電網郊外散歩道

本と音楽を片手に、電網郊外を散歩する風情で身辺の出来事を記録。退職後は果樹園農業と野菜作りにも取り組んでいます。

プレッピーに古典フルーブラック・インクを補給し、スリップシール機構に感心する

2013年07月31日 06時03分44秒 | 手帳文具書斎
プラチナ社の古典ブルーブラック・インク専用としている廉価万年筆プレッピー(Preppy)のインクが切れましたので、先に導入していたインク・コンバータで補給(*1)しました。なかなか快適です。字幅は0.3mmと表示されており、パイロットのプレラ透明軸の細字(F)よりは太く、老眼の中高年には、プレラ青軸の中字(M)と同じくらい鮮明に見えます。決して繊細過ぎる細さではありません。

実は、昨年から今年にかけて、廉価万年筆に色々と手を出し、たくさんの種類が手元に集まってしまいました。複数の万年筆を均等に使うことは現実的か、などという疑問を記事(*2)にしたりしておりますが、やはり手が伸びるものとそうでないものとが出てきます。ペリカンの400Nは、徹底的に水洗いして現在は休暇中で、メインに使っているのはパイロットとウォーターマンですが、近頃はこのプレッピーの出番が多くなっています。その理由は?



実は、嵌め合わせがカチッと快適なプレラの、インクの自然乾燥がやっぱりはやい(*3)ように感じられてなりません。透明軸に「紺碧」を入れたものなどは、細字でそれほど使用頻度は多くないのに、いつの間にかインク量が半分くらいに減ってしまっています。透明軸なので、よけいに目立ちます。青軸プレラも、インク残量がほぼゼロになっています。これは、インクを補充した時期の違いと筆記量によるものですが、尻軸が不透明なので目立ちにくいものの、あれいつのまに、という感じで減ってしまっています。むろん、これはパイロットのコクーンもカスタムもウォーターマンも同じこと(*4)で、万年筆の自然乾燥の度合いは五十歩百歩でしょう。

この点、超安価な製品なのに、プレッピーは立派だと感じるようになりました。軸の材質に疑問(*5)はありますが、スリップシール機構のおかげでしょうか、いざ使おうという時にインク量が減っていて、ということがありません。実はプラチナ社の古典ブルーブラックインクを試すためにコンバータも購入したのでしたが、これならば同社の本格的な万年筆をメインにして使ってみてもいいかな、と思い始めました。どうやら、プラチナ万年筆のスリップシール機構というのは、ボールペンにおけるジェットストリームの登場のような、万年筆における本質的な改善ポイントのようです。

(*1):プレッピーにコンバータで古典ブルーブラックのボトルインクを使ってみる~「電網郊外散歩道」2013年6月
(*2):複数の万年筆を均等に使うことは現実的か~「電網郊外散歩道」2012年9月
(*3):インクの減り方の違いはどこに~「電網郊外散歩道」2013年5月
(*4):万年筆の乾燥を防ぐためには~「電網郊外散歩道」2013年7月
(*5):プラチナの超安価万年筆プレッピーの弱点~「電網郊外散歩道」2012年9月

【追記】
スリップシール機構というのは、同社の#3776シリーズのようなネジ式のものの名称なのかもしれません。由来を調べてみたら、このプレッピーのキャップは、マーカーやサインペン等の乾燥防止のためのものを転用しただけで、偶然にも一年間放置したプレッピーがそのまま書けたのに驚いて、スリップシール機構の開発が始まった、とありました。その意味では、プレッピーのキャップをスリップシール機構というのは適切ではないのかも。でも、たしかに原点になったものではあるようです。瓢箪から駒、かな。

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藤沢周平『帰省~未刊行エッセイ集』を読む

2013年07月30日 06時03分30秒 | -藤沢周平
文藝春秋社の単行本で、藤沢周平著『帰省~未刊行エッセイ集』を読みました。2008年の夏に刊行された初版初刷を購入したものの、ずっと積ん読し、この冬から寝床のわきの書棚に移して少しずつ読み進め、このほどようやく読了したという、当方には珍しいスローペースです。氏の小説作品であれば、それこそ一気呵成に読み終えてしまうところですが、なにせ洒脱な見かけにかかわらずひじょうに誠実で思慮深い文章ばかりですので、読み飛ばすばけにはいきません。

未刊行のエッセイを集めて一冊の本とするからには、今まで封印されていたものを垣間見ることもできようという期待もありました。文藝春秋社という会社の社風と作家への配慮から、藤沢周平の政治的な立場(*1)などという話のように、編集者が全集に載せることを躊躇したケースもあったかもしれません。作家の没後であるからこそ再び日の目を見た例もありそうで、阿部達二氏による解題も興味深いものです。

ところで、「歳末身辺~落葉と風邪とデパートと」などという文章を読むと、思わず微笑ましく思ってしまいます。この中に、風邪から復活した氏が、娘さんと奥さんとデパートに行き、初ボーナスをもらった娘さんに万年筆を買ってもらう話が出てきます。ああ、これが愛用のパーカーの万年筆の由来かと想像したり、娘さんのデート相手の青年のことがチラリと登場すれば、ハハァ、これが夫君の遠藤氏かと想像したりするなど、同年代を経た娘の父親として共感するところ大です。

今はすでに文庫化されて容易に入手できるようで、『周平独言』『小説の周辺』『ふるさとへ廻る六部は』など、味わい深いものが多い藤沢周平の随筆集に、さらに興味深い一冊が加わったと言えそうです。

(*1):「雪のある風景」、「大衆と政治」、「村の論理」など。

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また雨降り

2013年07月29日 06時02分38秒 | 季節と行事
いったいいつまで降れば気が済むのか、昨日はまたもや雨降りでした。ようやく給水が再開された山形県内の各市町では、おそらく気が気でなかったことでしょう。ニュースでは、山口県と島根県で、記録的な豪雨の被害も報道されています。被災された皆様、日常生活が早期に回復されますようにお祈りいたします。

ところで、だいぶ前になりますが、ノーベル賞を受賞したIPCCの『第4次報告書』の第5章を執筆した某氏の話を聴いたことがあります。地球温暖化の影響はどんなところに出て来るのか、という質問に対して、気候面での極端現象が顕著になるだろう、という予測をしていました。

極端現象。今までの気象が極端な形で顕在化する。近年各地で起こる集中豪雨の激しさや、常ならばとっくに終わっている梅雨がいつまでも終わろうとしない雨期の様子など、このときの応答が思い出されてなりません。いい加減にして、梅雨が終わってカラリとした夏らしいお天気になってほしいものです。

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佐伯泰英『徒然ノ冬~居眠り磐音江戸双紙(43)』を読む

2013年07月28日 06時03分02秒 | -佐伯泰英
いつの頃からか、主人公のはずの坂崎磐音が無敵に強すぎるのに加え、おこんとの仲も盤石で物語にならないと踏んだのでしょうか、作者は周辺の若者たちの人間的な成長を意識して描くようになっています。その一人、元雑賀衆の女忍・霧子が、豊後関前藩の養嗣子として英明さをうかがわせる福坂俊次への襲撃事件で負傷し、毒矢によって生死の境をさまよっている状況から物語は始まります。

第1章:「修太郎の迷い」。若狭小浜藩の江戸藩邸から船で小梅村の尚武館坂崎道場に戻った霧子でしたが、依然として意識が回復しません。他人の夢の中に入り込んで戦うことさえできるスーパー磐音クンが、霧子の意識の中に入り込んで、ちょいと揺り動かせば目覚めるような気もするのですが、そこはやっぱり若い利次郎の出番を作る必要がありまして(^o^)/
竹村武左衛門の長男・修太郎は、本シリーズには珍しい「落ちこぼれエピソード」かと思いましたが、ちゃんと向き・不向きを考慮した展開が用意されておりました。

第2章:「万来見舞客」。尚武館の東西戦には、速水左近もPTAの立場で見学に来ており、加えていろいろな重要人物も顔を見せております。奥の接待はおこんさんですから、粗相があるはずもなく、密談もごく自然に行えるのでしょう。表向きは直心影流の奥義秘伝公開にびっくりしているところですが、実は背後の政治的な場の設定に、作者の苦労がうかがえます。霧子さんの回復は、目出度いことです。

第3章:「師走奔走」。師匠というのは大変です。弟子のために東奔西走しなくてはなりません。利次郎・霧子に加え、竹村修太郎の研修志願の一件もあります。さらに、遠く出羽国山形では、奈緒が幼児を三人もかかえて難儀をしている模様です。それにしても利次郎クン、もう27歳にもなっているのですか。なんだかそんな年齢には思えませんね~(^o^)/

第4章:「大つごもり」。竹村修太郎は、鵜飼百助のもとで研ぎ師の修行をすることになり、利次郎と霧子は相思相愛の度を深めますが、松平辰平と筑前博多の豪商・箱崎屋の末娘お杏との仲はどうなるのか。遠距離文通の中身までは明らかにされておりませんが、このへんのじれったいやりとりは、作者の不得意とする分野なのでしょう(^o^)/
磐音と利次郎は、旧藩主・福坂実高に拝謁、物産事業で景気がいいようで、ポンと五百両も謝礼を出してくれました。1両を10万円とすると、500両は5000万円に相当します。なんだか出来すぎた話ですが、それを言うならもともとこの物語が出来杉君のお話ですしね~(^o^)/
帰路の強盗事件なんて、ほんの付け足し、原稿用紙の枚数稼ぎのようなものか(^o^)/

第5章:「極意披露」。年が明けて天明4年。田沼意知が斬られる事件まで、あと3ヶ月となりました。どうりで、佐野善左衛門がチョコチョコ登場するわけです。そして小梅村の尚武館坂崎道場では、五百両で増築の話が進みます。新年の具足開きの際には、若狭小浜藩主・酒井忠貫がお忍びで姿を見せ、速水左近と同席します。磐音と辰平による直心影流の奥義披露は、静かな、力強い感動を呼び起こします。そして、出羽国山形の奈緒からは、近況を綴る礼状が届きます。事件政変を準備する静けさと見ましたが、さてどうか。

この長い長~い物語も、あと二年で田沼意次が失脚することになりますので、どういう結末になるのかが興味深いところです。

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プレシャス・カルテット山形公演を聴く(2)

2013年07月27日 07時08分40秒 | -室内楽
7月25日(木):プレシャス・カルテット山形公演の後半です。曲目は、メンデルスゾーンの弦楽四重奏曲第2番イ短調Op.13。この曲については、カルミナ四重奏団の演奏で親しんでおりますが、実演で聴くのはもちろん初めてです。



第1楽章:アダージョ~アレグロ・ヴィヴァーチェ。イ長調の優しい響きで始まり、イ短調の速く情熱的な主部が展開されますが、これはまさしくベートーヴェンの後期の四重奏曲を経験した若者のものでしょう。
第2楽章:アダージョ・ノン・レント。穏やかな表情で始まります。四人が互いに音を確かめながら、静謐な緩徐楽章となっています。フーガ風に展開するところは、むしろ厳しさを感じさせますが、再び穏やかな表情に戻って終わります。
第3楽章:インテルメッツォ:アレグレット・コン・モト~アレグロ・ディ・モルト。少しだけチューニングした後、三人のピツィカートをバックに、1st-Vnが親しみやすい旋律を歌います。この情感は、やや古風ではありますが、好ましいものです。そしてあの軽やかなスケルツォも見事に決まり、はじめの旋律に戻ったときには、懐かしさを感じます。
第4楽章:プレスト~アダージョ・ノン・レント。切迫した表情の音楽が、次第に高揚してフィナーレに向かうかと思わせておいて、実はアダージョに転じ、1st-Vnのモノローグの後に曲の最初の旋律が回想され、静かに印象的に終わります。

うーむ、いい演奏を聴いたぞ。良かった~。

聴衆の拍手に応えて、アンコールはピアソラの「リベルタンゴ」。これも、思わず体が動きます。大いに楽しみました。



ところで、もっぱらCD等の録音を通じて楽しむ素人音楽愛好家であるワタクシは、情感豊かな旋律には反応しますが、技巧的な見事さを理解することは少なく、例えばこの曲の第3楽章のスケルツォ部や、ボロディンの弦楽四重奏曲第2番の終楽章などを文章にするときに、視点に困っておりました。今回、プレシャス・カルテットの演奏を聴いていて、ふと思い当たりました。そうか、作曲家はなにも聴衆のために音楽を作っているわけではなくて、演奏者の顔を思い浮かべ、彼らが困難を乗り越える喜びを想定するところもあるのだろうし、自分自身の理論的な課題に取り組んでいるところもあるのだろう。そのような意味で、情感と技巧、感情と理性、などが交互にバランス良く登場するのだろう。楽章ごとに、優位になるものが交代したり、あるいは同じ楽章の中でも、これらがバランスを持って交替するような作りになっているのではないか。

漠然としてはいますが、まあ、そんなようなことを帰りの車の中で考えておりました。
たいへん良い演奏会でした。2nd-Vnの古川仁菜さん、もしかしたらおめでたでしょうか。元気な赤ちゃんが生まれますように、お祈りいたします(^o^)/

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プレシャス・カルテット山形公演を聴く(1)

2013年07月26日 20時55分04秒 | -室内楽
7月25日(木):平日の夕方の演奏会は、幸いにお天気もまずまずで、気温は26度くらいでしょうか。文翔館議場ホールの会場は、いつもの縦型配置ではなくて、ステージを中央北側に取り、座席が左右(東西)に広がったスタイルです。お客様の顔ぶれも、山形弦楽四重奏団の時とは少々異なっており、小さいお子ちゃまたちの姿も見られました。これはプログラムのせいもあるのでしょうか。マニアック路線というよりも、少しだけお楽しみ方向にもシフトしつつ、音楽上の課題に取り組む演奏会を目指しているのでしょう。



プログラムは、A5判の一枚もので、表面には演奏曲目、裏面にはメンバーのプロフィール等が書かれています。いわゆるプログラムノートのような曲目解説はありません。
メンバーは、第1ヴァイオリンが加藤えりなさん、第2ヴァイオリンは古川仁菜さん、ヴィオラが岡さおりさん、チェロが山響首席の小川和久さんです。
曲目は、

モーツァルト アイネ・クライネ・ナハトムジークより第1楽章
F.ブリッジ 「横町のサリー」「熟したさくらんぼ」
木島由美子編曲「やまがたのうたラプソディ」「映画音楽メドレー」
ガーシュイン 「ポーギーとベス」より「サマータイム」
ヴィヴァルディ「四季」より「夏」
メンデルスゾーン 弦楽四重奏曲第2番 イ短調 Op.13

というものです。当初は、メンデルスゾーンの弦楽四重奏曲は第2番ではなく第1番が予定されていましたが、同じ山響メンバーからなる山形弦楽四重奏団の、わずか10日前に行われた第48回定期演奏会で同じ第1番を取り上げたばかり。そのため、第2番に変更することにしたらしいです。

最初はモーツァルトの「アイネ・クライネ・ナハトムジーク」です。安定感のある演奏に、一気に引き込まれます。続いて、F.ブリッジの「横町のサリー」「熟したさくらんぼ」の二曲。フランク・ブリッジという作曲家(*1)の名前は初めて知りました。この曲は、後で調べてみたら1916年の作品のようですが、聴いていては大戦間期の英国の濃厚な香りがしました。アル・カポネと同時代のイギリスです。

続いて木島由美子さんの編曲で、「やまがたのうたラプソディ」。「千歳山かァ~らなァ~、紅花の種播いたヨ~」が「ヨォ~イサノマカァ~ショ~、エ~ンヤコラマァ~カセ~」に代わり、Vc-Vla-2ndVn-1stVn と移って四声で。曲想がガラリと変わり、「ヤッショーマカショでシャンシャンシャン!」から「めでためで~たァ~の~ォ、若~松さ~ま~よ~ォ」へ元気良く。これは楽しい。
同じく木島由美子さんの編曲で、映画音楽メドレーです。レーザーディスクで何度も繰り返し楽しんだ「マイフェアレディ」より「踊り明かそう」。1st-Vnの加藤さんが少しだけジャズ・ヴァイオリン風味を取り入れて。ところが次の曲とその次の曲の名前が出てこない。メロディはそらで歌えるのに題名が出てこないのは、なんとも歯がゆい。うにさ~ん(*2)、この曲の題名、な~に?
次のは「寅さん」ですね~。これは意外にも弦楽四重奏に似合うのですね!驚きです。最後は、ダッダララッタ~タ ダッダララッタ~タ チャラ~ラララ~ン。「007」のテーマ!
いや~、中高年にはなんとも口惜し楽しいひとときでした(^o^)/

そしてガーシュインの歌劇「ポーギーとベス」から「サマータイム」。もともとは気だるく物憂げな気分の曲ですが、赤に黒の花模様や藤色やピンクのドレスがお似合いの三人のレディが発する雰囲気は健全で、黒ずくめの小川さんも紳士的でしたので、米国南部というよりは東部ボストンあたりの雰囲気の上品な「サマータイム」でした。でも、崩れた退廃的ムードよりも、こういう雰囲気のほうが実は好きだったりして(^o^)/

びっくりしたのが前半最後のプログラム、ヴィヴァルディ「四季」の3曲目、「夏」の第3楽章。これはもう、1st-Vnの加藤さんがまなじりを決して挑む激速テンポで、四人の気迫が伝わるすごい演奏。思い切りのよさと技巧とが見事なプレスト楽章となって、圧倒的でした。

以上で、前半のプログラムを終わります。続きはまた明日。

(*1):フランク・ブリッジ
(*2):うにの五線ノートから…~作曲家・木島由美子さんの楽しいブログ

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新井潤美『自負と偏見のイギリス文化~J.オースティンの世界』を読む

2013年07月25日 06時02分35秒 | -ノンフィクション
岩波新書で、新井潤美著『自負と偏見のイギリス文化』を読みました。「J.オースティンの世界」という副題からもわかるように、『高慢と偏見』または『自負と偏見』という代表作を持つイギリスの作家オースティンの評伝及び作品論という性格を持つ、18世期末から19世紀初頭にかけてのイギリス社会を扱った本です。本書の構成は、次のようなものです。

第1章 オースティンは「お上品」ではない~奢侈と堕落の時代のヒロインたち
第2章 パロディから始まる恋愛小説~分別と多感のヒロインたち
第3章 恋愛と結婚~女性の死活問題
第4章 アッパー・ミドル・クラスのこだわり
第5章 オースティンと現代~空前のブームの背景

オースティンの『高慢と偏見』は、たぶん学生時代に岩波文庫かなにかで一度読んだきりで、そのときはあまりピンと来なかったのだろうと思います。その後は、モノクロ映画の『高慢と偏見』を観ましたが、これはかなり記憶に残っています。解説本を先に読んでしまって原作が後になるなんて、本末転倒もはなはだしい状況ですが、実は活字のポイントが大きい(^o^;)光文社の古典新訳文庫にこのタイトルを見つけ、探している次第です。



イギリス社会における階級の意味は、東北農村の生活の中では、想像に難くありません。70年ほど前には、大地主~中小地主~自作農~小作農という歴然たる格差が存在していたわけで、縁組も似た階級どうしで行われていたようです。大地主階級になると、県内どこに行っても古い姻戚関係があることは珍しくありませんし、平成の現代にも、それぞれの家庭にかつての階級の残渣が残っていたりします。農地改革以後、テレビやマスメディアの影響もあり、かなり均質化してきているとはいうものの、それでも結婚生活の中で思いがけない波乱のタネになるものが実はかつての階級に由来するズレであったりするため、生まれや育ちを考慮に入れて、などと言い出す年寄りも。そんな話を聞くと、思わず『高慢と偏見』の世界にタイムスリップしたような錯覚を覚えます(^o^)/

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文庫本という発想はすごい

2013年07月24日 06時02分29秒 | 手帳文具書斎
考えてみれば、文庫本という発想、規格はすごい「発明」だと感じます。手に取ってちょうどよい大きさで、装丁も簡素で、値段も比較的安価で求めやすいものです。

日本では、岩波文庫あたりが最初(*)なのかと想像していますが、たしか岩波はドイツのレクラム文庫(*2)に範を取ったものと記憶しています。だとすると、レクラム文庫の規格を考え出した人がすごいと思います。どんな人で、どんな経緯で発想したのだろう?

ポケットに入る大きさで、いつでもどこでも取り出せて、旅先でも待合室でも、ビジネスホテルや病院のベッドの上でも、続きを読むことができる。こんな書籍は、本当に便利です。古典的名著に限らず、少し前に話題になった本から最新の文庫書き下ろしまで、多彩な内容に、あらためて驚きます。ハードカバーの単行本の魅力は充分に承知しながら、文庫本という発想に今更ながら感服です。

(*):文庫本に関する Wikipedia の解説
(*2):レクラム文庫~Wikipediaの解説

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ちょいとヘビーな影響が~「たかがヘビ一匹」とはいうものの

2013年07月23日 06時02分21秒 | アホ猫やんちゃ猫
アホ猫母娘が、何やら会話しています。

週のはじめの月曜日、ご主人はたいへんな大渋滞にあったんだって。なんでも、JR山形線の羽前千歳駅で、変電所の架線にヘビが上り、ショートしちゃったんだそうで、北山形駅では配電盤に高圧電流が過大に流れて火災になっちゃった(*1)とか。おかげで、北山形駅以北の奥羽線、左沢線、仙山線が軒並み運休になっちゃった。加えて雨降りだもの、車で大渋滞になるはずよね~。
変電所の架線でヘビの黒焼きだって。アタシたちがその場にいたら、ぜ~ったいにそんなヘマはさせないわ。さっそくつかまえて、奥さんに見せにいくわよ!なんたってアタシたち母娘は最強よ!

私「おいおい、息巻くのはいいけれど、車の上で昼寝をするのはやめてくれないかい。せっかくきれいにしたのに、足跡だらけになっちゃうじゃないか!」

それにしても、ちょいとヘビー過ぎる影響(*2)が出ています。たかがヘビ一匹とはいうものの、バカにできません。少し前にも、ハクビシンで信号故障が起こっていた(*3)はず。ヘビ一匹でも、大山はたしかに鳴動するのです。嗚呼!今日も大渋滞なのでせうか(ToT)

(*1):駅構内で配電盤火災、原因は架線にヘビ~2013年7月22日付け読売オンライン
(*2):新幹線、山形以北で運転見合わせ、全面復旧に一週間~2013年7月21日付け日本経済新聞
(*3):JR配電盤の火災~「現場の電気技術」

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山形交響楽団第230回定期演奏会でメンデルスゾーンの交響曲第2番「讃歌」等を聴く

2013年07月22日 06時03分11秒 | -オーケストラ
土曜出勤の翌日、貴重な日曜休日は、早朝からサクランボ収穫後の防除からです。朝食の後は頭からシャワーを浴び、午前中に夏季剪定した枝を焼却処分して汗をかき、一休みして午後から出かけました。行先は、もちろん山形テルサホール、山形交響楽団第230回定期演奏会です。指揮は、藤岡幸夫(Sachio Fujioka)さん。

演奏会本番前のプレトークが興味深かった。山響定期を振るのは四回目という藤岡さん、親友である飯森範親さんが、合唱団「山響アマデウス・コア」を「奇跡だ」とあまり褒めるものだから、「本当かよ?」と信じていなかったのだそうです。ところが、今回はじめて共演してみて、もうびっくり!これは間違いなく日本でナンバーワンの合唱団だと大絶賛です。リップサービスのうまい藤岡さんの言葉ですので、文字通り受け止めてよいのかどうか不安はありますが、ナンバーワン・クラスの合唱団に成長していると考えて大喜びすることにいたしましょう(^o^)/



さて本日のステージは、「ドイツ・ロマン派の礎」と題して、オール・メンデルスゾーンの特集プログラムです。

(1) 序曲「フィンガルの洞窟」Op.26
(2) 序曲「美しいメルジーネの物語」Op.32
(3) 交響曲第2番 変ロ長調「讃歌」Op.52

前半の序曲の楽器編成は、向かって左から1st-Vn(10)、2nd-Vn(8)、Vc(6)、Vla(6)が指揮台を取り囲みます。Vla の後方に Cb(4)が並び、弦楽セクションは 10-8-6-6-4 という編成。正面後方の木管セクションは、前列がFl(2),Ob(2)で、その後方にCl(2),Fg(2)が位置し、金管セクションは、左手奥にHrn(2),右にTp(2)、そしてTpとCbの間にTimpが陣取ります。ステージ最後方には合唱団が登る台が設置され、ちょっとベートーヴェンの「第九」のような雰囲気です。本日は、客演コンサートマスターに永峰高志さん、2nd-Vnにも平尾昌伸さんが客演で首席に座ります。

第1曲目:序曲「フィンガルの洞窟」、第2曲目:序曲「美しいメルジーネの物語」は、いずれもメンデルスゾーンらしい佳曲です。とりわけ、木管楽器の使い方がうまいと思います。たとえば「美しいメルジーネの物語」は、木管楽器で始まり、ヴィオラがそっと支える役割を果たしています。また、演奏のほうでも、木管楽器を突出して目立つようにはせず、少しだけ浮き彫りになるようなバランスにしていました。

あっという間に休憩。後半は、本日のメインとなる「交響曲第2番"讃歌"」です。

交響曲第2番「讃歌」は、トロンボーン3本による始まり、しかも一本はバス・トロンボーンのもよう。うわ~、カッコイイ!オルガンが低く響いて、このあたりは通奏低音を模した(意識した)のでしょうか。トロンボーンの主題は「とーてもイイヨ~」と聞こえます。これに対して、低音の木管の音は、なんて惚れ惚れしてしまうんでしょう。弦とフルートが一体となって奏されるあたり、ほんとにきれいです。消え入るようなクラリネット・ソロの後に続くところは、本当に優しく美しく素晴らしい。あ~、これがメンデルスゾーンの素顔なのだな~と思います。
何度か繰り返される主題は、どうしても「ハッコネノヤマハ、テンカノケ~ン!」と聞こえてしまいます(^o^)/
ヴァイオリン独奏が静かに消えて、Obを除く木管と弦が美しい旋律を奏でます。フルートも、オルガンの音を模したような響きを背景にしています。メンデルスゾーンは、木管の使い方がほんとにうまいと感じます。さらりと、でも印象的。高橋さんと鷲尾さんのファゴットの響きも、いいなあ。静かに第1部が閉じられます。

合唱団が登場する間に、オーケストラはチューニングをします。三人の独唱者が拍手で迎えられ、第2部が始まります。

第1曲、合唱の出だしから、すでに心を奪われました。2曲目、半田美和子さんのソプラノ・アリアと女声合唱。第3曲は、テノールの高橋さんによるレツィタティーフとアリア。第4曲、男声合唱に女声が加わり、混声合唱になります。第5曲、ホルンソロにオーケストラが続き、半田さんと馬原裕子さんによるソプラノ二重唱。ホルンと弦楽がずっと寄り添いますが、ここは実に美しい!そして大きく合唱が盛り上がって、再びソプラノの二重唱、そして合唱。思わずゾクッとします。
小休止の後、第6曲、テノールの高橋淳さんのアリアとレツィタティーフ。ソプラノが「夜は過ぎ去った」と宣言すると、Tb,Tpが再び輝かしく鳴り響きます。第7曲、合唱。「光の武器を手に取ろう」と歌う、実に輝かしい合唱。光の武器と言っても「スターウォーズ」のライトサーベル(?!)とは違うと思いますが(^o^)/
第8曲、合唱、アカペラで。なんと素晴らしい響き!オーケストラが入ってくるまで聴き惚れ、オーケストラが入ってくるとさらに聴き惚れて、という状態です。第9曲、テノールが立ち、ヴィオラとチェロ、コントラバスをバックに歌います。これにファゴットが加わり、さながら低音楽器の饗宴ですね。さらに、ソプラノにはヴァイオリンとフルートが加わり、華やかさを添えます。テノールとソプラノの二重唱。弦とフルートとファゴットをバックに、透明感のある響きです。
第10曲、最終合唱は男声から始まります。「諸国の民よ、主に栄光と力を捧げよ!」と歌います。「Danket dem Herrn und Ruhmt seinen Namen~」のところ、フーガですね。オーケストラもフーガ、合唱もフーガ、若いメンデルスゾーン君、お見事です。トランペットが鳴り響き、ティンパニが、オルガンが、トロンボーンが、そして再びバス・トロンボーンが「ハッコネノヤマハ、テンカノケ~ン!」を奏し、合唱が続いて「ハレルヤ!」を歌い、全曲を閉じます。

いや~、素晴らしかった!滅多に聴けない曲だからという興奮もありますが、なんといっても演奏の素晴らしさに大興奮です。ホルンの深々とした響きにも魅了されましたし、ほんとにいい演奏会でした。参院選の開票速報で放送時刻が早まった大河ドラマ「八重の桜~鶴ヶ城開城」の出だしを観られなかった残念さを軽く忘れさせてしまうほどの、素晴らしい演奏会でした。



終演後の交流会では、本日の指揮者・藤岡幸夫さんが得意のリップサービスを連発しながらも、お客さんの入りが今ひとつだったことに苦言を呈しておりました。たしかに、これはいささか残念なところですが、妻も公的な役割が割り振られていたようで、選挙の投票日当日の演奏会であることを考えれば、私一人で行くしかなかったというのは致し方ない現実だったでしょう。



むしろ、三人のソリストの皆さんが、合唱の素晴らしさ、レベルの高さと、山響の演奏とをそろって激賞していたのが印象的でした。ソプラノの二重唱の素晴らしさとともに、急遽代役を果たしていただいた高橋淳さんの心意気を感じたところです。

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富岡楽器でプレシャス・カルテット山形公演のチケットと音楽CDを購入する

2013年07月21日 06時07分23秒 | 散歩外出ドライブ
某イベントのために出勤した週末の某日、富岡楽器にて、7月25日(木):プレシャス・カルテット山形公演のチケットを購入して来ました。せっかくだからと、音楽CDの棚を物色したら、メロス・カルテットによるメンデルスゾーンの弦楽四重奏曲全集を見つけてしまいました。なんという偶然!先日の山形弦楽四重奏団第48回定期演奏会で、メンデルスゾーンの弦楽四重奏曲第1番を聴いたばかり(*1)で、今月は怒涛のメンデルスゾーン月間(*2)の予定。本日21日は、山響こと山形交響楽団第230回定期演奏会で、メンデルスゾーンの交響曲第2番「讃歌」他を聴く予定(*3)です。そして25日には、プレシャス・カルテットの演奏会で、やはりメンデルスゾーンの弦楽四重奏曲第1番が取り上げられることになっています。これは、しっかり聴いてきなさいという天の声なのでしょうか(^o^)/

(*1):山形弦楽四重奏団第48回定期演奏会でハイドン、清瀬保二、メンデルスゾーンを聴く~「電網郊外散歩道」2013年7月
(*2):この7月はメンデルスゾーン三昧か~「電網郊外散歩道」2013年7月
(*3):山形交響楽団第230回定期演奏会~山形交響楽団のサイトより
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備忘録ノートの消費速度

2013年07月20日 06時02分00秒 | 手帳文具書斎
これまで、備忘録ノートの消費速度は、B6判50枚で年間に6~7冊、A5判80枚で年間3~4冊というのを目安にしておりました。今年は、ツバメノートA5判50枚を使っていますが、すでに3冊目の半分位までに達しており、通算すると100~120ページになります。80枚に換算すれば、およそ1冊と半分くらいです。だいたい例年並みの消費速度と言ってよいと思います。この分だと、年末には何冊くらいになるかを概算してみました。

■80枚×2頁/枚×3冊ー目次5枚×2頁/枚×3冊=480頁ー30頁=450頁
■50枚×2頁/枚×5冊ー目次4枚×2頁/枚×5冊=500頁ー40頁=460頁

うーむ、おおよそ5冊ということか。B6版6冊では多すぎるということでA5判に変更したのでしたから、年間5冊ではやっぱり多すぎるかも。80枚に戻そうかとも思いますが、まずは1年を終えてからでしょうなあ。

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大雨の一日が過ぎて

2013年07月19日 06時02分36秒 | 季節と行事
東北地方、とくに山形県に大雨をもたらした雨雲も、ようやく峠を越したようです。昨日は、県内各地で川の水が堤防をこえて浸水したようで、南陽市や大江町、鶴岡市など被害地区の皆様にお見舞いを申し上げます。

当地付近の河川は、写真のようにだいぶ水量は多くなりましたが、幸いに危険水位に達する所まではいきませんで、なんとかもちこたえてくれたようです。ふだんはあまり有り難味を感じない堤防ですが、いざという時には実に頼りになります。国土交通省・山形河川道路事務所のライブカメラ(*1)を見ながら、ネットで交通情報を確認し、終日ハラハラしておりました。ここ数日、名古屋方面に出張で出かけていた娘も、山形新幹線が運休とのこと。仙台まで足を伸ばし、遅くバスで帰ってきて、疲労困憊だったようです。我が家の元気老母は、畑仕事ができず一日中ずっと退屈したそうです。パーマ屋さんに出かけておめかししてきたようで、骨休めにもなって良かったのかもしれません。

山形県では、毎年、今の時期に大雨の被害が出て梅雨が明けるのが恒例となっていますが、そんな恒例は守らずにすんなりと梅雨が明けてほしいものです(^o^;)>poripori

(*1):国土交通省山形河川道路事務所・山形の河川防災情報

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坂木司『和菓子のアン』を読む

2013年07月18日 06時02分08秒 | 読書
高田郁『みをつくし料理帖』シリーズをきっかけに、吉田篤弘『それからはスープのことばかり考えて暮らした』や有川浩『植物図鑑』など、料理や食べ物に関する小説を続けて読んでいますが、こんどは和菓子です。光文社文庫の坂木司著『和菓子のアン』を読みました。

主人公の梅本杏子は、身長は150cmと小柄ですが、本書中のデータを用いて計算するとBMI=25.3 と、「コロちゃん」の愛称のとおりのようです。でも、高校を卒業して働き口を探すあたりの経緯には、記憶を取り出す速さから見た頭の良さというよりも、むしろ「聡明さ」を感じます。働き始めたデパートの地下食品売り場にある「和菓子舗・みつ屋」は、切れ者の椿はるか店長に職人希望の店員・立花早太郎、アルバイト仲間の大学生・桜井さん、そして杏子の四人が働く小さなお店です。でも、飛び込んでくるお客さんの様子や注文の内容から企業の政変を予測したり(第1話:「和菓子のアン」)、七夕の日の遠距離恋愛をひそかに応援したり(第2話:「一年に一度のデート」)するなど、内容は多彩です。

せっかくの推理ものの要素を持つお話ですので、あらすじは省略いたしますが、ちょうどホテルにいろいろなお客が入れ替わり立ち替わり出入りして様々な事件が起こるグランドホテル型の小説手法と、カウチポテト・スタイルで寝そべりながら事件の謎解きをするミステリーの手法とを混ぜ合わせたようなものになっています。これが、案外おもしろい。とくに、人畜無害中高年には、殺人事件の起こらないミステリー風仕立てという点が、けっこうポイント高いです(^o^)/

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7月上旬の日曜日に

2013年07月17日 06時03分33秒 | 季節と行事

七月上旬の日曜日に、外出先で回転寿司屋に入ろうとしたら、すごい行列でした。ずいぶん車が多いなあと思ってはいましたが、だいぶ人出が多かったようです。先月末に、官公庁ではボーナスが出たでしょうし、七月の声を聞いて、民間でもボーナスが出たところが多かったのでしょうか。お中元の買い物などもあり、外出したついでに、お寿司でも食べようかとなった人が多かったためではないかと思います。 こういう時は、すいているところをさがしてうろうろするよりも、じっと辛抱して待っているのが賢明です。待ちきれずに諦めた人たちが離脱していくためか、意外に早く順番が回って来ました。そんなものです。 当方も、ありがたいことにボーナスが出ました。定年退職後に今の勤務先に勤め始めて三ヶ月あまり。賞与などいただくのも気がひけるのですが、健康で働けることに感謝しましょう。

 

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