人生の目的は音楽だ!toraのブログ

クラシック・コンサートを聴いた感想、映画を観た感想、お薦め本等について毎日、その翌日朝に書き綴っています。

出口大地 ✕ 前田妃奈 ✕ 東京交響楽団でモーツアルト「ヴァイオリン協奏曲第4番」、同「交響曲第39番」、アリアーガ「幸福な奴隷」序曲を聴く ~ 第58回モーツアルト・マチネ

2024年06月03日 00時01分07秒 | 日記

3日(月)。時事通信によると、世界三大音楽コンクールの一つ、エリザベート王妃国際音楽コンクール(ヴァイオリン部門)の最終審査がベルギーのブリュッセルで1日までに行われ、吉田南さん(25)が6位に入賞しました

彼女は現在 MINAMI の名で活動していますが、一層の活躍を期待したいと思います

ということで、わが家に来てから今日で3429日目を迎え、韓国軍合同参謀本部は2日、北朝鮮が1日から風船を韓国に向けて約600個飛ばしたが、風船に取り付けられた袋には煙草の吸殻や排紙、ビニールなどのゴミが入っていた  というニュースを見て感想を述べるモコタロです

     

     韓国からの風船にはDVD等が付けられてた やはり両国の経済格差は歴然としてるね

【その2】

     

     ゴミは分別して自国に出して下さい!  そうしないから ”分別のない国” と言われる

         

昨日、ミューザ川崎シンフォニーホールで、ミューザ川崎 ✕ 東京交響楽団の「第58回 モーツアルト・マチネ」公演を聴きました プログラムは①アリア―ガ「幸福な奴隷」序曲、②モーツアルト「ヴァイオリン協奏曲第4番ニ長調 K.218」、③同「交響曲第39番 変ホ長調 K.543」です 演奏は②のヴァイオリン独奏=前田妃奈、指揮=出口大地です

出口大地は第17回ハチャトゥリアン国際指揮者コンクール指揮部門で日本人で初めて優勝 関西学院大学、東京音楽大学で学び、2023年ハンスアイスラー音楽大学ベルリン指揮科修士課程修了

 

     

オケは10型で、左奥にコントラバス、前に左から第1ヴァイオリン、チェロ、ヴィオラ、第2ヴァイオリンという対抗配置をとります コンマスは小林壱成です

1曲目はアリア―ガ「幸福な奴隷」序曲です この曲はスペイン生まれのフアン・クリソストモ・デ・アリア―ガ(1806-1826)が1819年に作曲した同名オペラの序曲です

自席は1階センターブロック右側ですが、チューニングが終わるころ、自席の後方でケータイ着信音が鳴っているのが聴こえます しかし止める気配がありません するとそのすぐ前の席の男性が後ろを振り返って「何やってんだよ」と注意しました。しかし音は鳴りやまず、遂に指揮者が指揮台に上がり演奏を開始しました 出口は緊張で着信音が耳に入っていなかったと思われます 演奏開始後にやっと鳴りやみましたが、これはハッキリ言って「演奏妨害」です 出演者に対して失礼であると同時に周囲の聴衆を不愉快にします コンサートではスマホ、ケータイの電源を切るのは最低限のマナーです 今さら こんなことをいちいち書かなければならないなんて、情けないです

さて演奏です   出口の指揮によりゆったりしたテンポで開始され、後半はテンポアップして軽やかな音楽が展開します 弦楽器や木管楽器がよく歌い、まるでロッシーニの歌劇の序曲を聴いているようです 20歳で生涯を終えた作曲家の14~15歳の時の作品だとは思えない閃きを感じる作品でした

     

2曲目はモーツアルト「ヴァイオリン協奏曲第4番ニ長調 K.218」です この曲はウォルフガング・アマデウス・モーツァルト(1756-1791)が1775年に作曲した作品です 第1楽章「アレグロ」、第2楽章「アンダンテ・カンタービレ」、第3楽章「ロンド:アンダンテ・グラツィオーソ ~ アレグロ・マ・ノン・トロッポ」の3楽章から成ります

ヴァイオリン独奏の前田妃奈は2022年の第16回ヘンリク・ヴィエニアフスキ国際ヴァイオリンコンクールで優勝。2019年に日本音楽コンクール第2位、20年に東京音楽第1位 全国各地でリサイタル、オーケストラと共演を重ねている。現在、東京音楽大学に特別奨学生として在学中

協奏曲のため、オケは8型に縮小し、前田を迎えて演奏に入ります 前田の演奏の良いところは、喜びに満ちた音楽を身体全体で表現していることです 第1楽章と第2楽章のカデンツァは鮮やかでした 第2楽章では弦楽器のアンサンブルが美しく響きました 全楽章を通して、出口 ✕ 東響がしっかりソリストを支えました

大きな拍手に前田は、アンコールにヨアヒム「スコティッシュ・メロディ」を鮮やかに演奏、再び大きな拍手に包まれました

     

最後の曲はモーツアルト「交響曲第39番 変ホ長調 K.543」です この曲は1788年夏の3か月間に第40番、第41番とともに作曲されました 第1楽章「アダージョ ~ アレグロ」、第2楽章「アンダンテ・コン・モート」、第3楽章「メヌエット:アレグレット」、第4楽章「アレグロ」の4楽章から成ります    私は、モーツアルトの交響曲の中で一番好きな「第39番」の一番好きな第3楽章「メヌエット」の「トリオ」の部分をどのように演奏するかが楽しみで聴きにきたようなものなので、期待が高まります

オケは10型編成に戻ります

出口の指揮で第1楽章が堂々たる序奏で開始され、徐々にテンポアップします 硬いマレットで打ち込まれるティンパニとトランペットが曲に推進力を与え、祝祭的な雰囲気を醸し出します 第2楽章では弦楽セクションのアンサンブルが美しい そしていよいよ第3楽章です。出口は比較的速いテンポで開始し、快速のまま演奏を進めます そして「トリオ」に入ると極端にテンポを落とし、クラリネット、フルート、ファゴットによる「トリオ」をじっくりと歌わせました これにはシビレました 私にとっては理想のテンポです これをアーノンクールみたいに超高速で演奏されると興ざめします そして第4楽章に入りますが、弦楽器同士のやり取り、木管楽器同士の対話による快速テンポの演奏が展開し、爽快感溢れるフィナーレを築き上げました 文句なしの素晴らしい演奏でした 私の中で出口大地の高感度が 大幅にアップしました

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METライブビューイングでプッチーニ「つばめ」を観る ~ エンジェル・ブルー、ジョナサン・テテルマン、エミリー・ポゴレルツ、ベクゾット・ダブロノフにブラボー!

2024年06月02日 00時05分26秒 | 日記

2日(日)。わが家に来てから今日で3428日目を迎え、元不倫相手への「口止め料」を巡って有罪判決を受けたトランプ前大統領は5月31日、「不正な裁判だ。我々は控訴する」との意向を明言したが、評決後に集まった小口現金は3480万ドル(約54億円)にのぼり、トランプ陣営としての1日の記録を更新した  というニュースを見て感想を述べるモコタロです

     

     敗訴しても金集めをする 商魂逞しさは見上げたものだが 裁判費用に消えゆく運命!

 

         

昨日、新宿ピカデリーでMETライブビューイング、プッチーニ「つばめ」を観ました これは今年4月20日に米ニューヨークのメトロポリタン歌劇場で上演されたオペラのライブ録画映像です 出演はマグダ=エンジェル・ブルー、ルッジェーロ=ジョナサン・テテルマン、リゼット=エミリー・ポゴレルツ、プル二エ=ベクゾット・ダブロノフ。管弦楽=メトロポリタン歌劇場管弦楽団、指揮=スペランツァ・スカップッチ、演出=二コラ・ジョエルです

     

「つばめ」はジャコモ・プッチーニ(1858-1924)がジュゼッペ・アダ―ミの台本により1913年から16年にかけて作曲した全3幕から成るオペラ(抒情喜劇)です 本作はウィーンの劇場からオペレッタの作曲を依頼されたことから手掛けられましたが、曲の完成間近になって第一次世界大戦が勃発し、オーストリアがイタリアの敵国になったため、初演は1917年3月に中立国モナコのモンテカルロ劇場で行われ、大成功を収めました

金持ちの銀行家ランバルドに囲われている高級娼婦のマグダは、ランバルドの友人の息子ルッジェーロと恋に落ち、ランバルドに別れを告げる コート・ダジュールで愛の生活を送る二人の元に、ルッジェーロの母から、マグダとの結婚を喜ぶ手紙が届く ルッジェーロは母に、二人の結婚を許してくれるよう手紙を送っていたのだ ルッジェーロは喜び、マグダに手紙を見せるが、自分の過去を悔やむマグダはためらう 彼女はルッジェーロに高級娼婦だったことを告白し、「あなたの家には入れない」と告げランバルドの元に戻っていくのだった

     

私は今回初めてこの作品を観賞しました プッチーニと言えば真っ先に「ラ・ボエーム」「トスカ」「蝶々夫人」「トゥーランドット」に代表される”泣かせるオペラ”を頭に思い浮かべますが、この「つばめ」は、それらの有名曲とは違う(誰も死なないし)、同じ高級娼婦を主人公にしたヴェルディ「椿姫」とも違う、喜劇的な要素と感傷的な要素をミックスした独特のオペラです

「つばめ」というタイトルは、第1幕でヒロインのマグダの手相を見ていた詩人プル二エが「貴女は恋に落ちて つばめのように海を渡り、恋が終わって 再びつばめのように舞い戻る」と予言する場面から取られています

マグダ役のエンジェル・ブルーは1984年カリフォルニア州生まれのソプラノです UCLAで音楽博士号を取得。2007~2010年にロサンゼルス・オペラの若手芸術家育成プログラムに参加後、欧州で国際的キャリアをスタートさせました METライブでは「カルメン」のミカエラ役が記憶に新しいところです 第1幕冒頭のアリア「ドレッタの夢」をはじめ、声に力があり、伸びのある美しい歌唱で聴衆を魅了しました

ルッジェーロ役のジョナサン・テテルマンは1988年にチリのカストロで生まれ、養子縁組の結果、ニュージャージー州プリンストンで育ったテノールです マンハッタン音楽学校とマスネ音楽学校で学びました 2021年にはドイツ・グラモフォンと専属解約を結びました 開演前にMETのピーター・ゲルブ総裁がステージに現れ、「テテルマンは花粉症に悩まされており不調であるが、本日は出演する。ご理解ください」とアナウンスしていましたが、実際に歌い始めると、まったく不調を感じさせない張りのあるテノールを聴かせてくれました

リゼット役のエミリー・ポゴレルツはミルウォーキー出身のソプラノです フィラデルフィアのカーティス音楽院を2018年に修了。ワシントン国立オペラの「キャンディード」でデビュー 2020年からバイエルン国立歌劇場のメンバーとして活躍しています 軽やかな歌唱と俊敏な演技で、マグダの小間使いリゼットを歌い演じました

プル二エ役のベクゾット・ダブロノフはウズベキスタン出身のテノールです 2021年にドミンゴ主宰「オペラリア」で第2位を獲得しました リリカルな歌唱で演技力もありました

     

メトロポリタン歌劇場管弦楽団の指揮をとったスペランツァ・スカップッチは1973年ローマ生まれの女性指揮者です 10歳でサンタ・チェチーリア音楽院に入学し、ピアノと室内楽を学び、ジュリアード音楽院で研鑽を積みました 2022年にイタリア人女性指揮者として初めてスカラ座の指揮台に立ち、25/26シーズンから英国ロイヤル・オペラの首席客演指揮者に就任します 彼女は帝王ムーティの愛弟子で、ムーティに所縁のある東京・春・音楽祭では2018年にロッシーニ「スターバト・マーテル」を、2020年にはプッチーニ「三部作」(「外套」「修道女アンジェリカ」「ジャン二・スキッキ」)を指揮しています 今回の「つばめ」でも、歌手に寄り添いつつ、ヒロインの悩み、悦び、哀しみをオケから引き出していました

【訂正】2020年のプッチーニ「三部作」はコロナ禍の影響で中止となりました。クラシックファンさんからご指摘がありました。お詫びのうえ訂正いたします(2日14:40)。

二コラ・ジョエルによる演出は、アールデコを基調とした洒脱な雰囲気満点の舞台で、とても美しく 見応えがありました METライブビューイングでは幕間に舞台裏の様子が映し出されますが、いかに大掛かりな装置が多くの人々によって準備され、片づけられ、模様替えされていくかが分かります オペラは「総合芸術」と言われますが、陽の当たる表のステージの裏では、名もない多くのスタッフが働いているからこそ成り立っているのだとつくづく思います

     

METライブビューイング「つばめ」の上映は休憩1回、出演者へのインタビュー等を含めて2時間44分です 新宿ピカデリーでは6日(木)まで上映されます

さて、次回の「METライブビューイング2023-2024」は 今シーズン最後のオペラ、プッチーニ「蝶々夫人」です ヒロインの蝶々夫人を歌うのは、”遅すぎるMETデビュー”のアスミック・グリゴリアン 6月21日~27日の上映が待ち遠しいです

 

     

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ステファニー・チルドレス ✕ 鳥羽咲音 ✕ 読売日響でエルガー「チェロ協奏曲」、ドヴォルザーク「交響曲第9番”新世界より”」、シベリウス「フィンランディア」を聴く

2024年06月01日 00時04分32秒 | 日記

6月1日(土)。月日の流れは速いもので、今日から6月です 6月と言えばジューンブライトですね、ってそれじゃ6月の照明だよ

ということで、わが家に来てから今日で3427日目を迎え、トランプ前米大統領が自身の不倫の口止め料を不正に処理したとして罪に問われている裁判で、陪審団は30日、同氏を34件の罪状すべて有罪とする評決を全員一致で下した  というニュースを見て感想を述べるモコタロです

     

     米国に良心が残っていることが証明されたが 恥知らずのトランプは大統領選に出る

 

         

昨日、夕食に「鶏の山賊焼き」「生野菜とアボカドのサラダ」「ブナピーの味噌汁」を作りました 前回は豚肉で山賊焼きを作ったので、今回は鶏肉にしました 鶏肉は揚げ焼きにしてありますが、すごく美味しかったです

     

         

昨夜、サントリーホールで読売日響「第672回名曲シリーズ」を聴きました プログラムは①シベリウス:交響詩「フィンランディア 作品26」、②エルガー「チェロ協奏曲 ホ短調 作品85」、③ドヴォルザーク「交響曲第9番 ホ短調 ”新世界より” 作品95」です 演奏は②のチェロ独奏は鳥羽咲音、指揮はステファニー・チルドレスです

ステファニー・チルドレスは1999年ロンドン生まれ、25歳の女性指揮者 幼少期からヴァイオリンを始め、セント・ジョンズ・カレッジ(ケンブリッジ大学)で音楽を専攻し、指揮者としての活動を開始、2020年にパリで開催されたコンクール「ラ・マエストラ」で第2位を受賞し脚光を浴びる それ以降、世界各地のオーケストラに客演している 2024/25シーズンからバルセロナ響の首席客演指揮者に就任する

     

オケは14型で、左から第1ヴァイオリン、第2ヴァイオリン、チェロ、ヴィオラ、その後ろにコントラバスといういつもの読響の並び。コンマスは元神奈川フィル・コンマスの﨑谷直人、その隣は長原幸太というダブルトップ態勢を敷きます

1曲目はシベリウス:交響詩「フィンランディア 作品26」です この曲はジャン・シベリウス(1865-1957)が1899年に作曲、同年11月4日にヘルシンキで初演され、その後1900年に改訂、同年7月2日にヘルシンキで改訂初演されました なお、この曲は当初、1899年に上演された歴史劇の最後のシーン「フィンランドは目覚める」の付随音楽として発表されましたが、翌1900年にパリ万国博覧会に招かれたヘルシンキ・フィルのために、単独の交響詩に改訂されました

拍手の中、ステファニー・チルドレスが登場し指揮台に上がりますが、ショートヘアでスマートな体型の彼女は、見るからにクイーンズ・イングリッシュを話すクレバーなイギリス人女性というイメージがぴったりです

チルドレスの指揮で演奏に入りますが、ゆったりしたテンポで金管楽器を重量感たっぷりに歌わせます。そうかと思うと速いテンポに移ると一気にアクセルを踏んで、オケを煽り立てます ダイナミクスが明確で、見通しの良い演奏が繰り広げられます 読響のゴージャスなサウンドが生かされた爽快な演奏でした

2曲目はエルガー「チェロ協奏曲 ホ短調 作品85」です この曲はエドワード・エルガー(1857ー1934)が1919年に作曲、同年ロンドンで初演されました 第1楽章「アダージョ ~ モデラート」、第2楽章「レント ~ アレグロ・モルト」、第3楽章「アダージョ」、第4楽章「アレグロ ~ モデラート ~ アレグロ・マ・ノン・トロッポ」の4楽章から成ります

チェロ独奏の鳥羽咲音(とば さくら)は2005年ウィーン生まれの19歳。6歳から毛利伯郎に師事。国内外のコンクールで優勝・入賞を重ね脚光を浴びる 23年8月には読響サマーフェスティバル「三大協奏曲」に出演し絶賛される 22年からベルリン芸術大学でJ・P・マインツに師事

ソリストの鳥羽が 白を基調とした小さな花柄模様の華やかな衣装で登場、チルドレスの指揮で第1楽章の演奏に入ります   鳥羽の演奏を聴いて思うのは、研ぎ澄まされた弱音による抒情的な演奏が並外れて素晴らしいということです    第1楽章冒頭や第3楽章「アダージョ」においてその特徴がよく表れていました   一方、速いパッセージでは技巧を凝らして鮮やかに弾き、どこまでも気品のある演奏を展開しました

満場の拍手に鳥羽は、富岡廉太郎率いるチェロ・アンサンブルをバックに、まるでエリック・サティがタイトルを付けそうな、ドヴォルザーク「私にかまわないで」をチャーミングに演奏、再び大きな拍手に包まれました

昨年の「読響三大協奏曲」でドヴォルザーク「チェロ協奏曲」を弾いた時にも思いましたが、鳥羽は若手屈指の逸材で、将来が楽しみです

     

なお、音楽ライターの飯尾洋一氏が「プログラム・ノート」に次のように書いています

「この曲の初演はオーケストラの練習不足により失敗に終わったが、その時チェロ奏者として参加していたジョン・バルビローリはその後指揮者に転向し、1965年にジャクリーヌ・デュ・プレの独奏でロンドン交響楽団を指揮して同曲を録音した この録音がセンセーショナルな成功を収めたことで作品の真価が広く知れ渡ることになった

その録音が下の写真のCDに収録されています 1965年8月19日の録音です

     

プログラム後半はドヴォルザーク「交響曲第9番 ホ短調 ”新世界より” 作品95」です    この曲はアントニン・ドヴォルザーク(1841-1904)がニューヨークの私立ナショナル音楽院の院長としてアメリカ滞在中の1893年に作曲、同年ニューヨークで初演されました  第1楽章「アダージョ ~ アレグロ・モルト」、第2楽章「ラルゴ」、第3楽章「スケルツォ:モルト・ヴィヴァーチェ」、第4楽章「アレグロ・コン・フォーコ」の4楽章から成ります

この曲においても、チルドレスの指揮はダイナミクスが明快で、緩急強弱自在の指揮ぶりを発揮します 第2楽章「ラルゴ」では、予想通りイングリッシュホルンで「家路」のテーマを吹いた北村貴子が、”いいところ”を全部かっさらっていきました この楽章最後の弦楽トップによる八重奏はしみじみと素晴らしい演奏でした 第3楽章も第4楽章もかなり速いテンポですっ飛ばし爽快な演奏を展開しますが、第4楽章冒頭は、どうしても”鉄道オタク”ドヴォルザークの”ドヤ顔”を思い浮かべます どう聴いたって あの冒頭の音楽は、機関車が発車する時の推進力を表しています

満場の拍手とブラボーが飛び交う中、カーテンコールが繰り返されました この日も事前にレセプショニストに、カーテンコール時のスマホによる写真撮影がOKであることを確かめておいたので 写メしました 写メしながら、チルドレスも鳥羽咲音と同じようにまだ若いし、将来が楽しみだと思いました

     

     

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新国立オペラ「コジ・ファン・トゥッテ」初日公演を観る ~ セレーナ・ガンベロー二、ダニエラ・ピー二、ホエル・プリエト、大西宇宙、九嶋香奈枝にブラボー!

2024年05月31日 01時37分51秒 | 日記

31日(金)。月末を迎えたので、恒例により5月の3つの目標の実績をご報告します ①クラシック・コンサート=19回、②映画鑑賞=12本、読書=9冊でした ただし、②はNetflixで観た「ミッション・インポシブル:デッド・レコニング」と「三体」(全8話)を含みます。①は5月の3連休の「ラ・フォル・ジュルネ音楽祭」(6公演)が大きな割合を占めました

ということで、わが家に来てから今日で3426日目を迎えビートルズのジョン・レノンが1960年代に使用した12弦のアコースティックギターが、米ニューヨークで29日競売にかけられ、285万7500ドル(約4億5千万円)で落札された  というニュースを見て感想を述べるモコタロです

     

     落札した気持ちは?  抱きしめたい!  誰のために演奏したい? From me to you

 

         

昨日、夕食に「青椒肉絲」「生野菜とアボカドのサラダ」「舞茸の味噌汁」を作りました 青椒肉絲を作ったのは、先日のカレー用の牛肉が余ったので早めに使おうと思ったからです

     

         

昨夜、新国立劇場「オペラパレス」でモーツアルト「コジ・ファン・トゥッテ」初日公演を観ました 出演はフィオルディリージ=セレーナ・ガンベロー二、ドラべッラ=ダニエラ・ピー二、フェルランド=ホエル・プリエト、グリエルモ=大西宇宙、デスピーナ=九嶋香奈枝、ドン・アルフォンソ=フィリッポ・モラーチェ。合唱=新国立劇場合唱団、管弦楽=東京フィル、指揮=飯森範親、演出=ダミアーノ・ミキエレットです

     

「コジ・ファン・トゥッテ、または恋人たちの学校」はウォルフガング・アマデウス・モーツァルト(1756-1791)がダ・ポンテの台本により1789年から90年にかけて作曲し、1790年にウィーンのブルク劇場で初演された全2幕から成るオペラ・ブッファです

青年士官のグリエルモとフェルランドは、美しい姉妹フィオルディリージとドラベッラとそれぞれ婚約している 2人は哲学者ドン・アルフォンソにそそのかされ、恋人の貞節について賭けをすることになる 2人は出征するフリをして偽りの別れを演じた後、外国人に変装して姉妹を口説く 最初は抵抗する姉妹だったが、次第に心が揺らぎ始め、ドラベッラがグリエルモに、さらにフィオルディリージもフェランドに口説き落とされてしまう 入れ替わった2組のカップルの結婚式が行われるところに、出征した2人の帰還が告げられる

     

私が新国立オペラの「コジ・ファン・トゥッテ」を観るのは2005年、2006年、2011年、2013年に次いで今回が5度目です また、ダミアーノ・ミキエレットによる演出で観るのは3度目です

ミキエレットによる演出は、舞台を現代のキャンプ場に置き換えています 彼の意図は、舞台を開放的なキャンプ場にすることによって、男女2組の”とりかえばや物語”にリアリティーを持たせることです 彼の演出の大きな特徴は、回転舞台を有効に使ったスピーディーな場面転換により、ストーリーの流れを途切れさせないことです 登場人物が歌っている最中に舞台が回転し、歌い終わると次の場面に移っているケースも少なくありません このため歌(ソロ、重唱)もレチタティーヴォも途切れることなく続きます まさに「ノンストップ・アンサンブル・オペラ」です

フィオルディリージ役のセレーナ・ガンベロー二はイタリア出身のソプラノです Aslicoコンクールに優勝し、ロンバルディアの「愛の妙薬」アディーナ、「ウェルテル」ソフィーでデビュー 幅広いレパートリーでイタリア各地の歌劇場や音楽祭を中心に歌っています 美しく卓越したヴォイスコントロールによって、ソロも重唱も完璧に歌い上げ、聴衆を魅了しました

ドラべッラ役のダニエラ・ピー二はイタリア出身のメゾソプラノです ボローニャ大学で音楽史を専攻し、モデナで声楽を学び、イタリアの歌劇場を中心に歌っています 深みのある魅力的な声で姉より積極的なドラベッラを歌い上げました

フェルランド役のホエル・プリエトはスペイン出身、プエルトリコ育ちのテノールです 2008年オペラリアコンクールに満場一致で優勝し、国際的に活躍しています リリカルな魅力的な歌唱により聴衆を魅了しました

グリエルモ役の大西宇宙は武蔵野音大・大学院、ジュリアード音楽院卒業のバリトンです シカゴ・リリック・オペラで研鑽を積み、50以上の公演に出演。国内外の歌劇場で活躍しています よく声が通り、演技力も十分で、世界に通用するバリトンであることを証明しました

デスピーナ役の九嶋香奈枝は東京藝大卒。新国立劇場オペラ研修所第4期修了のソプラノです 文化庁派遣在外研修員としてミラノに留学。新国立オペラ、二期会を中心に活躍しています 美しく良く通る声で、コケティッシュなデスピーナを魅力的に歌い演じました

ドン・アルフォンソ役のフィリッポ・モラーチェはナポリ出身のバリトンです サレルノ音楽院卒。イタリアの歌劇場を中心に歌っています 哲学者という雰囲気ではありませんでしたが、狂言回し役を見事に歌い演じました。第1幕の姉妹との三重唱は素晴らしかった

三重唱と言えば、このオペラはソロのアリアはもちろんのこと、二重唱、三重唱、四重唱といったアンサンブルの歌唱が素晴らしいのが大きな特徴です 歴史に残る数多くのオペラの中でアンサンブルが最も素晴らしいのはどれか?と問われたら、躊躇なく「コジ・ファン・トゥッテ」と答えます

新国立劇場合唱団は、2人の青年士官が(偽の)出征の際の合唱をはじめ、力強く素晴らしいコーラスを聴かせてくれました

飯森範親指揮東京フィルは歌手に寄り添いながら、それぞれの登場人物の心理を表すかのように雄弁に歌っていました

ミキエレットの演出で他の演出と違って面白かったのは、第2幕終盤で2組の(偽りの)結婚式を挙げたとき、デスピーナがポラロイド・カメラでそれぞれのカップルを写しますが、その写真がもとで姉妹が別の男たちと結婚式を挙げたことがバレてしまうという演出です さらに第2幕のラストは、普通の演出では本当の結婚式を挙げて「めでたしめでたし」で終わるところが、賭けで負けた青年士官の2人、罠にハマった姉妹が怒り狂ってバラバラの方向に走り去り、アルフォンソにいいように利用されたデスピーナも怒って偽の結婚証書(?)を破ってアルフォンソに投げつけて去っていく、という演出になっています つまり、アルフォンソ以外、誰もこの結末に納得していないという演出なのです これを見て私は、「男も女も みんな こうしたもの」が結論ではないか、と思いました

     

ところで、プログラム冊子(1200円)に岡田暁生氏が「作品ノート」を概要次のように書いています

「『コジ・ファン・トゥッテ』はパートナー交換の物語の集大成である ただし『コジ』のストーリーを、現実にはあり得ないロココ風のたわいないお遊びと考えてはいけない 『コジ』ではソプラノ(フィオルディリージ)とバリトン(グリエルモ)、メゾソプラノ(ドラベッラ)とテノール(フェルランド)が『もともと』カップルであることに注目しよう 通常オペラでは、テノールとソプラノが貴族のカップル、バリトンとメゾが庶民のカップルを演じるのが定石だ つまり『コジ』のカップルは、もともとねじれて身分を越境している そしてパートナーを交換することで、逆説的に通常のカップルに戻っているのだ しかし最後の最後に、元のカップルに戻ってハッピーエンドとなることで、身分のねじれもまた再び復活する・・・幾重にもひねられたアイロニーだ

「なるほど、そういう視点もあるか」と一瞬思いましたが、「ちょっと待てよ」と疑問が湧きました。この2組のカップルを「貴族」と「庶民」でくくることはできないのではないか、と思ったのです つまり、グリエルモもフェルランドも同じ「士官」という階級であり、フィオルディリージとドラベッラは実の「姉妹」です 男女とも、どちらかが「貴族」でどちらかが「庶民」であるとは考えられないのではないか、と思うのですが いかがでしょうか

     

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津村記久子著「つまらない住宅地のすべての家」を読む ~ 刑務所から女性受刑者が脱走してこちらに向かってくることから静かな住宅地が活気づいていく

2024年05月30日 00時03分57秒 | 日記

30日(木)。わが家に来てから今日で3425日目を迎え、北朝鮮の金正恩総書記が27日の軍事偵察衛星の打ち上げ失敗について言及し、「失敗は成功の前提であり、挫折や放棄の動機にはならない」として再度の打ち上げへの意欲を示した  というニュースを見て感想を述べるモコタロです

     

     北朝鮮は金王朝が続くことが国の失敗を意味する 未来に成功がない国民が気の毒だ

         

昨日、夕食に「アクアパッツァ」「生野菜サラダ」「大根の味噌汁」を作り、マグロの刺身と一緒にいただきました 「アクアパッツア」はいつものシメジの代わりにアサリを入れましたが、多少本格的になって美味しかったです

     

         

津村記久子著「つまらない住宅地のすべての家」(双葉文庫)を読み終わりました 津村記久子は1978年大阪府生まれ。2005年「マンイーター」(改題「君は永遠にそいつらより若い」)で太宰治賞を受賞しデビュー 08年「ミュージック・ブレス・ユー」で野間文芸新人賞、09年「ポトスライムの舟」で芥川賞受賞のほか、数々の文学賞を受賞

     

ある住宅地の路地に建つ10軒の家で暮らす人々によって物語は進行する 二人暮らしの老夫婦、一人暮らしの25歳男性、一人暮らしの58歳女性、父親と中学3年の息子の父子家庭、一人暮らしの壮年男性、両親と一人息子の3人家庭、40代の夫婦、祖母と母親と小学生姉妹の4人家族、年老いた母親と36歳の息子の母子家庭、祖母と父母と3人きょうだいの5人家庭・・・このように家族構成がバラバラな人たちが、普段は特別な交流もなくそれぞれの生活を営んでいる ある日、2つ隣の県の刑務所から女性受刑者が脱獄し、こちらに向かっているというニュースがもたらされ、住人有志が夜間に交代で見張りをすることになる 犯人は日置昭子という36歳の女性だが、勤め先から10年間で約1千万円を横領した罪で逮捕されたものの、その金には一切手を付けず質素な生活をしていたことから、何か特別の事情があったのだろうと人々の同情を買っていた そんなこともあり、住人有志による見張りには緊張感が見られない それぞれの家は、家庭の事情や秘密を抱えているが、この事件をきっかけに住人同士の交流が生まれ、新たな関係性が築き上げられていく

【以下ネタバレ注意】

日置昭子が刑務所を脱走したのには2つ理由がありました 一つは、親戚の男の子から、入院中の父親はもう長くないという手紙を受け取った。父親は昔会社をやっていて、22年前にある工事の見積もり金額がなぜか契約前に外に漏れて、それより下の額を施主に提示した業者が突然現れ、その仕事で立て直しを図ろうとしていた父の会社は資金繰りが出来なくなり倒産した 自分は誰がその金額を漏らしたのかをずっと考えてきた 自分は父自身を疑っていたが、父は子どもの自分に教えてくれなかった。父に死なれたらその理由が訊けなくなるので脱走した。父親の告白によると、父は工事を奪った会社の社長の妻と不倫関係にあった このため、工事の契約を交わす前の見積金額が相手の女性の知るところになり、自分の父親は仕事を掠め取られることとなったという その女性とは同じ路地に住む10軒の中の1軒で暮らす祖母だった 昭子が脱走したもう一つの理由は、脱走に協力してくれた峠坂さんから、神戸にいる娘に手紙を届けてほしいと頼まれたからです 娘が15歳の時に横領で逮捕された峠坂さんは、それ以来娘とは一度も会っていないということでした 結局この手紙は、昭子の学校時代の同級生で10軒の中の1軒で年老いた母親と暮らす・真下に託され、届けられます

本書には目次の次のページに10軒の「住宅地地図」が掲載されており、それぞれの家庭の家族構成が書かれています 本書は登場人物が多く、それぞれの関係性が複雑なので、この地図を見ながら読み進めていきましたが、これは効果的でした そのため時間が余計にかかってしまいましたが、内容を理解しながら読むうえでは不可欠でした

この小説を読んで一番感じたのは、子どもたちの頼もしさです 親の心配をよそに、彼らは彼らなりに必死に考え、必死に生きていることが伝わってきます

         

これでコンサートのない6日間を、腰痛対策の一環として毎日ベッドに横になりながら読書をしてきた生活も一旦終了します 6日連続で読書感想をブログアップしたのはコロナ全盛期以来かもしれません 3つの目標のうち①クラシックコンサート鑑賞は「聴けばよい」し、②映画鑑賞は「観ればよい」という”受動的”な行為ですが、③読書は「読めばよい」と簡単には言えないところがあります 自分で積極的に読まなければならないという意味では最も”能動的”な行為と言えます 極端な話、コンサートを聴くのは2時間程度、映画もほぼ同じだと思いますが、読書の場合は1冊(300ページとして)読了するのに7時間くらいかかります(長過ぎ?)。これは半端ない拘束時間です。この6日間は朝から晩まで読書ずくめだったと言っても過言ではありません

今日からコンサートに復帰します 取りあえず今日は新国立劇場でオペラ「コジ・ファン・トゥッテ」、明日はサントリーホールで「読響名曲シリーズ」、日曜日はミューザ川崎で「モーツアルト・マチネ」を聴きます 必携なのは当日のチケットと腰痛対策ベルトです

     

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津村記久子著「やりたいことは二度寝だけ」を読む ~ 庶民派芥川賞作家の初エッセイ集:小説における主人公の名前の付け方ほか / ブログ開設以来5000本目の投稿です

2024年05月29日 00時08分17秒 | 日記

29日(水)。昨日、娘がこんなものを連れて帰りました さて、何でしょう

     

答えは「頭皮マッサージ器」です 赤いボール状のところを持って、白い突起を頭に押しつけてグリグリやるのですが、これがとても気持ち良いのです 頭が空っぽの私でも頭が疲れていることに気づかされます

ということで、わが家に来てから今日で3424日目を迎え、ウクライナ軍のシルスキー総司令官は27日、フランス軍がウクライナへの訓練要員の派遣を計画していると発表した  というニュースを見て感想を述べるモコタロです

     

     フランス軍が直接ウクライナ戦争に加わるわけではないが どこまで行くんだろうか

         

昨日、夕食に「いり鶏」「生野菜サラダ」「シメジの味噌汁」を作りました 「いり鶏」は久しぶりに作りましたが美味しく出来ました

     

         

津村記久子著「やりたいことは二度寝だけ」(講談社文庫)を読み終わりました 津村記久子は1978年大阪府生まれ。大谷大学文学部国際文化学科卒業。2005年「マンイーター(「君は永遠にそいつらより若い」に改題)」で第21回太宰治賞を受賞し作家デビュー 2009年「ポトスライムの舟」で第140回芥川賞を受賞したほか数々の文学賞を受賞

     

本書は2012年6月に講談社から刊行された単行本のうち数編を除き、2017年7月に順序を変えて文庫化したものです 2005年のデビュー直後から2010年までの約5年間(27歳から32歳まで)に綴られた文章が収められた初エッセイ集です

著者は「あとがき」の中で次のように書いています

「自慢話も、ちょっといい話も、お説教も、他人の不幸も、全部疲れるけれど、何かちょっとだけ読みたい、という時がある方に読んでいただきたい 何も残らないし、ひたすら地味で意味もないけど、読んでる間少し楽になった、と感じていただければこれ幸いである こうだといいなあ、と思っているのは、デパ地下のケーキではなく、スーパーで200円以下で買えるお菓子だ。できれば、最近破格においしい森永チョイスビスケットの裏にチョコレートが塗ってあるやつみたいだと思っていただければ、たぶん泣いて喜ぶでしょう

この「あとがき」の通り、著者は普段着で飾ることなく思ったことを素直に綴っています 当時、著者は午前中に会社勤めをしながら小説を書いていた関係から、平日は、仮眠・本眠・昼寝と1日に3回に分けて寝る生活を送っていたといいます。そんなことから本書のタイトルが出てきたのでしょう

本書には全部で59編も収録されているのですべてをご紹介するわけにはいきません そこで、2日前のブログで、著者の「ポトスライムの舟」の主人公の名前を「ナガセ」とカタカナ表記していることについて書いたので、それに関係するエッセイをご紹介することにします それは「芋美と幸子」というタイトルのエッセイです。超略すると次の通りです

「小説を書く人間も、基本的には登場人物の本名という態のものを考える立場であり、プロダクションの人とはちょっと違う 小説家の芸風にもよるのだけれど、わたしのような夢のない作風だと、よりもっともらしく、本名っぽく、名前を付けなければいけない これがかなり気を使う。姓はまだいいとしても、問題は下の名前である。わたしの書いた小説で、主人公ですら名字しか出てこないことがある理由の一端は、このことにもある 主人公の名前ともなると、最低でも1か月は付き合わなくてはならないので、さらに悩む。主人公の名前を決める際の基本的なコンセプトは、『親に高望みされすぎず、思い入れを持たれすぎず、だからといって投げやりに名付けられたわけではなく、響きに特段のかわいらしさはなく、かっこよくもない名前』である 要するに中庸な名前だ。実はこれが結構難しい。どちらかというと、男性の名前より女性の名前の方が難しい

なるほど、と思います なお、このエッセイのタイトル「芋美と幸子」は次のような文章から付けられています

「わたしがいくらじゃがいもが好きだからって子供に『芋助』とか『芋美』だとか付けたら怒られる、というレベルなどは通り越した名前がある たくさんの子供の名前を見ているうちに、実際に、自分ならこう付ける、という子供の名前を考え始めていた いろいろメモしながら、最終的に、女の子なら『幸子』、男の子なら『清』と決めた

とはいえ、彼女は自分の小説に幸子や清を登場させるかといえば可能性は低いと書いています

破格に美味しい「森永チョイスビスケットの裏にチョコレートが塗ってあるやつ」は食べたことはありませんが、気軽に読めるエッセイ集としてお薦めします

         

このブログが5000本目の投稿となります 2011年2月15日にtoraブログを開設して以来4852日目の記録です 「継続は力なり」を実感します

【忘備録】

5月28日現在のgooブログにおけるアクセス数とランキング

①トータル閲覧数 =   8,779,741 PV

②トータル訪問者数 =2,841,847 I P

③gooブログ全体におけるランキング =3,184,824ブログ中 278位

④にほんブログ村「コンサート・演奏会感想」におけるランキング =57ブログ中 1位

⑤フォロワー総数 2038人 = 1951人 + 87人(X分)

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原田ひ香著「ランチ酒 今日もまんぷく」を読む ~ 疲れた心を癒す人間ドラマ ✕ 絶品グルメ小説「ランチ酒」シリーズ 第3弾

2024年05月28日 06時42分07秒 | 日記

28日(火)。2,3日前のX(旧Twitter)にコンビニに貼りだされた商品広告の映像が投稿されていて「ワロタ」とコメントしてありました それは次の広告です

           フ ラ ン ク フ ト ル

なるほどフランクフルトを食べ過ぎたら太るよな~ と思い 笑ってしまいました また同じ人の投稿に次のような商品ポップの写真が添付されていました

   幸子 明太子 半額

これでは幸子(さちこ)さんが半額みたいです   本当は「辛子明太子  半額」と書きたかったのでしょうね~  ワロタ

「辛」と「幸」との関係で言えば、「つらい『辛』という字に一を足せば『幸』になることを忘れないで」という台詞を新聞で読んだ記憶があります 「まるで哲学のような話だ」と考えていただければ幸いですが、日本でしか通用しないと考えると辛いです

ということで、わが家に来てから今日で3423日目を迎え、ロシアのプーチン大統領が、ゼレンスキー・ウクライナ大統領の任期は終わり国家元首としての正当性を失ったと主張し、圧力を強めている  というニュースを見て感想を述べるモコタロです

     

     多くの政敵を暗殺し 大統領任期を2030年まで伸ばしたプーチンこそ正当性なし

         

昨日、夕食に「ビーフカレー」と「生野菜サラダ」を作りました 牛肉はいつものバラ肉ですが、美味しかったです

     

         

原田ひ香著「ランチ酒   今日もまんぷく」(祥伝社文庫)を読み終わりました   原田ひ香は1970年、神奈川県生まれ。2005年「リトルプリンセス2号」で第34回NHK創作ラジオドラマ大賞最優秀作受賞   2007年「はじまらないティータイム」で第31回すばる文学賞受賞   ベストセラーとなった「三千円の使い方」ほか著書多数

     

本書は「ランチ酒」「ランチ酒 おかわり日和」に次ぐ「ランチ酒」シリーズ第3弾です 主人公の犬森祥子は学生時代に同級生だった亀山太一が社長を務める「中野お助け本舗」に雇われています この会社はいわゆる「便利屋」からスタートし、夜22時から朝5時まで「見守ります」という業務を引き受けており、祥子は依頼主のところに派遣され依頼主と一緒に過ごし、翌日 仕事上がりに、近くの飲食店でアルコールを飲みながらランチを食べることを日常の楽しみにしています 祥子はかつて結婚し、元夫・義徳のもとに5歳の娘・明里を残して離婚した経験があります 彼女はまた、亀山から頼まれた仕事の関係で知り合った国会議員の秘書・角谷と時々一緒に食事をする程度の距離で付き合っています 物語は娘との関係、角谷との関係を織り交ぜながら展開します

本書は次の16話から構成されています

第1酒:蒲田(餃子)

第2酒:西麻布(フレンチ)

第3酒:新大久保(サムギョプサル)

第4酒:稲荷町(ビリヤニ)

第5酒:新宿御苑前(タイ料理)

第6酒:五反田(朝食ビュッフェ)

第7酒:五反田(ハンバーグ)

第8酒:池尻大橋(よだれ鶏)

第9酒:銀座1丁目(広島風お好み焼き)

第10酒:高円寺(天ぷら)

第11酒:秩父(蕎麦、わらじカツ)

第12酒:荻窪(ザンギ)

第13酒:広島(ビール)

第14酒:六本木(イタリアン)

第15酒:新橋(鰤しらす丼)

第16酒:末広町(白いオムライス)

主人公の犬森祥子のランチを選ぶ明確な基準は「酒に合うか合わぬか」です その「酒」とはビールであり、ワインであり、日本酒です。行く先々の店で出てくる料理のどれもが美味しそうです それぞれの店は実在の店舗をモデルにしていると思われますが、「それ、どこにあるの? 教えて」と言いたくなるような魅力的なお店が登場します

「へえ、そんなこともあるんだ」と思ったのは「第13酒:広島(ビール)」に出てくる「ビールスタンド」というお店のビールの注ぎ方です 店のメニューには次のように書かれています

1度つぎ「のどごし」

2度つぎ「うまみ」

3度つぎ「泡はほろ苦」

マイルドつぎ「なめらか、優しい」

シャープつぎ「キリっと炭酸」

ミルコ「ほぼ泡だけ」・・・半額

このうち、「3度つぎ」は1度ついで泡が消えたら2度目をつぎ、再び泡が消えたら最後に泡を乗せる、というつぎ方です 祥子の説明は「1度つぎと全く違う。優しく柔らかなビールをほろ苦の泡が包んでいる」です どうやらビールはつぎ方で味が変わってくるようです

本書の飲食シーンは、単なる「食レポ」にとどまらず、料理を作る人の食に対するこだわりや愛情が伝わってきます さらに、美味しいお酒や食事を摂り、毎日健康に過ごすことが出来るのがいかに幸せであることか、と言うメッセージが伝わってきます あの店のあの料理が食べたい と思う店が少なくとも1つはあると思います 広くお薦めします

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NHK「魂のピアニスト、逝く ~ フジコ・ヘミング その壮絶な人生」を観る / 津村記久子著「ポトスライムの舟」を読む ~ 世界一周クルージングと年収が同じ額だと気づいた女性の物語

2024年05月27日 00時07分37秒 | 日記

27日(月)。昨日、午後9時からNHKテレビで放映されたNHKスペシャル「魂のピアニスト、逝く ~ フジコ・ヘミング その壮絶な人生 ~ 」を観ました

若くして片耳の聴力を失うなど、数々の苦難に向き合いながら60代後半にしてNHKのドキュメンタリーで一躍脚光を浴び、多くの人々を魅了してきた”魂のピアニスト”フジコ・ヘミング”さんは、4月21日に92歳でこの世を去りました 番組では90代になっても世界各地で演奏活動を続ける彼女を、この5年間継続的に取材し、その姿を記録し続けてきました 昨年11月には、自宅の階段で転倒し脊髄を損傷、さらに、ほどなくして膵臓ガンが見つかりましたが、病室にまでピアノを持ち込み、再起を期して闘病生活を続けていました

50分間の番組ではこれまでの数々のライブ・コンサートや自宅でのインタビューの模様などが紹介されました 番組中、フジコさんの演奏を中心に流れたのはショパン「別れの曲」「英雄ポロネーズ」「黒鍵エチュード」「幻想即興曲」「ノクターン作品9-2」「舟歌」「革命エチュード」、リスト「ラ・カンパネラ」「コンソレーション第3番」「ため息」、シューマン「トロイメライ」などで、昨年11月に大怪我をして入院中に、たどたどしく弾こうとしたのはモーツアルト「ピアノ・ソナタ第11番”トルコ行進曲付き”」の第1楽章「アンダンテ・グラツィオーソ」の冒頭部分でした 結局この時がフジコさんがピアノに対峙した最後となりました 生涯最後の曲がフジコさんの代名詞的なリストやショパンではなく、幼い頃から馴染んできたモーツアルトだったのが印象的でした

フジコさんの言葉で一番印象に残ったのは、「楽譜通りに演奏しようとする人が多いけど、機械じゃないんですから間違ったっていいじゃない 楽譜の裏にある霊感を感じない人はだめよ」という言葉です 番組では、昨年の怪我がなければ、今ごろ 日本と欧州各国でコンサートツアーを実施しているはずだったことが紹介されました 92歳のフジコさんにとって最後のチャンスだったことを思うと、本人が一番無念だったと思います 今ごろ あちらの世界で、モーツアルトやショパンやリストに「私の演奏どうだった?」と訊いていることでしょう

ということで、わが家に来てから今日で3422日目を迎え、米共和党のトランプ前大統領は25日、政府の役割の極小化を求める第3政党「リバタリアン党」の全国大会で演説し、11月の大統領選での支持を訴えたが、演説中に聴衆からブーイングが起きて騒然となった  というニュースを見て感想を述べるモコタロです

     

     共和党以外の人たちは トランプが私利私欲で政権運営をすることを知ってるからね

         

津村記久子著「ポトスライムの舟」(講談社文庫)を読み終わりました 津村記久子は1978年大阪府生まれ。大谷大学文学部国際文化学科卒業。2005年「マンイーター(「君は永遠にそいつらより若い」に改題)で第21回太宰治賞を受賞しデビュー 2008年「ミュージック・ブレス・ユー!!」で第30回野間文芸賞新人賞、09年「ポトスライムの舟」で第140回芥川賞を受賞

     

本書は2009年2月 講談社から単行本として刊行され、2011年4月に文庫化されました 「ポトスライムの舟」(100ページ)のほかに「12月の窓辺」(75ページ)が収録されています

『ポトスライムの舟』(「群像」2008年11月号 初出)

29歳のナガセ(永瀬由紀子)は「時間を金で売る」空しさを抱えながら契約社員として工場に勤務する傍ら、友人のヨシカが営むカフェでアルバイトをしたり、データ入力の内職をしたり、パソコン教室の講師をしたりして働いている ナガセは就職氷河期に新卒で入社した会社で上司から凄まじいパワーハラスメントを受けて退社したという過去をもっている ナガセはある日、NPO法人が主催する世界一周クルージングのポスターを見て、自分の手取り年収と世界一周クルージング旅行の費用がほぼ同じ163万円であり、「1年分の勤務時間を世界一周という行動にも換算できる」ことに気づく それ以来、彼女はそのことが頭から離れなくなり、世界一周クルージングの費用を貯めるため節約に励む しかし、大学時代の友人・りつ子が家庭不和から子連れでナガセの家に転がり込んできたことで思わぬ出費が嵩む しかし、りつ子はいずれ仕事を見つけて娘とともに出ていき、ナガセはわずかながらボーナスも出たので、クルージングの資料請求書のハガキを取りに行くのだった

本書を読んで印象に残ったのは主人公の名前の呼び方です 最初に永瀬由紀子と1度だけ登場した後は、ナガセとカタカナ表記で統一されます。それは「記号」であり、固有名詞ではなく「一般名詞」のようであり、あたかもナガセと同じように就職氷河期を経験し正社員になれなかった若者たちの「代名詞」のように響きます もう一つ印象的なのは、著者が大阪生まれということもあり、会話が大阪弁で交わされていて、ほんのりとして人間の温かさを感じさせることです

タイトルの「ポトスライムの舟」は、ナガセが毎日 観葉植物のポトスに水やりをしていることから付けられていますが、なぜ「舟」が付いているのかは不明です ただ、著者がナガセに言わせている次の言葉がタイトルのポイントです

「玄関にも、ナガセの部屋にも、そして工場のロッカールームにもポトスは置いてある どれもこれもが、安いコップに差して水を替えているだけだが、まったく萎れる様子がない。改めて、ポトスはすごい、と思う。好きではないが、すごい、と

不本意ながら複数の仕事を掛け持ちして堅実に生きているナガセは、地味ではあるが生命力の強いポトスに自分の生き様を重ねているのかもしれません

『12月の窓辺』(「群像」2007年1月号 初出)

ツガワは、郊外に本社がある300人程度の社員数を持つ印刷会社の支所で働いているが、職場の先輩のほとんどが年下であり、自分が会社に馴染めないことを痛感し、自己嫌悪に陥っていた ツガワはVという女性の係長から辛辣なパワーハラスメントを受け、ジワジワと追い詰められていく

本作は内容から「ポストライムの舟」の前日談とも考えられる作品です つまりツガワ=ナガセの物語であると解釈できるということです

これは読んでいて辛いものがありました ミスを謝っても許してくれない。ちょっとしたミスでも人前で罵倒し人格を否定する。辞めようとすると、先回りして「人手が足りない時に勝手に辞めるなよ」とくぎを刺す・・・こういう上司が相手だったら、どんなに給料が良くても絶対に辞めてやる、と思うでしょう

「改正労働施策総合推進法(パワハラ防止法)」が施行されたのは令和2年(2020年)なので、この作品が執筆された2007年時点には存在しませんでした しかし、同法施行後の現在においても多くの「ブラック企業」が存在していることは否定できません 現在でも 小説の格好の題材にされるていることに変わりありません

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高原英理著「不機嫌な姫とブルックナー団」を読む ~ あなたは「ブルックナー団員資格認定テスト」(全9問)に何問「はい」と答えられますか? / 楽器の費用 ~ NHK「突撃!カネオ君」から

2024年05月26日 00時01分02秒 | 日記

26日(日)。普段、ニュース以外はテレビを観ないのですが、昨夜NHKテレビ「突撃!カネオ君」でオーケストラを取り上げていたので観ました

番組では冒頭、日本国内では年間5500回もコンサートが開かれていることが紹介され、驚きました 楽器の話では、ヴァイオリンのストラディヴァリウスは22年のオークションで20億円で落札されたこと、弓は最も高価なものは1000万円もするという事実にも驚きました また、チェロは飛行機に乗る時は楽器専用の座席も確保しなければならず、15000円を自腹で払わなければならないので”痛い”という話には同情を禁じ得ませんでした 楽器をやるんだったらピッコロがいいかな また、オーボエ奏者は、湿度により楽器の音が変わるので、リードを削って何本も準備しなければならないのが大変であると語っていました シンバル奏者は出番が少ないが、反って緊張感を持続するのが大変なこと、またギャラは演奏する時間が長い弦楽器奏者等と同じであることから、冷たい視線に耐えなければならないことを語っていました シンバルの出番が少ない例としてドヴォルザーク「交響曲第9番”新世界より”」の第4楽章の序盤で、1度だけ弱音でシンバルが鳴らされることが紹介されました

この「シンバルの1打」をテーマにしたテレビ番組がありました。1975年2月2日放送「東芝日曜劇場」(第947回)で、脚本は倉本聰、主演はフランキー堺、タイトルは「ああ!新世界」です

「札幌市民会館の大ホールでのオーケストラ演奏会のステージに、10年ぶりにシンバルを手にした男が『新世界交響曲』の第4楽章でただ1回だけ鳴るシンバルのために、打楽器セクションに座っている。演奏が始まり、遂にその瞬間が来る・・・・」

彼はシンバルを叩くことが出来なかった、と記憶しています 人生いろいろ 男もいろいろ

ということで、わが家に来てから今日で3421日目を迎え、戦時中にも関わらずトップが交代したロシア国防省で、汚職などの容疑で幹部の逮捕が相次ぐ異例の事態となっている  というニュースを見て感想を述べるモコタロです

     

     プーチン・ロシアは 国そのものが侵略・強奪・誘拐・破壊主義だから 当然の帰結

 

         

高原英理著「不機嫌な姫とブルックナー団」(講談社文庫)を読み終わりました 高原英理は1959年、三重県生まれ。小説家、文芸評論家。立教大学文学部日本文学科卒。東京工業大学大学院社会理工学研究科博士課程後期修了。1985年「第1回幻想文学新人賞」受賞。1996年「第39回群像新人文学賞評論部門優秀作」受賞

     

この作品は2016年8月に講談社から刊行され、2024年4月に文庫化するにあたり一部を加筆・修正したものです

図書館の非正規職員として働く代々木たゆきはサントリーホールで開かれたクラシックコンサートで「ブルックナー団」を名乗る3人組に出会う 仲間扱いを邪険にあしらう たゆき だったが、かっこ悪いが「ブルックナー偏愛」を貫く3人のブルオタ(ブルックナーオタク)の姿に感化され、翻訳家に憧れたかつての気持ちを思い出す

「ブルックナー団」のメンバーは、最初に たゆき に声をかけた武田一心、小太りの玉川雪乃進、小柄な一本橋完治という3人です

武田は「ブルックナー伝(未完)」という小説を執筆し、「ブルックナー団」公式サイトにアップしています    それは第1章「我が被りたる醜聞事件の顛末」、第2章「我が赴くは至上なる栄誉の地バイロイト」、第3章「ハンスリック、我が永遠の敵」、第4章「史上最悪なる我がコンサートの果てに」、エピローグ「我が願えるはただ遠き後の日」から構成されています

第1章では、素朴な中年の独身男ブルックナーが少女へのセクハラ言動の疑いで職を追われそうになる顛末を描いています 第2章では、尊敬するワーグナーに交響曲第2番と第3番を献呈するためにバイロイトに赴いた時のエピソードを描いています 第3章では最初はブルックナーに好意的だった評論家ハンスリックが、ブルックナーがワーグナーを崇拝していることを知るや反旗を翻し、厳しい批評を加えるようになった顛末を描いています 第4章では交響曲第3番を自らの指揮でウィーン・フィルを振って初演した時の失敗談を描いています エピローグでは、交響曲第7番の成功によりようやく作曲家として認められたブルックナーだったが、ハンスリックからの厳しい批評が続き、指揮者は長すぎる交響曲の一部カットを求め、ブルックナーはそれに従わざるを得なかったこと。しかし、いつの日か原典版を未来の聴衆が認めることになるだろうという希望が描かれています

本書のストーリーは、上記の「ブルックナー伝」の各章を随所に挟みながら展開していきます

そもそも最初に武田が たゆき に声をかけたのは、女性がブルックナーを聴きに来ること、しかも一人で聴きに来ることが珍しかったからです 休憩時間に長蛇の列ができるのは決まって男子トイレです 私がブルックナーの交響曲のコンサートで初めて男子トイレに長蛇の列ができると認識したのは、40年近く前のことです その時一緒に聴いていた友人が「ブルックナーの時は男子トイレが混むよね」といったのを強烈に覚えています。それ以来、私は「ブルックナー公演における男子トイレ長蛇の列の法則」と呼んでいます

クラオタ(クラシック・オタク」の中でもブルックナーの場合は「ブルオタ」(正式には「ブルヲタ」らしい)と呼ばれます カーテンコール時の指揮者単独の登場は「一般参賀」と呼ばれています。天皇誕生日などの際、皇居で天皇が出てきて、押しかけた民衆に手を振る行為になぞらえている言葉です ブルックナー公演に限らず見られる光景ですが、ブルックナーの場合はほぼ必ず見られる光景です

なお本書には「ブルックナー団員資格認定テスト」(全9問)というのが掲載されていて、ブルックナーに関する知識を試すことが出来ます それは次のようなものです

あなたのブルックナーマニア度を確かめます。次のアンケートにお答えください(「はい」「いいえ」のどちらかを選ぶ)。

①ブルックナーの交響曲は全曲、全楽章ごとに主題の区別ができる。

②ブルックナーの音楽を録音したCDを100枚以上持っている。

③ブルックナーの交響曲の版ごとの違いがすべてわかる。

④ブルックナーの曲がプログラムにある演奏会に年20回は行く。

⑤交響曲は形式の明快さより、よいフレーズの繰り返しと多彩な和声の工夫をこそ聴きたい。

⑥音楽さえ良ければ作曲家の外見は全く問題ではない。

⑦交響曲第3番初演、と聞くと涙が止まらない。

⑧エドゥアルト・ハンスリックを一生の敵と考えている。

⑨ブルックナーの弟子の名前を5人以上言える。

いかがですか? 私は②が103枚で「はい」、⑥も外見は問題ないので「はい」、それ以外は「いいえ」でした とてもブルオタの域には達していません

本書はブルックナーの人物像とともにブルオタの性癖(?)がよく描かれています ブルオタとその予備軍の必読書と言ってもよいでしょう    なお、本書は「ビニ本」です。懐かしい響き 文庫本全体がビニールで覆われていて 中を立ち読みすることができません これは講談社の販売方針です。買うしかありませんね

なお、私はいつも本を読む時は予習CDを聴きながら読んでいますが、この本に限ってはブルックナーのCDを聴きながら読みました

     

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佐藤正午著「彼女について知ることのすべて」を読む ~ 「その夜わたしは人を殺しに車を走らせていた」で始まる450ページの長編小説 / 『凝り』と『張り』とは違う ~ 腰痛対策として安静に過ごします

2024年05月25日 00時03分42秒 | 日記

25日(土)。毎朝通っている整骨院のA院長の口癖は「腰痛、捻挫、怪我は1週間で治る」というものです 「極端な例を挙げると、帝王切開により切った傷は1週間で回復する。これと同じように体の内部の傷は1週間あれば回復する」という理論です 院長の説明によると、「『凝り』と『張り』とは違う。『凝り』は筋肉が緊張して固まっている状態で、マッサージでほぐすことができる 一方『張り』は筋肉に傷がついている状態なので、傷を治すには筋肉を休ませるしかない したがって、1週間できるだけ安静に過ごすことがベスト」ということです 腰痛の場合、1週間の途中で長時間座ったりすると、また悪化するので、その日から1週間安静にすることになり、長引く原因となるとのことです

腰痛にとって一番悪いのは長時間座ることです   コンサート鑑賞、映画鑑賞、喫茶店での読書・・・すべて腰痛にとって悪いことばかりです    私の場合、ほぼ毎日のように腰痛に悪い事ばかり続けていることになります 「昨夜はコンサートを聴いて~」とか「昨日は映画を観て~」とか先生に言ったことはありません 「そんなことばかりやってるから、いつまで経っても腰痛が治らないんですよ」とキツイ忠告を受けることが火を見るよりも明らかだからです 言い訳は、せいぜい「昨日は喫茶店で新聞を読む時間が長すぎました」くらいです しかし、A先生は患部を手で触るだけで前日、座りっぱなしだったことが分かってしまうのです もう20年以上の付き合いになるので、何でもバレバレです

幸いコンサート通いは23日(木)で一旦区切りがついて、24日(金)から29日(水)までの6日間全く予定がありません これを機会に、できるだけ安静にして過ごしたいと思います 昨日も 公開されたばかりの映画「関心領域」を観に行く予定でしたが、グッと我慢して家で読書をして過ごしました 読書以外は、Netflixで映画を観る(多分立ったまま)ことがあるかもしれません

ということで、わが家に来てから今日で3420日目を迎え、ロイター通信は、米上院の財政委員会と予算委員会が23日、トランプ前大統領が10億ドルの献金を受ける見返りとして石油業界に環境規制緩和などを提案したと報道されている問題について、調査を開始したと報じた  というニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

     

     トランプは 多額の選挙費用と4つの裁判費用を捻出するためなら 何でもやる男だ

 

         

昨日、夕食に隔週金曜日のローテにより「鶏の唐揚げ」を作りました 今回も外カリカリ内ジューシーに仕上がり、とても美味しく出来ました

     

 

         

佐藤正午著「彼女について知ることのすべて」(光文社文庫)を読み終わりました 佐藤正午は1955年 長崎県佐世保市生まれ。1983年「永遠の1/2」ですばる文学賞を受賞しデビュー。   2015年「鳩の撃退法」で山田風太郎賞を、2017年「月の満ち欠け」で直木賞を受賞   「Y」「身の上話」「ジャンプ」など著書多数

この作品は1995年7月に集英社から刊行され、1999年1月に集英社文庫として出版されました

     

ロサンゼルス・オリンピックが開催された1984年夏、小学校の教員である鵜川勉は、その夜 人を殺しに車を走らせていた    その途中、突然の停電のため暗闇が街を襲う。そして2時間後、事件は鵜川抜きで起こってしまっていた    鵜川は同僚の笠松三千代と婚約していたが、新たに現れた看護婦・遠沢めいに惹かれて付き合うようになっていた しかし彼女にはしつこくつきまとう愛人・真山がいた 鵜沢とめいは真山の殺害計画を企てるが、鵜沢は突然のアクシデントにより彼女との約束を守れず、めいが単独で実行した。めいは逮捕・収監されるが鵜沢の名前を出さなかったため、鵜沢は罪に問われなかった 8年後、鵜川と服役を終えためいは真山が埋葬されている墓地で再会する

佐藤正午の小説の大きな特徴の一つは「書き出し」です この小説は、「その夜わたしは人を殺しに車を走らせていた」で始まります 冒頭から読者は一気に物語に引き込まれていきます そこから「なぜ”わたし”が人を殺しに行かなければならないのか」が、過去に遡って語られていきます そして再び、最初の時点に戻るのは、なんと(文庫の)300ページです そこには「その夜わたしは真山を殺すために車を走らせていた」と書かれています このように、時間の経過とともに物語を進めていくのではなく、時間の順序を入れ換えて、事件を再構成していくやり方も佐藤正午の大きな特徴です もう一つの大きな特徴は、微細なディテールの積み重ねと意外な展開です 藤沢めいは収監される時、妊娠していた。しかしその子の父親は鵜川なのか真山なのか

本書は450ページを超える長編小説ですが、ミステリータッチで先の展開が読めません とても1日では読み切れませんでしたが、ほとんど一気読みでした 佐藤正午特有の文章表現に慣れると病みつきになります 幅広くお薦めします

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