電網郊外散歩道

本と音楽を片手に、電網郊外を散歩する風情で身辺の出来事を記録。退職後は果樹園農業と野菜作りにも取り組んでいます。

香月美夜『本好きの下剋上』第5部「女神の化身XII」を読む

2023年12月31日 06時00分15秒 | -香月美夜
TO出版から本年12月に刊行された単行本で、香月美夜著『本好きの下剋上』第5部「女神の化身XII」を読みました。長く続く本シリーズの最終巻で、WEB版ではすでに完結しているわけですが、話の流れをかなり加筆して補っており、主人公視点からだけではなく周辺人物から見た描き方もあって、かなり重層的な物語になっています。

前巻では女神の意地悪で神々の力が過剰になってしまい、使い切ってしまわないとローゼマインに生命の危険が生じるという状況で終わっていました。他者の命を奪うなと命じた割にはひどい扱いだと憤慨するのは私だけではないはず(^o^)/ フェルディナンドも同じなのですが、とにかくローゼマインに目覚めてもらわないといけない。奥の手も使ってなんとか目がさめたローゼマインの「ボヘッーっ」とした様子は、「あ、やっぱり」(^o^)/

新たにツェントとなったエグランティーヌは厳しさも備えてきましたし、旧王族には理解が不十分な者もいるけれど、おおむね事態は順調に推移しているようです。でも、未成年の新領主に仕えることになる旧アーレンスバッハ、こんどはアレクサンドリアとなる大領地の貴族たちには、面従腹背、面白く思わない者もいることでしょう。それらをあぶり出し、平定・粛清しておくためには、ローゼマインがいてもらっては困る。それで考えられたのが「ローゼマイン、エーレンフェストへ里帰り」作戦。平民の家族や商人・職人、神殿の灰色神官たちの引っ越しも手配しなければいけませんし、養父母や貴族の父母、お世話になった人たちへ別れの挨拶もしなければいけません。ブリュンヒルデは「また領主会議で会いましょう」でいいけれど、高齢のリヒャルダはこれが最後になるかもしれません。ローゼマインはきっとわかっていないけれど、リヒャルダにはそれがわかっている(T-T)

ハルトムートらがたぶん活躍した後の新領地アレクサンドリアでは、新しい領主のスゴさに対して平民たちの人気は抜群に高いものがあり、お魚献上競争が起こるほどなのですから、ルッツたちグーテンベルグは到着してすぐに新領主の自慢を聞かされて、自重しなくなったローゼマインに少々ビビっていたことでしょう。でも、フェルディナンドに隠し通路を作ってもらい、家族に「ただいま!」と挨拶して迎え入れられたのは何よりのことでした。ルッツなどは、ローゼマインとフェルディナンドのかなり甘〜いムードに食傷したのかもしれませんが、仕方がありません。なにせ、もとがマインなのですから(^o^)/



ライトノベルというのをはじめて読んだのが、この『本好きの下剋上』でした。「なろう系」ライトノベルと一概にいうことは出来ないと感じましたし、著者の一貫した姿勢、教養と見識を感じる作品だったと思います。孫たちもファンだったらしく、LINEを通じて古希のジイサンと中高生の孫たちが同じ作品に夢中になれるという稀な状況を作ってくれた著者と出版社に、感謝したいと思います。

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香月美夜『本好きの下剋上』第5部「女神の化身XI」を読む

2023年06月03日 06時00分36秒 | -香月美夜
TO出版刊の単行本で、香月美夜著『本好きの下剋上』第5部「女神の化身XI」を読みました。サクランボ収穫作業期間中、雨降りで一日作業を休止し、ちょうどよい休憩日となった読書タイムです。

外患誘致の罪を犯し、ランツェナーヴェの王族をユルゲンシュミットのツェントに据えようと企んだアーレンスバッハを蹴散らしたフェルディナンド&ローゼマインを中心とするエーレンフェストとダンケルフェルガー連合軍は、なんとか敵勢力を撃退することに成功しますが、問題はトンチンカンな対応で危機にまるで対処できなかった王族の扱いです。次期ツェント候補だったジギスヴァルト王子はこともあろうにフェルディナンドの責任を問おうとする姿勢を見せ、それは女神が降臨し神々の力をまとっているローゼマインの怒りを買うハメに。王族への対応はエグランティーヌが仮のグリトリスハイトを得て次期ツェントに就任することでなんとかまとまりますが、問題はアドルフィーネの離縁話よりも、メスティオノーラの嫌がらせ(?!)で記憶の一部をなくしてしまっているローゼマインの神々の力をどうやったら消費し尽くすことができるのか、ということです。そのために、いろいろ試してみるプロセスが笑えます。とくに、エピローグにも取り上げられている、カンナヴィッツの海の再生と「お魚ヒャッハー!」事件のあたりが、実になんというか、ローゼマインらしい。結局のところはエアヴェルミーンの髪の毛だった木の枝を起点とする古代の大規模魔術で全体を再生してしまうところが、作者のファンタジックな想像力に驚嘆し賛嘆するとともに、ある意味、半ば驚き呆れるところです(^o^)/

さて、長い物語も次巻で完結することとなります。すでに完結しているWEB版本編では、ローゼマインが記憶を取り戻すシーンあたりが大きなヤマ場になるところですが、作者は単行本ではだいぶ加筆していますので、単にそれだけでは終わらず、周辺のさまざまな動きもかなりたっぷりと描かれるはずです。刊行予定は2023年冬とアナウンスされています。古希を過ぎたジイさんを夢中にさせているいささか風変わりなライトノベル、完結編の刊行が今から楽しみです。

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香月美夜『本好きの下剋上』第5部「女神の化身X」を読む

2023年01月11日 06時00分30秒 | -香月美夜
TO出版から刊行されているライトノベル、香月美夜著『本好きの下剋上』第5部「女神の化身」第X巻を読みました。12月発売の最新刊ですが、少々ほとぼりを冷ます意味もあって、これまで記事にするのを延ばし延ばしにしてきた(*1)ものです。

前巻は、毒に倒れたフェルディナンドを救出するために、ダンケルフェルガー有志と共にアーレンスバッハへ侵攻したローゼマイン一行が、救出に成功したフェルディナンドと共に、エーレンフェストに侵入していたゲオルギーネとアーレンスバッハ(旧ベルケシュトック主体)の勢力を打ち破る話で、主な舞台はアーレンスバッハとエーレンフェストでした。本巻では、舞台は主として中央、貴族院での攻防となります。

プロローグはアーレンスバッハの領主となるはずのアホ娘ディートリンデのワガママと愚かさ、そしてそんなディートリンデに教えてもらわなければいけないランツェナーヴェの侵略者たちの様子から。夜の貴族院に転移したローゼマインとフェルディナンドたちに加え、ダンケルフェルガー有志たちが中央の様子を探ります。フェルディナンドにとっては悪夢の場所であったアダルジーザの離宮に突撃して眠っている侵略者たちの部隊と武器とを押さえ、図書館で司書ソランジュを救い、ランツェナーヴェの王ジェルヴァージオがすでにメスティオノーラの書を得るべく始まりの庭に向かっていることを察知します。本来ならば侵略に対抗しなければならないはずの王族は、ランツェナーヴェとゲオルギーネと組んで中央内部の裏切り者となっているラオブルートの策動によって骨抜きにされているのですが、フェルディナンドは激怒、ローゼマインはメスティオノーラの書を取り込んでいるジェルヴァージオを邪魔して Good Job !

講堂での戦いから一転して始まりの庭でエアヴェルミーンに叱られるハメにはりますが、女神メスティオノーラがローゼマインに降臨してエアヴェルミーンを「メッ!」したことで、事態はローゼマイン、フェルディナンド、ジェルヴァージオの三人によるレース形式になります。しかし、そんなルールの隙間を突いてフェルディナンドが暗躍、ジェルヴァージオの動きをことごとく封じ込んでしまいます。さすがは「魔王」とよばれた男! いやはや、兵士の娘から神殿の青色巫女となり、領主の養女を経てこんどは女神の化身です。これはもう、下剋上というレベルではないような(^o^)/

「小説家になろう」サイトに掲載されているWEB本編(*2)はローゼマインの視点による物語の流れでしたので、案外すんなり通り過ぎたところでも実はかなりギリギリの状態だったことが、他者視点、例えばフェルディナンドのツェント・レースの裏側あたりから読み取ることができ、面白さは倍増しました。『本好きの下剋上』シリーズ、残すはあと2巻、そして短編集が本年中に出て完結の予定とのこと。面白いです。

(*1): そのため、写真の備忘録ノートが「2022」になっています。
(*2): 香月美夜『本好きの下剋上』(WEB版)〜「小説家になろう」より

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香月美夜『本好きの下剋上』第5部「女神の化身IX」を読む

2022年08月24日 06時00分22秒 | -香月美夜
TOブックスの単行本新刊で、香月美夜著『本好きの下剋上』第5部「女神の化身IX」を読みました。この巻では、主人公ローゼマインが救出したフェルディナンドとともに逆襲に転じ、エーレンフェストに侵攻していたアーレンスバッハと旧ベルケシュトック軍と対決するゲルラッハの戦いの決着、それにエーレンフェスト防衛戦の様相などが描かれます。

たしかに、戦いの中で騎士が死亡すると魔石が一つコロンと転がるというのは、ローゼマインならずともトラウマになりかねない状況です。勝利して凱旋したとはいうものの、過酷な戦闘が精神面にもたらす影響は大きなものがあるでしょう。ダンケルフェルガーの姫ハンネローレといい弟ヒルデブラントといい、死者に対する祈りがもたらす心の平安は、人間性の重要な要素なのでしょう。

おおすじのところはすでにWEB版を読了済ですので承知してはいますが、単行本化にあたって周辺人物の視点で書き下ろされた内容が興味深いものです。特に「エーレンフェスト防衛戦(後半)」と題して書き下ろされた内容、妹シャルロッテ視点による後方支援の様子、レクル視点による「西門の戦い」の様子、ユーディット視点で「残された者」、フロレンツィア視点で元凶である姑と静かに対決する「白の塔で」と続きますが、とりわけエーレンフェストの領主ジルヴェスター視点による「礎をめぐる戦い」は、ある意味で凄惨な姉と弟の争いの決着の場面で、サスペンスのような緊迫感のある終わり方でした。

ふーむ、このあとはいよいよ中央に移動し、貴族院における外患誘致との対決になるのでしょうか。王族と外国勢とが入り混じり、ローゼマインとフェルディナンドが無双する結末へ向けて、残るはあと3巻か4巻か。次の発売は12月の予定。期待大、面白いです。いよいよハマっております。

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香月美夜『本好きの下剋上』第5部「女神の化身」8巻を読む

2022年04月17日 06時00分42秒 | -香月美夜
年甲斐もなくライトノベルにハマって、などと恥ずかしがりながらも、たいへん面白く読んでいる香月美夜著『本好きの下剋上』第5部「女神の化身」8巻を読みました。前巻では、王命により敵地アーレンスバッハのアホ娘ディートリンデと婚約させられ、アーレンスバッハに赴いたフェルディナンドが毒に倒れ、それを察知したローゼマインが救出のために暴走を始め、抜きん出た武力を誇る大領地ダンケルフェルガーを巻き込んで臨戦態勢を整えるところで終わっていましたが、本巻はまさにその続きです。

プロローグは、フェルディナンドの危急をエーレンフェストに急報する名捧げ臣下のユスクトスとエックハルトの心情と行動を描きます。自らの死を覚悟していたところ、ローゼマインの救出作戦に加わることになり、絶望が希望に変わっていきますが、そうであれば主の延命や敵地の情報提供など、役に立てる場面は多くあることでしょう。同行するダンケルフェルガーの側でも、大領地アーレンスバッハに武力で侵攻するわけですから、脳筋思考だけでは済まされない。立派な建前と現実的な根回しと王族の承認が必要ですが、何よりもローゼマインがすでに得ているグルトリスハイトの存在がものをいいます。

これまでにも、王族がグルトリスハイトを失ってしまったことを嘆く場面は多くありましたが、要するに歴代の王族自身がメスティオノーラの書の正式な承継を歪めてきただけの話です。それにしてもグルトリスハイト、死者の記憶と智慧の集積だというのですからスゴイ。ペタッとくっつけるだけで国境門が開き、検索するだけで魔法陣が示され、コピペすらできてしまうというのですから、充電も不要な超強力ツールではないですか。私も一つほしいくらいです(^o^)/

ふんわりお嬢さん的な位置づけだったハンネローレを筆頭に、脳筋突進派ハイスヒッツェが指揮するダンケルフェルガー有志部隊の協力を得て、ローゼマインがアーレンスバッハの礎を奪い、フェルディナンドを救出するあたりはWEB本編(*)ですでに承知しているところですが、本書では書き下ろしの形で「エーレンフェスト防衛戦」の内容が充実しており、単行本を購入した価値を感じて満足、満足(^o^)/



この物語では中心的な悪役となるゲオルギーネ。毒親に育てられたのだから、あんなふうになるのは仕方がないという見方もあるでしょうが、ふつう毒親に育てられたからと言って幼い弟を毒殺しようとしたりはしないはず。ゲオルギーネはやはりゲオルギーネでした。栴檀は双葉より芳し、いや、トリカブトは若芽でも毒草と言うべきか。同情する気にはなれません。

(*): 本好きの下剋上〜司書になるには手段を選んでいられません〜「小説家になろう」より、完結済

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香月美夜『本好きの下剋上』短編集IIを読む

2022年03月12日 06時01分10秒 | -香月美夜
予約注文していた香月美夜著『本好きの下剋上・短編集II』を読みました。『短編集I』(*1)もそうでしたが、本編とは異なり、ローゼマイン以外の他者視点から見たサイドストーリーを集めたもので、物語中の同じ出来事でもだいぶ違った色合いを帯びて描かれ、興味深いものです。特に、直販や「応援書店」向けに特別に挿入されるリーフレットに収録された描き下ろし短編が、居住地によらずに平等に読めるのはありがたいことです。それでこそ、紙の本の特性を発揮するものと言えましょう。

今回の『短編集II』の内容は、次のようなものです。

エーファ視点 側仕えとの初対面
リコ視点 変化の始まり
ブリュンヒルデ視点 ローゼマイン様と染め物のお披露目
ブリュンヒルデ視点 ギーべ・グレッシェルの娘として
ルッツ視点 元気に成長中
ライムント視点 領地と師弟の関係
オットー視点 旅商人の依頼と冬の準備
フロレンツィア視点 フェルネスティーネ物語ができるまで
トゥーリ視点 ざわめきの中の自覚
ギュンター視点 兵士と騎士の情報収集
ユストクス視点 古ぼけた木札と新しい手紙
バルトルト視点 胸に秘めた怒り
ロヤリテート視点 小さな疑惑
アナスタージウス視点 それぞれの思惑
ルッツ視点 トゥーリの心配
ローゼマイン視点 ラザファムとの会話
エーファ視点 子供達の成長
トゥーリ視点 婚約の事情
レティーツィア視点 初めての祈念式

今回、とくに面白く読み、また収録がありがたかったのは、ブリュンヒルデ視点の「ギーべ・グレッシェルの娘として」、ライムント視点の「領地と師弟の関係」、ロヤリテート視点の「小さな疑惑」、トゥーリ視点の「婚約の事情」などでしょうか。いずれも、地方在住の私には縁のなかった「特典リーフレット」に収録されていた書き下ろし短編で、ネット上のSS(サイドストーリー)集にも収録されていないものですから、今回はじめて読んだものです。

ギーべ・グレッシェル候補として育てられ、そのために努力もしているブリュンヒルデですが、「ギーべ・グレッシェルの娘として」の時点では、まだ印刷業における平民の重要性が理解できていない。このままではグレッシェルの印刷業は失敗するとの焦りから、父親を説得して方向転換させるあたりの事情が、よくわかります。このあと、第二夫人に異母弟が生まれ、ギーべ候補から大きく方向転換してアウブの第二夫人へ立候補するわけですので、そのあたりの説得力が増すようです。また、魔力が少なく以前ならば神殿入りになるところだったライムントが、ヒルシュールに見出されフェルディナンドの駒として添削を受けることとなるあたりの事情がコミカルに描かれる「領地と師弟の関係」も面白いものですし、中央の騎士団長ラオブルートへの疑惑が芽生える「小さな疑惑」も、ちょっとした推理モノみたいです。ルッツとトゥーリの関係を描く「婚約の事情」も、舞い上がるようなラブロマンスではなく、なんとも現実的なものでした。このあたりは、もしかすると著者夫婦もまた同様の「友だち婚」だったからかもしれません(^o^)/

さて、来月は『本好きの下剋上』第5部「女神の化身」第8巻の発売予定となっています。すでに書店に予約注文済み。本編完結まで、あと何巻あるのだろう? このペースだとあと三巻かな。完結が待ち遠しい気持ちとともに、まだまだ完結してほしくない気分もあり、やや複雑です。

(*1): 香月美夜『本好きの下剋上・短編集I』を読む〜「電網郊外散歩道」2019年10月

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香月美夜『本好きの下剋上』第5部「女神の化身」第VII巻を読む

2022年02月08日 06時01分02秒 | -香月美夜
昨年の12月に刊行された新刊で、香月美夜著『本好きの下剋上』第5部「女神の化身」第VII巻を読みました。例によって発売と同時に予約購入し読み終えていたのですが、いい年をした中高年がライトノベルにハマっているのを早々と明らかにするのはいかがなものか、などという屁理屈でいったん保留し、このたび再読を機会に記事とした次第です(^o^)/

さて、物語は敵地アーレンスバッハに婿入りしたフェルディナンドのところに、エーレンフェストのローゼマインから「時を止める魔術具」の箱いっぱいに様々な料理が届く場面から始まります。要するに、故郷の味をクール宅急便でお届けするようなもので、単身赴任の殿方は間違いなく嬉しくなってしまうでしょう。レティーツィアと一緒に食べてね、とあるあたりは、無邪気な少女の仲間意識でしょうか。

で、本編はディルクとベルトラムの洗礼式に続き、冬の貴族院における学生生活の始まりからです。四年目となる親睦会、初週の講義に続き、貴族院の奉納式となります。たっぷりと集まった魔力の一部をオルタンシア不在で司書はソランジュ一人に戻ってしまった図書館のために分けてもらい、「古くてえらい」「じじさま」にも注いであげたために、突然ローゼマインはエアヴェルミーンのもとに召喚されてしまいます。残された側近たちの機転でその場はなんとかおさめますが、王族は対応に困っている様子。この物語における神々というのは、なんとも擬人的というか人くさいというか、いやいやそれ以上に人間の都合をあまり考えてくれないみたいで、あまりお近づきになりたくないタイプばかりのようです(^o^)/

それにしてもメスティオノーラの書って、死者の記憶だったのか。現実にあったらと考えるとあまりゾッとしませんが、ローゼマインはタブレット端末のように使いこなしていますから、これは明らかにスマホ世代ですね。いろいろな知識の中でも、アーレンスバッハのゲオルギーネが故郷エーレンフェストに侵攻し支配下に置く方法がわかってしまい、ローゼマインは急成長した痛みもものかわ、大急ぎで対策を立てなければいけません。そんな会議の最中に見えたフェルディナンドの命の危機! これはもう、暴走娘ローゼマインの面目躍如、突っ走ります、ダンケルフェルガーを巻き込んで)^o^)/



いやはや、年三回の刊行ペースがまだるっこしくなる面白さです。次巻刊行は四月の予定、いやその前に3月に『短編集II』が出るとアナウンスされていますので、年甲斐もなくライトノベルにはまって、とは思いつつ、当然のごとく予約済み。書店員さんにもしっかり覚えられております(^o^)/

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香月美夜『本好きの下剋上』第5部「女神の化身」第6巻を読む

2021年09月24日 06時00分36秒 | -香月美夜
発行日に予約入手し、すぐに読了していましたが、発売直後のネタバレはまずいだろうと寝かせていたら、1ヶ月以上もすぎてしまいました。もうそろそろ良かろうと、香月美夜著『本好きの下剋上』第5部「女神の化身」第6巻を取り上げます。

領主会議を終えた後、ローゼマインはヴィルフリートとの婚約を取り消し王の養女となるという秘密を持って、領主ジルヴェスターと妻フロレンツィアとの会話から物語は始まります。ジルヴェスターの放任主義は息子の場合はうまくいかなかったけれど、ローゼマインの場合は逆にうまくいっていることが、フロレンツィアの思惑や発想と対比されて、よくわかります。そして、領地エーレンフェストに戻っての報告会では表面的なことしか話せませんでしたが、領主一族だけの会合では婚約解消が発表され、ヴィルフィリートと妹シャルロッテは驚きますが、祖父ボニファティウスは孫娘ローゼマインとフェルディナンドとの仲を疑います。おじいちゃん、それ、今は正解じゃないけれど、後でよーくわかるから(^o^)/

一年後に王の養女になるからには、アウブの第二夫人となるブリュンヒルデはともかく、他の側近たちも一緒に中央へ移動するのかそれともエーレンフェストに残るのかという選択を迫られます。名捧げ組は文句なしに移動するにしても、未成年組は悩むところです。とくに身近に生活を支える側仕えの不足は困ります。先を読む貴族の母エルヴィーラは、リーゼレータの事情も踏まえた上で、しっかりと手を打っておりました。ローゼマインからリーゼレータへのお願いは、女性読者にとっては胸キュンなのでしょうか(^o^)/ このあたりは古希の爺サン読者にはナゾの世界です(^o^)/ そしてダームエルとフィリーネの関係は不器用に、でも少しずつ進歩します。

いやいや、興味深いのはハルトムートとクラリッサの協力を得てフェルディナンドからの依頼に応え、「最高品質の魔紙づくり」に取り組む過程とカラーのイラストの内容でしょう。木札の下がった試薬びん、試験管、乳鉢、乳棒、蒸発皿、三脚など、この絵柄でイメージするのはもう化学実験以外にはありえません。わーお! 元理科少年は、妙なところで大興奮です。このイラストを描いた椎名恵さんは、たぶん昔の化学実験の経験を踏まえて錬金術師のイメージをふくらませ、これを描いたのだろうな、と想像しています。

もう一つ、子供たちがお茶会を開くと何かが起こるのはすでに定番のようで、このあたりは作者の子育てに基づく実感のような気もしますが、今回はライゼガングの古老たちの軽挙妄動で、実は背後に思いがけない策動があったようです。

下町組のほのぼの感や孤児院での志の立て方などのエピソードの一方で、アーレンスバッハでも動きがありました。領主の死去でディートリンデが領主となるわけですが、これが実にヒドい。王命で婚約者にされたフェルディナンドはお気の毒ですが、本人はゲオルギーネを牽制する一方でアーレンスバッハの実務を担い、家臣団の信頼を得つつあります。そこへランツェナーヴェ国の使者がやって来てディートリンデに取り入り、不穏な動きはしだいに現れつつあるようです。



WEB 版ではすでに完結しており、これからどうなるのかは承知しているわけですが、次巻はいよいよあの場面か。期待しつつ、冬の第7巻の発売を待ちましょう。

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香月美夜『本好きの下剋上』第5部第5巻を読む

2021年05月21日 06時01分45秒 | -香月美夜
先月、4月に刊行されたばかりの最新刊、香月美夜著『本好きの下剋上』第五部「女神の化身」第5巻を読みました。発売後一ヶ月も過ぎたので、そろそろネタバレの心配も緩和されたかなと判断し、記事とする次第です。

プロローグはエーレンフェストの領主ジルヴェスターと伯父ボニファティウスのやりとりから。ボニファティウスが珍しく従来型の常識派の役回りです。なるほど、そんなわけでライゼガング一派に与することとなったのか。加護の再取得で神殿に対する偏見がだいぶ緩和されたようですが。

ローゼマインは、王族の命により、領主会議の間ずっと貴族院の図書館の書庫でダンケルフェルガーのハンネローレとともに古い文献の現代語訳に従事しています。王の第三夫人のマグダレーナがお目付け役で付き添う中、ある日アーレンスバッハのディートリンデが図書館にやってきて、言いたい放題。王命により婚約させられたフェルディナンドが連座で処分される可能性が高いとローゼマインは心配しますが、とりあえず対応をマグダレーナにまかせて貴族院の森をひそかに散策して鉢合わせを回避します。そこで見つけたのが古びた祠でした。これが実は、神々に認められて王となる道を示すもので、ローゼマインは第二王子アナスタージウスの妻となったエグランティーヌに請われてすべての祠を回ることとなり、メスティオノーラの書を得るための資格を得ますが、王族登録がないためにこれを読むことはできませんでした。しかし、次期王に最も近い位置にいることは間違いなく、王族はローゼマインを得るために動き出します。

いや〜、第一王子ジギスヴァルトとローゼマインの交渉の様子は、「商人聖女vs王族!」という帯のキャッチコピーのとおり。WEB 版でも面白く読みましたが、紙の本でもやっぱり面白いところです。もっと言えば、巻末の他者視点「望まぬ結婚」のアドルフィーネは、いかにも誇り高いドレヴァンヒェルの筆頭領主候補生ですし、「シュラートラウムの花」でのオルタンシアの不幸な最後を示唆するサスペンス調の終わり方は、中央騎士団長ラオブルートの悪役ぶりを強く印象づけます。

次巻は8月刊行予定。楽しみに待ちましょう。

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香月美夜『本好きの下剋上』第5部「女神の化身IV」を読む

2021年01月04日 06時01分07秒 | -香月美夜
12月に刊行されたばかりの新刊で、香月美夜著『本好きの下剋上』第5部「女神の化身IV」を読みました。中学生になった孫も夢中で読んでいるらしい物語に、山形のジイチャンも面白くハマっております。この冬休みには ZOOM で話をしようかなどと構想中(^o^)/

それはさておき、第5部第4巻は粛清の余波が漂うエーレンフェストのカルステッド家の様子から。さすがにエルヴィーラは切れ者です。ライゼガングの長老たちの策動をちゃんと把握し、ボニファティウスの加担も見抜いています。でもローゼマインは別世界。旧ヴェローニカ派の母を持つ異母弟ニコラウスが気にかかります。領主である義父ジルヴェスターが言い出した「貴族院での成績はもう上げなくても良い」発言の背景にライゼガング派の圧力があることを把握し側近たちと対策を練りますが、妹シャルロッテの協力は得られても、兄ヴィルフリートの疑いと不満を晴らすことはできません。

エーレンフェストの派閥争いを収束の方向に転換させたのは、側近の一人ブリュンヒルデがジルヴェスターの第二夫人に名乗りを上げたことでした。なるほど、それは考えなかったなあ。まるで戦国時代の姫の役割のような展開に驚きます。親をなくした子供たちを孤児院に迎え入れ、弟メルヒオールとともに神殿の地位向上を目指すローゼマインは、加護の取得という切り札を使ってボニファティウスの理解を得ます。そこに押しかけ側近クラリッサがダンケルフェルガー的勢いで来襲、ハルトムートも大変です(^o^)/

閉ざされたままのキルンベルガの国境門を前に伝承を聞いた「他国の勢力と結び王の追い落としを図った旧アイゼンライヒのエピソード」は今後の展開の重要な伏線ですし、ギーべ・キルンベルガが息子アレクシスに諭した話はなかなか意味深い。この巻では徹底的にヴィルフリートがダメ兄であると描かれ、ヴィルフリートびいきの人には面白くない展開かもしれません(^o^)/



さて、これまで年に四冊のペースで刊行されてきた書籍版ですが、様々な事情で年三冊のペースに変更される模様です。たしかに、コミックもあればアニメ化も続き、海外版も版を重ねる状況では、作者の仕事量もかなり増えていることでしょう。そんなわけで、次巻はおそらく4月刊行か。それまで楽しみに待つことにいたします。

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香月美夜『本好きの下剋上』第五部「女神の化身III」を読む

2020年10月17日 06時00分15秒 | -香月美夜
新刊発売後、一ヶ月が経ちました。香月美夜著『本好きの下剋上』第五部「女神の化身III」を再読しましたので、取り上げます。最近、年甲斐もなく面白く読んでいるライトノベルですが、どうやら中学生の孫も楽しんでいるそうで、喜ばしい限りです(^o^)/
通巻で第24巻となる本巻は、ダンケルフェルガーとの嫁取りディッターで奮戦し、回復薬を飲みすぎたローゼマインをめぐって、側仕えたちの反省と自戒から始まります。併せて、中央騎士団の中に「トルーク」という植物を使い、幻覚を起こして人を操るものがいるという疑いが生じます。

それはともかく、当面の課題は領地対抗戦を乗り切ることです。三つの共同研究を同時進行していることから、それぞれを形にしなければなりません。アーレンスバッハとはライムント設計になる「おしゃべりシュミル」に厳選・愛の言葉の朗読プラス本の宣伝を、ドレヴァンヒェルとはエーレンフェスト特産の魔紙を用いた省電力型音楽再生器をアドバイスします。肝心のダンケルフェルガーとは第一夫人ジークリンデとの交渉となりますが、この人がまた肝っ玉かあちゃんのようで、夫も息子も頭が上がらないらしい。ハンネローレの無理やり嫁入り話もなんとかもとに戻し、ディッター物語の挿絵の権利もゲットするとともに、アウブ・エーレンフェストから中央のトルーク疑惑をダンケルフェルガーに伝えてもらい、ようやく一段落。

婿入り先のアーレンスバッハから一時的に帰ってきたフェルディナンドにローゼマインは大喜びですが、奉納舞で舞台に魔法陣を浮かび上がらせたことで、アーレンスバッハのわがまま娘ディートリンデが次期王候補に取り沙汰され、そんな馬鹿な(^o^)/

いやはや、どうしようもないアーレンスバッハの救いのなさと、迷える王族の悩みが描かれるとともに、エーレンフェストとダンケルフェルガーの相互理解が深まった巻でした。



過去記事の一部で、本書の題名が『本好きの下克上』になっていたことに気づき、あわてて修正。『下剋上』が正しいです。気づいたきっかけは、12月10日発売予定の第五部第4巻を予約に出かけた書店で、書店員さんが「下剋上」と手書きしていたのを見て、「あれ?」と思ったため。なんともはや、かな漢字変換を鵜呑みにしていてはいけませんね〜(^o^;)>poripori

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香月美夜『本好きの下剋上』第5部「女神の化身II」を読む

2020年07月27日 06時01分05秒 | -香月美夜
「いい年をして、何を血迷ったかライトノベルなど」とは言いながら、面白いものはおもしろいのです(^o^)/
香月美夜著『本好きの下剋上』第5部「女神の化身II]を読みました。先月10日に予約購入し、すぐにパラパラと読んではいたものの、サクランボ収穫作業の多忙に後回しとなり、このほどようやく再読了したところです。

プロローグは、アーレンスバッハにおけるフェルディナンドの日常から。エーレンフェストより南に位置するアーレンスバッハは、冬とは言えだいぶ暖かいようで、全体的にルーズな印象です。フェルディナンドの思惑はローゼマインをいかに地下書庫から遠ざけるかですが、無理なんじゃないかな(^o^)/

この巻からは、クラッセンブルグの姫エグランティーヌのハートを射止めた第二王子アナスタージウスだけでなく、第一王子ジギスヴァルトも登場します。丁寧な物腰・言葉遣いだけれど長男らしい傲慢さがあるという設定のようです。で、予想どおり図書館の地下書庫にローゼマインも入れることになり、いろいろと貴重な資料に接し、知識を仕入れることになります。ここでは、協力者としてダンケルフェルガーのハンネローレの存在が不可欠です。そのダンケルフェルガーとの共同研究は、互いの儀式を見せ合うことが条件でしたが、体育会系領地のようなダンケルゲルガーの儀式は、やはりディッター絡みでした(^o^)/

知的な研究が盛んな大領地ドレヴァンヒェルとの共同研究は魔木から作る紙がテーマで、同じくアーレンスバッハのライムントとの研究は魔術具の省力化がテーマです。ダンケルフェルガーとの共同研究のためにエーレンフェストが見せることになった儀式とは、奉納式でした。これが実に何と言うか、トラオクヴァール王をはじめ王族が勢揃いする一大イベントとなってしまい、ローゼマインの価値は誰の目にもあきらかとなりますので、ダンケルフェルガーに取り込みたい領主候補生レスティラウトは嫁取りディッターを敢行します(^o^)/



いやはや、破天荒なストーリーに思わず夢中になってしまいます。一度はWEB版(*1)で読了しているのですが、書籍版で描き下ろしで追加された他者視点のサイドストーリーが興味深く、たしかに紙の本のメリットがあるなあと納得です。

(*1):本好きの下剋上〜WEB版はすでに完結済み

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香月美夜『本好きの下剋上』第五部「女神の化身I」を読む

2020年04月10日 06時02分26秒 | -香月美夜
新型コロナウィルス感染者の拡大で世情は不安がつのる中ではありますが、それでも平凡な日常の価値は不変です。例えば好きな音楽を聴き、おもしろい物語にひたることなどでしょうか。おもしろく読んでいる香月美夜著『本好きの下剋上』は、いよいよ第五部「女神の化身」の始まりです。先月の発売日に購入し、通読した後に少し寝かせて印象をあたため、再読したところ。

ローゼマインの庇護者であったフェルディナンドがアーレンスバッハに旅立ち、プロローグは重要な登場人物となるヒルデブラント王子のお披露目の場面から。続いてエーレンフェスト内の粛清の引き金が引かれ、アーレンスバッハの第一夫人に昇格したゲオルギーネに忠誠を誓う一派は一掃されますが、貴族院の学生たちの様子は多少の動揺はあってもローゼマインの影響力のほうが圧倒的に大きいようです。大領地ダンケルフェルガーもドレヴァンヒェルも、また王族のアナスタージウスとエグランティーヌ夫妻も、ローゼマインの破格さに注目しています。

WEB 本編ではあまり強調されてはいませんでしたが、単行本への書き下ろしで明らかにされてきているのが、政変にともなう図書館の悲劇でしょう。「短編集」でも一部描かれていましたが、オルタンシアのエピソードには司書たちが犠牲になった事実が描かれ、権力と図書館の独立性というテーマが背景となっているようで、このあたりはライトノベルらしからぬ大人の味わいです。

なお、ローゼマインが楽器フェシュピールを奏でる場面のモデルは、作者によればナターシャ・グジーさんのパンドゥーラなのだそうです。イメージとしてはこんな感じでしょうか。YouTube から、「鳥の歌」。

Song of the Birds ( El Cant dels Ocells ) by Nataliya Gudziy / 鳥の歌 ・ ナターシャ・グジー


第五部第2巻は、順調に行けば6月10日に刊行予定とのこと。その頃には、できればコロナ禍も少しは落ち着いていると良いのだけれど。

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香月美夜『本好きの下剋上』第IV部「貴族院の自称図書委員」第9巻を読む

2020年01月03日 06時00分17秒 | -香月美夜
2017年からは専用のカテゴリーまで設けて楽しんできた香月美夜著『本好きの下剋上』ですが、第IV部「貴族院の自称図書委員」がついに第9巻まで来ました。貧しい兵士の娘として転生した幼女マインが、「本を読みたい」との一心で紙を作り、神殿に突撃して青色巫女となり孤児院を改革し、インクを作り印刷を始め、魔力に目覚め、領主の養女ローゼマインとなって貴族院に学ぶようになって二年、つねによき理解者であり後ろ盾となってくれた神官長フェルディナンドが、敵対する他領地から婿に望まれ、しかも王命により断ることができない事態になるという経過ですが、本巻はフェルディナンドとの別離を描きます。



餞別の食事会はいかにも美味しそうですし、贈り物をしあう様子は微笑ましく思えますが、その背後で起こっていた陰謀はかなり悪質なものでした。灰色神官たちは救出し、奪われた聖典は取り返したものの、別離は悲しい。クライマックスとなる虹色の祝福の場面は、アニメでもおそらく劇的な場面となることでしょう。

貴族院の三年生となる次巻は3月10日発売予定とのこと。第V部「女神の化身」第1巻と題して、こんどは王族と王が相手になり、物語の終わり頃には神々のスケールでヒートアップするはず。書籍で追加される書下ろしも楽しみです。

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香月美夜『本好きの下剋上・短編集I』を読む

2019年10月30日 06時03分33秒 | -香月美夜
香月美夜著『本好きの下剋上』シリーズの最新刊「短編集I」を読みました。WEB上ではすでに完結している本編が、基本的に主人公マイン(ローゼマイン)の視点で語られるのに対して、周辺の人の視点で語られる閑話やサイドストーリー(SS)には新鮮な発見があって面白いものです。

例えば冒頭の「変になった妹」では、マインの姉トゥーリの視点で、病弱な妹が高熱から回復した後に、お湯で毎日体を拭こうとしたり木の棒でかんざしを作って髪を束ねたり、植物の実から油を採って髪を洗うことでツルツルにしたりと、不思議な行動を取り始める様子が描かれます。妹マインの視点からは、転生した周囲が汚く不潔な生活を忌避しているのですが、姉トゥーリの方から見ると妹の行動のほうがヘンなのです。そんなズレが新鮮な発見につながっていく、というわけです。



中にはWEB上にあるサイドストーリー集(*)に掲載されているものもあれば、単行本の中に特典として挟み込まれた書き下ろしの短編を再録したものもあります。後者は、TOブックスという出版社が、取次店を経由して書店に届くという商慣行の中で抵抗(?)するために、直販と「応援書店」での販売分にはこうした書き下ろし短編をリーフレットとして挿入することにしたものでしょう。その事情を理解はできますが、田舎の一読者としてみた場合、なんだか居住地によって疎外されている感を禁じえません。この短編集は、そうした書き下ろし短編SSをもちゃんと収録しており、出版業としてはそれが本筋であろうと思います。

ヴィルマ視点の「前の主と今の主」、ヒルシュール視点の「特別措置の申請」、フィリーネ視点の「わたしの騎士様」などは、本編のストーリーを補強する好編と感じます。「短編集I」ということは、「II」の計画もあるということでしょう。特典SSなどという読者を居住地で区別してしまうやり方でなく、中身の面白さを訴えて商売をしてほしいものです。と、物語中でローゼマインも言っております(^o^)/

(*):本好きの下剋上 SS置き場

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