不埒な天国 ~Il paradiso irragionevole

道理だけでは進めない世界で、じたばたした生き様を晒すのも一興

Tobiolo e gli Arcangeli

2011-09-20 23:55:00 | アート・文化

ミカエル(Michele)、ガブリエル(Gabriele)とともに
キリスト教の三大天使と言われるラファエル(Raffaele)は
治癒の天使とも言われます。
因みに9月29日は三大天使の祝日に当たります。

旧約聖書外典「トビト書(Libro di Tobia)」に書かれる逸話が
特によく知られています。
失明した預言者トビト(Tobi)を治癒するために
旅に出るトビトの息子(Tobia)に付き添います。
若者に姿を変えたラファエルは
その素性を明かすことなく
旅の途中での様々な障害を解決しトビアを助けます。

チグリス川で行水中に巨大な魚に襲われたトビアに
その魚を捕らえるように指示し
やがてその魚から取り出した胆嚢、心臓、肝臓を使って
二人の人物を治癒します。

一人目はトビトの兄弟ラグエル(Raguel)の娘サーラ(Sara) で、
彼女は悪魔に取り憑かれたせいで
彼らに出会うまでに7回の結婚をしているものの
いずれも初夜に夫を殺害されていたため
もう誰も彼女を娶るものがいなくなっていました。
ラグエルの元に着くと、
ラファエルはトビアにサーラを嫁に迎えるように命じ
結婚式には、先に捕らえた巨大魚から取り出した肝臓を焼き
その強烈な匂いでサーラの体から逃げ出した悪魔を捕らえ
サーラを悪魔から解放。

二人目はトビアの父であるトビト。
ラファエルはめでたく結ばれたトビアとサーラ二人を
トビトの待つ家まで連れて帰ります。
トビアはラファエルの教えに従い、
巨大魚から取り出した胆嚢と肝臓の調合薬で
父であるトビトの失明を完治させることができたのです。

Francesco Botticini(フランチェスコ・ボッティチーニ)の
「Tobiolo e gli Arcangeli(トビアと三大天使)」は
1919年からウフィツィ美術館所蔵の作品。
1471-1472年に制作されたもので、
元々はChiesa di Santo Spirito(サント・スピリト教会)脇の
Compagnia dell'Arcangeli(大天使信者会)の
主祭壇画として描かれたもの。
ボッティチーニの師匠であるNeri di Bicci(ネリ・ディ・ビッチ)が
同テーマで描いた作品が
1471年の火事で焼失したために
差し替え版として制作されたと言われています。
ボッティチーニ自身も信者会の会員だったと伝えられています。

師匠はネリ・ディ・ビッチですが、
ボッティチェリ、フィリッピーノ・リッピ、ヴェロッキオ、
ポッライオーロ、アンドレア・デル・カスターニョなどの
影響を強く受け、作風にも大きく反映されています。

この作品もボッティチェリやフィリッピーノ・リッピの画風を
よく真似ています。
(でも到底及ばないところが悲しい・・・。)

Francescobotticini
作品中央にトビアの手をひく大天使ラファエルが描かれ
その左に鎧をつけ、抜き身の刀を手にした大天使ミカエル、
右には受胎告知および聖母マリアの象徴である
白い百合の花を手にした大天使ガブリエル。
ラファエルの足下には
旅の間彼らとともに歩いたと伝えられる
小さな犬の姿も描かれています。

ミカエルの表情、ラファエルやガブリエルの素足、
トビアの髪型、ラファエルの両足に沿う衣服の動きなど
あちこちにボッティチェリの影響が見受けられ、
それを確認しながら観るのも
なかなか面白い鑑賞の仕方かもしれません。


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4 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
トビアって旧約聖書にまつわる名前だったんですね... (まりこ)
2011-09-26 03:05:26
トビアって旧約聖書にまつわる名前だったんですね。最近知り合いになった男の子でトビア君がいて(Albero4さんも映画会で一緒に会ったあの子です)今まで聞いたことない名前だなと思っていたのです。私の周りではあの子しかいないけどけっこうよくある名前なのですか?
>まりこちゃん (albero4)
2011-09-27 19:03:45
>まりこちゃん
そうね、イタリアでは珍しい名前だよね。
私もあまり聞いたことないよ。
「親孝行な息子」ってことで、
もっと好まれてもよさそうな名前なのにね。
参考文献を教えてください (Beatrice)
2018-08-01 19:29:05
何年も前の記事に対して、突然のコメントをお許しください。
記事に出てくるFrancesco BotticiniのI Tre Arcangeliについてですが、
この絵が描かれた経緯などの情報は何かの論文を参考にしたものでしょうか。
もしそうであれば、何を参考にしたものなのか、分かる範囲で教えてください。
この作品について研究をしているのですが、日本語・イタリア語・英語でもあまり情報が集まらず苦戦しています。
何年も前のことなので覚えてすらいらっしゃらないかもしれませんが、
もし心当たりがあるようでしたら、どんなに小さな記憶でも、教えていただきたいです。
よろしくお願いいたします。
間違えました、、、 (Beatrice)
2018-08-01 19:36:09
先程のコメントですが、作品名途中で打ち忘れてしまっていました、、、
I Tre Arcangeli e Tobiolo のことです!
お返事お待ちしています。

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