夜な夜なシネマ

映画と本と音楽と、猫が好き。駄作にも愛を。

20年後に思い出す。

2006年03月06日 | 映画(番外編:小ネタいろいろ)
大ヒット中の『ナルニア国物語』の公開前日、
たまたま聴いていたラジオ番組で、
「子どもさんのいらっしゃる方はぜひ一緒に観にいってください。
きっと20年後とかに思い出しますから」と
某映画サイトの編集長が語っていました。

この言葉はたぶん本当。
小学生の頃に家族と観に行った映画は、
まさに20年後、頭の中に甦ってきました。
今のようなシネコンのなかった時代ですし、
家族で観る映画は特別に感じたのかもしれません。
私にはそんな特別に覚えている映画が3本あります。

1本目は『メリーゴーランド』(1974)。
父子家庭に育つ少年、ルカ。
彼が不治の病にかかっていることがわかり、
仕事一筋だった父親はやっと息子と過ごすように。
深夜の遊園地、メリーゴーランドに揺られながら
ルカが父親の腕の中で息絶える間際の台詞が
「パパ、僕たち、もう会えないんだね」。
これが泣かずしてどうする。
話を理解するには幼すぎた弟以外、大泣き。

フランス映画だと思い込んでいたのですが、
最近調べたらイタリア映画。監督も俳優もほぼ無名。
お涙頂戴映画の典型でしたが、切ない音楽は出色。
数日後、両親にせがんで近所のレコード店へ。
メインテーマ曲のレコードは今も大事にしています。

2本目が『失はれた地平線』(1937)。
ヒマラヤ山中に不時着した飛行機から脱出した乗客たちが
シャングリ・ラ(理想郷)を探し求めて吹雪の中を彷徨います。
シャングリ・ラに辿り着いたその瞬間の「ア~レ~」な展開が
私にとっては衝撃的でした。

後に知ったのは『素晴らしき哉、人生!』(1946)と同じく
巨匠フランク・キャプラの作品であったということ。
彼の作品の中では異色のSF冒険大作が本作でした。
余談ながら、アメリカンの良心を描き続けたと言われる同監督、
てっきりアメリカ人だと思っていたら、
イタリアのシチリア島、ぶどう園の生まれでした。

3本目はなぜか大晦日に観た『ブラックホール』(1979)。
いかにしてブラックホールを通過するかという超半端な出来のSF。
ブラックホールを抜けたあとのオチに唖然。
『サイコ』(1960)のノーマン・ベイツ役のイメージを生涯払拭できなかった
アンソニー・パーキンスが出演していたことを後で知りました。

3作とも、家族で観る映画として選んだ理由を
両親は覚えていませんでしたが、
名作とはまた別の意味で強烈な印象を残し、
今の私の心をくすぐる楽しい選択に感謝。

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『運命じゃない人』

2006年03月02日 | 映画(あ行)
『運命じゃない人』
監督・脚本:内田けんじ
出演:中村靖日,霧島れいか,山中聡,山下規介,板谷由夏他

タイトルに惹かれてレンタルしてみたものの、
板谷由夏と山下規介(ジェームス三木の息子)以外、聞いたこともない俳優ばっかり。
ところがこれが最近観た邦画のなかでダントツ。
ものすごくよくできた脚本に、上手いのか下手なのかわからん演技。
でもフツーの人を演じたらこれが自然。
観終わった後、小さな幸せが日増しに大きくなる気がします。

主たる登場人物は5人。
呆れるぐらい「いい人」の宮田武、サラリーマン。
立派なマンションにひとり住まい。
元カノと暮らすつもりで購入したのに、
売買契約の数日後、彼女は「他に好きな人ができた」と
宮田のもとを去ってしまったのだ。
彼に残されたのはローンだけ。
なのに宮田は彼女を恨みも責めもしない。

宮田の親友で、私立探偵の神田勇介は
元カノに未練タラタラの宮田を呼び出し、ナンパを勧める。
「三十超えたら運命の出会いとか、もうないから。
クラス替えとか文化祭とか、ないんだぜ」。
そう語る神田の力強いアドバイスは
「出会った女には電話番号を聞け。電話番号をナメんなよ」。

婚約中だった男性の浮気の証拠をつかみ、
同棲を解消して飛び出してきたのは桑田真紀。
当面の金に充てるつもりで婚約指輪を質屋へ。
ところが、その指輪は3,500円にしかならない代物。
茫然自失、行く当てのない真紀は
とりあえずの居場所を求めてレストランへ。

この3人に宮田の元カノ、倉田あゆみと
ヤクザの組長、浅井志信が絡み、
一晩の出来事を行きつ戻りつしながら紡いでいきます。
これ以上は勿体なくて書けませんけど、
「この日、ボクの家のドアは3回開いた…」、
そのキャッチコピーがわかりはじめるときには
幸せ度が上昇し、顔の筋肉がホヨヨ~ン。

すべての登場人物に惹きつけられます。
レストランで客の会話に思わず聴き入るウエイター。
タクシーの運転手、ヤクザの若い衆、便利屋のやまちゃん。
どこかでみんなが繋がっている、
その見せ方が驚きの連続で愉快。

宮田役の中村靖日はCM出演多数で、
優香や嵐、ケイン・コスギなどと共演しているのですが、
あまりにいい人で薄い顔。
「そう言われてみればそやなぁ」の印象が
まさにこの役にピッタリなのでしょう。
神田役の山中聡も軽そうで実はいいヤツに最適。

観た翌日、DVDを即買いしてしまった1本。オススメ。

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