Sixteen Tones

音律と音階・ヴァイブ・ジャズ・ガラス絵・ミステリ.....

ミルト・ジャクソンの電気ヴァイブ

2013-05-30 08:33:50 | ジャズ

Part of the Newport Jazz Festival tour in 1970, the MJQ performed in Oslo on October 21.
画面をみてあれあれと思った.ビブラフォンにペダルはあるが共鳴管がない.ビブラートがなく,電子ピアノのような音色で,かなりの違和感.

ビブラフォンは 1920 年代に登場した楽器で,共鳴管上部を電動ファンで開閉してビブラートを音にかける.楽器には音自体を電気増幅する機能はない.電気化については,プロヴァイブ奏者赤松敏弘さんのエレクトリック・ヴィブラフォン小史 1-3 という懇切丁寧なページがある.近年はビブラフォンタイプの midi コントローラが市販されている.

音板の幅が高音・低音で同じ (ユニバー) で,長さも普通のヴァイブより均一に近いようにみえるが,ここでジャクソン氏が弾いている電気ヴァイブがどんなものかは分からない.上記の赤松さんのページの Electra (Deagan製) の写真と似ているが,全く同じではないようだ.

ちなみに普通の (アコースティックな) ビブラフォンから共鳴管を取り去ってしまうと,あわれな音になる.アパートで共鳴管を取って練習すれば苦情が出ないと聞いたことがある.だから,ビブラフォンは打楽器ではなく管楽器と言いたいくらいだ.ただし共鳴管を取ると音の減衰時間は延びる.

このころの MJQ のアルバムは Plastic Dreams で,グループとして 8 ビートなどを模索していた時代.当時としては電気ヴァイブも有りだったのかもしれない.
知っている範囲では現在,電気 (電子?) ヴァイブをよく弾いているのは Bill Ware だ.

初めて MJQ のコンサートに行ったのはこの時代だったが,この画面で見る 4 人はすごく若い.
動画はジャズ・フェスの MJQ 出演部分を全部納めているようだ.電気ヴァイブを否定するつもりはない.しかし後年のPAなしのライブを見ているので,高いチケットでこの音色は,いただけないと思う.


私たちの新著
小方・高田・中川・山本 著
「視て聴くドレミ - フーリエ音楽学への招待」大阪大学出版会(2013/03).

をよろしくお願いします.

2021/2/23 編集.
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ビブラフォンの弾き真似

2013-05-28 08:40:29 | ジャズ
カナダのビブラフォン奏者ピーター・アッブルヤードによる,ブルースを素材にした,レッド・ノーボ.テリー・ギブス,ミルト・ジャクソンそしてライオネル・ハンプトンの弾き真似.ハンク・ジョーンズ (p),スラム・ステュワート(b) がつきあっている.ds はジェリー・フラーとある.

ピーター・アッブルヤードは 1928 年生まれで,自分より先輩のプレイヤーたちを俎上に載せている.1983 年のビデオだが,ゲイリー・バートン,ボビー・ハッチャーソンあたりは当時のアップル氏から見れば駆け出しの若造だったんだろう.寄席では,声帯模写と言えば大河内伝次郎あたりが対象だったのを思い出す.

大ホールの観客を相手にこういうエンタメが成り立つのが,ジャズ文化の厚さというものだ.

ハンプトンの真似で,両手1本指でピアノを弾く場面があるが,テレビでミルト・ジャクソンが Bluesology で同じことをやるのを見たことがある.そのときもハンク・ジョーンズとの連弾だった.

アップル氏は最近 sophisticated Ladies という,10 人の女性ボーカリスト (diva) と代わる代わる共演する,真面目な新譜を出した.このサイトでは,すごく気前よく試聴させてくれる.
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

宮沢賢治 星めぐりの歌

2013-05-26 08:12:23 | 新音律

朝の連ドラ「あまちゃん」は,ヒロインがかわいい.昔かわいかった,そのお母さん役も目当てで,けっこう視ている.ただ,西日本の住人には,ときどきズーズー弁が難しすぎる.字幕の常用を望みたい.

そこで,おじいさんのテーマ的にこの曲が出てきた.

この曲が知れ渡ったのには,林光さんのおかげでもあるようだ.これは林さんご自身の指揮.

宮沢賢治はすごいクラシックファンで,大量にレコードを購入したのでイギリス・ポリドール社から表彰されたそうだ.金持ちだったんだなー,彼の「清貧」というイメージからはだいぶ外れてしまう.
でも「セロ弾きのゴーシュ」によって,音楽とはこういうものか ! と思った向きも多いはず.

この歌は素朴なペンタ音階であるにもかかわらず (ペンタ音階だかこそ,かもしれないが),不思議な雰囲気.「あかいめだまのさそり...」という歌詞がメロディと一体になっている.

はなしは変わるが,「冬の星座」の歌詞も好きだ.もとはアメリカの流行歌だが,スイート・モリー・ダーリンという甘たるい原詩とは全く別な,壮大でロマンチックな文語体である.「奇すしき光よ」を C-E7-Am に当てはめた快挙! 明治時代の作詞かと思ったら,じつは戦後,文部省唱歌とされたのが初出らしい.作詞の堀内敬三は,慶應の応援歌「若き血」を作った方で,戦後の一時期 NHK のクラシック番組の解説もしておられた.


私たちの新著
小方・高田・中川・山本 著
「視て聴くドレミ - フーリエ音楽学への招待」大阪大学出版会(2013/03).

をよろしくお願いします.
コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

松林図屏風

2013-05-24 08:20:03 | 読書

萩 耿介「松林図屏風 」日経ビジネス人文庫 (2012/07).

「BOOK」データベースより*****絢爛豪華な狩野派全盛の世に、独自の静かなる絵で対抗した巨匠・長谷川等伯の到達点。筆を取るのは己を浄化し、救うため―絵師の真とは。第2回日経小説大賞受賞。*****

書店で美術書の場所においてあった.文庫の時代小説の場所に埋没していたら認識しなかったことだろう.

主人公は長谷川等伯と言いたいが,その次男・長谷川久蔵にも同じくらいの比重がかかっている ... というよりも,久蔵の「桜図」がメインで「松林図」はエピローグという感じ.久蔵の兄・長谷川宗宅は最初に登場するが,途中作者に忘れられたたようで,どうしたのかな...と思っていたら,最後は彼の書状で終わる.考えられた構成だ.

長谷川等伯については,分からないことが多いらしい.言い換えれば,なにを書いてもいいということなんだろう.キリシタンの油絵とか,久蔵の人妻との恋とか,本能寺の変,千利休の死,朝鮮出兵などをバックに小説世界が広がる.等伯は最後は幕府に呼ばれ京都から江戸に下るのだが,旅行中にハンストし,自死したように描かれている.最後の下僕に対する「もういいだろう」という言葉に胸を打たれた.

さきの直木賞も安部 龍太郎「等伯」だった.小説家には格好の題材かも.
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

遺伝子音楽

2013-05-22 08:05:27 | 新音律
かってカエルバンドでご一緒したベーシストさんからメールをいただいた.

" 先生方がお好きそう(?)なので、参考までに。↓
第22回広大サイエンスカフェ 科学と芸術のカエル三昧-新種発見、そして遺伝子音楽- "
http://home.hiroshima-u.ac.jp/sciyugo/scicafe/

遺伝子音楽に対するイメージは,Wikipedia に植え付けられたもので,「幾つかの遺伝子の塩基配列を音符に変換することで記譜・演奏した音楽」である.動画の Gene Music はこの定義に準拠している.


円周率パイの 3.14159...の 3,1,4,1,5,9,... にいちいち音符を割り振るようなもの,という印象しか持っていなかった.そんな音楽ならコンピュータでやるにかぎる,というのが原題の常識と思うが,このサイエンス・カフェでは徳永 崇先生(広島大学大学院教育学研究科 准教授)と学生さんたちが,わざわざアコースティックに演奏されるとのこと.

入場無料.壱阡着 60 名様にはワンドリンクサービスとのことです.


私たちの新著
小方・高田・中川・山本 著
「視て聴くドレミ - フーリエ音楽学への招待」大阪大学出版会(2013/03).

をよろしくお願いします.

立ち読みのノリで視聴できるムービーを YouTube
http://www.youtube.com/watch?v=I43aZi6otBY
にアップしました.
コメント (6)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

たった 4 音のテーマ

2013-05-20 07:50:21 | ジャズ


歳のせいで,古い曲は忘れ,新しい曲は覚えられない.
でも,この曲は,ドレミファ (移動ドです) の 4 音しか使っていないので,忘れようがない.
もっとも,割り付けられたコードはそう単純ではないが...

もっと音数が少ないのは,C ジャムブルースだ.

失礼ながら演奏者ふたりは怪物めいているが,音楽は上等です.


私たちの新著
小方・高田・中川・山本 著
「視て聴くドレミ - フーリエ音楽学への招待」大阪大学出版会(2013/03).

をよろしくお願いします.

立ち読みのノリで視聴できるムービーを YouTube
http://www.youtube.com/watch?v=I43aZi6otBY
にアップしました.
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

東京大学殺人事件

2013-05-18 08:27:54 | 読書
佐藤亜有子「東京大学殺人事件 ---愛の秘密結社」 河出文庫 (2013/05).

よく見たらカバーの東京大学... のフォントがちょっと変わっていた.これについては,カバーデザインは高柳雅人・カバーフォーマットは佐々木暁と,ふたりの名前.

キワモノ的タイトルに惹かれ購入.冒頭に登場人物リストとともに,東大を中心に上野駅・根津神社・お茶の水を網羅した地図.
始末に負えない小説だが,最後まで読ませる.でも土地鑑がなかったら途中で放り出したかもしれない.

「殺人事件」とあるが,ミステリではないと言いたい.
でも,ミステリの体裁は持っていて,ワトソン役は腹を空かせているか,何か食っているか,尾行しているかである.いっぽう探偵は呑んでいるか,尾行しているか,何もしていないかである.ビデオテープが小道具として登場するが,思わせぶりなだけ.最後まで読んでも犯人は分からないことになっている.

文芸賞受賞 - 芥川賞候補というだけあって,推理作家に比べると格段に文章がよい.

タイトルにある「愛の秘密結社」とは東大エリート中年7人が日替わりで同一の美少女を対象とする組織である.かなり非道いストーリー だが,作者はけっこう楽しんで書いているようだ.
神山修一氏による解説によれば,この小説には父親から性的虐待を受けたという,作者の実体験が投影されているらしい.2008 年の「花々の墓標」はそのことをテーマにしているとのこと.ちなみに,この「東京大学...」は 1999 年の作品,

作者 (東大仏文科卒) は今年 1 月自邸にて死去していたことが 3 ヶ月後に明らかになった.
帯には「追悼」とあった.
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

フラクタルな音楽

2013-05-16 08:19:31 | 新音律



フラクタルって何? と Wikipedia で見たら「数学的に厳密に定義するのは非常に難しい」とのご宣託.「自己相似的な図形」という程度の説明で納得することにしよう.フラクタルが話題になった当時は,KEK で加速器の運転当番のときに,制御室のコンピュータ上で Mathematica でフラクタルを作って遊んだのを思い出した … 加速器のご機嫌さえ良ければ,何をしても良かったのだ.

このころ,これを音楽に反映させるアイデアも始まった.
「ベートーベン、ビートルズ、そしてバッハ さ」というのが,フラクタルの父ブノワ・マンデルブロの,フラクタル音楽は何かに対する答だそうだ.

フラクタル音楽のサイトは
http://www.tursiops.cc/fm/
http://sound.jp/yo_kubota/
などがあり,fractal music generator と称するソフトも探せば出てくる.

しかし,フラクタルは言うなれば次元のマジックであり,2 次元ないし 3 次元空間の「図形」としては存在しうるが,1 次元の「時間」の上に立つ音楽では難しいな,というのがボク的感想.解があるとすれば,ヒトの記憶あるいは錯覚を利用することであり,現在のフラクタル音楽はこの線上のこじつけである.

昔,相対論で出てきたミンコフスキ空間では,時間と空間を統一して 4 次元として扱った,これを応用すれば面白いことができそうだが,きっとどこかの先達がお試し済みであろう.

なお,この動画のバックミュージックはフラクタル音楽ではない.
面白く聴いたのは,マンデルブロコード進行による「蛍の光」
http://download.sound.jp/kubota/s/alacarte/hotal.mp3
です.

私たちの新著
小方・高田・中川・山本 著
「視て聴くドレミ - フーリエ音楽学への招待」大阪大学出版会(2013/03).

をよろしくお願いします.
立ち読みのノリで視聴できるムービーを YouTube
http://www.youtube.com/watch?v=I43aZi6otBY
にアップしました.
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

教室に雨は降らない

2013-05-14 08:40:07 | 読書
伊岡 瞬,角川文庫 (2012/09).

昨秋の刊行にも関わらず,なぜか書店に 20 冊も面陳列してあった.新幹線のお供にと購入.

内容(「BOOK」データベースより)*****
森島巧は公立小学校で音楽の臨時講師として働く23歳だ。音楽家の親の影響で音大を卒業するも、流されるように教員の道に進んでしまう。腰掛け気分で働いていた森島だが、学校で起こる予想外のトラブルに巻き込まれていく。モンスターペアレント、いじめ、無気力教師、学級崩壊…さまざまな問題にぶつかり、手探りで解決していく中で、彼が見つけた真実とは? 曇りがちな私たちの心を晴れやかにする珠玉の青春ミステリー。*****

ミステリ味は薄く,いわば熱血教師ものだが,音楽担当というところが変わっている.きっと作者が音楽好きなんだろう.でも,クラシックは苦手らしい.

感じたのは,教室は教師と生徒たちだけの,孤立した世界だということ.外から見れば密室内のたったひとりの大人だから,教師は好きなことができる.昨今の教師への締め付けは,だからこそ なのかもしれない.

子どもたちは生き生きと描かれているが,常勤の音楽担当の古参女教師や教頭などの悪玉ぶりは,ステレオタイプ.主人公の目からそう見えるのなら仕方がないのかな.彼が良いところを見せるたびに,悪玉たちとの軋轢が増すという繰り返しだが,これが行き詰まる前に卒業で終わるのが,連作短編の良いところ.

一時間もののテレビドラマを続けざまに観たような読後感.それとも,すでに放映されたんだろうか.
新幹線のお供には必要十分であった.
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

人生を変える「数学」そして「音楽」

2013-05-12 08:58:18 | ジャズ


中島 さち子 「人生を変える「数学」そして「音楽」 教科書には載っていない絶妙な関係」講談社(2012/07).

「BOOK」データベースは,***** 日本人女性唯一の数学オリンピック金メダリストにしてジャズピアニストが案内する学問の楽しみ方 ***** と,至って簡潔.
タイトルのテンションが高過ぎて,手を出すのをためらったが,書き方は平易.お子さんと合作 ? のイラストも楽しい.

物理や工学の分野の数学は応用数学・実用数学であって,受験数学の最後に現れる微分積分が実用数学の典型.実用数学は純粋数学に比べると一段レベルが下がるものと,多くの (純粋の) 数学者は見なしていると思っていたが,中島さんによれば,現在はそうではないとのこと.
16 とんにとっては,実用数学は飯の種だったので,あまり楽しめないが,ここで紹介されている純粋数学は楽しめる.

この本は前半 (+) は純粋数学,後半 (-) は音楽 (すこし実用数学) と分離してしまっているのが惜しい.フラクタルと音楽の関係等もう少し突っ込むこともできそう.

著者の心の中では音楽と純粋数学が合体していると思うが,それが表に出ていないのがはがゆいところ.
ジャズをやっていてイメージするのは,地図のようなもので,これに従えばどっちにでも行ける.うまくいけば,自由な浮遊感覚を楽しむことができる.この「地図」をうまく説明していただけないだろうか.
ジャズ演奏では,共演者がいるときは,皆が共通の感覚を持ってくれることがエッセンシャルだ.コードとかモードとかはこのための手段なんだろうが,そっちの方向に行くと教科書的になり,拘束条件ばかりが強調されてしまう.
いっぽうフリージャズは,いかにもフリーをやっていますという感じになるのがイマイチ.

... この本とはかけ離れたことを書いてしまった.

著者・中島さんの演奏 ; Sachiko Nakajima Trio Rejoice "Ningyo Waltz" (The Waltz of Dolls) @ Inage Candy




16 トンの旧著,講談社ブルーバックス「音律と音階の科学」はおかげさまで 5/7 で 17 刷となりました.

新著
小方・高田・中川・山本 著
「視て聴くドレミ - フーリエ音楽学への招待」大阪大学出版会(2013/03).

もよろしくお願いします.
立ち読みのノリで視聴できるムービーを YouTube
http://www.youtube.com/watch?v=I43aZi6otBY
にアップしました.
コメント (4)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

reading

/Users/ogataatsushi/Desktop/d291abed711d558e554bf7af66ee57d7.jpg