Sixteen Tones

音律と音階・ヴァイブ・ジャズ・ガラス絵・ミステリ.....

位相差は聴き分けられるか?

2011-01-31 08:55:32 | 新音律
けっこう専門的な理工系の話題です.

「音色」は波形によって決まるとされている.そこで,上の式であらわされる時間 t の関数を n をパラメータとして描くと,下のようになる.どの波形も似ているが,よく見れば違う.



これが音としてどう聞こえるか,Mathematica で作ってみたことがある.

ここをクリックしていただくと別画面が開くはず.6 つの音が聞こえるが,最初から順に n=0,1,2,...,5 に対応している.ただしf=440Hz とした.

6 つの音色に違いがありましたか?
私には分からなかった.

この 6 つの波形は,パワースペクトルはみな同じである.ただし位相スペクトルは異なる.従来,人間の耳は位相スペクトルに感度がないとされていたと思う.
しかし現在は,とくに基本周波数が低い場合は,やはり音色に違いが出るということになっているらしい.

私の耳が悪いのか? 計算機のスピーカーが悪いのか?
たぶん440Hz は周波数が高すぎたのだろう.文献の実験 (附録のCD に音源がある) では 100Hz を基本波として,2 倍波の振幅を基本波の半分としていた. 

文献 岩宮眞一郎編著「音色の感性学」コロナ社(2010).


コメント (6)
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連城三紀彦「造花の蜜」

2011-01-29 08:19:20 | 読書
ハルキ文庫 (2010/11).上下2分冊.

単行本が出た 2008 年にはかなり話題作になった誘拐ミステリ.いかにも職業作家によるもの という感じで,読んでいる間は引っ張られる.ただし,読んだ後は,前半・後半で一貫性がないのにひっかかった.

原作はいくつかの地方新聞に連載されたということ.執筆開始時に荒っぽいデッサンはあったのだろうが,連載中にいくつか路線変更があったような感じ.怪しい登場人物は (ヒロイン?も含めて) 正体不明のままで,また いかにも思わせぶりな記述が,解決されずにそのまま終わってしまったりする.

単行本化にあたって加筆修正したとあるんだけれど.

描写は緊迫感にあふれているが,こういうストーリーならもっとおもしろおかしく,たとえぱ泡坂の「妖盗S79号」みたいな書き方のほうが楽しかったんじゃないの.とくに,手品みたいな最後の章を読んで そう思った.
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ビブラフォンの (半音側) 共鳴管

2011-01-27 07:53:03 | 新音律

マリンバやビブラフォンには音板の下に共鳴管がぶら下がっている.民族楽器では,管 (パイプ) の代わりにひょうたんがぶら下がっていたりする.共鳴管があると,音量は増えるが音の減衰は早くなり,音色も変わる.音板だけ見れば打楽器だが,管は管楽器で,音板と温度特性が逆なので,夏と冬の野外演奏では共鳴がずれ音が貧弱になる.クラリネット同様の「閉管」構造だが,それは管を短くするためかもしれない.

音板はピアノと同様2段に配列されていて,ピアノの黒鍵に当たる半音側は b のように 2-3-2-3-... の配列でよい.しかしヴァイブの神様が c で弾いておられる楽器のように,アーチ型になっていることが多い.これが高級なイメージを与えるとされて来たようだ.音板がない部分の管は「筒抜け」である.筒抜け管も共鳴して,雑音を出すのが嫌だというかたもおられる.

ゲイリー・バートンは,かって a のようにアーチにサイケな絵を描いたヴァイブを使っていた.あのころは彼も若かったのだ !

b の配置は軽量化を必要とする大きな楽器に多いようだ.ピプラフォンは 3 オクターブが標準だが,たしかに b の楽器は 4 オクターブもある.構造的には b よりも d のほうが頑丈らしく,分解して運搬することを売りにした楽器には d タイプが多い.

e の形はマリンバからビブラフォンに移って来たらしいが,この関数はなんだろう?

どれを選ぶかと言われれば,d である.運搬を考えれば 1g でも軽いほうが良い !!

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メレンゲ

2011-01-25 08:25:06 | お絵かき


CD ケースは 12cm x 14cm である.ここに大きなものを小さく描くのも面白いが,小さなものをそれなりに描くのも面白い.太い筆で描いたら,油絵みたいになった.

これはラパンのメレンゲ.ラパンはパン屋だが,職人はフランス人らしい.フランス語ではラパン lapin はウサギのことで,看板にもウサギがあしらってある.

メレンゲ meringue は泡立てた卵白に砂糖と粉を混ぜて絞り出して焼いたもの.こんな小さい甘いものを食べてから,珈琲をブラックで飲むのもよい.ちょっと抹茶の前のお菓子に似ている.お皿はヒャッキンのもの.
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カラスのお灸

2011-01-23 08:56:31 | エトセト等
口角炎である.
直りかけているのだけれど,うっかりあくびもできない.
大きな口をあけて食べることができない.
顔を拭いたタオルに血が付いていたりするのもおぞましい.

カラスは大きな口をあいて食べるので,お灸をすえるなら口の端が効果的なんだそうだ.

胃が荒れているから...と子供のとき聞かされたが,根拠がないらしい.現在は,ビタミン不足のためということになっている.
しかし 同じものを食べていて,J 子は何ともない.
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音色の感性学 - 音色・音質の評価と創造

2011-01-21 09:08:57 | 新音律
日本音響学会 編 岩宮眞一郎 編著 コロナ社(2010/08)

れっきとした学術書.そのためかカバーデザインも堅い (ダサイ?).
CMよれば
*****「音色」や「音質」を学問的にとらえることは困難である。しかし,どちらも日常生活にもかかわるとても身近な存在である。騒音制御から音楽芸術まで,音響学の各分野にまたがる学際的な分野に,多角的なアプローチでせまる一冊。*****
裏表紙には
***** 音や音楽に興味を持つ方に,ぜひともお勧めしたい一冊 ******
とあるように,一般の読者も視野に入れているようだ.

音の三要素は,大きさ・高さ・音色だが,最初の二つは一次元に数値化できるのに比べ,最後の音色は一筋縄ではいかない.第1章の基礎知識では.「音色の評価方法」として,多変量解析が紹介されている.工学はともかく,理学では (農学・薬学・生物学等では使うかもしれないが,物理学では) あまりなじみのない解析手法である.

この多変量解析は,第2章「音色・音質を表現する手法」の前半で活用される.たとえば,すでに1960年代に,音色を,美的叙情的因子,量的空間的因子,明るさをあらわす因子,柔らかさをあらわす因子,の四つに分解することが行われていたという.心理学みたい...とはいうものの,心理学は良く知らないけれど..

続く第3章はスペクトルが多用され,個人的には興味のある話題だし,理解しやすかった.ちなみに本書にはCD-ROMが付録としてついている.位相と音色の関係などはまさに「百見は一聞にしかず (音響学の格言だそうだ)」である.

第4章ではラウドネス,シャープネス,ラフネス,フラクチュエーションストレングスなどの「音質評価指数」が記述される.つぎの第5章「音色・音質評価のさまざまな対象」とともに,オーディオ装置・電子楽器,あるいは建築での音響性能を客観的に行うための基礎になるのだろう.またこういう産業に直結した対象があるからこそ.この本のような研究も行われているのだろう.

最後の章は「音色の創出」.コンピュータ・ミュージックを系統的に扱うと,自分になじみがある midi とか Max/MSP とかが どんな位置に来るのかなどと考えるのは面白かった.

6 人の共著だが,著者の中には博士 (芸術工学) という肩書きの方もおられる.
音響サイエンスシリーズ の一冊目.続刊予定のなかには「音楽はなぜ心に響くのか?」というタイトルもある!
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さよならドビュッシー

2011-01-18 09:53:55 | 読書
中山七里著 宝島社文庫(2011/01).

冬休みはこたつでミステリ,というのが昭和の過ごし方だったが,昭和もこたつも,冬休みも,遠くなりにけり.

ところでこちらは,2009年「このミス」大賞受賞作の文庫化.悪くはないが少女マンガを一気読みしたのと似た読後感.さきの「愛おしい骨」と比べるといかにも軽い.

解説 (大森望) に,音楽+スポ根+ミステリのハイブリッドとある.
スポ根というのは,火災にあって全身に皮膚移植を受けた女子高生ヒロインが艱難辛苦の末ピアノコンクールで優勝するというストーリーだから,リハビリの描写に迫力.高校でもちゃんと いじめられたりする.

著者は女性と思っていたが違うそうだ.ピアノも弾けないらしい.でも,ピアノの楽曲や奏法については,素人を韜晦出来る程度に十分上手に描いてある.ショパンやドビュッシーを弾いている方の意見を聞きたいもの.タイトルは,コンクールで「月の光」と「アラベスク」を弾くから.このコンクールでは,最後はとっさの判断で,彼女は山下洋輔みたいな奏法で弾くのだ.

でもミステリとしては... ヒロインの一人称で語られて,最後のどんでん返しは辛い.本格派の視点からはルール違反すれすれかも.

カバーイラストはなかなかの力作.女性の作かと思ったら,これも外れだった(北沢平祐 or PCP).
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愛おしい骨

2011-01-17 09:45:40 | 読書
キャロル・オコンネル 著, 務台 夏子 訳 創元推理文庫 (2010/09)

へんてこなタイトルだが,原題は Bone by Bone.宝島社「このミステリーがすごい2011」の海外部門ベスト1.
似たような年刊誌?には,ミステリマガジン編集部「ミステリが読みたい! 2011」,探偵小説研究会 「2011本格ミステリ・ベスト10 」などがあるはずだが,当地の書店には今年はなぜか「このミス...」しか置いてない.

海外のミステリは重厚長大で,読むたびに肉食人種の作と実感する.とくに,この小説に登場するカップルの片方は肉食女子そのもの.この小説の登場人物は全部ヘンなんだけど.
もうひとつ,アメリカの小説でたびたび感じることでもあるが,あちらの警察ってこんなにいい加減なのかな? ということだ.

海外のミステリは...と書き出したが,これはミステリなのかな.終わった思った後で犯人が明らかになるあたりは,たしかにミステリなんだけど,ミステリのフレームを借りた普通の小説という感じがする.解説(川出正樹)には「ミステリであることによって豊饒な小説と成りえた稀有(けう)な逸品」とある.
読みやすく,面白く,読後感も良かったが,豊饒かどうかは分からない.この解説が「愛」を連発するのが読んでいて面映かった.
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Apple の MJQ

2011-01-15 08:36:52 | ジャズ
アップルと言っても Mac ではない.

MJQ, the Modern Jazz Quartet が 1960 年代末,ビートルズのアップルレコードに在籍したときの2枚の LP,Under the Jasmin Tree と Space を1枚にまとめた CD のご紹介.いまではほとんど話題に上らない録音だったが,突然 EMI ジャパンから発売された.

Jasmin... は LP で持っていたのだが,哺乳類の蛇というサイケなジャケが CD では矮小化されいしまい残念.この中の3部からなる Three Little Feelings の最後の,ベースのグリサンドが忘れられなかったので購入.

Space というタイトルは金星と火星をテーマにした2曲のためらしいが,Planet というタイトルのほうが良かったんじゃないの? 金星の出だしのビブラフォンのビブラートは,ケプラーの惑星の音楽を連想させる.
ただしこちらは1枚の LP としての統一感はない.アランフェスのアダージォも入っているが,ロドリーゴの楽譜に忠実な編曲で,マイルスやジム・ホールにくらべると,ぜんぜん面白くない.でも,ラスト・コンサートでも演じていたところをみると,当人達は気に入っていたのだろうか.

ボーナストラックとして,初公開の,ジェローム・カーンではなくビートルズの Yesterday の MJQ 版.
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セーヌの流れに沿って - ひろしま美術館 

2011-01-13 10:17:27 | お絵かき
マルケ「ポン=ヌフ、夜景」



開催概要によれば
*****本展は、セーヌ川流域を5つの地域に分け、それらを描いた19世紀半ばから20世紀にかけての作品120余点を紹介するものです。印象派の展開、近代都市パリの相貌、田園と都市、日本人画家とフランスなど、さまざまな視点から見たセーヌの豊かなイメージをお楽しみください。*****

なんだか似たような名前・似たような趣向の展覧会が多いなぁと思ったが,これは収穫.国内の美術館の所蔵作品をかき集めたようだが,有名な作品が少ない.ということは はじめて見る作品が多いわけで,かえって新鮮.

主な作品はひろしま美術館のホームページで紹介されているが,ぼくの印象に残ったのは

フジタ「ル・アーヴルの港」,ムンクみたい.

ルノワール 「クロワシー付近のセーヌ川」では,まるっこい木々が女性の肉体を思わせる.

佐伯祐三「テラスの広告」.J 子はこの絵がデザインされたクリアホルダーをミュージアムショップで購入.

「モンマルトルの風車」1886 はとてもゴッホの作とは思えない.悪く言えば,デパートの売り絵みたい.
若き梅原龍三郎の作品にも全然らしくないものがある.でも,フランスの画家を見習ってフランスの風景を描いても,日本人画家の絵はどこか日本人らしいのが面白い.

ルソー「サン・ニコラ河岸から見たサン・ルイ島」幽玄な雰囲気.しかし,画集でみたらまったくつまらない絵かんじられた.

浅井忠「グレーの洗濯場」.会場の解説文によれば,浅井の代表作だそうだ.

香月泰男「エトルタ」.晩年の作だが,シベリアシリーズとは全然違う!

その他ヴラマンク,モネ等の絵が多かった.モネって睡蓮ばかり描いていたんじゃないんだ,凄いなぁ...と感心する無知な私でした.
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