人生の目的は音楽だ!toraのブログ

クラシック・コンサートを聴いた感想、映画を観た感想、お薦め本等について毎日、その翌日朝に書き綴っています。

モーツアルト「ジュピター」「ハフナー」「クラリネット協奏曲」を聴く~「トリトン 晴れた海のオーケストラ」 第2回演奏会

2016年10月31日 08時17分24秒 | 日記

31日(月).月日が経つのは速いもので今日で10月も終わりです 思えば,ちょうど1年前に現役を引退し 完璧にフリーになったのでした お陰さまでコンサートを聴く回数も 映画を観る回数も 自己新記録を更新中です ということで,わが家に来てから今日で763日目を迎え,久しぶりの住居不法侵入者に遭遇して職務質問をしているモコタロです

 

          

           キミはいったい何者? ハロウィンのモデルさん? 単なるマスコット人形?

 

  閑話休題  

 

昨日午後8時半過ぎ,近くで火事がありました 十数年前にもほぼ同じ個所で2度火事があったのを思い出しました.不思議です.3度同じところで火事が起こるとは 乾燥しやすい季節を迎えました.皆さん,火の取り扱いには気を付けましょうね

 

          

 

  も一度,閑話休題  

 

昨日,晴海の第一生命ホールで「トリトン 晴れた海のオーケストラ 第2回定期演奏会」を聴きました オール・モーツアルト・プログラムで,①交響曲第35番ニ長調”ハフナー”K.385”,②クラリネット協奏曲イ長調K.622,③交響曲第41番ハ長調”ジュピター”K.551です ②のクラリネット独奏はポール・メイエ,コンサートマスターは都響ソロ・コンマスの矢部達哉,オケは在京オケの第一線で活躍するメンバーが中心です

 

          

 

自席は1階7列12番,左ブロック右通路側です.会場は満席近い状況です コンマスの矢部達哉以下33名のメンバーが登場,配置に着きます 弦楽器は左から第1ヴァイオリン,第2ヴァイオリン,チェロ,ヴィオラ,その後ろにコントラバスという編成です オケを見渡すと錚々たるメンバーに驚きます.矢部達哉の隣は都響副主席・渡邉ゆづき,第2ヴァイオリン首席は都響首席・双紙正哉,隣は東京フィル首席・戸上眞里,チェロ首席は神奈川フィル首席・山本裕康,隣は東京シティ・フィル首席・富岡廉太郎,ヴィオラ首席は新日本フィル首席の篠崎友美,隣は都響の村田恵子,コントラバス主席はN響首席・吉田秀といったメンバーです 管楽器では都響オーボエ首席・広田智之,都響クラリネット首席・三界秀実,都響ファゴット首席・岡本正之をはじめとして,メンバーのほとんどが在京オーケストラの首席クラスで占められてます 個人的には,第1ヴァイオリンに 2010年ルーマニア国際音楽コンクールで第1位の会田莉凡(りぼん)が参加しているのが嬉しいところです

年1回の臨時編成オーケストラということもあり,女性陣はカラフルな衣装で華やかに登場します このオケが「トリトン 晴れた海のオーケストラ」という名称からか,海の色 ブルーを意識した衣装が目立ちます

1曲目の交響曲第35番ニ長調「ハフナー」K.385は,当初ザルツブルク市長の息子ジークムント・ハフナーの貴族叙任を祝う曲として1782年に作曲した作品をもとに,冒頭に行進曲を置いたセレナードとして改作し1783年3月に交響曲として完成したものです 補足すると「ハフナー・セレナードK.250」とはまったく別の曲です

この曲は第1楽章「アレグロ・コン・スピリト」,第2楽章「アンダンテ」,第3楽章「メヌエット」,第4楽章「プレスト」から成ります

このオケは指揮者を置かず,コンマスの矢部達哉が中心となって演奏を進めます 矢部の合図で第1楽章が開始されますが,冒頭のオケの総奏によるオクターヴの跳躍を聴いた時,「何だこの迫力は」と驚きました これがたった33人で演奏している音か,という驚きです ひと言で言えば,メンバー一人一人の気迫が固まりになって聴衆に押し寄せてくる,という感じです 一番感心したのがテンポ設定です.小気味の良い速めのテンポは まさに理想的なモーツアルトのテンポです それは2楽章以下でも同様で「モーツアルトはこうでなくちゃ」という心地よいテンポなのです.全楽章を通じて弦楽セクションのレヴェルの高さを感じます それに加えて個々の管楽奏者の演奏が突出しています.一人だけ名前を挙げればオーボエの広田智之の素晴らしさは言葉に尽くせないほどです それと,読響首席ティンパ二奏者・岡田全弘の小気味の良い打撃が冴えていました この人はチョン・ミョンフン指揮アジア・フィルで演奏したこともある実力者です

2曲目は1965年アルザス生まれのポール・メイエをソリストに迎え,モーツアルト「クラリネット協奏曲イ長調K.622」です この曲は,モーツアルトの死の年 1891年の秋に,当時 クラリネットの名手だったアントン・シュタートラーのために書かれた作品です

第1楽章「アレグロ」,第2楽章「アダージョ」,第3楽章「ロンド,アレグロ」から成ります 矢部達哉の合図により軽快なテンポで第1楽章が開始され,クラリネットの優しい音色が会場に響き渡ります この曲の白眉は第2楽章「アダージョ」です.ポール・メイエの穏やかな演奏を聴きながら,この曲は本当に人間が作ったのだろうか?と思いました まるで神がモーツアルトの肉体を借りて作曲させたのではないか,とさえ思います 死を前にしたモーツアルトに神が降りたのではないか,と.それほど,この世のものとは思えない純粋で哀しく美しい音楽です

第3楽章は一転,軽快なロンドが展開します モーツアルトが「人間生きていれば いろいろあるよ」とでも言っているように聞こえます ポール・メイエのクラリネットも素晴らしかったし,彼を支えるオーケストラも素晴らしかったです

大きな拍手にメイエはスティーヴン・ソンドハイムの「センド・イン・ザ・クラウンズ」という曲を静かに演奏し,聴衆のクールダウンをはかりました

 

          

 

休憩後はモーツアルト「交響曲第41番ハ長調”ジュピター”K.551」です モーツアルトの最後の3つの交響曲(第39番から第41番まで)は1788年夏(作曲者32歳)に立て続けに作曲されました 変ホ長調,ト短調,ハ長調と異なる個性を持った3曲がセットで書かれたことは疑いのないことのようですが,今でも 何のために誰のために作曲されたのか明らかになっていません

第1楽章「アレグロ・ヴィヴァーチェ」,第2楽章「アンダンテ・カンタービレ」,第3楽章「メヌエット,アレグレット」,第4楽章「モルト・アレグロ」から成ります

矢部達哉の音頭で第1楽章が理想的なテンポで力強く開始されます.指揮者なしの臨時編成オーケストラで これほど緻密なアンサンブルの演奏ができるのか と驚きを隠せません.それは第2楽章以下でも同様です.第4楽章「モルト・アレグロ」のジュピター音型(ドーレーファーミ)のフーガの素晴らしさを何に例えられるでしょうか バッハ研究の成果がここに結実しています.フィナーレは圧巻でした

大きな拍手を受ける33人のメンバーが輝いて見えました 本当に素晴らしいコンサートでした

さて,私は この日 矢部達哉率いるオケが演奏したモーツアルトのテンポを「理想的」と書きました 家に帰って,比較の意味でニコラウス・アーノンクール指揮ウィーン・コンツェルトムジクスによる2014年発売のCDで「交響曲第41番」の演奏を聴いてみました

第1楽章を聴いて驚くのは,その超スローテンポです 一音一音噛みしめるようにゆったりと音楽を進めます ピアニストで言えばグレン・グールドの演奏するモーツアルトのピアノ・ソナタを聴いているような感じです 人によっては「こんなのモーツアルトじゃない」と怒り出すようなテンポです.しかし,アーノンクールは楽章を追うにしたがってテンポアップしていき,第4楽章では小気味よいテンポでフーガを演奏させています

 

          

 

ついでに私の大好きな第39番を聴いてみると,第1楽章「アダージョ~アレグロ」の冒頭は「これがアダージョなんてあり得ない」と叫びたくなるほど超高速アレグロです また第3楽章「メヌエット.アレグレット~トリオ」も冒頭はほとんどプレストです.トリオでガクンとテンポを落としますが,これも同じテンポで続けていたら,CDを取り出して真っ二つに割っているところです.「こんなのモーツアルトじゃない」と.アーノンクールは,これまでも従来の”常識”を打ち破る演奏でクラシック界に殴り込みをかけてきましたが,この演奏はその集大成でしょう.デフォルメ全開の演奏です

ところで,アーノンクールはモーツアルトの最後の3つの交響曲を,まとめて一つの作品として「器楽によるオラトリオ」であると位置づけています 2枚組CDの1枚目に第39番と第40番が収録されていますが,第39番の第4楽章が終わるや否や第40番の第1楽章が始まります これは1枚のCDの収録時間の制約に基づくものではなく 意図的なものです.初めてこの演奏を聴くと,あまりの余裕のなさに戸惑いを感じます これはアーノンクールが2つの曲(第41番を含めれば3つの曲)を 連続した一つの曲と捉えているからです.「ジュピター交響曲」の第4楽章でテンポが速くなっているのは,3つの交響曲によるオラトリオが最後に大団円で終わることを意味しているように思います

同じ作曲家の同じ作品でも,演奏者によって解釈が異なることを,実際に演奏を聴き比べて楽しむことが出来るのはクラシック音楽の醍醐味ですね

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モーツアルト&ベートーヴェンの「ピアノと管楽器のための五重奏曲」を聴く~深沢亮子リサイタル

2016年10月30日 09時52分07秒 | 日記

30日(日).わが家に来てから今日で762日目を迎え,米国のミュージシャン ボブ・ディランがノーベル文学賞の受賞者に選ばれながら約2週間にわたり沈黙を貫いたあと,受賞の意思を表明したというニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

          

            ボブ・デュランが2週間どこにいたか? ボク・シラン どこかで風に吹かれてたかな

 

  閑話休題  

 

昨日,上野の東京文化会館小ホールで「深沢亮子ピアノリサイタル~管楽器と共に」を聴きました プログラムは①モーツアルト「ピアノ,オーボエ,クラリネット,ホルン,ファゴットのための五重奏曲変ホ長調K.452」,②助川敏弥「ピアノのためのソナチネ『青の詩』」(ピアノ・ソロ),③ベートーヴェン「ピアノ,オーボエ,クラリネット,ホルン,ファゴットのための五重奏曲変ホ長調 作品16」です 演奏は,ピアノ=深沢亮子,オーボエ=金子亜未(新日本フィル首席),クラリネット=藤井洋子(読響首席),ホルン=日橋辰朗(同),ファゴット=吉田将(同)です

 

          

 

全自由席です.3列目C列27番,センターブロック右通路側席を押さえました 会場は満席に近い状況です 5人の奏者が登場,配置に着きます.ピアノを奧にして,左からオーボエ,ファゴット,ホルン,クラリネットの順に並びます.ピアノはスタインウェイですが,この小ホール備え付けのピアノでしょうか

深沢亮子と言えば,内幸町の旧イイノホールで使用していたベーゼンドルファー・インぺリアル(現在 飯野ビル1階ロビーでのランチタイムコンサートで使用)は,彼女のアドヴァイスで導入されたピアノで,現在の新しいイイノホールで使用しているベーゼンドルファーも彼女のアドヴァイスによるものだと,イイノホール支配人Kさんから伺いました ウィーンのアーティスト達との共演も多い深沢亮子らしい選択だと思いました

モーツアルトの「ピアノ,オーボエ,クラリネット,ホルン,ファゴットのための五重奏曲変ホ長調K.452」は第1楽章「ラルゴ~アレグロ・モデラート」,第2楽章「ラルゲット」,第3楽章「ロンド:アレグレット」から成ります 序奏部のラルゴはピアノから入りますが,かなりゆったりしたテンポです.アレグロ・モデラートに移ってからもあまりペースが上がりませんが,それはそれでモーツアルトの心地よさが伝わってきます 「世知辛い世の中,そんなに急いでどこへ行く」といった感じで,深沢ペースで進みます

第2楽章ではオーボエ,クラリネット,ホルン,ファゴットがソロでつないでいくパッセージがありますが,金子,藤井,日橋,吉田の演奏は,さすがは首席揃いという素晴らしいパフォーマンスでした こういう演奏で聴くと,モーツアルトの室内楽って本当に素晴らしいと思います

第3楽章も深沢のピアノをからめて管楽器群が素晴らしいアンサンブルを奏で,会場を愉悦感でいっぱいに満たしました

2曲目は深沢亮子のピアノ・ソロにより助川敏弥「ピアノのためのソナチネ『青の詩』」が演奏されました 助川敏弥(1930-2015)は札幌市生まれで東京藝大で作曲を学んだそうです.この曲は1974年に書かれた曲で,3つの楽章から構成されています.作曲者は「さまざまな種類の青のイメージを抱いて作曲した」と述べているそうですが,ファンタジックな音楽でした

 

          

 

休憩が終わり,席について後半の開演を待っていると,同じセンターブロックの2列目の左通路側席辺りがざわついています 何だろうと見たら,老夫婦らしきカップルの男性が急に具合が悪くなったらしく,周りの人が「救急車を呼んだ方がいい」と言い合っています そうこうしているうちに,何も知らない5人の奏者がステージに登場,演奏に入る態勢になりました すると,会場関係者らしき人が,その男性の所まで行って,聴衆に向けて「どなたかドクターはいらっしゃいますか?」と大きな声で問いかけました.すると,3人ほど医師らしき人が名乗り出て,慎重に男性を外に連れ出すように指示し,係員が車椅子に乗せてドクターたちと共に会場の外に連れて行きました この間,5人の演奏者は一旦舞台裏に引き上げて待機することになりました.この間 約5分の出来事でした ご本人に大したことが無ければ良いのですが

40年以上コンサート通いをしていますが,こういうアクシデントは初めてです.生のコンサートは何が起こるか分からない さらに驚いたのは,聴衆の中にドクターが少なくとも3人いて,名乗り出たことです 医師を構成員とするオーケストラが存在するほどですから,お医者さんにクラシック好きが多いというのも頷けます

再度5人がステージに登場,ベートーヴェン「ピアノ,オーボエ,クラリネット,ホルン,ファゴットのための五重奏曲変ホ長調」の演奏に入ります

この曲はベートーヴェンがボンからウィーンに出てきて間もなくの1796年(作曲者26歳)に作曲されたとみられています 同じ調性(変ホ長調)といい,同じ楽器編成といい,同じ楽章構成(急ー緩ー急)といい,第1楽章が序奏を伴ったソナタ形式で書かれていることといい,ベートーヴェンがモーツアルトのピアノ五重奏曲k.452を意識して書いたことは間違いありません

この曲は第1楽章「グラ―ヴェ~アレグロ・マ・ノン・トロッポ」,第2楽章「アンダンテ・カンタービレ」,第3楽章「ロンド:アレグロ・マ・ノン・トロッポ」から成ります

第1楽章は序奏(グラ―ヴェ)は,モーツアルトの時と同じようにゆったりとしたテンポで開始されます.この曲でも,アレグロに移ってからもそれほどテンポは上がりません 第2楽章では,モーツアルトの五重奏曲と同じように管楽器がメロディーを受け継いでいくところがありますが,これも素晴らしい演奏でした 第3楽章はピアノによるリズミカルなロンド主題から始まります.この楽章でも管楽器のアンサンブルが素晴らしく,若きベートーヴェンの生き生きした音楽がストレートに伝わってきました 

それにしても,ベートーヴェンって中期・後期の作品はもちろん良いけれど,先日 ルートヴィヒ・チェンバー・プレイヤーズの演奏で聴いた「七重奏曲」や今回のピアノ五重奏曲のような若き日の作品も,明るく伸び伸びしていて素晴らしいと思います

アンコールは,最初に深沢亮子のピアノ・ソロで「風」という曲(作曲者名は聞き逃した),2曲目は5人の演奏で,先ほど演奏したモーツアルトの五重奏曲の第2楽章を演奏しました この楽章が2回聴けて幸せでした そして,最後は再び深沢亮子のソロでモーツアルトの「トルコ行進曲」が華々しく演奏されコンサートの幕を閉じました

この日のコンサートは同じ編成によるモーツアルトとベートーヴェンの室内楽が聴けてラッキーでした

 

          

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ストラヴィンスキー「春の祭典」,ラフマニノフ「第3ピアノ協奏曲」を聴く~藝大フィルハーモニア演奏会

2016年10月29日 08時40分11秒 | 日記

29日(土).わが家に来てから今日で761日目を迎え,文化勲章受章者決定のニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

          

             受賞者は15人だけど 一番若い人で69歳だな  文化って年月が必要らしいね

 

  閑話休題  

 

昨夕,上野の東京藝大奏楽堂で「藝大フィルハーモニア第377回定期演奏会」を聴きました プログラムは①セルゲイ・ラフマニノフ「ピアノ協奏曲第3番ニ短調」,②イーゴリ・ストラヴィンスキー「春の祭典」です ①のピアノ独奏は東京藝大准教授・有森博,指揮は東京藝大教授で東京シティ・フィル常任指揮者・高関健です

会場は全席自由です.出足が遅かったため残念ながら通路側席が取れず,1階16列10番,左ブロック右から3つ目の席を押さえました

本公演に先立って18時15分からプレコンサートがあり,藝大フィルハーモニアのメンバーによりストラヴィンスキー「弦楽四重奏のための3つの小品」が演奏されました 演奏の前にチェロの松本氏が「藝大フィルハーモニアの名称を11月1日から藝大フィルハーモニア管弦楽団に代えることになった.前身である旧東京音楽学校管弦楽団の原点に立ち返る意味を込めた」旨を説明し,次いでストラヴィンスキーの演奏に入りました この曲は「春の祭典」の次の年(1914年)に作曲されたとのことで,ストラヴィンスキーらしいエクセントリックな曲(10分程度)でした

 

          

 

さて,本番です.オケのメンバーが入場し配置に着きます 指揮者が高関健の場合はコントラバスとチェロが左サイドに配置され,ヴァイオリン・セクションが左右に分かれる対向配置をとります.コンミスは野口千代光です

1曲目はラフマニノフ「ピアノ協奏曲第3番ニ短調」です この曲は1909年6月から9月にかけて作曲されましたが,第2番のコンチェルトと並んでラフマニノフらしいロマン溢れる傑作です 第1楽章「アレグロ・マ・ノン・タント」,第2楽章「インテルメッツォ:アダージョ」,第3楽章「フィナーレ:アッラ・ブレ―ヴェ」から成ります

ピアノ独奏の有森博が高関健とともに登場,さっそく第1楽章が開始されます この部分は聴いていてゾクゾクします この冒頭を聴くとオーストラリア出身で 天才ピアニストと言われたヘルフゴットを主役とした映画「シャイン」を思い出します  この第3番のコンチェルトが通奏低音のように全編を通して流れていました

第2楽章は冒頭,オーボエが寂しげなメロディーを奏でますが,この演奏が素晴らしかった  第3楽章は終始 勇壮でドラマチックな曲想です  有森の高速かつ確実なテクニックが冴えわたります フィナーレはオケが咆哮します

会場いっぱいの拍手に,有森はJ.S.バッハ(ジロティ編)「プレリュード」を演奏,弱音の美しさを会場の隅々まで響かせました

 

          

 

休憩後はストラヴィンスキー「春の祭典」です この曲は「バレエ・リュス」率いるセルゲイ・ディアギレフの依頼により作曲されたバレエ音楽です

オケの規模が拡大しています.よく見ると,ヴィオラの首席には元N響首席で藝大教授の川崎和憲氏が,ホルン首席には日フィル,読響,N響などで活躍した准教授・日高剛氏がスタンバイしています

「春の祭典」は,太陽神イアリロに捧げられた生贄の処女が,祭壇の前で生贄になるまでのロシアの異教時代の原始的な儀式を,さまざまな踊りとして扱ったものです 第1部「大地の崇敬」,第2部「いけにえ」から成ります

高関健のタクトで第1部がファゴットの独奏で入りますが,この演奏が素晴らしかった ここで躓くと後が大変です 最初のうちは弦楽器がややおとなしいかな,と思いましたが,それは最初だけでした この曲は音楽の3要素(リズム,メロディー,ハーモニー)のうちリズムを主体とする音楽ですが,管打楽器は最初から絶好調です とくに第2部はオケ全体がフル稼働で圧倒的なダイナミズムを具現していました それを可能にしていたのは高関健のタクトさばきだったと思います 彼の指揮ぶりを見ていると,無駄な動きが一切なく,指示が明確で,演奏する側は演奏し易いのではないかと想像します カリスマ性こそ薄いものの,楽員は正確無比のタクトさばきに安心してついて行けるのではないか,と思います

胸のすくようなダイナミックな素晴らしい演奏でした こういう曲は家のオーディオ装置で聴いていても,その迫力は伝わってきません.その場で空気の振動を全身で受け止めて初めて感動が湧いてくるものです

さて,話は180度変わりますが,この曲の「プログラム・ノート」を早稲田大学の助教が書かれています(なぜ東京藝大の人ではないのか不思議です)が,今までにない書き方だったので新鮮でした

「春の祭典」に関するほとんどの解説は概ね次のような内容になっています

「バレエ・リュスの興行主セルゲイ・ディアギレフの依頼により『火の鳥』『ペトルーシュカ』に次いで作曲したバレエ音楽である 初演は1913年5月29日,パリのシャンゼリゼ劇場でピエール・モントゥーの指揮,ニジンスキーの振付けでロシア・バレエ団が踊った 初演は罵詈と賞賛に分かれたが,罵詈の方が多く失敗に終わった 当時のパリの聴衆にはあまりにも刺激的で先進的だったからである

これに対して,この筆者は作曲の経緯や初演に漕ぎ着けるまでのことに触れ,「パリでもっともメジャーな新聞『ル・フィガロ』の朝刊に掲載された告知文のとおり,その夜の初演は,バレエ・リュスが次なる段階へ確実に踏み入ったのを,芸術界に知らしめることとなった」と書いてはいるものの,初演の時の聴衆の反応がどうだったかについては具体的に触れていません

例えば,この曲を初めて聴く人がこのプログラム・ノートを見て演奏を聴いた時,初演は何の問題もなく大成功に終わったと勘違いするのではないか,当時としては評価が二分されるほど先進的な曲だったことを理解しないまま聴くことにならないか,という疑問を抱きます

おそらく筆者は「東京藝大のコンサートを聴きにくるほどの聴衆は,初演の結果など分かった上で聴くはずだから,あえて触れる必要はない」と判断したのかも知れません

ところで,「もし自分が1913年5月29日の初演に居合わせたとしたら,どんな風に受け止めただろうか?」と考えるのは興味深いことだと思います 今でこそCDが普及し,ユーチューブでも聴くことができ,コンサートでも時々取り上げられるようになっているので,当然のように「クラシック音楽」として聴いていますが,その当時は聴くための何の手段も情報もないわけで,まさに当時の「現代音楽」であるハルサイをいきなり聴いたら,そのエキセントリックな曲想に拒否反応を起こしていたのではないかと思います

プログラム・ノートを読んで,そんなことを考えました

 

          

 

  も一度,閑話休題  

 

プログラム冊子に下のチラシが挟まれていました 11月13日(日)午後3時から東京藝大の第6ホールでベートーヴェンの「セリオーソ」,メンデルスゾーンの「八重奏曲」などが演奏されます 入場無料だそうです.メンデルスゾーンを聴きたいのですが,残念ながら当日 別のコンサートが入っていて聴きに行けません どなたか代わりに行ってください

 

          

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「ルートヴィヒ・チェンバー・プレイヤーズ2016」コンサートを聴く/「ムジカ アモーレ」のチケットを買う

2016年10月28日 08時02分12秒 | 日記

28日(金).昨日の朝刊各紙に,銀座 松坂屋跡再開発エリアに銀座地区で最大級となる複合商業施設「GINZA SIX」が来年4月20日に開業するというニュースが載っていました 記事を見て素晴らしいと思ったのは,地階に能楽の最大流派,観世流の拠点となる「観世能楽堂」が開場すると書かれていたからです 銀座と言えば高級ファッション・ブランド店がしのぎを削る最先端の街として有名ですが,今や「モノからコトへ」,つまり,「物の消費から文化の消費へ」という時代を迎えています 銀座にはクラシック音楽ホールとして「王子ホール」と「ヤマハホール」があり,東銀座には「歌舞伎座」がありますが,これに加えて「観世能楽堂」がオープンすることによって,ますます文化の発信地としても名を馳せてほしいと思います ということで,わが家に来てから今日で760日目を迎え,「三笠宮さま逝去」のニュースを見て所見を述べるモコタロです

 

          

           なぜ皇族には「さま」を付けるのか? 付けないとサマにならないからだってさ

 

  閑話休題  

 

昨日,夕食に「メカジキのソテー」「豚もやし炒めのおろしポン酢かけ」「生野菜サラダ」を作りました 日頃から気を付けているのは,肉と魚と野菜のバランスですが,最近やや魚が不足気味です

 

          

 

  も一度,閑話休題  

 

チケットを1枚買いました 来年2月11日(土・祝)午後2時から東京文化会館小ホールで開催される「まちなかコンサート ムジカ アモーレ」です プログラムは①マスネ「タイスの瞑想曲」,②ボロディン「弦楽四重奏曲第2番」より第1楽章,③シューマン「3つのロマンス」より,④ピアソラ「アディオス・ノニーノ」です 出演は東京音楽コンクール入賞者で,ヴァイオリン=瀧村依里(読響首席),小川響子(東響藝大院),ヴィオラ=渡邉千春,チェロ=加藤文枝,ピアノ=居福健太郎,フルート=梶川真歩,オーボエ=吉村結実,クラリネット=コハーン・イシュトヴァ―ン,ファゴット=鈴木一成,ホルン=氏家亮で,ナビゲーターは元 東京シティ・フィル音楽監督・宮本文昭です

全席自由で1,000円です.祝日の午後,リラックスして聴くにはうってつけのコンサートです

 

          

          

 

  最後の,閑話休題  

 

昨夕,上野の東京文化会館小ホールで「ルートヴィヒ・チェンバー・プレイヤーズ2016」コンサートを聴きました プログラムは①リヒャルト・シュトラウス(ハーゼネール編)「もう一人のティル・オイレン・シュピーゲル」,②ギデオン・クライン「パルティータ」(七重奏版),③アドルフ・ブラン「七重奏」,④ベートーヴェン「七重奏曲変ホ長調」となっています

ルートヴィヒ・チェンバー・プレイヤーズは,ドイツ(シュトゥットガルト放送交響楽団のメンバー)と日本の若手演奏家による室内合奏団です メンバーは,ヴァイオリン=白井圭,ヴィオラ=ヤ二ス・リールバルディス,チェロ=横坂源,コントラバス=弊隆太朗,クラリネット=ディルク・アルトマン,ファゴット=ハンノ・ドネヴェーグ,ホルン=ヴォルフガング・ヴィプフラーの7人です

 

          

 

自席はD列19番,左ブロック右通路側席です.会場は6~7割程度の入りでしょうか 1曲目のリヒャルト・シュトラウス(ハーゼンエール編)「もう一人のティル・オイレンシュピーゲル」は,1895年にシュトラウスが作曲した作品をオーストリアの作曲家・ハーゼンエールが原曲の半分の長さに編曲したものです

左からヴァイオリンの白井,コントラバスの弊,ホルンのヴィプフラー,ファゴットのドネヴェーグ,クラリネットのアルトマンの順に並びます.コントラバス以外の奏者は立って演奏します 聴いている限り,楽器が少ない分,若干物足りなさを感じますが,いかにも いたずら好きのティルの動きを彷彿とさせる原曲の魅力は失っていません

2曲目に入ります.プログラムによるとチェコ出身の作曲家クラインの「パルティータ」(七重奏版)という曲です この曲は1944年に作曲された弦楽三重奏曲を,後の1990年にチェコの作曲家ソーデックが弦楽オーケストラ用に編曲したものとのことです 3つの楽章から成り,今回は第2楽章だけが演奏されるとプログラムに書かれています

先ほどの5人に,新たにヴィオラのリールバルディスとチェロの横坂源が加わります 演奏が始まりますが,解説にある「モラヴィア民謡を主題とする変奏曲だが,幾分憂いを帯びた旋律がクラインの悲劇の人生と重なり,なんとも悲しい」という曲想とはかけ離れています 何か変だな と思っているうちに曲が終わりましたが,少し間を置いて次の曲に入りました.プログラムには「パルティータ」は第2楽章だけを演奏することになっているので,3曲目のブラン「七重奏曲」(全4楽章)の第1楽章に入ったことになります ところが,「第1楽章は軽快に上行する第1主題と伸びやかな第2主題からなるソナタ形式」という解説とはまったく曲想が異なるのです 最後まで中途半端な気持ちのまま聴いているうちに曲が終わってしまいました.やっぱり何か変です

すると,クラリネットのアルトマンが白井氏の通訳を介して「今演奏したのは3曲目のブラン作曲『七重奏曲』でした 次に演奏するのが2曲目のクライン作曲『パルティータ』です.順番が入れ替わってしまい申し訳ありませんでした」と説明しました

はっきり言って,これは聴衆軽視です 例えば2曲目と3曲目が誰でも知っているような曲であれば,「順番が入れ替わったな」と気が付くかも知れませんが,片やクライン,片やブランです.会場の聴衆の中に この二人の作曲家を知っている人が何人いるでしょうか 誰も知らないんじゃないかと思います その意味では,2曲目の演奏に入る前に「順番を入れ替えて演奏します」と一言アナウンスすれば何の問題もなかったのだと思います

聴衆の多くは,あらかじめプログラムの解説を読んで「ああ,そういう曲なんだな」とある程度内容を把握してから演奏に耳を傾けるものです それが,何の予告もなく曲の順番を入れ替えられたら頭と耳が混乱します 「最初からもう一度演奏してくれ」ってなもんです.こういう聴衆軽視の姿勢は絶対に改めて欲しいと思います

入れ替わって演奏された「パルティータ」は,作曲者のクラインがユダヤ系ということで,1944年にはアウシュヴィッツへ,翌年フュルステングルーベに送られ殺害されたという背景を持った曲なので,もの悲しく,作曲者の名前のようにクライんです

 

          

 

休憩後はベートーヴェン「七重奏曲」です この曲は1799年(作曲者29歳)に作曲され,オーストリア皇帝フランツ1世の皇后マリア・テレジアに献呈されました 6つの楽章から成りますが,どの楽章も生き生きとしています

第1楽章はゆったりした序奏に続き軽快な音楽が展開します この序奏を聴くと「いよいよ始まるな」とワクワクします 第2楽章を経て第3楽章に入ると,ピアノ・ソナタ作品48-2で使われたお馴染みの主題が奏でられます この楽章と次の第4楽章では,弦楽器群と管楽器群との掛け合いが楽しく聴けます 第5楽章はホルンが大活躍します.そして中間部ではチェロとコントラバスが主役に名乗りを上げます この時の横坂源のチェロと弊隆太朗のコントラバスの演奏は聴きごたえがありました そして最後の第6楽章は緩やかな序奏に続いて軽快な音楽が展開します この点は第1楽章と似た作りになっています

会場いっぱいの拍手に7人は,ヨハン・シュトラウス2世の「ポルカ”野火”」を演奏し 大きな拍手を受け コンサートを締めくくりました

最終的にはベートーヴェンが良かったので「終わり良ければ全て良し」なのですが,主催者側には「曲の順番の入れ替えだけは事前にアナウンスすべし」と念を押しておきたいと思います

 

          

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都民芸術フェスティバル・コンサートのチケットを買う/映画「64(ロクヨン)」を観る

2016年10月27日 08時01分36秒 | 日記

27日(木).わが家に来てから今日で759日目を迎え,昨日1956年以来の遅い「初冠雪」を迎えた富士山のニュースを見て 生意気にも補足説明を述べるモコタロです

 

          

            富士山に初冠雪があると台風はもう来ないってテレビ・ニュースでやってたよ

 

  閑話休題  

 

昨日は,夕食にステーキを焼き,野菜サラダを作りました 息子が火曜の夜 徹夜で論文を書いて朝7時半には家を出たので,体力をつけなければ身体が持たないだろうと ステーキにしました わが家では1人分300gです なお,缶ビールとワイングラスが並んでいるのはどうしたことか,という細かい点に気づいた方にご説明しますと,ビールの後にワインを飲みました.これでよろしかったでしょうか

 

          

 

  も一度,閑話休題  

 

毎年1月から3月まで東京芸術劇場と東京文化会館小ホールで開かれている「都民芸術フェスティバル」の「オーケストラ・シリーズ」と「室内楽シリーズ」の前売り(WEB予約)が開始されました

 

          

 

すでにオーケストラの全8公演セット券は10月19日から発売されているので,良い席は押さえられている可能性が高いと思いながらアクセスしました 「オーケストラ・シリーズ」(東京芸術劇場大ホール)のラインアップは以下の通りです

 

          

 

          

 

私は日本フィルのコンサートのある1月13日は別のコンサートが入っているので,それを除く7公演を押さえました A席:3,800円,B席:2,800円,C席:1,800円ですが,予想通りA席はほとんど残り少なくなっていたので すべてB席を押さえました N響だけが3階席で,他の6公演は2階席です.個人情報の入力に手間取っている間にどんどん良い席から順に減っていき焦りまくりました ネット予約は心臓に悪いです

今回のシリーズを見ると,交響曲では①ベートーヴェンが3曲(第5番=角田鋼亮+日本フィル,第3番=ブラベッツ+新日本フィル,第8番=梅田敏明+都響),②チャイコフスキーが2曲(第4番=高関健+N響,第6番=三ツ橋敬子+東京フィル),③シューマン(第1番=バルケ+読響),④シベリウス(第2番=垣内悠希+シティ・フィル)が取り上げられています

協奏曲では①ピアノ協奏曲(ラフマニノフの第2番=日本フィル+居福健太郎,リストの第1番=東京フィル+田中正也,ショパンの第2番=読響+アムラン,ベートーヴェンの第5番=都響+小山実稚恵)の4曲が,②ヴァイオリン協奏曲(ブルッフの第1番=新日本フィル+大谷康子,プロコフィエフの第2番=N響+青木尚佳,シベリウス=シティ・フィル+周防亮介)の3曲が,③チェロ協奏曲(ドヴォルザーク=東響+上村祥平)が取り上げられています

曲で選ぶか,オーケストラで選ぶか,指揮者やソリストで選ぶか・・・・いずれにしてもチケット代は在京オーケストラの定期演奏会の約半額です 格安の料金でフルオーケストラが聴ける絶好のチャンスです 

一方,室内楽シリーズ(東京文化会館小ホール)のラインアップは以下の通りです

 

          

 

私は「3大Bソナタの夕べ」のある1月19日は別のコンサートが入っているので,それを除く2公演を押さえました 嬉しいのは両公演ともメンデルスゾーンの弦楽四重奏曲が入っていることです 全席指定3,000円です.東京文化会館小ホールは座席数が少ない(649席)ので 3公演とも売り切れている可能性があります 

なお,チケット発売のスケジュールは下のようになっていますが,11月10日の一般発売の時には ほとんど選択の余地が少ないと思われます

「10枚のCDよりも,1回のコンサートを」 

 

          

 

  最後の,閑話休題  

 

昨日,池袋の新文芸坐で映画「64(ロクヨン)」(前編/後編)を観ました これは「半落ち」「クライマーズ・ハイ」などの傑作で知られる横山秀夫の原作によるミステリー小説を瀬々敬久監督が映画化した2016年製作の長編映画です 「64(ロクヨン)」というのは 昭和天皇の崩御により わずか7日間でその幕を閉じた昭和64年に発生した少女誘拐事件のことを指しています

 

          

 

わずか1週間で終わった昭和64年に発生した少女誘拐殺人事件(通称「ロクヨン」)から 事件は未解決のまま14年の歳月が流れた平成14年,時効が目前に迫っていた かつて刑事部の刑事として”ロクヨン”の捜査に当たった三上(佐藤浩市)は,現在は警務部の広報官として働き,記者発表の際の「匿名か実名か」を巡る記者クラブとの確執や,刑事部と警務部との対立などに神経をすり減らしていた

平成14年12月,ロクヨンの捜査員激励と被害者家族・雨宮(永瀬正敏)の慰問を目的とした警察庁長官の視察が翌日に迫る中,管内で”ロクヨン”を模倣したかのような新たな誘拐事件が発生する 犯人は”ロクヨン”と同じように身代金2000万円をスーツケースに入れ,父親が一人で運転する車で運ぶよう要求する.しかも受け渡し場所は次々と変更され,車は”ロクヨン”と同じルートを辿ることになる 広報の三上は記者クラブとの報道協定を結ぶ必要に迫られるが,肝心の捜査情報は「誘拐事件につき非公開」とされ,ほとんど提供されない 記者たちは反発し独自に動きかねない不穏な状況に追い込まれる そんな中,あまりにも上から情報が与えられないことに業を煮やした三上は,ロクヨン捜査にも関わった刑事部時代の上司・松岡(三浦友和)の指揮する捜査車両を待ち伏せて単身乗り込み,新たな身代金受け渡しの状況を現在進行形で把握しようとする

映画の後半になって,なぜ”ロクヨン”を模倣したような誘拐事件が起こったのかが明らかになりますが,「半落ち」「クライマーズ・ハイ」を観たときも感じましたが,ストーリーのプロットがしっかりしています さらに,この作品に関して言えば,横山秀夫は さすがに1979年から12年間 上毛新聞の記者をやっていたことだけあって,記者クラブ 対 警察広報の闘い,つまり「情報はすべて公開すべし.被害者は実名を公表すべし.書く書かないは新聞社の判断に任せるべし」とする記者クラブ側と,「誘拐された少女の命が最優先なので,犯人を刺激せず 無事に保護するまでは実名は出せない.犯人に有利になる情報は公表できない」とする警察側との闘いが見事に描かれています

 

          

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クァルテット・エクセルシオでヴェルディ,プッチーニ,シューマンの「弦楽四重奏曲」を聴く

2016年10月26日 07時54分08秒 | 日記

26日(水).わが家に来てから今日で758日目を迎え,フィリピンのドゥテルテ大統領が来日するニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

          

            この人 国策として人を殺しているみたいだけど 信用できるの?

 

  閑話休題  

 

昨夕,サントリーホール「ブルーローズ」でクァルテット・エクセルシオの「弦楽四重奏の旅~#4 浪漫の風に帆をまかせ」公演を聴きました プログラムは①ヴォルフ「イタリアン・セレナーデ」,②ヴェルディ「弦楽四重奏曲ホ短調」,③プッチーニ「弦楽四重奏曲『菊』嬰ハ短調」,④シューマン「弦楽四重奏曲第3番イ長調」です メンバーは第1ヴァイオリン=西野ゆか,第2ヴァイオリン=山田百子,ヴィオラ=吉田有紀子,チェロ=大友肇です

 

          

 

全自由席なので早めに会場に行って並びました その結果,センターブロック前から2列目右通路側席を押さえました 会場は,プログラムがポピュラーでないせいでしょうか,残念ながら5~6割程度の入りです

エクセルシオの面々が登場します.女性陣はパープル系の衣装で統一しています この日聴く曲はいずれも初めて聴くに等しい曲ばかりです というのは,ヴェルディとプッチーニの曲はCDを持っていてどこかにあるはずなのですが,例によって見つからず予習できなかったのです 1度聴いてどこかにしまい込んですっかり忘れていました

1曲目のヴォルフ「イタリアン・セレナーデ」は本来,弦楽四重奏曲のつもりで書いたようですが,単一楽章の曲として終わってしまったようです エクセルシオの演奏で明るく軽やかな曲を聴いていると,スロヴェニア出身のヴォルフは太陽の国イタリアに憧れていたのではないか,と思いました

2曲目のヴェルディ「弦楽四重奏曲ホ短調」は,1873年冬に「アイーダ」のナポリ上演へのリハーサルが延期され,空き時間が出来たときに思い立って作曲した唯一の弦楽四重奏曲です 4つの楽章から成りますが,全体を通して聴く限り,ところどころオペラのアリアのようなフレーズが現れたりしますが,弦楽四重奏曲としてはどうなんだろう? という疑問が湧きます どうも流れがスムーズに思えません.これは演奏の問題ではなく曲自体が孕んでいる問題だと思います

 

          

 

休憩時間にロビーに出ると,元 東京シティ・フィル事務局長Yさんにお逢いしました 1年ぶりくらいです.彼が事務局長だった頃は私も東京シティ・フィルの定期会員でした 「どうです,最近コンサートの方は?」と訊かれたので,「年180回程度です」と答えると,「相変わらずですねえ」と半ば呆れられました.正確に言うと,今年は200回を超えます 私が「4,000ヘルツ以上の高音が聴こえにくい」という話をすると,Yさんも同じようで,「でも,会場によっても,その時の体調によっても聴こえる時と聴こえない時とありますから」と慰められました.それはそうだよな,と納得しました

 

          

 

休憩後の1曲目はプッチーニ「弦楽四重奏曲『菊』嬰ハ短調」です この曲は3部形式で書かれた単一楽章の短い曲です.エクセルシオの演奏で美しいメロディーが会場に響き渡ります.どこかで聴いたことのあるメロディーだと思っていたら,オペラ「マノン」終幕への間奏曲に転用されているとのことでした ヴェルディとプッチーニとを弦楽四重奏曲に限って比較すると,個人的にはプッチーニの方が作曲技術は優れているのではないか,と思います とにかくプッチーニはオペラでも弦楽四重奏曲でも ”聴かせます” ”泣かせます” 

最後の曲はシューマンの「弦楽四重奏曲第3番イ長調」です シューマンは3曲の弦楽四重奏曲を作曲しましたが,その最後の作品です.ヴォルフ,ヴェルディ,プッチーニら,オペラや歌曲を”本業”とする作曲家による弦楽四重奏曲と比べると,確かにシューマンの作品はある意味ロマン派の弦楽四重奏曲らしい曲です 1度聴いただけなので,まだ十分理解するには至りませんが,何度か繰り返し聴けばきっと好きになる作品だと思います

演奏後の拍手を受けて,チェロの大友肇氏があいさつしました

「今日はお出でいただきありがとうございました.この『弦楽四重奏の旅』は一昨年の3月に津田ホールで開始し,今回第4回目を迎えるわけですが,津田ホールが閉館となり,文字通り『放浪の旅』に出ることになりましたが(会場  ),サントリーホール『ブルーローズ』では2回目の公演となりました.第1ヴァイオリンの西野ゆかが約半年間,腕の故障のため休養を余儀なくされましたが,今日はこの通り元気に演奏をしております(西野 会場に一礼.聴衆  )これからもよろしくお願いいたします(聴衆  )それではアンコールに,シューマンの『トロイメライ』を弦楽四重奏曲版でお送りします

この「トロイメライ」がまた素晴らしい演奏でした 西野ゆかさんが完全復帰したので これからの活動を一層期待したいと思います

 

          

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岩井俊二監督「シュシュのすべて」「リップヴァンリンクルの花嫁」を観る~クラシック音楽もふんだんに使用

2016年10月25日 08時03分14秒 | 日記

25日(火).わが家に来てから今日で757日目を迎え,来年2月に横浜みなとみらいホールで開かれるヤルヴィ+N響のコンサートのチラシを見て何やらつぶやいているモコタロです

 

          

            ご主人さまは この人の指揮でマーラーが聴きたいって言ってたけど

 

          

              2日間とも平日で 横浜は遠いからって まだ迷ってるみたいだよ 

 

  閑話休題  

 

昨日,夕食に「鶏肉と大根のスープカレー」と「生野菜とツナのサラダ」を作りました 料理本のレシピですが,大根のカレーは初めてです.結構美味しかったです

 

          

 

  も一度,閑話休題  

 

昨日,早稲田松竹で岩井俊二監督による「リリイ・シュシュのすべて」と「リップヴァンリンクルの花嫁」の2本立てを観ました 1本目の「リリイ・シュシュのすべて」は2001年製作146分の長編映画です

 

          

 

関東のある田園地方で,中学2年の蓮見雄一はかつて友人だった星野のいじめに遭っている 何をされても我慢できる唯一の救いはカリスマ歌姫リリイ・シュシュの歌だけで,自分が主宰するネット上のファンサイト「リリフィリア」でつぶやくことが自分を取り戻す瞬間だった

大変申し訳ありませんが,私はストーリーの詳細についてはそれ程興味がありません.私にとってはどんな音楽が使われているかが重要です この映画で流れる音楽はドビュッシーです ベルガマスク組曲の第3曲「月の光」と「アラベスク第1番」がいくつかの場面で流れます  「アラベスク」とは「アラビア風」とか「唐草模様」といった意味です.岩井監督が,というよりも音楽担当の小林武史氏が,なぜドビュッシーを選んだのかよくわかりませんが,淀みなく流れる音楽は2曲ともすごく印象的に響きます 映画を観ている最中 全曲を通して聴きたい気持ちが昂ってきて困りました とくに「アラベスク」については,こんなに流麗で豊潤な曲だったのか,と今更ながら驚きました

家に帰ってCDを引っ張り出して聴きました 「クラシック音楽の百科事典」NAXOSのCDですが,上記の2曲が収録されています 普段ドビュッシーの音楽を聴く機会はほとんどないのですが,あらためてドビュッシーはいいなあ,と思いました

 

          

 

2本目の「リップヴァンウィンクルの花嫁」は2016年製作,180分の長編映画です 東京で派遣教員を勤める皆川七海(黒木華)は,SNSで知り合った哲也と結婚するが,身内の出席者が少ないことから 結婚式に何でも屋の安室(綾野剛)に代理出席を依頼する 新婚早々,哲也の浮気が浮上したため今度は夫の追跡調査を安室に依頼する.しかし,七海は何者か(ここでは書けない)の罠にはめられ逆に義母から浮気の罪をかぶせられ家を追放されてしまう 苦境に立った七海に安室は次々と奇妙なアルバイトを紹介する 同じアルバイトで七海はハンドルネーム「リップヴァンウィンクル」の名を持つ真白(Cocco)と出会い,大邸宅で一緒に暮らすことになり 新たな物語が始まる

 

          

 

この映画では,冒頭からクラシック音楽が流れます モーツアルト「フルートとハープのための協奏曲K.299」の第2楽章「アンダンティーノ」です この映画で流れて来た音楽を思い出すまま書いてみると,モーツアルト「セレナード第13番K.525”アイネ・クライネ・ナハトムジーク”」から第2楽章「ロマンツェ」,J.S.バッハ「主よ,人の望むの喜びよ」,メンデルスゾーン「歌の翼に」,ショパン「ノクターン第2番作品9-2」,同「ピアノ・ソナタ第2番」から第3楽章「葬送行進曲」・・・・・まだまだありましたが思い出せません が,すべての音楽に共通しているのは『穏やか』な曲想である点です

こういう映画はクラシック好きにはたまりません 映画を観ながら一人で曲当てクイズをやっていました.正解率は90%くらいだと思います

本日toraブログのトータル・アクセス・ページ数が250万ページビューを達成しました これもひとえに普段当ブログをご愛読下さっている読者の皆さまのお陰と感謝いたします これからも毎日更新していきますので,引き続きご愛読をよろしくお願いします

 

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松田華音のシューマン「献呈」を聴いて思うこと/歌野正午著「密室殺人ゲーム 王手飛車取り」を読む

2016年10月24日 07時54分15秒 | 日記

24日(月),昨日,埼玉県S市にある実家のお墓参りに行ってきました 息子がネパールで現地の御線香を土産代わりに買ってきたのでそれを持参しました.太くて長いので燃え尽きるまで時間がかかりそうです ということで,わが家に来てから今日で756日目を迎え,お姉ちゃんの部屋でハイヒールに遭遇し何事か考えているモコタロです

 

          

              「片手落ち」は聞くけど  「片足落ち」は聞いたことないなぁ

 

  閑話休題  

 

昨日午前中,いつもの日曜日の日課として すべての部屋と廊下に掃除機をかけ,寒くならないうちにと思い,エアコンのフィルターの掃除をしました と言っても,掃除機でフィルターの埃を吸い取るだけですが,それだけでも違います

先日も書きましたが,CDの置き場所がなくなってきたため,新しく買ったCDを中心に約200枚のCDを5つの山に分けて枕元に積んでいたのですが,昨今の日本各地の地震発生の現状に鑑みて,大地震があった場合CDが顔面を直撃することが避けられないことが予想されるため,思い切って整理することにしました その結果,約100枚を作曲家別のCD棚の隙間に何とか押し込めました 

整理の過程で,松田華音(カノン)のCDが出て来たので,新聞を読みながら久しぶりに聴きました このCDにはベートーヴェンの「ワルトシュタイン・ソナタ」,ショパンの「英雄ポロネーズ」などが収録されていますが,4曲目に収録されているリスト/シューマンの「献呈」の演奏に入った時,背筋が寒くなるほどの感動を覚えました

プログラム・ノートによると,この曲は松田華音がロシアのグネーシン音楽学校で過ごした12年間にお世話になった関係者に感謝を込めて選んだ,ということです 演奏を聴いていると,その純粋な気持ちがじわっと伝わってきます (写真は2015年4月7日,東京オペラシティコンサートホールでのピアノ・リサイタルの時にもらったサイン入りCD)

 

          

        

  も一度,閑話休題  

 

歌野正午著「密室殺人ゲーム  王手飛車取り」(講談社文庫)を読み終りました 歌野正午は1961年千葉県生まれ.東京農工大卒.2004年に「葉桜の季節に君を想うということ」で第57回日本推理作家協会賞を受賞しています このブログでは「葉桜~」と「春から夏,やがて冬」をご紹介しました

 

          

 

「頭狂人」「044APD」「aXe(アクス)」「ザンギャ君」「伴道全教授」という奇妙なハンドルネームの5人が,ネット上で殺人推理ゲームを出題しあう ただし,ここで出題されるのは架空の話ではなく,出題者自身が犯人となって起こした殺人事件という設定である 5人は犯人であると同時に探偵となるわけだが,各自 5つの画面を前にインターネット回線を使って映像と音声をやり取りしながらゲームを進めている 彼らは,ダースベイダー・マスクを被っていたり,飼っている亀を映していたり,顔をピンボケにして映し出していたりと,正体が分からないようにしている

一人一人順番に自分が起こした殺人事件について,「密室」「アリバイ崩し」「ダイイングメッセージ」などの問題を出題して他のメンバーに答えを求めていきます 言わばゲームの問題を出すために殺人を犯しているわけで,とんでもないのですが,個々の推理ゲームは ちょっとこじつけがましいところも無きにしも非ずです 推理小説なのでそれは仕方ないことですが

むしろ,驚くのは,この5人はそれぞれがまったく面識がなく素性が知れないはずなのに,このうちの2人(AとB)が極めて身近な存在で,ゲームをやっている期間中にAが途中で消えてしまう.なぜならBがAを殺したから,という設定です これにはアッと驚きました

さらに,最後に生き残った4人が一同に会することになり,そこでそれぞれの正体が明かされるのですが,ここで再び驚くのは,男性ばかりと思っていたのは勘違いだったということです 

歌野正午では「葉桜の季節に君を想うこと」で,やられたと思いましたが,この「密室殺人~」でも最後の最後にやられました

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ハルトムート・ヘンヒェン+新日本フィルでドヴォルザーク「スターバト・マーテル」を聴く~トリフォニーホール

2016年10月23日 09時13分14秒 | 日記

23日(日).昨日 土曜日の午前中は,いつものように音楽を聴きながらワイシャツに(今回は娘のブラウスもついでに)アイロンがけをして,軽くストレッチ体操をして,再び音楽を聴きながら新聞2紙に目を通しました  朝日朝刊・社会面「メディアタイムズ」コーナーに,「昼の民放 都政だらけ」という記事が目に付きました 私は基本的にテレビはニュース以外は見ないのですが,記事によると

「民放各局の昼の番組は,知事会見や都議会の生中継など『小池劇場』が続いている ネット時代の各局の思惑や視聴者の傾向,小池氏のメディア戦略が絡み合う」という現象が起きているようです この記事を読んでいて面白いと思ったのは,元吉本興業常務でフリープロデューサーの木村政雄氏のコメントです 彼は小泉純一郎元首相や橋本徹前大阪市長などテレビが好んで取り上げた政治家と比較して『小池氏の方が上』とみているようで,「無礼な質問も受け流し,最後にニコッと笑う おじさんたちを悪役の『越後屋』に見せてしまう つまらないドラマよりよほど面白い

というものです.思わず笑ってしまったのが「越後屋」コメントです 商人の越後屋が悪代官に賄賂を贈ると,悪代官が「越後屋,おぬしも悪よのう,ムフフフ」と笑うあのシーンを思い浮かべます

今日は小池百合子氏の知事転出により3候補の争いとなった衆議院東京10区補選の投開票日です 投票用紙が届いているのでこれから投票に行きます

ということで,わが家に来てから今日で755日目を迎え,廊下を散策中 スマホ・カメラに気づきポーズを決めるモコタロです

 

          

          廊下を滑って転ぶとロウカ現象だって言われるから気をつけよっと

 

  閑話休題  

 

昨日,すみだトリフォニーホールで新日本フィルの第563回定期演奏会を聴きました プログラムはドヴォルザーク「スターバト・マーテル」(哀しみの聖母)です 出演は,ソプラノはドイツ国立マンハイム音楽大学院を首席で卒業の松田奈緒美,メゾ・ソプラノは慶応義塾大学卒業,ワーグナーを得意とする池田香織,テノールは東京藝大卒,ミュンヘン音楽大学院修了の松原友,バリトンは東京藝大卒,新国立オペラで活躍中の久保和範,合唱は栗友会(りつゆうかい)合唱団,指揮は1943年ドイツ・ドレスデン生まれのハルトムート・ヘンヒェンです

 

          

 

「スターバト・マーテル」は「悲しみに沈める聖母は立つちぬ」の一節に始まるカトリック教会の聖歌(続唱)で,詩の内容は「磔刑のキリストを前にした『悲しみの聖母』の嘆きを共に分かち合い 神の恩寵を願う」というものです 第1曲~第10曲から構成されていますが,演奏時間にして約90分の大作で,この日は休憩なしで演奏されます

この曲を聴くうえで不可欠なのは,この曲を作曲した当時のドヴォルザーク家で起こった悲劇を理解することです 1874年にはブラームスにも認められて国家奨学金を獲得し,さあこれから というところでしたが,1875年9月,長女が生後数日で亡くなっていまったのです これが直接のきっかけになったかどうかは不明ですが,1876年2月から「スターバト・マーテル」の作曲に取り掛かります ところが,翌1877年の夏,今度は次女が劇薬の誤飲により死去し,さらに唯一残された長男まで天然痘で亡くしてしまいます すべての幼子を立て続けに失うという不幸が 結果的に作曲を早めることになり,1877年11月13日に「スターバト・マーテル」が完成しました

 

          

 

オケの後方に約100人の混声合唱団が入場します そして,コンマスの西江辰朗以下オケのメンバーが配置に着きます 弦楽器の配置は通常の通り,左から第1ヴァイオリン,第2ヴァイオリン,チェロ,ヴィオラ,その後ろにコントラバスという編成です

ヘンヒェンのタクトで第1曲から開始されます.4人のソリストは揃って素晴らしかったですが,とくに感心したのはソプラノの松田奈緒美です 小柄な身体のどこからあのような声が出てくるのかと思うほど深みある力強いソプラノです 声質はドラマティック・ソプラノです メゾ・ソプラノはどうしても声が通りにくいのですが,池田香織はさすがにワーグナーを得意としているだけあって声に底力があり,よく通ります テノールの松原友は後半に行くにしたがって良くなってきました 久保和範は深みのあるバリトンを聴かせてくれました

「交響曲第9番”新世界より”」「チェロ協奏曲」「弦楽四重奏曲”アメリカ”」などに馴染んだ耳で「スターバト・マーテル」を聴くと,ドヴォルザークらしいメロディーがほとんど出てこないということに気が付きます 唯一ドヴォルザークらしいと思われる箇所は,90分の演奏のうち最後の5分です 「これで終わりか」と思っていると,また演奏が始まり,「今度こそ終わりか」と思っていると,また演奏が始まる,といった具合になかなか終わらないところです

ヘンヒェンは新日本フィルの演奏がたいそう満足だったらしく,西江コンマスはじめ弦の首席クラスと力強く握手,さらに 合唱団の健闘が相当気に入ったらしく 両手でガッツポーズを作って讃えていました  確かにオケも合唱も聴き応えのある素晴らしい演奏でした

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ヴェデルニコフ+クニャーゼフ+N響でドヴォルザーク「チェロ協奏曲」,チャイコフスキー「交響曲第6番”悲愴”」を聴く

2016年10月22日 08時55分34秒 | 日記

22日(土).わが家に来てから今日で754日目を迎え,息子が買ってきたオヤツが 自分にも食べられるかどうか匂いを嗅いで確かめているモコタロです

 

          

            椎茸ねぇ 買ってくるのはいいけど ぼくにも食べられるのかな ?

 

  閑話休題  

 

昨夕,NHKホールでNHK交響楽団の第1845回定期演奏会を聴きました プログラムは①ドヴォルザーク「チェロ協奏曲ロ短調」,②チャイコフスキー「交響曲第6番ロ短調”悲愴”」です ①のチェロ独奏はロシア生まれのアレクサンドル・クニャーゼフ,指揮は2001年から09年までボリショイ劇場音楽監督・首席指揮者を,現在はデンマークのオーデンセ交響楽団首席指揮者を務めている ロシア出身のアレクサンドル・ヴェデルニコフです 

アレクサンドル・クニャーゼフの演奏を初めて聴いたのは2014年5月5日に東京国際フォーラムで開催されたラ・フォル・ジュルネ音楽祭です ドミトリー・リス指揮ウラル・フィルのバックでドヴォルザーク「チェロ協奏曲ロ短調」を演奏しました あの時は ほとんど目の前で聴いたのでハンパない迫力を感じたのを覚えています

 

          

 

オケのメンバーが配置に着きます.コンマスは伊藤亮太郎です 弦の配置は左から第1ヴァイオリン,第2ヴァイオリン,チェロ,ヴィオラ,その後ろにコントラバスという並びです.ヴィオラの首席には新日本フィル首席の篠崎友美がスタンバイしています 新日本フィルはこの2日間(金・土)トリフォニーホールで定期演奏会があり N響とバッティングしているので,彼女は降り番ということで,N響に客演することになったのでしょう 彼女のN響への客演は以前もありました

クニャーゼフがヴェデル二コフと共に登場し指揮台の左サイドにスタンバイします ヴェデルニコフはもっと年寄りだと思っていたら若いので意外でした.プロフィールで確かめると1964年生まれなので まだ54歳.指揮者の世界ではまだ「はなたれ小僧」です

ヴェデル二コフのタクトにより第1楽章に入ります オケに続いてクニャーゼフの独奏チェロが力強く入ってきます.全身全霊を傾けてチェロに対峙している様子が聴く側に伝わってきます 良く見ると,まだ3分も経たないのに弓の糸が切れて垂れ下がっています それほど強く弾いている証拠です.それにしてもスケールの大きな演奏です

第2楽章のアダージョでは独奏チェロが美しいメロディーを朗々と歌い上げます とくに弱音の繊細な演奏が印象的です.クニャーゼフという人は「大胆にして繊細」という言葉がピッタリのチェリストです 第3楽章でもスケールの大きな音楽を奏でますが,彼は曲の世界に深く入り込んで入魂の演奏を展開します オケもオーボエ,クラリネット,フルート,ホルンを中心に素晴らしい演奏を繰り広げました

会場いっぱいの拍手とブラボーに,クニャーゼフはJ.S.バッハ「無伴奏チェロ組曲第2番」から「サラバンド」をしみじみと演奏し,聴衆のクールダウンをはかりました

休憩時間には必ずロビーに出ますが,N響の場合は男子トイレが長蛇の列です 女性の方はそれ程でもありません.前日の浜離宮朝日ホールのランチタイムコンサートとは逆に,N響定期は男性比率が高いと思われます

 

          

 

後半はチャイコフスキー「交響曲第6番ロ短調”悲愴”」です この曲は第1楽章「アダージョ アレグロ・ノン・トロッポ」,第2楽章「アレグロ・コン・グラ―チア」,第3楽章「アレグロ・モルト・ヴィヴァーチェ」,第4楽章「終曲:アダージョ・ラメントーソ」から成ります

ヴェデルニコフが再度登場しますが,譜面台はなく,彼はタクトを持っていません つまり彼は両手により暗譜で指揮するようです 第1楽章冒頭はファゴットのうめくような低音の主題から入りますが,暗いですね こんなに暗い曲も珍しいでしょう.第2楽章は一転,ワルツのような明るい音楽です これを聴いて救われるような気持ちになります 第3楽章は行進曲風のスケルツォです.これで終わってしまえば,ベートーヴェンの「苦悩から歓喜へ」という運命交響曲と同じ曲想になっていたのに,再び第1楽章の暗い世界に逆戻りします そして静かに静かに曲を閉じます.だから悲壮,いや悲愴なのです

ヴェデルニコフは,第2楽章,第3楽章,第4楽章を,間を空けずに続けて演奏しました 私は前日,ヴァイオリニスト・渡辺玲子の「レクチャーコンサート」で,「曲によるが,前の楽章の終わりは次の楽章の冒頭に結びついている.したがって楽章間を大きく空けてはならない」という話を聴いて,なるほどと思っていましたが,さっそく この日の「悲愴交響曲」の演奏でそれを体験出来たことになります

悲愴交響曲のコンサートでよく経験するのは,第3楽章のスケルツォが勇ましく終わった途端 盛大な拍手が起こることですが,”渡辺理論”から言えば,これは「やってはいけない」行為なのです 単に「緊張感を途切れさせないように」ということだけではなく,作曲者の意図を十分に汲んで,第3楽章の終わりの余韻がそのまま第4楽章につながっていることを耳で聴いて認識すべきなのです ヴェデルニコフはまさに正しい解釈によって演奏を組み立て,聴衆は常識をもって耳を傾けたことになります

さて,全体を通して,弦楽器群が素晴らしい音を出していました 特に低弦のチェロとコントラバスが厚みのある美しい音でした 管楽器では,やはりオーボエ,クラリネット,フルート,バス―ン,ホルンが良く,また打楽器群が素晴らしいパフォーマンスを見せていました これはヴェデルニコフの「思い切っていけ」という指示によるものかも知れません

ヴェデルニコフの指揮を見ていて,なぜかロシアの巨匠 故・エフゲニー・スヴェトラーノフを思い出していました 彼はヴェデルニコフと同様,かつてボリショイ劇場で指揮をとっていました.N響定期演奏会でチャイコフスキーのバレエ音楽(オーチャードホール)やマーラーの交響曲第5番(NHKホール)を聴いたことを良く覚えています タクトを持たず,巨体を揺さぶらせて 最小の動きで最大の音を出させていました 愛すべきオヤジ的指揮者でした

ヴェデルニコフは両手を大きく振って分かり易い指揮をしていましたが,時に何もせずオケの自主性に任せている時もありました 

「ロシア出身」「ボリショイ劇場の指揮者」「タクトを使用しない」というスヴェトラーノフと共通の特徴を持つ若きヴェデルニコフは,彼の精神を受け継ぐ第二のスヴェトラーノフになることが出来るのか この日の指揮ぶりを見て期待が高まりました

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