人生の目的は音楽だ!toraのブログ

クラシック・コンサートを聴いた感想、映画を観た感想、お薦め本等について毎日、その翌日朝に書き綴っています。

ロータス・カルテットのブラームスを聴く~JTアートホール 

2012年11月30日 07時01分06秒 | 日記

30日(金).昨夕,虎の門でのコンサートが終わって外に出ると,何と雨が・・・・・・傘を持っていなかったので,最寄りの虎の門駅か溜池山王駅まで雨に濡れて行こうかとも思ったのですが,風邪をひいてもつまらないので,コンビニで525円のビニール傘を買いました 玄関先の傘立てはビニール傘で一杯です.一昨日のネクタイといい,昨日のビニール傘といい,思わぬ出費がかさむ今日この頃です明日からさらに出費がかさむ予感のする12月.あ~,ど~しよ~

 

  閑話休題  

 

昨夕,虎の門のJTアートホールでJTアートホール室内楽シリーズ「ロータス・カルテットのブラームス」公演を聴きました ロータス・カルテットは1992年に結成,95年ドイツに渡りシュツットガルト音楽芸術大学に入学,メロス弦楽四重奏団に師事しました.ヴァイオリン=小林幸子,マティアス・ノインドルフ,ヴィオラ=山碕智子,チェロ=斉藤千尋,クラリネット=セバスチャン・マンツというメンバーです なお,小林幸子さんは,某国営放送局の年末恒例・黒白歌合戦の選にもれた全身電飾歌手ではありません.念のため

プログラムはオール・ブラームスで①弦楽四重奏曲第1番ハ短調」,②弦楽四重奏曲第2番イ短調,③クラリネット五重奏曲ロ短調の3曲です

 

          

 

自席は10列12番,センターブロック通路側です.会場はほぼ満席.舞台上は左から第1ヴァイオリン,第2ヴァイオリン,ヴィオラ,チェロという編成です

第1曲目の弦楽四重奏曲第1番は1865年から73年にかけて作曲され,69年から73年にかけて作曲された第2番とともに作品51として出版されました ブラームスの弦楽四重奏曲は普段聴く機会がほとんどないので,ここ数日,ウエラー弦楽四重奏団のCDで予習していました

 

          

 

 第1番,第2番ともにバランスのよく取れた演奏で,個々人の演奏レベルの高さがうかがえます それぞれの奏者の音楽性が豊かなのですが,私が特に魅かれたのはヴィオラの山碕智子さんの演奏です.ブラームスがヴィオラを引き立てるように書いていると言えるのかもしれません この2曲を聴く限り,弱音部分での演奏が極めて美しく,ワインで言えば若いボージョレヌーボーではなく,結成20周年を迎えたカルテットに相応しい20年ものの熟成したワインのような演奏です

クラリネットのセバスティアン・マンツは2008年に,滅多に1位を出さないことで名高いミュンヘン国際音楽コンクールのクラリネット部門で40年ぶりとなる第1位を獲得した逸材で,現在シュトットガルト放送交響楽団首席奏者を務めています

第1楽章冒頭,主題がヴァイオリンによって奏でられ,情感溢れるクラリネットの音色が加わります.マンツは,その瞬間から聴衆の心を掴みます.豊かでふくよかで優しいクラリネットです ブラームスの魅力が十二分に伝わってきます

会場一杯の拍手に,マンツが手元のペーパーを見ながら「どうも,ありがと,ございました.アンコールに,モーツアルトの,第2楽章を,演奏します」と日本語でアナウンス して,モーツアルトの「クラリネット五重奏曲イ長調K.581」第2楽章”ラルゲット”の演奏に入りました

これがまた素晴らしい演奏で,「クラリネット五重奏曲においてブラームスはモーツアルトを超えることが出来なかった」ことを図らずも証明することになった演奏でした この日のコンサートのタイトル「ロータス・カルテットのブラームス」に照らせば,むしろアンコールに応えるべきではなかったと言っても良いかも知れません.それほど素晴らしい演奏でした

 

          

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可愛らしいロジーナ~新国立オペラ,ロッシーニ「セビリアの理髪師」を観る

2012年11月29日 06時58分22秒 | 日記

29日(木).昨日、前夜の飲みすぎで寝ぼけていたせいか、家にネクタイを忘れてきてしまいました 途中で気がついたので、隣のFビル地下に最近オープンした100円ショップで100円ネクタイを買おうと思ったのですが、この日の午後、都知事候補者共同記者会見があり誰に会うか分からないので”いくら何でも100円はないだろう”と思い、地下鉄のキオスクで1,000円ネクタイを買いました ”これで一安心”と会社でコートをしまおうとロッカーを開けると、な、なんと、中にネクタイが2本吊るしてあるではありませんか 普段ロッカーは使っていないので開けることはないのですが、朝非常に寒かったので今秋初めてコートを着て出勤したのでした.・・・・・・・1,000円も出してわざわざネクタイを買う必要はなかったわけです 無駄なネクタイを買って自分で自分の首を絞めたオソマツでした.チャンチャン

 

  閑話休題  

 

昨夕,初台の新国立劇場でロッシーニの歌劇「セビリアの理髪師」を観ました キャストはアルマヴィーヴァ伯爵にルシアノ・ボテリョ,ロジーナにロクサーナ・コンスタンティネスク,バルトロにブルーノ・プラティコ,フィガロにダリボール・イェニス,バジリオに妻屋秀和ほか.バックを務めるのはカルロ・モンタナーロ指揮東京フィル,演出はヨーゼフ・E.ケップリンガーです ケップリンガーの演出でこのオペラを観るのは今回で,2005年の初演から3~4回目だと思います.カラフルな舞台でロッシーニの楽しさを醸し出しています

 

          

 

冒頭の序曲を聴いた時は,音が”薄いな”と思ったのですが,徐々にボリューム感が出てきました もっとも,あまりにも大音響で轟かせると歌手の声を殺してしまうので,絶妙なバランス感覚が求められます.その点,モンタナーロの指揮は全体的に控えめであくまでも裏方に徹するものでした

アルマヴィーヴァ伯爵役のルシアノ・ボテリョはブラジル生まれのテノールです 第1幕の冒頭近くでは若干迫力不足かな,と思って聴いていましたが,後半にいくにしたがって調子を上げていきました

今回のハイライトはロジーナ役のルーマニア出身のメゾ・ソプラノ,ロクサーナ・コンスタンティネスクでしょう こんなに可愛らしいロジーナは初めて観ました.歌も演技も申し分ありません

 

          

 

何とも可笑しな味を出していたのがバルトロ役のイタリア生まれのブルーノ・プラティコです.まさに”はまり役”です この人の姿形や仕草を見ていると,かの”ソビエトの愛すべき大指揮者”エフゲニー・スヴェトラーノフを思い出します

そして,このオペラの実質的な”主役”と言ってもよいフィガロを演じたのはスロヴェニア生まれのダリボール・イェニスです この人のバリトンは会場の隅々まで届く張りのある声で,優れた演技力とも相まって,さかんに拍手とブラボーを受けていました

 

          

 

ロッシーニのオペラ,とくに「セビリアの理髪師」は観て聴いて本当に楽しいオペラです.”ロッシーニ・クレッシェンド”のワクワク感が堪りません

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「クリスマスキャロル」か「ネコパンチ」か~第57回有馬記念出走馬ファン投票

2012年11月28日 06時59分59秒 | 日記

28日(水).昨夕はX部長の”30分ね”といういつもの音頭で,仕事の打ち合わせのため,いつものメンバー5人で,いつもの地下Rで飲みました お店を出たのは7時半を過ぎていたので,計算が大幅に合わないのですが,大らかなメンバーたちは”まっ,いっか”とそれぞれが帰途についたのでした.私はその後,都内某所で0時近くまで飲んでいて,時計を見て”あっ,ヤベッ”と思って山手線 に乗りました.選択,もとい,洗濯したあとベットに入ったのは1時50分ごろで,いま頭がガンガンしております.ハイ

 

  閑話休題  

 

昨日の朝、出勤途上の地下鉄 車内での出来事です。吊革につかまって を読んでいると、前の座席に座っていたアラサ―の女性が、おもむろに を取り出してお化粧を始めたのです 私は個人的にはこういうのは好きでないので、何とか本人が気を悪くしないで止めさせる方法はないものかと文庫本そっちのけで考えました そして10分後に結論が出ました。本人にこう言うのです。

   「公衆の面前で化粧なんかして、それ以上きれいになってどうする気ですか

 

  も一度,閑話休題  

 

競馬ファンでもない私の手元に「第57回有馬記念ファン投票」というチラシがあります 裏面に掲載した454頭の競走馬の中から有馬記念レースに出走させたい馬を10頭まで選んで葉書で投票しましょうという内容です 面白いのは候補馬の一覧表に記載された馬の名前です

美味しそうな名前で拾うと,「アプリコットフィズ」「アロマカフェ」「グレープブランデー」「トシキャンディ」「フライングアップル」「ラッキーバニラ」という馬がいます

音楽らしき関係ではどうかと探してみると, 「アグネスワルツ」「サイレントメロディ」「サウンドアクシス」「サウンドバリアー」「サウンドオブハート」「セイカアレグロ」「ウインドジャズ」「オールザットジャズ」「カノンコード」「ガンダーラ」「クリスマスキャロル」「トウカイメロディ」「ハートビートソング」「ミキノバンジョー」「ライブコンサート」がいます

変わり種では「カレンチャン」「タッチミーノット」「ネコパンチ」「ナニハトモアレ」「タマモナイスプレイ」「ナイスミーチュー」「フォゲッタブル」「ボクノタイヨウ」「ロードオブザリング」などの馬がいます

途中まで同じ綴りの馬では「エ―シン」が頭に付く馬が一番多く「エ―シンヴァ―ゴウ」から「エ―シンリターンズ」まで9頭います。次は「メイショウ」「アドマイヤ」が頭に着く馬が各7頭います 名将が乗馬して勝ったらアドマイヤブルですね

いずれにしても、よくもまあ面白い名前を付けるものだと感心します 各馬には名前負けしてホース・アウトにならないように頑張って欲しいと思います

 

          

 

 

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「おわれて見たのはいつの日か」~道尾秀介著「光媒の花」を読む

2012年11月27日 06時55分41秒 | 日記

27日(火).昨夕,自宅で長男の満21歳のバースデー・パーティーを開きました.シャンパンで乾杯して料理をいただきました 普段お酒は飲まない長男ですが,この日ばかりは一杯だけ飲みました

 

          

 

食後,ケーキにロウソクを立てて,主役が願い事を思い浮かべながら一気に火を消しました

 

          

 

さて,何を願ったのかは本人のみぞ知る,ですが,親としては取りあえず無事に大学を卒業してほしいと思います

 

  閑話休題 

 

道尾秀介著「光媒の花」(集英社文庫)を読み終わりました 道尾秀介の作品はこのブログでも何度かご紹介しました.この作品は2007年4月から2009年3月まで「小説すばる」に6回に分けて掲載された「連作短編集」で,第23回山本周五郎賞を受賞しました

第1章「隠れ鬼」,第2章「虫送り」,第3章「冬の蝶」,第4章「春の蝶」,第5章「風媒花」,第6章「遠い光」の6つの短編小説から成ります いずれの作品にも白い蝶が登場し,それぞれの主人公たちの人生の光と影を見守っています

認知症の母と二人で暮らす印章店の男の遠い夏の思い出,幼い兄妹が夜の河原で犯した罪,小学校の同級生の女子を窮地から救うため少年が口にした約束,母親へのわだかまりを解消しようとする青年の葛藤,母親の再婚を前に事件を起こす少女と彼女の心に寄り添おうとする女教師,それぞれの人生模様が美しい文章表現で展開します

この小説に「赤とんぼ」の歌が出てきます 私は「夕やけこやけの赤とんぼ 追われてみたのは いつの日か」と覚えていましたが,この小説で「追われて」ではなく「負われて」だと教えられました.つまり「姐やに背負われて赤とんぼを見たのはいつの日だったか」という意味だと.また,「十五で姐やは嫁に行き」というのは「姉が15歳の時に嫁に行ったのか」あるいは「私が15歳の時に姉が嫁に行ったのか」と疑問を投げかけています.この作品にはそんな魅力もあります.道尾秀介にハズレはありません

 

          

 

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東西冷戦下のスパイ映画「裏切りのサーカス」を観る~ギンレイホール

2012年11月26日 06時54分19秒 | 日記

26日(月).昨日,飯田橋のギンレイホールで映画「裏切りのサーカス」を観ました この映画は2011年,イギリス・フランス・ドイツ合作映画で,監督はトーマス・アルフレッドソン.スパイ小説の大家ジャン・ル・カレが実際に起きた事件を基に執筆した小説を映画化したものです

資本主義対社会主義という対立構造が生きていた東西冷戦下で,英国情報部「サーカス」の元スパイのスマイリーに,組織内に潜んでいるソ連の二重スパイ「もぐら」を探し出せという極秘の命令が下ります.捜査対象は4人の幹部です

同じ英国情報部M16の活動を扱った「007シリーズ」と違って,派手なアクション・シーンもなく,やたらと車や建物が爆発ですっ飛ぶこともなく,魅力的な女性が何人も出てくるわけでもないのですが,一度は組織を引退した老スパイのスマイリーを演じるゲイリ―・オールドマンの渋い演技が光る映画で,とても静かで緊張感の満ちた映画です

私は何の予習もなくいきなり観たので,登場人物の相関関係がよく分からず,その結果よく理解できない場面があったので,これからご覧になる方は,あらかじめ映画のホームページで「ストーリー」や「相関図」を確認しておくことをお勧めします

 

          

 

ギンレイホールは2本立てなのでもう1本の「ドライヴ」(2011年,アメリカ映画)を観ようかと思ったのですが,翌日,息子の誕生祝パーティーを控えているのでプレゼントを買いに池袋に出ました といっても,ユニクロですけどね 東武デパートに行きましたが,各階の売り場がちょっとさみしい状態だったのに比べ,最上階にあるユニクロは男物売り場も女物売り場も超満員でした.与党も野党も「デフレ脱却」を叫んでいますが,この状況を見ると目標はほど遠いような気がします

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地震を乗り越えて~秋山和慶指揮洗足学園音楽大学管弦楽団でベルリオーズ「幻想交響曲」を聴く

2012年11月25日 07時38分33秒 | 日記

25日(日).昨日池袋の東京芸術劇場で第3回音楽大学オーケストラ・フェスティバルのコンサートを聴きました 当初,第2回公演が昨年開催予定だったのが3.11大震災の影響で中止になっていたもので,7つの私立音楽大学が3日間にわたって交響曲の名曲を中心に交代で演奏するものです 

初日公演のこの日は武蔵野音楽大学(指揮:北原幸男)がショスタコービチの「交響曲第5番」を,昭和音楽大学(指揮:大橋秀也)がファリャのバレエ音楽「三角帽子」を,洗足学園音楽大学(指揮:秋山和慶)がベルリオーズの「幻想交響曲」を演奏します

入場料は一律1,000円ですが,全席指定です.間近にチケットを買ったので1階席が取れず3階B43,やや右サイドの通路側席をかろうじて取りました 1,2階席はほぼ満席,3階席はまだ大分余裕があります

最初に昭和音楽大学大学院生・館山幸子さん作曲の「ファンファーレ」を同大学のブラスセクション8名が演奏 次いで武蔵野音楽大学管弦楽団のメンバーが入場してきます.全体を見渡すと弦楽器を中心に女性奏者が圧倒的に多いことに気が付きます オケの編成は左から第1ヴァイオリン,第2ヴァイオリン,ヴィオラ,チェロ,その後ろにコントラバスという配置を取ります 弦楽器の首席の位置には外国人奏者(多分,同大学の講師)が構えています.大学を挙げてトップバッターを務めるオケとしての意気込みを感じます

指揮者・北原幸男が登場,気合とともにショスタコーヴィチの第5交響曲の第1楽章が始まります 北原はタクトを振りますが,第3楽章「ラルゴ」のみタクトを置いて両手で指揮をします.若干,管楽器に不安定さを感じましたが,なかなかの熱演で,拍手喝さいを浴びました

 

          

 

一旦20分の休憩に入り,2曲目のファリャ「三角帽子」の演奏前に,洗足学園音楽大学3年生・大山智司君作曲の「ファンファーレ」を同大学ブラスセクション12人が演奏 次いで,昭和音楽大学管弦楽団の面々が登場します.やはり,女性の比率が高いことに気が付きます このオケは左から第1ヴァイオリン,第2ヴァイオリン,チェロ,ヴィオラ,その後ろにコントバスという配置を取ります

指揮者・大勝秀也がタクトを持って登場します.「三角帽子」を生で聴くのは初めてです.最初にティンパ二とトランペットのファンファーレがあって,オケ全員の手拍子なども入り,メゾ・ソプラノの独唱で幕が開きます

プログラムを見た時には,ショスタコの「第5」とベルリオーズの「幻想」の間に無理やりつっこんだな,という印象を持ったのですが,演奏を聴くと,選曲の妙というか,なかなか面白い曲で思わず耳を傾けてしまいます.色彩感豊かな演奏です     

また20分の休憩があり,今度は武蔵野音楽大学4年生・加藤新平君作曲の「ファンファーレ」を同大学のブラスセクション11名が演奏 次いで洗足学園音楽大学管弦楽団の面々の入場です.このオケのみコンマスが女性です.オケはやはり女性が圧倒的に多いですが,ブラスセクションは男性比率が高いようです

指揮者・ロマンス・グレイの秋山和慶が颯爽と登場します 私がこのコンサートのチケットを買ったのはこの人の指揮振りを観たかったからです.第1楽章「夢想と情熱」,第2楽章「舞踏会」と順調に進み,第3楽章「野の風景」に入るころ,かなり大きな揺れがあり,しばらく続きました.地震です 体感的には震度3以上です.すぐに腕時計を見ると短針はちょうど6時を指していました.近くの席の人はおろおろして「地震だ地震だ」と囁きあっていました オーケストラのメンバーも気づいたらしく演奏をやめる奏者も出てきました 指揮者の秋山さんは一旦演奏を止めるのか,と思える仕草も一瞬見られましたが,タクトを下ろすことなく演奏を続けさせました 次が第4楽章「断頭台への行進」なので,そのことを知っている人は内心穏やかでなかったのではないか,と思います そんなこともあったせいか,オーケストラはフル回転,圧倒的なフィナーレで締めくくり,ブラボーと拍手の嵐で迎えられました.ちなみに前2つのオケではブラボーはかかりませんでした.これは明らかに地震を乗り越えて演奏を続行した秋山効果です このオケにとっては地震が自信につながった演奏会ではなかったか,と思います

 

          

 

1つのコンサートで3演目,休憩2回をはさんで3時間半の長丁場でした 終演後,下りエスカレーターに乗ってケータイの電源を入れると,間もなく着信音が鳴りました わがPCビル防災センターO隊員からで「午後6時,ビル内地震計で震度4を計測した.館内を巡回したが,エレベーターが1機停止したほかは特に異常なし」という報告がありました

この東京芸術劇場でコンサートの最中,地震を体験したのは今回が2回目です.1回目はもう20年以上前のことで,現代作曲家の宗教曲を聴いている最中でした ちょうどパイプオルガンのモダン面を使って演奏している時でした 今回と同じくらいの揺れだったと記憶しています.現在の東京芸術劇場は耐震工事をしてリ・オープンしたばかりなので,今回は安心して聴いていました

3つのオケを聴き終わって思うのは「それぞれの大学で優れた学生が選ばれて演奏したわけだが,この中で近い将来どれほどの人がプロの音楽家として活躍していけるのか」ということです.今回の出演者は3大学合計で250人位ではないかと思いますが,1%いるかいないか,でしょうか 彼ら,彼女らの両親は大変だと思います.莫大なお金を注ぎ込んで,幼いころから楽器を習わせ,音楽大学に進ませ,せっかく卒業したのに就職先はなし・・・・・箔をつけるために海外に留学させるか・・・・・またまた莫大なお金がかかる・・・・・費用対効果の面でこれほど効率の悪い選択肢も少ないかも知れませんね. 他人事ながら同情に堪えません

 

 

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クァルテット・エクセルシオのモーツアルト,ベートーヴェン,ブラームスを聴く 

2012年11月24日 07時04分33秒 | 日記

24日(土).昨日,東京文化会館小ホールでクァルテット・エクセルシオのコンサートを聴きました プログラムは①モーツアルト「弦楽四重奏曲第11番K.171」,②ベートーヴェン「弦楽四重奏曲第10番”ハープ”」,③ブラームス「弦楽四重奏曲第3番」の3曲です

 

          

 

自由席なので開場の1時半には小ホールに入りI列20番,センターブロック通路側の席を確保しました.ホワイエでコーヒーを飲んで席に戻ると,近くの席でニコニコしてこちらを見ている人がいます.東京シティフィルハーモニー管弦楽団の元事務局長Yさんでした コンサート会場で知り合いに出会うことは滅多にありませんが,Yさんは数少ない”例外”の一人です 開口一番「ブログ拝見してますよ.いやー,相変わらず凄いコンサート通いですねぇ!」と言われたので,「今朝も6時に起きてブログ書きました」と答えると「それもまた凄い!」とのお言葉をいただきました 楽界のセミプロのご感想,ありがたいです.しばし立ち話をして席に着きました

Yさんと当社のU専務は,かつて博物館の学芸員の資格を取るため大学でのスクーリングで知り合った仲ですが,数年前に専務から「現在オーケストラの関係の仕事をしているYさんという人がいる.音楽好きの君と話が合うかもしれないから会ってみるかい?」と誘われ,3人で会食することになりました 話がオーストリアの作曲家コルンゴルトに及んだ時,当時大学のスクーリングで教えていたのが,私が30年程前に神保町の下倉楽器のフルート教室で習っていた時のクラスメイトO君(当時早稲田大学大学院生,現在帝京大学教授)だったことが判り,”世間は狭いですねぇ”とお互いました.それが縁で私は東京シティフィルの定期会員になり,コンサートに行くたびに演奏の感想を話し合ったりしていました

会場はほぼ8割方埋まっている感じです.先日聴いた古典四重奏団の時は余りの聴衆の少なさにびっくりしましたが,今回は逆にこんなに多くの聴衆が入ったのかとびっくりしました Yさんによると「このカルテットは年間数十回の定期演奏会だけで運営して頑張っているユニットなので応援している」とのこと.なるほどプログラムに掲載されたプロフィールによると「年間を通じて70回以上の公演を行う常設の弦楽四重奏団.1994年桐朋学園大学在学中に結成」とあります また,プログラムに挟み込まれたチラシによると「エクフレンズ・エクパートナーズ」という,この四重奏団をサポートする組織も出来ており,年会費で運営されているようです.こういう組織的な活動によって多くの聴衆が会場にやってくるのでしょう

拍手に迎えられて女性3人が朱色のロングドレス,チェロの大友さんが黒のスーツで登場です 向かって左から第1ヴァイオリンの西野ゆかさん,ヴィオラの吉田有紀子さん,チェロの大友肇さん,第2ヴァイオリンの山田百子さんという配置を取ります 先日聴いた古典四重奏団はヴィオラとチェロの位置が逆でした.それぞれのカルテットで個性があるようです

1曲目のモーツアルト「弦楽四重奏曲第11番変ホ長調K.171」は当時17歳のモーツアルトがウィーンに旅行した際に作曲されたものですが,その際ハイドンに出会っています この曲はハイドンの弦楽四重奏曲に刺激を受けて書いたのではないかと思われています.聴いているとなんとなく取り留めのない印象が残りますが,それがハイドンの影響による実験的な試みの結果なのでしょうか

この曲が終わったところで,左のブロックやや前方の席に座っていたYさんがやや後方席に移られました.その理由は後で分かります

2曲目のベートーヴェン「弦楽四重奏曲第10番変ホ長調”ハープ”」は,「ピアノ協奏曲第5番”皇帝”」や「ピアノ・ソナタ”告別”」などと同じ時期に作曲されましたが,冒頭がモーツアルトの不協和音カルテットの冒頭に似た曲想で始まります 一番特徴的なのは第3楽章「プレスト」でしょう.”運命”の動機が姿形を変えて登場します

休憩時間に再度,Yさんと立ち話をしました.シティフィルの仕事を勇退されてからは,まとまった音楽関係の仕事に就くこともなかったようで「かつてほどコンサート通いも出来なくなった」と話されていました「この小ホールはどの席で聴いても等しく良い音がするので好きですね.さっき席を移ったのは,空調が体に当たる席だったのです.それを避けるために後ろの席に移ったのです」と教えてくださいました.私が「あす土曜日は大学オーケストラを聴きに東京芸術劇場に行く予定です」と告げると,「私は北とぴあで開催されるシャルパンティエのオペラ”病は気から”を聴きに行く予定です.大学オーケストラは,飯守泰次郎さんが指揮を執るコンサート(注)を聴きに行こうかと思っています」とおっしゃっていました.飯守泰次郎さんはYさんが東京シティフィルの事務局長だったときの常任指揮者でした          (注)12月5日.東京芸術劇場にて.桐朋学園大学.飯守泰次郎指揮:ブラームス「交響曲第4番」.高関健指揮:マーラー「交響曲第1番」.

休憩後のブラームス「弦楽四重奏曲第3番変ロ長調」は,Yさん同様,私も初めて聴く曲です それまでの四重奏曲と違い明るい曲想の音楽で,ブラームス自身も3曲の弦楽四重奏曲の中で一番気に入っていたとのことです

第1楽章の冒頭を聴いた時に感じたのは,まるでドヴォルザークのような”軽さ”でした 次第にブラームスらしさが全体を覆ってきますが.第2楽章「アンダンテ」は憂いに満ちた曲想です 「秋の今聴くのが最も相応しいのがブラームスの室内楽だな」としみじみ思うのが,こういう緩徐楽章です 第3楽章「アジタート」はヴィオラが”待ってました”とばかりに大活躍します.吉田有紀子さんの演奏は音楽性が豊かで好きです 次いで第4楽章のフィナーレを迎えます

そもそもこのコンサートを聴こうと思い立ったのは,今年6月にサントリーホール”ブルーローズ”で開かれた「サントリーホール・チェンバーミュージック・ガーデン」にエクセルシオSQが出演した時に,ヴィオラの吉田有紀子さんの演奏が素晴らしかったからです

ブラームスというと4つの交響曲,室内楽ではピアノ五重奏曲など”重い”印象の強い作品を頭に思い浮かべがちですが,こうした長調の明るい曲もいいな,とあらためて思い直したコンサートでした

 

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シューマン「幻想曲ハ長調」を聴きながら~奥泉光著「シューマンの指」を読む

2012年11月23日 07時10分18秒 | 日記

23日(金・祝日).昨夕,25日に誕生日を迎える当社K君の誕生祝パーティーを開きました K君がB3で開かれる鞴祭(ふいごまつり)に参加するため,時間調整で地下のOで飲んでから迎えに行きました.S氏とK君と私の3人で上野に向かい,またまたカラオケスナックFで歌合戦 を展開しました.誕生日を控えたK君は96点を連発して絶好調振りを発揮していました 残るわれわれ二人は95点が最高でした.ちなみにこの店では96点の高得点は滅多に出ないとのことです 一人で飲んでいた中高年のお客が彼の歌を聴いてすっかり気に入ったようで,「うちの娘が19歳で理系の大学生なんだが,どうかね?」とさかんに勧誘していました 「今度この店で会ったら運命だからね」と念を押されていました.ひと通り歌った後,ママが用意してくれたケーキ のロウソクを吹き消し,入刀しました.

 

          

 

えっ,何も写ってないんじゃないかって? すみません,ロウソクの火が消えた後にシャッターが下りたもので・・・・・・これが本当のシャッター・アウト,なんちゃって ・・・・・正直に話します.ちゃんと写った写真もあるのですが,ここに公開して前途有望な独身青年の未来を閉ざしてはいけない,と敢えて掲載しなかったのです 何という美しい職場愛・人類愛なのでしょうか!自画自賛 もちろん週刊現代に追いかけられるようなヤバイ写真ではありません,本人の名誉のために,念のため

 

 

  閑話休題  

 

 

奥泉光著「シューマンの指」(講談社文庫)を読み終わりました 著者の奥泉光は1956年山形県生まれ.国際基督教大学大学院比較文化研究科博士前期課程修了.1994年に「石の来歴」で芥川賞を受賞しています.この作品は,講談社創業100周年記念書き下ろし作品として2010年7月に単行本として刊行されたものを文庫化したものです

音大のピアノ科を目指していた私(里橋優)は,後輩の天才ピアニスト永嶺修人が語るシューマンの音楽に傾倒していきます 浪人が決まった春休みの夜,高校の音楽室で修人が演奏するシューマンの幻想曲を偶然耳にした直後,プールで女子高生が殺されます その後,中指を切断したはずの修人が海外でピアノを弾いていたという噂が飛び込んできます.これはいったいどうしたことか

354ページに及ぶ大作です.しかし,そのうちの大半はシューマンとシューマンの音楽に関わる著者の薀蓄が披瀝されていると言っても良いほど,この著者はシューマンにこだわっています.私はこの小説を少しでも理解できるように,小説に登場する曲のCDを聴きながらこの本を読み進めました 「ピアノ協奏曲イ短調」,「クライスレリアーナ」「ダヴィッド同盟舞曲集」,そしてこの小説でテーマのように使われている「幻想曲ハ長調作品17」.中でも「幻想曲ハ長調」はこの小説に何度も登場するので,その都度CDを流しました

著者は余程のシューマン愛好家なのだと思います それだけに,この小説を3分の2位まで読み進んで思うのは,いったいこの小説は推理小説なのだろうか,それにしては余りにも事件そのものの説明が薄すぎる,ということです

ところが,最後に,私(里橋優)の妹・恵子が高校の美術教師・吾妻豊彦に宛てた手紙を読むと,これまでの一切の物語がひっくり返り,最初に登場した「永嶺まさと」がいつの間にか「永嶺雅人」に言い換えられていた理由が明らかになるのです 強引とも思われるストーリー展開ですが,シューマンの音楽を聴きながらの読書は,楽しいひと時だったことは確かです

 

          

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「上田京&恵谷真紀子とドイツの仲間たち」を聴く~津田ホール

2012年11月22日 06時58分52秒 | 日記

22日(木).昨夕はJTアートホールで「フィラ―ジュ・クインテット」のコンサート(①ハイドン「弦楽四重奏曲第38番”冗談”」②ラヴェル「弦楽四重奏曲ヘ長調」③フォーレ「ピアノ五重奏曲第2番」)を聴く予定だったのですが、一昨日、元の職場のA君が,同じ21日に津田ホールで開かれる室内楽コンサートの招待券があるのだが一緒にどうか、と声を掛けてくれたのです 

コンサートは「上田京&恵谷真紀子とドイツの仲間たち」というタイトルで、プログラムを確認すると①モーツアルト「ピアノ四重奏曲第2番変ホ長調K.493」、②マーラー「ピアノ四重奏曲イ短調」、③ブラームス「ピアノ四重奏曲第3番ハ短調」とあり、こちらの方が断然魅力的なので、迷わずこちらのコンサートに行くことにしました A君の知人の奥様がヴィオラの恵谷真紀子さんという関係から招待券が手に入ったとのことです.いつもながらA君の顔の広さには驚きます 「フィラ―ジュ・クインテット」のコンサートには職場の同僚Aさんに行ってもらうことにしました

 

          

 

ピアノの上田京さんは東京藝大大学院卒、イタリア・ヴィオッティ国際コンクール入賞者で、現在東邦音楽大学で後進の指導に当たっています ヴィオラの恵谷真紀子さんは同じく東京藝大大学院卒、ウィリアム・プリムローズ国際ヴィオラコンクール入賞者で、現在武蔵野音楽大学非常勤講師を務めています ヴァイオリンのフローリン・パウルさんはルーマニア生まれ、1977年、ロン・ティボー・コンクールで最高位入賞(1位なしの2位),現在北ドイツ放送交響楽団のコンサートマスターを務めています チェロのクレメンス・ドルさんはドイツ出身,フランクフルトBDIチェロコンクール第1位,現在武蔵野音楽大学客員教授を務めています

自由席なので,開場時間の6時半には千駄ヶ谷駅前の津田ホールに入りました.このホールは独身時代に高橋真理子のコンサートを聴きに来たという記憶があるのですが,どうも会場が異常に狭く感じ,ポピュラー音楽をやるような会場とは思えなかったので,遅れて到着したA君に尋ねてみると,このホールは相当古く広さも昔のままだいというので,私の記憶違いかもしれません

会場はほぼ8~9割方埋まっている感じです その多くは出演者の関係者,とりわけ大学の教え子が多いように思いました.自席は1階M列7番で,センターブロック通路側です

1曲目のモーツアルト「ピアノ四重奏曲第2番変ホ長調K.493」は長調の特性がよく表れた明るいメロディーに溢れています 前年に書かれたピアノ四重奏曲第1番ト短調K.478のデモーニッシュな曲想とは対極にあります ピアノとヴァイオリンの主導によって軽快に演奏されました

2曲目のマーラー「ピアノ四重奏曲イ短調」は,作曲者が16歳の時の作品です この曲は,数年前に公開された映画「シャッターアイランド」の冒頭で有効に使われた曲です 映画の中でこの曲が流れてきたときはブラームスの曲か と思ったほど曲想が暗く,情熱的でした.この曲をナマで聴くのは今回で3回目です.1回目は10年位前に新日本フィルが井上道義の指揮でマーラー・チクルスをやった時に,同フィルの首席が演奏したのです その時に出演したヴィオラの白尾偕子さんの情熱的な演奏姿が印象的でしたが,数年後に彼女は癌(?)に侵され死去しました 2回目は数年前に東京文化会館で開かれた「東京の春・音楽祭」のときに演奏されたものです 今回の演奏を含めて聴くたびに思うのは,この曲は”マーラーの青春の歌”だな,ということです

 

          

 

休憩後のブラームス「ピアノ四重奏曲第3番ハ短調」を何と表現すれば良いのでしょうか 冒頭ピアノの強打に続く弦の思いつめたような曲想は,まるで崖の上から海に突き落とされるような衝撃です ブラームスは何と暗く重い音楽を書くのでしょうか

そう思ってプログラムの解説をあらためて見ると,

「ブラームスは出版商ジムロックにあてた手紙に『この楽譜の扉に,ピストルを頭に向けている人の姿を書くといいでしょう すると,音楽についての一つの概念を得ることができます』と書いている」

とありました.この曲は1854年4月に着想されていますが,その年の2月に恩師シューマンがライン河に身を投げて,その後精神病院に収容されていたという事実があります つまり,この曲にはシューマンの悲劇と彼の妻クララへの満たされない想いが込められた,情念が渦巻いた曲なのです

第3楽章「アンダンテ」に入り,ピアノの伴奏にのせてチェロが美しいメロディーを奏でると,それまで続いてきた重苦しい雰囲気から解き放たれ,明るい光が差し込んでくるのを感じます 1曲目のモーツアルトでも,2曲目のマーラーでも,アンサンブルに紛れて前面に出てこなかったチェロが,ここで一気に花を咲かせ主役に躍り出ます

第4楽章の冒頭,ベートーヴェンの「交響曲第5番ハ短調」の”運命の動機”が聴こえます このブラームスのピアノ四重奏曲も同じハ短調です.ブラームスがベートーヴェンの第5番を意識してこの曲を作ったのは明らかでしょう ただし,同じハ短調でもブラームスのこの楽章における”運命の動機”の扱いはむしろ軽快ささえ感じさせます 崖から突き落とされたままでは終わらないということでしょうか

アンコールにはシューマンの「ピアノ四重奏曲」の第3楽章”アンダンテ”が演奏されました ブラームスのアンコールにシューマン,心憎い演出ですね

 

 

          

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もっと早く読めば良かった!~許光俊著「クラシックを聴け!完全版」を読む 

2012年11月21日 06時59分42秒 | 日記

21日(水).昨夕,記者クラブ・ラウンジで4者会議がもたれました.2つの懸案事項を検討して40分の短時間に一定の結論を得て解散しました.そこまでは良いのですが,地下まで下りたところでX部長から焼鳥0に行こうと誘われました 前日も10時過ぎまで散々飲んで歌ったのに,そんなことはちっとも意に介さないようです こちらはこの日まっすぐ帰らないと今週自宅で夕食を取るのがゼロになるので,丁重にお断りしました X部長は焼鳥0の店内に目ざとくテナントJのN氏を見出して一緒に飲むことにしたようです 彼に付き合っていたらお酒がエンド―レスになってしまいます.くわばら・くわばら,クワバラ・クワバラ,桑原・桑原

 

  閑話休題  

 

民主党の鳩山元首相が衆議院議員選挙に立候補しないと決めたとのこと 本人のためにも日本のためにもベスト・チョイスです 彼ほど日本の信用をどん底に貶め,政治家の発言が”羽よりも軽い”ことを証明した人もいないでしょう 確か数年前,”もう選挙には立候補しない”と発言したのに,舌の根の乾かないうちに前言を撤回して今日まで議員を続けてきました

鳩山氏のモットーは”友愛”でしたが,沖縄の米軍基地問題でオバマ米大統領に,何の根拠もないのに「トラスト・ミー」と言った時には,”友愛”どころか,よく”言うわい”と思ったものです,国民の大半が 「鳩山は山を張るけどピジョンがない」と言われても仕方ないでしょう・・・・・・わかりますね.鳩のピジョン(pigeon)と展望のビジョン(vision)をひっかけたわけです.ちょっと高度でしたか?

鳩山氏に言いたいのは,今度こそ「選挙に立候補しない」という発言を二度と撤回しないでほしいということです それが国益につながるのです.後になって「民主党から立候補しないと言ったのであって,他の党から立候補しないとは言っていない」などと理屈をこねて,政界のドンが束ねる「政治家の生活が第一」から立候補することなど,ゆめゆめ考えないでほしいと思います これからは,何の努力もなしに親から相続した莫大な遺産を食いつぶしながら,時には奥様とファッションショーにでも出演して世間に話題を提供しながら,充実した隠居生活をお送りになることをお祈りしております

 

  閑話休題  

 

許光俊著「クラシックを聴け!完全版」(ポプラ文庫)を読み終わりました 読み終わった今,なぜもっと早くこの本を読まなかったのか,と悔やんでいます

許光俊氏は1965年,東京生まれ.慶應義塾大学教授です.「問答無用のクラシック」「オレのクラシック」「絶対!クラシックのキモ」「オペラにつれてって!完全版」など多くの著書があります この本は1998年に青弓社から刊行され,加筆修正して2009年に文庫化したものです

最初に「序文に代えて」で著者は衝撃的な発言をします.『クラシックは滅びた!』と バッハ,モーツアルト,ベートーヴェン,ブラームスと続いてきたクラシックの伝統はブルックナーを持って終了したのだ,と主張しています その理由はブルックナーに至って,音楽は宗教(神)のレベルに達してしまったからだ,と言います

この本は第1章「超基本 聴きはじめる前に」,第2章「実践編1 基本の3曲,これだけ聴けば,クラシックは完全にわかる」,第3章「実践編2 もっとディープに,もっと危険に」,第4章「コレッキリ!実用情報」から成ります

第1章「超基本 聴きはじめる前に」では,クラシック音楽を聴く前に①推理小説を読むこと,②サラダを作ることを勧めています.これはクラシック音楽の構成(成り立ち)を考えるのに役立つという主張です

第2章「実践編1 基本の3曲,これだけ聴けば,クラシックは完全にわかる」では,①チャイコフスキー「幻想序曲:ロメオとジュリエット」,②モーツアルト「ピアノ・ソナタ第15番」,③ベートーヴェン「交響曲第9番”合唱付き”」を取り上げ,それぞれの曲の成り立ちを解説してます ①ではチェリビダッケ指揮ミュンヘン・フィルのCD,②では内田光子のCD,③ではギュンター・ヴァント指揮北ドイツ放送交響楽団の各CDによる演奏を紙上で再現して,具体的に解説していきます ちなみに許光俊という人は,指揮者ではチェリビダッケとヴァント(いずれも故人)を最高に評価していて,他のほとんどの指揮者はぼろくそにこき下ろしています.相当偏ってますね

例えば,チャイコフスキーの「幻想序曲:ロメオとジュリエット」のCDのトレース時間を取り上げながら,

00:44 チェロやコントラバスといった音に低い弦楽器(低弦楽器)が沈痛な調べを奏でる これは暗い運命を暗示するメロディで(このように曲のなかで意味をもって機能するメロディやリズムをモチーフや動機という),今後おりにふれて登場してくる.やがてそれは清らかではあるが悲しげなヴァイオリンに受け継がれる.重い低弦の響きがもう一度現れる

と解説しています.非常に具体的で分かりやすいでしょ

実際にCDを聴きながら読むと曲の内容がよく理解できると思います.音楽評論の中に,時折楽譜を登場させて解説していた吉田秀和氏とは全く違うアプローチで,一切音符を紙面に登場させず言葉だけで音楽を表現していきます.これは相当な才能です 抽象的な事がらを具体的に分かりやすく解説することがいかに困難なことか 脱帽するしかありません

文芸評論家の吉田美奈子さんが本書の「解説」の中で,

「大八車や馬車が行きかう町に,いきなりターボエンジンつきのスポーツカーで乗りつけてきたようなものーーいささか大袈裟ながら,90年代後半の音楽評論界に許光俊が登場したときの印象をひと言でいえば,そんな感じになるだろうか

と書いています.それは,2012年の今でも,印象としては変わらないのではないのかと思います.冒頭にも書いたように,なぜもっと早くこの本を読まなかったのか,と悔やむほど,面白く,刺激的な本ですクラシック入門者だけでなく,クラシック大好き人間にも自信をもってお薦めできる本です

 

          

 

コメント (2)
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