Sixteen Tones

音律と音階・ヴァイブ・ジャズ・ガラス絵・ミステリ.....

井上真偽「聖女の毒杯 その可能性はすでに考えた」

2016-12-31 10:32:15 | 読書
講談社(2016/7).

真偽というペンネームがすごい.
今年のミステリ界の話題作,すなわち
探偵小説研究会「2017本格ミステリ・ベスト10」 原書房 (2016/12) 第1位
「このミステリーがすごい! 2017年版」宝島社 (2016/12) 第11位,著者は「このミステリーがすごい 編集部」: 「このミス」の対象となるのはミステリー風味エンターテイメント小説一般.一方「本ミス」はそのタイトル通り「本格ミステリ小説」に特化したランキングらしい.

田舎の名家の結婚式での盃の回し飲みで,男性だけが死ぬ,ついでに ? 犬も死ぬ.推理を樹構造に場合分けし,一つ一つ潰していくのだが,この手順はプログラミングを思わせる.

前半の推理合戦の主役は小学生だが,この段階ではデータは,ほのめかされてはいるが,全部開示されているとは言えない.
後半の推理合戦はキャストが変わり,ここで真打ち登場よろしく青髪の探偵が登場する.この探偵のシリーズは何冊目かで,「その可能性はすでに考えた」は探偵の決め台詞らしい.しかしシリーズ初読がこの「聖女の...」だと,出番が少なく探偵の印象が薄い.中国マフィアの女ボスのクルーズ船上という舞台設定がとぼけている.
探偵の悲願は,奇跡がこの世に存在することを証明することだと言うが,その「奇跡」が田舎の事件に矮小化されてしまうところもおかしい.

ミステリはおふざけとするらしい,作者の態度に共感するが....
年寄りが書店で買うにはカバーイラストが恥ずかしいので,Kindle 版にした.
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デビー・レイノルズ

2016-12-30 09:27:05 | エトセト等


2016年12月28日,脳梗塞により84歳で没.息子は,娘のキャリー (スターウォーズの姫) が前日27日に急死したストレスが原因とコメントしているそうだ.

最近まで映画テレビで活躍していたという.
1952 年のジーン・ケリーのミュージカル「雨に唄えば」で有名だが,背が低く可愛いので,ぼくの高校時代の日本では,今でいうアイドルのような存在だった.最初の夫はやはり流行歌手のエディ・フィッシャーで,彼はデビーがいるのに,エリザベス・テイラーに誘惑されて捨てられた.キャリーはフィッシャー姓だな.

この動画の「タミー」は 1957 年の全米5週連続1位の大ヒットだったという.高校時代はポピュラーソングで英語を学習したクチだから,今でも歌詞を覚えている.この時代の歌詞らしく above - love - dove などと律儀に韻を踏んでいる.このページに歌詞と解説があった.「タミーとひとりもの」の主題歌というが,この映画は日本では公開されなかったと思う.
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大阪大学出版会のポピュラーサイエンス

2016-12-29 11:38:08 | 読書
「大学出版部協会」には北大から九大まで,国・公・私立大の 30 ほどのいわゆる「出版会」が名を連ねている.半世紀以上昔には大学出版会の教科書を買わされた記憶がある.このように大学出版会の主力は教科書と学術書だが,啓蒙書も出版している.

一般に啓蒙書の著者は,どんなテーマもこなすポピュラーサイエンス専門ライターの場合と,テーマに関する深く狭い専門家の場合がある.大学出版会の本では後者が当てはまる.目次を見ると,前者の場合は教科書的だが後者では個性的.記述には高校以下の理系教育に対する不満が散見されることが多いが,逆にこの不満が執筆の原動力かもしれない.

ここに紹介するのは大阪大学出版会の4冊で,「マンガ 超ひも理論をパパに習ってみた ―天才物理学者・浪速阪教授の70分講義」についてはすでにこのブログで紹介した

「コミック 証明の探究 高校編!」(2014/12) も似たようなもの,というのは逆で,こちらが「超ひも理論」に先駆けて刊行されている.

Amazon の内容紹介から抜粋すると,*****桜灘高校2年の葉子は、成績優秀な慶太が気になるが自分の気持ちにとまどう。あみだくじはどうして一人の相手にしかたどりつかないの? 落書きを詰め込み授業の数学教師トゲバタに注意され、慶太は葉子のノートの相合傘を見てしまう。美少女・沙織は、慶太に急接近。葉子と慶太を離そうとする。葉子はあみだくじを証明しようとするが…?!*****

おもしろそう! しかし白状すると,4 冊のうちこの本だけ読んでいない.
日比孝之「証明の探究 (共通教育シリーズ) 」大阪大学出版会(2011/4) が下敷きになっているそうだ.「超ヒモ...」の方は,マンガではなく字が多い同じタイトルの本が,こちらは講談社から 2015/2 に出ている.

土岐博,兼松泰男「理系の言葉 -微小量の魅力-」(2015/1) は大阪大学超域イノベーション博士課程プログラムの書籍化.バネの運動の微分方程式をタネに文系の学生に理系の言語としての数学を解説をする.このコースのエッセンスはウェブで見ることができた.しかし今日探したらみつからなかった.
数式を拾って図を見れば,たいていの物理の論文は (英語でも) 片がつくことを文系のひとに理解してもらいたい...と16トンも思っていた.「理系の言葉」とはよく言って下さった.

4冊目「視て聴くドレミ: フーリエ音楽学への招待」(2013/2) は私たちの本.

こうした本は手にとって見なければ買う気にならないもの.しかし広島あたりの書店にはない.丸善や紀伊国屋でも怪しい.
そのせいかどうか知らないが,「視て聴くドレミ...」は同系統の講談社ブルーバックス「音律と音階の科学」の 1% くらいしか売れていない.素人目には,この出版会は企業としては企画力が販売力にはるかに先行しているように見える.
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4分33秒と絶対零度

2016-12-28 09:27:49 | 新音律


久野 和宏, 佐野 泰之, 野呂 雄一「音と波―その素顔と振る舞い」技報堂出版 (2013/09) は,味のある本.ここに,波動関数=0 は一般に波動方程式の無意味な解とされるが,ありとあらゆる波動を足し合わせれば結局ゼロになるであるという,禅のテキストみたいな記述があった.

続いてジョン・ケージの「4分33秒」が紹介されていた.
「4分33秒=273秒」だから,この作品は「絶対零度(-273℃)=無」すなわち,すべてが凍りついた静寂の世界を黙示している,という Note があった.
この説はわりに流布している.しかし絶対零度との対応を作曲者が意図していたかどうかは疑わしい.そもそも「秒」と「度」がなぜ対応するのかがわからない.

「音と波...」ではこの曲をピアノ曲と紹介していたが,ケージはとくに楽器を指定していない.ジャズバンドだっていいわけだが,Youtube にオケ演奏の動画があった.


けつおけ!こと ケツバット・キネン・オーケストラ 指揮:市原 雄亮,2013年1月の演奏.
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12 年前の格闘技ミステリ

2016-12-27 09:45:11 | 読書
伯方雪日「誰もわたしを倒せない」東京創元社(2004/5).2006 年に創元推理文庫入り.

図書館ではきれいな本の中からだけ選んで借りることにしている.これも新刊のようにきれいだったのだが,持ち帰って奥付を見たら 12 年前の刊行だった (誰も読んでいないらしい) と言うわけ.それでも,当方の知識は,力道山-猪木-馬場あたりでとだえているので,この本から新知識を得た気になった.
著者名は はかたゆきひ と読む.

出版社による内容紹介*****後楽園のゴミ捨て場に刃物で胸を一突きされて捨てられていた死体は、襟足から後頭部にかけての髪が、乱雑に、地肌が見えるほど切られていた。事件を担当するのは富坂署の三瓶と城島のコンビ。格闘技ファンの城島の指摘で、被害者がカタナというマスクマンではないか、という可能性が浮かび上がる。プロレスも格闘技も両方こなすという新しいスターだった。そして、さらに殺人が……。格闘技を真っ向から取り上げた初の本格ミステリ。*****

4話連作.ミステリとしては第3話の叙述トリックを除けば凡庸な出来.でもこれを読んで格闘技は魑魅魍魎の世界,事実は小説よりミステリアスかもしれない,と思った.

笹川吉晴という人の解説が小説以上におもしろかった.
「この世の中には二種類の人間がいる.全てを<プロレス>によって考える人間と,そうでない人間であるる.」で始まるのだが,確かに会社のできごとも,政治も,プロレス流に解釈できそう.ここではプロレスの歴史をミステリの歴史にこじつけて,力道山=江戸川乱歩,猪木・馬場=甲賀・木々論争... などの怪論を展開している.

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恒例大学ジャズ研定期演奏会

2016-12-26 16:05:53 | ジャズ



コンボ4バンドとビッグバンド.1600-2000 は正直長すぎ.コンボ中の2バンドがベーシストの名を冠していた.



と言うわけで,こちらはコンボのベースな方々.登場順.かってはコンボにウッドベースゼロという時代もあったが....

そういえば,このドラマーさんは3バンドに出演.最後はド派手なソロで圧倒した.
マルくん以来の快挙!



最後は例によってコスプレ大会.バンマスのカツラが落ちるハプニングがあった.
ビッグバンドの,こちらもベースな方々.青い衣装は会員の手作りだそうです.



My 仮装大賞は写真下左のドラマーさん.顔がわからない.on drums のお姿も撮影位置からはベースの陰で,残念ながら見えなかった.



会場のピアノはベヒシュタイン Bechstein.ヤマハやスタインウェイは大量生産されているが,このメーカーのものは手作りと聞いている.Facebook に太田先生ご撮影の写真がアップされています.
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たすけて,おとうさん

2016-12-25 10:12:57 | 読書
大岡玲,平凡社 (2015/7).
平凡社の雑誌「こころ」に連載された古典を下敷きとした 12 の短編.ときどき原典のテキストが挿入される.
出版社の CM では*****古今東西の名作を現代におきかえて“翻訳”した実験的な12の創作。柔らかい語り口ながら強烈な毒をふんだんに含む、痛烈かつ新鮮な、世の中への警鐘。待望、著者13年ぶりの小説!*****

目次は

たすけて、おとうさん—カルロ・コッローディ『ピノッキオの冒険』
ちんちんかゆかゆ—太宰治『トカトントン』
蒔く人—サン=テグジュペリ『星の王子さま』
悪魔はだれだ?—トルストイ『イワンのばか』
淫らと筋トレ—モーム『月と六ペンス』
もちづきのかけたることも—紫式部『源氏物語』
負けるようには創られていない—ヘミングウェイ『老人と海』
うそつきは何の始まり?—トーマス・マン『詐欺師フェーリクス・クルルの告白』
硬くてきれいで無慈悲で—カフカ『変身』
男の子じゃなくても—ガルシア=マルケス『エレンディラ』
食べる?食べられる?—魯迅『狂人日記』
ブドリとネネム—宮澤賢治『グスコ−ブドリの伝記』『ペンネンネンネンネン・ネネムの伝記』

文章は童話風.主人公はマツキ君,コウタロウ君,ジロウ君などと呼ばれるが,子供ではない.連載時のタイトルは「男の子の風景」だったが,原典を『源氏物語』『エレンディラ』とする2編では主人公は女の子.二世政治家を主人公とする「ちんちんかゆかゆ」あたりは原典との対比が面白いが,後半は原典によりそう材料が多い.
要するに,連載開始時の方針から次第に逸脱したらしい.後半では現実の世界からも離れがちになる,カフカ『変身』に倣って人物が昆虫化したり,魯迅『狂人日記』に倣って人肉を食べたり,と,だんだん怖くなる

サン=テグジュペリと宮澤賢治はオリジナルも似たところがあるが,ここではどちらも 3.11 を思わせる設定で,後半ファンタジー寄りになるところも共通している.

原典を読んだのは半分くらい.ぼく的ベストは「うそつきは何の始まり ?」かな.

図書館で借用.
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iPhone で音楽を録音

2016-12-24 10:07:00 | 科学
先日のライブで演奏を録音したいと思い立ったが,機材なんかないので,iPhone ボイスメモを使った.録音性能は,サンプリング周波数や変換精度ではなく,マイクの性能で決まってしまうと思う.でもマイク性能が iPhone のマニュアルに書いてあるわけがない.
自分で測定できればいいのだが,まずヒト様の測定を探したらこれが出てきた.現在出回っているのは iPhone 7 だが,この測定は何代か前のモデル (iPhone 3GS が 2010/6) が対象である.しかしモデルチェンジの際に「マイクが良くなりました」という宣伝は耳にしないので,今でもこんなものなんだろう.
オーディオマニアが「iPhone はおもちゃ」というのももっともだ.3G から 3GS への移行時に低域側の性能は後退さえしている !

かく録音したファイルを iCloud 経由でパソコンに送り,QuickTime Player で曲単位に分割した.Youtube によくある音質だった.録音しないよりはマシである.

ボイスメモのマイクは裏側にあることもネットで知った.裏返しに置くべしと言われても,遅すぎた.

ウェブを探したが,外付けマイクの定量的な性能比較は少ない.このページに 2016/7 月現在の表があった.ここの,S/N 比ってなんだろう? N はマイクが勝手に出すノイズだろうか.24bit/9mkHz とあるマイクは ADC とバッファ・メモリを内蔵しているんだろうか?
値段が出ているのがありがたい.
しかしせっかく買っても,持って出るのを忘れるのがオチだろう.
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呉の蕎麦 彩華

2016-12-23 09:35:30 | エトセト等
Facebook に,そばと地酒 彩華 Saikaとあるように,夜の営業,いまなら忘年会・新年会が主体らしい.地元ミュージシャンのライブも頻繁にあるようだ.昼は空いていた.
駅から近い.

うなぎの寝床のような店内で,手前のテープルふたつはもと足踏みミシン.足を載せる板を動かすとどこかが回る.天板は手斧加工?

メニューの「熱いつけ汁に冷たい蕎麦をつけて」というタイトルの下にある「鴨つくねせいろ」1250 円を注文.蔵王 (山形ではなく宮城産 ?) 地鴨のつくね美味.蕎麦は白く細く上品な味.ただしつけ汁の量とのバランスが悪く,はっきり言えば蕎麦の量が少ない.余ったしょっぱいつけ汁に盛大に蕎麦湯を入れて飲んだうえに,意地汚く,蕎麦ぜんざい 500 円まで食して抱腹.
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ミュシャ展 @ 呉美術館

2016-12-22 09:59:12 | お絵かき
会場でカタログと思って買った画集は,この展覧会のために作ったものではないらしく,尾形寿行編集とあった.図版には OGATA コレクション,OZAWA コレクション,KATO コレクションなどと付記されている.この展覧会そのものも,これらのコレクションを中心としたものらしい.

どれも精緻な作品で,その数量にも圧倒される.「装飾資料集」「装飾人物小」というのもあって,デザインの総合事典と言われたのだそうだ.コンピュータの助けが無かった時代に,すごいエネルギーだ.
ポスターなどは印刷で見るのと同じだろうと思っていたが,大きさや紙質や色合いはやはり実物ならでは.縦2メートル超のリトグラフ「ジスモンダ」など,継ぎ目もわからないし,どうやって作ったのだろう.
 
 アール・ヌーヴォーを代表するグラフィックデザイナーというイメージだが,晩年はチェコ・スロバキア共和国という新国家のために紙幣や切手・紙幣・国章などのデザインを無償で行った.ナチスに拷問されて体調を崩し亡くなった.
「スラヴ叙事詩」は 20 枚の油彩画シリーズで,それぞれが縦横数メートル.しかし会場に展示されたのは縮小コピーだったので,紙芝居みたい.実物は来年国立新美術館に来る.

左は「リンゴを持つ少女」油彩,カンヴァス.74.0 x 78.0 cm.
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