電網郊外散歩道

本と音楽を片手に、電網郊外を散歩する風情で身辺の出来事を記録。退職後は果樹園農業と野菜作りにも取り組んでいます。

宮城谷昌光『公孫龍』巻1「青龍篇」を読む

2024年05月18日 06時00分09秒 | -宮城谷昌光
令和6年4月刊行の新潮文庫で、宮城谷昌光著『公孫龍』巻1「青龍篇」を読みました。実際は購入後2冊を通読しており、二度目の読了ではあるのですが、記事にするのは初めてですので再読とはせずに読了記事としたものです。

周の王子稜は、腹黒い陳妃の陰謀により周王の命で燕に人質として送られることとなります。途中、護衛役の召公祥の心遣いを受けながら北へ進みますが、鋸鹿沢で山賊の襲撃を受けている趙の二公子を救います。この時の戦闘で馬車が壊れ、燕王に渡すべき周王の書翰の入った匣が破損し、文字が書かれた木簡を読んでしまいます。実は我が子を太子としたい陳妃によって書翰はすり替えられており、王子稜を殺害するか生涯幽閉するようにと燕王に依頼する内容だったのです。

王子稜は愕然としますが、召公祥の機転で王子稜は行方不明とし、山賊の襲撃から救った趙の二公子の求めに応じただの商人「公孫龍」として趙の都である邯鄲を目指すことになります。超の内情も実は穏やかではなく、長男である公子章を太子として確立したい田不礼が公子何と公子勝を暗殺しようとした陰謀でした。再度の襲撃を退け、公孫龍は趙の二公子の信頼を得ますが、燕に向かった召公祥は王子稜を暗殺した疑いで燕に幽閉されてしまいます。

有能な配下を多く得た公孫龍は、召公祥を救うために燕に向かい、郭魁の仲介により燕王に面会し、召公祥を救出します。燕は稜の亡き母の生国であり、公孫龍は燕王の甥にあたることになりますが、これで燕と趙の二国を自由に往来できる特権を得たことになります。趙の公子何が趙王となり、趙王を退き外征に専念することとなった主父に招かれて再び趙に向かった公孫龍は、中山との戦いの場で楽毅の襲撃から主父を救い、中山の滅亡を目にします。



久々の宮城谷作品ですが、うーむ、やっぱり公孫龍は強すぎる。私のイメージでは、「白馬非馬説」などという屁理屈を唱えるヘンな人、という先入観があっただけに、作者が作り上げた主人公とその物語は、スーパーマンの貴種流離譚になっているみたい。その分だけ、史実になどとらわれずに空想の翼を広げた痛快冒険活劇になっているようです。続きは巻2「赤龍篇」へ。

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