Sixteen Tones

音律と音階・ヴァイブ・ジャズ・ガラス絵・ミステリ.....

可変フレットギターで微分音階

2010-11-30 09:12:05 | 新音律


ギターのフレットは 12 音平均律に従っている.すなわち オクターブを 12 分割している.しかしフレットを移動できれば,微分音階も出せる.
微分音階というのは,半音より狭い幅を使う音階のこと.microtone を微分音と訳すのだが,なまじ微分積分などを知っていると,この訳語は混乱のもとである.

この動画では,フレットを任意の位置に挿入したり,また引き抜いたりできるギターが演奏されている.もともとの目的はマカームという,アラブの音楽体系をギターで実現することらしいが,ピタゴラスでも,古典音律でも,16 音平均律でも,可能なんだろう.
調弦はどうするのか...など,考えるだけなら 面白い.

もうひとつの方向はフレットレス・ギターだろう.フランク・ザッパとか,ジョン・マクラフリンとか,それらしい人が試みていたと思う.ロックではもっと人口が多いだろう.
でもフレットが無いと,いつの間にか慣れた音律 (ふつうには 12 音平均律) に堕ちてしまいそう.

この動画はトルコの ,Tolgahan Cogulu さんの自作 (楽器を作ったという意味) 自演.
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辻まことマジック

2010-11-28 12:04:13 | 読書
琴海 倫著 未知谷(2010/12)

ウィキペディアには
--- 辻ー(つじまこと 1913-1975)は,日本の詩人・画家.山岳・スキーなどをテーマとした画文や文明批評的なイラストで知られる.日本におけるダダイズムの中心的人物辻潤と,婦人解放運動家であり関東大震災時に虐殺された伊藤野枝を両親に持つ ---
とある.

著者は,ホームページ「辻まことの世界に魅せられて」を運営.私がこの本を知ったのもこのページから.このHPが縁で,辻まこと令嬢・辻ナオ (直生?) さんとメル友となったことが,この本が生まれるひとつのきっかけとなったらしい.

カバーには,辻まことの自画像,最後の著書「すぎゆくアダモ」の挿画とともに,伊藤野枝と吉野せいの写真が載っている.本の内容が,女性の視点から見た辻まことという感じで,それをこの二枚の写真が象徴しているようだ.このカバーデザインは,辻まことの好みではないと思う.
でも,よく見れば,野枝とまことは似ている.

ちなみに,この本は,紀伊国屋書店では女性問題の棚に配置されていた.

伊藤野枝に関する記述は力が入っている.

吉野せいは「洟をたらした神」の著者で,その最初の原稿が,辻まことと関係が深い雑誌「アルプ」に載ったことから,著者は吉野と辻の関係を想像する.そこから,「すぎゆくアダモ」で釣り船屋のおじいさんが語る,うなぎと山芋の解釈に話が飛ぶ.こうしたことが,本書の中核「辻まことマジック」と題された章に記述されている.
新しい視点で,それも有りだとは思うが,ワタクシ的には多少違和感がある.

辻まことの自死 (自殺という言葉はさけられている) は.自ら実行した尊厳死という文章に共感.令嬢が,周囲が父の自死を隠したことに反発したというのにも共感.

辻まことに対する批判的な文章は皆無.全体に,著者が辻まことに宛てたファンレター,ラブレターといった趣がある.辻まことファンとしては,新しい発見もあって,気持ちよく読める本だった.
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家猫落下之図

2010-11-26 13:52:53 | お絵かき


もとにしたのは 戸田盛和先生のスケッチで,「おもちゃセミナー」日本評論新社 (1973) に掲載されていた.
戸田先生はこの 11 月 6 日になくなられたとのこと.非線形物理の大家で,「戸田格子」でご高名だが,日常の現象にも目を向けておられた.また,大学教科書も丁寧に書いて下さった.

しかし携帯ムーピーなんか夢だった時代,このスケッチのモデルとされた猫ちゃんは 何度も上から落っことされたことと思うと,ちょっと気の毒.絵を描くときに尻尾の向き等,ぼくの美的感覚に合うように,つい 少々いじくってしまった.もしかしたら,物理法則に合わなくなったかも知れない.

CD ケースに内側からアクリル絵具.2 枚 1 組のつもり.
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江戸川乱歩の古書

2010-11-25 19:51:08 | 読書
「化人幻戯・月と手袋・堀越捜査一課長殿」江戸川乱歩全集 16 桃源社 (1961).

初版 というが,単行本で出た版ではなく全集の一冊だからか,250 円と安かった.ちなみに刊行されたときの定価は 260 円.自分は学生だったが,乱歩なんかと馬鹿にして読まなかったらしい,
粗末なざら紙.しおり紐の下部は粉になっていた.装丁・真鍋博も懐かしい.

昭和 30 年前後の作品で,「化人幻戯」以外は短編.昭和 29 年で著者は還暦を迎え,すでに功なり名を遂げていたが,発奮して本格ものを書いたらしい.しかし著者自身によるあとがきを見ると

「化人幻戯」私のすべての長編と同じく,これもまた失敗作であった.
「堀越捜査一課長殿」トリックに新味がなく,失敗の作であった.
「断崖」新味の模索に成功せず...

という調子.こんなことを書いても本が売れたのだからたいしたものだ.

明智小五郎はまったくテレビのイメージ,というのは逆でテレビが忠実なわけだが.当時エログロといわれた愛欲場面も現代ではどうってことはなく,古き良き昭和の探偵小説そのもの.たしかにトリックはつまらない,とは言うものの,読ませます.

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案内はがき

2010-11-23 09:30:23 | お絵かき


J 子が絵筆を振りかざしている写真から,Photoshop で背景を排除した.抽出に失敗した部分多々あり.あら探しをしないで下さい.
展覧会の案内には,展示作品を入れるのが普通だが,作品は,ご覧になってのお楽しみ...ということで.
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結婚式 披露宴 二次会

2010-11-21 10:44:03 | エトセト等
昨年に引き続き,ジャズ研 OB の結婚式にご招待いただいた.
結婚式の牧師様はかって荒川沖教会から放送されていたのでは? と思わせる話し方をされた (ローカルな上にある年代の方にしか解らないことで,申し訳ない).

新郎新婦は大学に入学した時に知り合ってから 8 年目.それぞれ高校と小学校の先生.さぞかし忙しい毎日と思われる.
新郎の大学院時代の研究テーマはトポロジー.披露宴での校長先生のスピーチによれば,新郎は「数学をやっているときがいちばん楽しい (二番目は音楽)」といって,生徒を感動させたとのこと.彼の言う数学はトポロジーのことと思うが,どこかでうまく高校数学と解析接続しているのであろう.

披露宴も二次会も主役はボーカリストである新郎.これは二次会で,ジャズ研の朋友 (左はフルート,右はベース,写っていないがキーボードとドラムスも) をバックに When I fall in Love を,新婦のために唄う新郎 (中央) を裏から撮影したもの.



なんと言っても結婚式は楽しい.サービス精神を発揮されたうえ,泣いたり笑ったり (怒ったり はなかったはず),おふたりにはさぞ長い一日だろう,と ここまで書いて,去年別な結婚式について書いたブログを読み返したら,やはり「長い一日」という文字があった..
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現代音楽のようなジャズ ジミー・ジュフリー・3

2010-11-19 15:39:14 | ジャズ
最近クラリネット奏者 (テナーサックスも吹く,ときどきバリトンも) ジミー・ジュフリー Jimmy Giuffre の名前を聞かない.ジミー・ジュフリー 3 を知ったのは,映画「真夏の夜のジャズ」の Train and River の映像だった.最初のトリオはリーダーの cl, ts, bs の他に,b, g だったが,ここでは b がポブ・ブルックマイヤーの valve tb に替わっている.汽笛が聞こえたりして牧歌的.しかし,このバンドで苦労したので,ジム・ホールは禿げちゃったのだそうだ.

これは,最初のトリオの映像を YouTube で見た印象.CD ケースに内側からアクリル.


その後トリオは,ポール・ブレイ p,スティーヴ・スワロウ b となって,1961 年から Fusion などのアルバムを作った.ポール・ブレイはほとんど無名,スティーヴ・スワロウに至っては 21 才だった.音楽音律やリズムから解放されたフリーへと方向転換,しかし オーネット・コールマンのような泥臭さとは無縁の,白人らしい洗練された音楽だった.そのためか,「ありゃ現代音楽だ」のひと言で片付けられてしまった,と思う.

ドラムレスで,音を聴かせるというより,静寂を聴かせるという姿勢もあったと記憶している.もう一度聞いてみたいと思ったが,買ったのは LP で,しかも売りとばしてしまった.iTune Store にも見あたらない.("1961" という 2 枚組の CD が Fusion, Thesis をリミックスしたもので,ネットで入手出来る.)

リズムの有無でずいぶん印象が変わる.レニー・トリスターノの Intuition をダウンロードして聞いた.これも時代を先取りした集団即興演奏のひとつ.1949 年当時は難解とされたそうだが,今聞くとまったく快適.

ジュフリー 3 も参加している MJQ の Third Stream Music という LP もジャケットのデザインに釣られて購入した覚えがある.クラシックとジャズに続く第3の流れを標榜していたのだが,目玉曲にはクラシックの演奏家とジャズの演奏家が交互に演奏するだけという印象しかない.今聞いたら,耳から鱗かも知れないけれど.
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中村明一「倍音」

2010-11-17 08:37:07 | 新音律
副題 音・ことば・身体の文化誌,春秋社 (2010/10).
やや著者 (尺八奏者) の自己宣伝臭はあるものの,すごく面白い.

倍音とは,音をフーリエ分解して出て来る高調波とか, higher order mode とか称するもの.整数次倍音と非整数次倍音があり,西洋音楽ではもっぱら整数次倍音だけを使う.しかし日本音楽はそうではない.本書はそこから音,さらにはことば・身体の文化誌へと発展する.

縦軸に整数次倍音,横軸に整数次倍音をとって,歌手・芸能人の声を 2 次元ダイアグラムにプロットした図があった.整数次倍音派は黒柳徹子,非整数次倍音派は森進一・八代亜紀・青江三奈,どちらの倍音も良く出るのが美空ひばりである.
科学の啓蒙書なら,ここにデータ,すなわち個々の歌手・芸能人のスペクトルがあるところ.しかし,この出版社には宗教書が多いためか,「書いてあることを信じなさい」となっしまうのが,いつも学会で他人の揚げ足をとっている私には,かなり不満.
実は,私も人気歌手の歌声のスペクトルを取ろうと試みたことがあるが,伴奏が邪魔になってうまくいかなかったのだ.

オーケストラと尺八のスペクトル (ソノグラム) が並んでいて,尺八のスペクトルが複雑で,そのうえ一本の尺八がオーケストラよりも広い音域をカバーしていることを示していた.

平安時代には「しじま遊び」というのがあって,これはどれだけ黙っていられるかを競う遊びだったそうだ.環境音・自然音を楽しむのが目的らしい.中村さんはこういう感性は日本人特有のようにおっしゃるが,西欧にもジョン・ケージとか,静寂を買うジュークボックスなどの例がある.前回のブログの DUO とも無縁ではないかな.

巻末にすごい文献リストだが,専門書なら学術論文が並ぶところだが,ここには手に入れやすい一般書が多い..
著者は横浜国立大学工学部応用科学科卒.専攻は量子化学であったとのこと.
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大学祭ジャズ喫茶 現代音楽的デュオ

2010-11-15 08:40:45 | 新音律
相変わらずの話題だが,大学祭ジャズ喫茶に関連して ジャズ研内部で最大の議論を巻き起こしたのは,ギター・ベースのNNデュオだった,らしい.
タイトルの「現代音楽的」という形容詞はぼくの感触で,たぶん演奏者の意図とは違うだろう.

ここでいうジャズ喫茶は,大学祭 (学園祭) で,ジャズのサークルが開催する模擬ライブハウス.教室の椅子・机を並べ替え,窓にはガムテープで暗幕をはってムードを演出する例が多い.当 H 大学でもそんなものだったが,今年は様変わりした.大学敷地内で商業施設が営業している「カフェ」に場所を移したのだ.そのために,問題が起きた らしい.この「ジャズ喫茶」には 14 バンドが出演.このデュオはそのひとつ.

当の演奏者が mixi にアップした文章によれば,この演奏にはいくつかルールかあり.
- 最初は2分間で2回,次は4回...と音の密度を増やしていき,最終的に40回/2分とする.
- ルートと長三度を組み合わせた音をだけを使う.
- 次のルートに移るときは、上下半音、上下短三度、上下長三度から選択する.
- リズムを感じないようなタイミングで音を出す.
持ち時間 30 分で 1 曲.タイトルは 知りません.



客側 すなわち こちら側からの見聞では...
二人は携帯を睨みながら演奏.
はじめは音のつながりがないし (あってもわからない),何をやっているのか - これからどうなるのか という緊張があるが,(自分も含め たいていの人は) すぐに退屈.ぽつぽつと世間話をしたり,雑念にふけったり,居眠りしたり,最後に音が増えて音楽らしくはなったころは,いやに似たような音ばかりだな とは思ったが,ほとんど聞き流し状態.
「あのひとたち何してるの?」というお子様の発言が最も素直な反応だろう.
ただし音楽自体は 比較的小音量で,不協和音もなく,聞いて不快になるわけがない.むしろ快いものだった.

もちろん,音楽は感動をもたらすべし とするベートーベン的音楽とは対極.Don't Mean a Thing If It Ain't Got a Swing とも正反対.
無音の時間が圧倒的なので,ジョン・ケージ的という見方も出来るが,抑制された音の出し方から,ぼくはむしろサティの「家具の音楽」を感じた.ただしサティは幕間で演奏し,「あたかも音楽が存在しないかのように振る舞ってほしい」と客に要求したというが,このたびのNNデュオはサティと違って,プログラムにエントリーして,積極的に聞いてもらうことを要求していた.

こういう演奏に腹を立てる人はいる.実はこのシリーズは断続的に H 大ジャズ喫茶で行われていて,数年前の演奏 (今回と違う音楽だったが,幕の向こうの演奏者のひとりは共通だったと思う) では,終わったとたん ジャズ研会長をつとめたこともある U さん (tb のすてきな女性です) が立ち上がって「サイテー!」と叫んだのを 今も鮮明に覚えている.
このたびも,演奏中10人ほど席を立って帰って行き,そのうち 何人かは怒っていたということだ.

冒頭に書いたように,今回は「カフェ」という商業施設で演奏した.ゆえに,お客さんが立腹してお帰りになるような演奏はしてはいけない,という意見から議論がはじまった と,私は理解している.加えれば,この直後が出番だったバンドはお客さんが減ったと怒っていた.さらに,演奏したひとたちは皆,いい雰囲気だから来年もここでやりたいと思っている.

「カフェ」が構内にあるなんて,昔は考えられなかったことだが,いまの学生さんは,大げさに言えば,商業主義と芸術主義の対立に直面しているわけである.
もうひとつの,昔は考えられなかったことは,このローカルな議論がネット上の mixi で延々と展開され,現在も続いていることだ.mixi 会員全員に公開とのことなので,興味のある方はどうぞ.
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三島由紀夫の通俗小説

2010-11-13 11:42:06 | 読書
三島由紀夫「お嬢さん」角川文庫(2010/04).

今では芥川賞と直木賞の境界はかなり曖昧だが,その昔はかなりはっきりしていた.すなわち,純文学と通俗小説の境界がはっきりしていた時代の,純文学側の作家が書いた通俗小説である...ということが,解説に強調されている.

ても,若尾文子主演で映画化されたことには全然触れていない.

重役の娘 (お嬢さん) が重役の部下と結婚する とか,結婚を機に女子大を中退 とか,時代を感じさせる.この結婚相手がプレイボーイで,お嬢さんもそれを知って,というより,無意識にそこに惹かれて結婚してしまうのだが,当然波乱が生じる.

1960 年.雑誌「若い女性」1月号-12月号連載.ストーリーはかなりいい加減.強引に引っ張って,12月号になったので終わらせた,という感じ.
文章,とくにお嬢さんの心理描写に関する部分は,皮肉っぽく,歯切れがよい.

電車のなかで読むには最適でした.

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