不埒な天国 ~Il paradiso irragionevole

道理だけでは進めない世界で、じたばたした生き様を晒すのも一興

Gambe in Spalla di Roberto Barni

2007-07-31 07:14:24 | アート・文化

1939年ピストイアに生まれた現代彫刻家。
現在はフィレンツェ在住のRoberto Barni(ロベルト・バルニ)。
1950年代から絵画制作を始め、
さまざまな素材(鉄、木材、写真、新聞)を使った抽象絵画を発表。

1960年代から現代に至るまでの
イタリア現代アートの代表作家の一人。
人体を造形的な要素で表現するというテーマに基づいて、
非常に個性的な作品を生み出しています。 
彼のこうした人体像は常に「歩く」という形を基本にもち、
微妙なバランスを保って静止しているようで
実は緩やかな、そして時にはダイナミックな動きを表現。

前進の戒告、行く道の長さの兆し。
我々が常に対面するもどかしさ。

赤い服を着た金色の顔が特徴的な男性像。
赤と金色を使うことで
どこか古代の聖職者の力を髣髴とさせる
不思議な厳粛さを漂わせています。
土台を使わず、広場の地面に直接置かれる彼の作品は、
不思議とフィレンツェの日常生活や行き交う人々の中に
溶け込んでいるような気がします。

Roberto_barni_uff
ウフィツィ広場におかれるものはVaso。
ウフィツィ美術館に収蔵される作品を生み出した
偉大なる作家たちへのオマージュ。

Roberto_barni_rep
共和国広場に置かれる作品はSadovasomaso。
偶然そこに転がっているような
ドラム缶に上下さかさまにしがみつく対の男性像。

ピッティ宮殿にはAdagio。
今まさにゆるやかに起き上がろうとする男性像。
内にあるダイナミックさを表す作品。

因みに展覧会のタイトルとなるGambe in spallaの彫刻群は
ボボリ庭園内に展示されています。
 
Gambe in spalla(ガンベ・イン・スパッラ)というタイトルの展覧会は
第一部がフィレンツェの共和国広場、ウフィツィ広場、
ピッティ広場やボボリ庭園の屋外彫刻展示で
2007年6月25日から2007年10月30日まで。
第二部は国立考古学博物館などで展示される彫刻と絵画作品展で
こちらは2007年8月7日から2007年11月30日まで。

共和国広場に転がる「ドラム缶と二人の男」は
毎日お目にかかるのですが
見るたびになぜか「ルパン3世」を思い出して
なぜか、イタリア語バージョンのルパン三世のテーマが
朝から脳みそをぐるぐる回って大変です。
そして夕方には子供たちがこのルパンによじ登って
楽しそうにしている姿がなんとも異空間な感じ。

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Il messaggio sul Ponte Trinita

2007-07-30 01:16:14 | 日記・エッセイ・コラム

暑い日中に散歩していて見つけたこんなメッセージ。

Graffiti_santa_torinita
おめでとう、ジュニア。
しかしここにこんなこと書いちゃ駄目だって。

世界で一番美しいといわれるフィレンツェのトリニタ橋。
ミケランジェロの設計を下に作られているこの橋の
橋桁は突出していて、若者や家族が降りて
一休みしたりする風景はよく見かけるけれど
こんな大々的にいたずら書きしているとは。

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Visita brevissima a Faenza

2007-07-28 23:56:00 | まち歩き

陶器の街として知られるエミリア・ロマーニャのファエンツァで
仕事の話で会わなくてはならない人がいて出かけてきました。

まさにイタリア中がヴァカンスに入りますよ
という7月最終土曜日の午後。
アポイントメントは夕食だったのだけれど、
初めて訪れる街なので、
せめてちょっとだけ自分の足で歩いてみたいと思って
会合の時間よりも2時間前に街について散策できるように出発。

それなのに、途中乗換駅のボローニャで
乗り換え列車が1時間15分遅れ。
何のためにフィレンツェを早く出たのだか意味なし(泣)。
文句いってもここはイタリア、列車が遅れることなんて日常茶飯事。
さすがに私ももう慣れたとはいうものの、
暑い日中だったので1時間を有効に使って
ボローニャの街を歩こうという気にもなれず
駅でボーっと列車時刻表を眺めて過ごしてしまいました。

列車が遅れていることに怒る人もいれば、
返金手続きについて私に質問する人もいるし
待ちくたびれてその辺で眠り始める若者もいたりで結構面白い。

とにかく1時間15分遅れで列車に乗り込んでファエンツァへ。
降り立った駅は灼熱の暑さでくらっとしたけれど、
約束の時間までの約1時間を有効に使うべしということで
早速街中まで歩いていってみることに。

さすがに陶器の街として有名なだけあって
街のあちこちに陶器が溢れていて可愛らしい。

Faenza_02
国立陶器学校の看板はもちろん陶器製。

Faenza_04
街角の通りの名を示すプレートももちろん陶器製。
そしていたずら書きもアートな陶器。

Faenza_06
リバティー風の建築物が多くてフィレンツェとは違った趣。
建物の装飾にも陶器。
Faenza_22
もちろん職人さんの手作りの陶器類を売るショップもたくさん。
そのショップの軒先にはこんな登録プレートがついています。
Faenza_23
街角の薬局の看板も豪華な陶器製。
Faenza_11
そして、街の中心地は二つの並んだ小さな広場。
時計塔のあるポポロ広場。
Faenza_14
カテドラーレのあるリベルタ広場。
当日は結婚式が二つもあってどっちの広場も大賑わい。
カテドラーレはフィレンツェルネッサンスの影響を大いに受けた造り。
Giuliano da Maianoの手によるもの。
残念ながら大理石の正面ファサードは未完成のまま。
内部にも面白い作品がいくつかあるのですが
とにかく時間がなかったのとミサが始まってしまったので見学断念。

また訪れなさいということなのでしょう。
しかし約1時間でぐるりと主要な部分を
歩いてしまえる手ごろな広さの街。
暮らす人ものんびりとしていて、良い感じでした。

帰りの列車は遅れることもなく、無事帰宅。

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Patrimonio Unesco

2007-07-24 07:16:06 | アート・文化

1972年のユネスコ総会で採択された
「世界の文化遺産および自然遺産の保護に関する条約」。
人類が将来的に共有するべき普遍的な価値をもつ遺跡や景観。

世界遺産への登録は長い年月と莫大な費用がかかり
厳しい審査を受ける必要があり、
一朝一夕で実現するものではありません。
2007年現在世界各地で851件の登録があり
(文化遺産600、自然遺産168、複合遺産25)
イタリアは世界でもトップの41件を保有。
このうち40件が文化遺産で自然遺産はエオリア諸島一件のみ。
アメリカやアフリカのように広大な自然を誇る国々とは異なり
3000年の歴史を形に残すのが主流となっています。

世界記録を保持しながらも、
未だ登録を待つ遺産候補がイタリアにはいくつもありますが、
実はここ数年は
遺産の登録を立て続けに引き上げているという現状。
まだまだ知られていない手つかずの自然や貴重な文化遺産は
イタリア国内には確かにたくさんありますが、
この国の抱える問題は
「登録候補遺産の将来的維持」が不十分であるという点。
他にも登録手続きに必要な書類に不備があったり、
十分なプレゼンテーションができなかったり
準備期間および将来的な資金の調達が
ままならなかったりと様々な問題があります。
特化すべき生態系があまり多くないことなどから
自然遺産の登録が非常に難しくなっているのは事実です。

Foresta fossile di Dunarobba
(テルニ近郊・ドゥナロッバの森林化石)
Foresta_fossile_dunarobba
Parco Nazionale del Gran Paradiso
(アオスタのグラン・パラディーゾの国立公園)
Gran_paradiso
Arcipelago della Maddalena
(サルデーニャのマッダレーナ諸島)

などに代表されるいわゆる自然遺産は暫定リストに掲載され
既にユネスコの派遣する国際自然保護連合(IUCN)の
現地調査も完了していますが
いずれも「地域的遺産」であり
「世界的な人類の共有すべき遺産ではない」と
判定されたため登録断念。
毎年各国から候補として出すことができるのは
文化遺産一件、自然遺産一件のみ。
こうして一回ボツになった候補地が
再び体勢を整えて立候補するまでには数年かかります。

そんななかにわかに浮き上がってきた文化遺産候補が一つ。
「地中海式食餌療法」がそれ。
イタリアだけではなく、地中海地域全般で好まれる食事は
科学的な検証もうけており、
人類の健康に貢献しているという点や
長い歴史の中で受け継がれてきた文化的なものである
というのが候補に挙がった理由。
提案したのは実はイタリアではなくスペインですが
食物繊維の豊富な穀物、豆類、フルーツ、野菜と
オリーブオイルを豊富に使う地中海料理は
果たして「人類が共有すべき顕著で普遍的な価値」をもつと
判断されるのか、今後の動きが楽しみです。

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