類では高調波が規則正しく立つとは考えがたい.物理で説明出来るのは太さのない1次元の弦くらいなもの.実際の弦は太さがあるのでずれて来るし,管楽器では流体力学という難しい問題が絡んで来る.
鍵盤打楽器 (はやくいえば木琴の類い)では,立方体の発音体を叩くとあちこちにねじれたりする.2倍・3倍...という整数倍波は立たない.

純正律には規則正しい高調波の存在が必須である.パーチ流に純正律を西洋音楽のセンスで延長するには,7倍波・11倍波・13倍波...が豊富な擦弦楽器にこそ向いているのではないだろうか.
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