夜な夜なシネマ

映画と本と音楽と、猫が好き。駄作にも愛を。

『亀は意外と速く泳ぐ』

2006年03月10日 | 映画(か行)
『亀は意外と速く泳ぐ』
監督:三木聡
出演:上野樹里,蒼井優,岩松了,ふせえり,松重豊他

大学のとき、「成績がオール“良”だったら
責任を持って就職先を紹介する」と言った先生がいます。
優・良・可とある成績のうち、
全科目“良”をとるのは不可能に近いこと。
すべて“並”であることは
やろうと思ってもできないことの極みでは。

「脱力系コメディ」と銘打たれた本作は
あまりに“並”な主婦がスパイに転身。
上野樹里みたいな可愛い若奥様であることに
「並とちゃうやろ!」とツッコミつつ。

片倉スズメ、主婦、23歳。
生まれてこのかた、目立つことにはまるで縁がない。
現在、夫は海外単身赴任中。
日課は夫のペットである亀にエサをやること。

親友の扇谷クジャクは生き方が派手。
張り合うつもりもないけれど、クジャクは常に上を行く。
スズメが北風の音のする扇風機を発明して
120万の賞金を獲得したときも、ご馳走しようと思ったら、
クジャクは有馬記念で200万をゲット。

平々凡々な生活から抜け出したいと思っていたスズメは、
偶然「スパイ募集」の貼り紙を目にする。
早速連絡して、指定された住所を訪ねると、
そこには平凡な熟年、クギタニ夫婦が。
これ以上ない平凡さがお眼鏡にかない、
活動資金として500万を受け取ったスズメはスパイに。
目立たず暮らすように指示を受ける。

スパイたるもの、ファミレスやスーパーでは
記憶に残らない注文・買い物をせねばならぬ。
好きな数字も寿司ネタも「そこそこ」だと言われてきたスズメには
存在感を示さないのはお茶の子さいさいのはずなのに、
やろうと思うとこれがなかなかできない。
し、知らん間に目立っとる!
平凡であることは変わらないのに、
スパイを自覚して以来、生き生きしてきます。

監督は『トリビアの泉』などの構成作家だけあって、
小ネタ、小ネタのオンパレード。
ストロー肝臓、手羽先のナチス、うずらの卵10個の目玉焼き、
炸裂するオーザックの袋、豆腐屋の隣の最中屋。
かりんとうを一晩水に浸けておくとかなりアブナイ。
くだらん!と思いつつ、吹き出すことの連続。

ネタバレですが、ラーメン屋の店主もスパイ。
旨すぎてもマズすぎても目立ってしまうので、
わざと平凡な味のラーメンを出し続けます。
「妥協できる妥協味を作り続けるのは結構難しい」の言葉に唸りました。
ラーメンよりエスプレッソの美味しいラーメン屋です。

「そこそこ」って難しい。

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