山里に生きる道草日記

過密な「まち」から過疎の村に不時着し、そのまま住み込んでしまった、たそがれ武兵衛と好女・皇女!?和宮様とのあたふた日記

砂漠のポツンと一軒のカフェで…

2024-01-05 22:16:26 | アート・文化

 録画で映画「バグダッドカフェ」を観る。制作国は西ドイツだが、舞台はロサンジェルスとラスべガスを結ぶ砂漠の中のハイウェイ沿いにあるモーテル・カフェだ。監督はパーシー・アドロン、1987年公開の映画。監督も出演者も有名とは言えなかったが、ミニシアターで上映されて以来80年代でロングランヒットとなる。

  

 荒涼とした砂漠のハイウェイにトラックが無機質に走り、その脇に貨物輸送の鉄道がとおる。そこに褐色の砂漠に褐色の夕日がときおり映し出される。そこに、いかにも場末の殺風景なカフェであることに意味が込められている。そのため、お客もまばらで経営もやる気のないわけあり家族がたむろする。

    

 そこに、夫婦喧嘩で別れた巨体のドイツ人妻・ジャスミンが車から出て砂漠を歩きだす。必死の思いでたどりついた先がこのカフェだった。そのカフェのブレンダは夫を追い出したばかりのストレス満載の女主人。大汗を拭く巨体のジャスミンと苛立つ黒人・ブレンダとはそれぞれタオルで顔を拭って初めて出会うのが印象的な出だしだ。

 始めは登場する人間の関係がよくわからなかったが二度観てその奥行きが分かってきた。当初の怒鳴り合うブレンダのタンカに辟易しそうだったが、それがジャスミンの登場でじわじわ変わっていく展開が見どころだ。

   

 カフェでコーヒーを飲みたいと注文しても、「コーヒーマシンは修理が必要」という言葉もこの物語を象徴する。またジャスミンが使っていたポットにコーヒーが入っていて、それでとりあえず飲めたというのも希望の伏線となる。

 小さなカフェには、ヨーロッパ人・アフリカ系アメリカ人・ネイティブアメリカンという多様な人種が登場し、そこに、まともではないような癖のある人物が事態を攪乱させる。ヒーローもイケメンも美女もいない。

   

 そうしたなかで、ジャスミンの掃除・手品などのサポートがカフェを盛り上げる。いつのまにか、お客が集まり出し、ミュージカルのようなショータイムまで上演されるようになる。始まりの荒涼とした場面が後半で笑顔と信頼のきずなが形成されていく場面へと仕組んでいくところが感動的だ。80年代のレトロさは今見ても新鮮でもあった。  

  

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