ままちゃんのアメリカ

結婚42年目のAZ生まれと東京生まれの空の巣夫婦の思い出/アメリカ事情と家族や社会について。

レーンにワシントンにチェスにダービーに

2017-12-05 | アメリカ事情

1960年に出版されたHarper Lee・ハーパー・リーの原題: To Kill a Mockingbird(物まね鳥を殺すのは=邦題: アラバマ物語)は、こちらの高校生の課題図書でもある。公民権運動が高まりつつある時代の合衆国南部の話である。


その話の中で、モーディ・アトキンソンは、アレクサンドラ叔母さんに歓迎の贈り物として、レーンケーキを贈る。レーンケーキは、アラバマレーンケーキとも呼ばれ、このケーキを作ることが9年生の長女の宿題になった。 本物は、バーボンを多量に使うが、勿論高校生だから、ウィスキーなしである。


このレーンケーキは、南部にありがちな、芳醇なレイヤードケーキ(段になったケーキ)である。娘は、ホワイトグレープジュースを、ウィスキーの替わりに使った。ケーキ生地には、レーズン、ココナッツフレイクス、ピーカンなどを入れて作るフルーツケーキ的な物で、フロスティングには、普通のヴァニラフロスティングを使った。


焼いたケーキは他のフルーツケーキのように、しばらく置いておくと、ちょうどよいおいしさになる。娘は、そのケーキを学校へ持っていき、英語のクラスで、教師とクラスで試食したら、評判は上々であった。南部ではこれをクリスマスケーキともする習慣が、あるそうだ。


デカダントなレーンケーキ: delicious Magazine から。

 

我家で二月のワシントン誕生日に焼くのがワシントン(あるいはマーサ・ワシントン)ケーキである。パウンドケーキにドライカランツを入れて焼く、デンス(Dense=稠密)なケーキで、焼き上がると重い。レセピは下の写真に。これはリッチなケーキなので、分厚い切方よりも1インチか3cmくらいにスライスして頂くとよりおいしく感ずる。フロスティングもアイシングも必要ない。 我家ではBundt(バント)型で焼く。 普通の長方形の型ならば、おそらく二個使わなければならない。 

 

私の使うレセピは、McCall社が発行したレセピカード集からで、もう36年は使用しているので、1970年代に頂いたBundt型と同様、貫禄がついている。このBundt型は、軽めだが、具合よく焼けるので、こんなに老いさらばえていても、新品に替える気持ちはさらさらない。使い慣れた料理器具は、愛着があるし、使いやすいし、良く働いてくれる。

 

     

 

 sunmaid.com

 

このケーキのは、ケーキ作りの上手だったマーサ・ワシントンも作ったそうで、1830年に出版された”The Cook Not Mad, Or Rational Cookery"と言う料理本では、すでにワシントンケーキと呼ばれている。ワシントンケーキは、酵母を使って作るレセピもあるが、私の愛用するレセピは使わない。

 

Chess Pie (チェスパイ)は、あのパン作り名人の故ジェイムス・ベアード氏が、その著書American Cookery (1972)で、英国からもたらされ、合衆国ニューイングランド地方やヴァージニア州で好まれてきた、と述べている。このパイを夫の母方の祖母が家族の為によく作っていたそうだ。


何故Chess(チェス)パイというのかは、不明だが、ある説によれば、Pie Chest(パイをいれておく蝿帳のような戸棚)に由来しているという。ある説では、”It's jes' (just) pie"から来ているのでは、としているし、他には、チェスをする部屋で食べられたからだ、とするが、本当のところはわからない。 マーサ・ワシントン(大統領夫人)の料理本にもこのパイのレセピはある。ということは、コロニアル時代から作られ、供されてきたらしい。

http://sweets.seriouseats.com/images/2012/03/20120301-195206-chess-pie-500x375-100.jpg

 

材料は、パイクラスト、少量の小麦粉、卵、バター、グラニュー糖、ヴァニラ、コーンミール(コーンスターチではない)で、レモンチェスパイ、ヴィネガーチェスパイなどのバリエイションもある。夫の祖母が作ったのは、普通のヴァニラ風味のチェスパイである。このパイは義母の懐かしい家庭の味で、気取らない、簡単で素朴なデザートである。

 

チェスパイを少し変化させたようなのが、Derby Pie・ダービーパイである。 ケンタッキーダービーにちなんで、1950年ケンタッキー州プロスペクトのメルローズ・インの料理人、カーン夫妻と息子が作り、いろいろ変化をさせてきた。このダービー・パイという名は、トレードマークとして登録されている。


そのレセピは、極秘だが、同じようなパイを別の名前で売り出しているメーカーも2,3いる。その製法、名称をめぐっては、多数回、裁判も起こされてきたので、2013年には、カーンズキッチンは、アメリカの訴訟最多の菓子製造者、と命名されている。 


さてどんなパイなのか。簡単に言えば、ピーカンパイのピーカンの代わりにクルミを用い、チョコレートのレイヤーがそのクルミの下にあるパイである。 


ネヴァダからケンタッキー州に引っ越した義姉家族を訪ねた時、頂いたが、甘い甘いダービーパイで、創業から少なくとも25回商標や製法を守るために訴訟を起こしてきたのを考えると、ただ単に甘いだけではなく、bitter sweet (ほろ苦い)なパイである。


 

  

http://kaseytrenum.com                https://alchetron.com/Derby-Pie

 

 

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