人生の目的は音楽だ!toraのブログ

クラシック・コンサートを聴いた感想、映画を観た感想、お薦め本等について毎日、その翌日朝に書き綴っています。

池上彰 ✕ 佐藤優 共著「真説 日本左翼史  戦後左派の源流 1945~1960」を読む ~ 左翼と右翼の違いは? 共産党と社会党の違いは? 組織のトップがなぜ書記長?

2022年02月28日 07時13分10秒 | 日記

28日(月)。時の流れは速いもので2月も今日で終わり、明日から弥生3月です 月末を迎えたので恒例により2月の3つの目標の実績をご報告します ①クラシック・コンサート:13回(今夜の公演を含む)、②映画鑑賞:0回、③読書:7冊でした ただし、②についてはNetflixで「父さんのヴァイオリン」「ウィンター・オン・ファイアー ウクライナ自由への闘い」「囚われた国家」の3本を観ました いずれにしても、個人的な映画館離れが続いています

ということで、わが家に来てから今日で2606日目を迎え、北朝鮮は27日午前7時51分頃、北朝鮮の西岸付近から少なくとも1発の弾道ミサイルを東方向に発射した  というニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

     

     ウクライナばかりに目を向けてないで こっち向いて!という米国へのメッセージだ

 

         

 

池上彰 ✕ 佐藤優 共著「真説  日本左翼史   戦後左派の源流  1945~1960」(講談社現代新書)を読み終わりました 池上彰は1950年、長野県松本市生まれ。ジャーナリスト。慶應義塾大学卒業後、1973年にNHK入局。報道記者として活躍後、1989年に記者キャスターに起用され、1994年から11年にわたり「週刊こどもニュース」のお父さん役として活躍。2005年からフリーになり執筆活動を続けながら、テレビ番組等でニュースを分かりやすく解説し、幅広い人気を博す 著書多数。一方、佐藤優は1960年、東京都生まれ。作家。元外務省主任分析官。1985年、同志社大学大学院神学研究科修了後、外務省入省。在ロシア日本国大使館勤務などを経て、本省国際情報局分析第1課に所属。主任分析官として対ロシア外交の分野で活躍した。2005年に「国家の罠ー外務省のラスプーチンと呼ばれて」で鮮烈な作家デビューを飾る、著書多数

 

     

 

池上氏は「はじめに」の中で、概要次のように書いています

「『社会主義と共産主義って、何が違うのか?』『右翼と左翼って、何?』と若い人からよく聞かれる ソ連崩壊から30年、ソ連のことを知らない人が増えているのも当然かもしれない 2021年は中国共産党創設100周年、2022年は日本共産党創設100周年に当たる 中国共産党は、過去の自らの失敗を糊塗して、輝かしい歴史を偽造している 日本共産党はどうか? 過去を正しく直視することが出来ているのか? そう思っているところに佐藤優氏から『日本でも社会主義が再評価されようとしている。ここで日本の左翼の歴史を振り返って、過去の功罪を再検討してみようではないか』と提案があった 本書では、第二次世界大戦後、1945年から1960年までの左翼運動の歴史を日本社会党と共産党の動向を柱に論じた

本書は次の5つの章から構成されています

序 章「『左翼史』を学ぶ意義」

 議論の準備①左翼とは何か?

 議論の準備②共産党とは?社会党とは?

第1章「戦後左派の巨人たち」(1945~1946年)

第2章「左派の躍進を支持した占領統治下の日本」(1946~1950年)

第3章「社会党の拡大・分裂と『スターリン批判』の衝撃」(1951~1959年)

第4章「『新左翼』誕生への道程」(1960年~)

上記の通り、かなり広範囲に及ぶので、ここでは私が個人的に参考になった点(「左翼の定義」「共産党と社会党の違い」「書記長の位置づけ」など)についてご紹介しようと思います

「議論の準備①左翼とは何か?」の中で、佐藤氏は「左翼」の定義について次のように解説しています

「左翼はきわめて近代的な概念です。もともと左翼・右翼の語源は、フランス革命時の議会において、議長席から見て左側の席に急進派、右側に保守派が陣取っていた故事に由来します この左翼、つまり急進的に世の中を変えようと考える人たちの特徴は、まず何よりも理性を重視する姿勢にあります。(中略) 一方で右翼(保守派)の特徴は,、理性を認めないわけではないが、人間の理性は不完全なものだと考えている。左翼のように無闇にラディカルな改革を推し進めるのではなく、漸進的に社会を変えていこうと考えるのが本来の右翼です

「議論の準備②共産党とは?社会党とは?」の中で、池上氏は次のように解説しています

「日本共産党は、日本で初めてマルクス・エンゲルスの『共産党宣言』を翻訳した堺利彦ら8人の社会主義者たちが、ロシア革命のような社会主義革命を日本でも実現するために結成したもので、私有財産制度を否定し君主制(天皇制)の廃止を掲げる共産党の主張は当時の日本政府にとって容認できないものだった 現在は合法政党となり全国に約27万人の党員を抱え、衆議院と参議院に議席を有しているが、現在も革命政党であることを綱領で謳っていることは変わっていない 一方、日本社会党は戦時中に息を潜めていた非・共産党系の労働運動家や無産政党たちが戦後まもなく大同団結してできた政党だった ただ、この政党は国家観や社会観にかなりのバラつきがあった。左派は共産党とは違う方法論を志向していたものの、マルクス主義的な社会主義革命の実現を目指している点では同じで、多くは天皇制にも否定的な考えを持っていたのに対して、右派は反共産主義的な考え方を持つ人が多かった このため、右派と左派に分裂したり再統一したりを繰り返した。1996年に社民党(社会民主党)に党名を変更して現在も存続しているが、党員は1万454人(2019年現在)に過ぎない

上記の解説について、佐藤氏は次のように補足説明を加えています

「現在の共産党は日本がまだ民主主義革命の途上、つまり一段階目であるという理由で主張を抑えているので革命政党であるという本質は見えづらくなっているが、彼らの究極的な目標が共産主義社会の実現であることは揺るがない 党の上から下まで、右から左までが一丸となって体制転覆を目指している政党は国会の中で共産党以外に存在したことはない

第1章「戦後左派の巨人たち」の中で、日本の左翼たちがGHQをどのような存在であると捉えていたかについて、池上氏は次のように解説しています

「(日本の敗戦を受け)1945年10月10日に徳田球一や志賀義雄などの戦前からの共産党幹部が一斉に釈放されているが、徳田と志賀はまもなく釈放されると知らされた10月4日に『人民に訴う』と題した出獄声明文を書き上げた この中で、『ファシズム及び軍国主義からの世界解放のための連合国軍隊の日本進駐によって、日本における民主主義革命の端緒が開かれたことに対し、われわれは深甚ある感謝の意を表する 米英及び連合諸国の平和政策に対してわれわれは積極的にこれを支持する』などと書いた つまり、占領軍であるアメリカ軍を『解放軍』と規定してしまった。このアメリカへの追随ともいえる『解放軍規定』に対しては、当時でさえ『東京大空襲や広島・長崎への原爆投下で罪なき人民を虐殺したアメリカ軍を解放軍とはなにごとだ』という批判が党の内外から上がった

これは初めて知りました。自分たちはアメリカのお陰で釈放されたのだという感謝の気持ちが大きかったのだと思います 「アメリカの追随を止めろ」と主張している現在の共産党からは想像ができません

第2章「左派の躍進を支持した占領統治下の日本」の中で「ソ連ではなぜ国のトップが『書記長』だったのか」について池上氏は次のように解説しています

「ソ連共産党に書記局が作られたのは、もともとは初代の最高指導者であるレーニンを補佐する事務局としてであり、スターリンはその部署のトップだった 一般の会社で言うと総務部長のようなものだろう。しかし、現代の企業の総務部がそうであるように、ソ連共産党の書記局には人事に関する情報や党内のトラブルまであらゆる情報が集中した スターリンはその情報を駆使することで党内をのし上がっていった。1922年にレーニンが脳梗塞で倒れた時も、レーニンへの連絡役を務めたのは事務方のトップのスターリンだった。この時スターリンはレーニンに対し徹底的に自分の都合の良い情報ばかりを吹き込む一方、党内のほかの実力者たちに対しては『レーニンの指示である』という体裁を取りながら自分の好きなように異動・左遷・粛清していった その結果としてスターリンはレーニンの後継者となり、スターリンの肩書である書記長もまた、共産党の最高指導者を指す言葉として定着していった

北朝鮮では国のトップである金正恩の肩書が「朝鮮労働党総書記」となっていますが、同じような考えですね

さて、この調子で紹介していったらきりがないので、「おわりに」の中で佐藤氏が書いていることを要約して終わりにしたいと思います

「本書はコロナ禍後の日本社会を強く意識して作られた コロナ禍後、格差が拡大する。それには2つの要因がある。1つ目は、従来の日本の経済・社会構造に起因する。格差の構造も重層的だ。階級間での格差が拡大する。特に非正規労働者のように構造的に弱い立場に置かれた人々は、賃金も低く、解雇されやすい 地域間の格差も拡大する。富が東京に集中する傾向は今後、一層拡大するだろう。東京は富裕層と中間階級上層(世帯所得が2000万円以上)の人々と、人でなくてはできない仕事に従事するエッセンシャルワーカーや低賃金のサービス業に従事する人々に二極化していくだろう 2つ目の要因は、デジタル化の加速だ。AI(人工知能)はすでにビジネスに活用されているが、それが急速に広がり、現在 事務職のビジネスパーソンが従事していた経理、審査、営業などの人員が大幅に削減される。かつてホワイトカラーと呼ばれていた階層が解体され、そのうちごく一部の高度な専門知識もしくは管理能力を持つ人々が中間階級上層になり、大部分は低賃金のエッセンシャルワーカーかサービスに移動せざるを得なくなる     同じ人間なのに産まれた家庭の経済力の差によって、子供たちの持つ可能性が異なってくる 社会主義という言葉が、ヨーロッパのみならず伝統的に社会主義に対する抵抗感の強い米国においても、最近頻繁に用いられるようになっている 日本でも近未来に社会主義の価値が、肯定的文脈で見直されると思う。その際に重要なのは、歴史に学び、過去の過ちを繰り返さないように努力することだ 日本における社会主義の歴史を捉える場合、共産党、社会党、新左翼の全体に目配りをして、その功罪を明らかにすることが重要だと考える

「遇者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ」と言ったのはビスマルクでしたが、現代における「格差問題」を考える上でも日本の「左翼」の歴史を正しく理解しておきたいと思います 本書はその手引きとなります

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ゲルギエフ氏、ウィーン・フィルの米国コンサートツアーから降板 ~ ロシア・プーチン大統領と親しいことが原因 / ミューザ川崎「モーツァルト・マチネ2022‐2023」の5回セット券を取る

2022年02月27日 07時14分19秒 | 日記

27日(日)。わが家に来てから今日で2605日目を迎え、ロシアのプーチン大統領は中国の習近平国家主席と電話で会談し、「アメリカとNATOはロシアの懸念を無視し、何度も約束に背いた」などと主張、これに対し習首席は「冷戦思考を捨て持続可能なヨーロッパの安全保障の枠組みを形成すべきだ」とロシアの立場に理解を示した  というニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

     

     理解を示しておかないと 将来の台湾への侵攻を正当化できなくなるからだろうな

 

         

 

ロシアのウクライナ侵攻に関連して、AP通信は次のように伝えました

「ニューヨークのカーネギーホールとフロリダ州ネイプルズで25日から計5回の米ツアーを行うウィーン・フィルで指揮を執る予定だったロシア出身のワレリー・ゲルギエフ氏(68)が降板することになった カーネギーホール側が明らかにしたもので、『最近の世界情勢によるもの』と理由を説明している ロシアによるウクライナ侵攻の影響であることは明白で、ゲルギエフ氏がプーチン大統領と親しい関係にあることからコンサート直前で、指揮者がカナダ出身のヤニック・ネゼ=セガン氏(46)に交代することになった この判断がゲルギエフ氏によるものなのか、楽団側か、カーネギーホール側によるものなのかは非公表。また、ゲルギエフ氏は3月5日にミラノのスカラ座で指揮を執ることになっているが、ミラノのジュゼッペ・サーラ市長は同氏に対して『侵攻に対して平和的解決を求める見解を明らかにするように。さもなければ、指揮は認めない』とする書簡をすでに送付している

また、米紙ニューヨーク・タイムズは次のように報道しました

「ゲルギエフ氏はプーチン大統領の30年来の友人。再三にわたって支持を表明してきた。2012年には大統領選のテレビ広告に出演していた

MCSヤング・アーティスツは次のように伝えています

「ミュンヘン・フィルは、ゲルギエフ氏が2月28日までにプーチンの軍事進攻を非難しない場合は、首席指揮者の契約を解除すると警告した

まさか、プーチン・ロシアのウクライナ侵攻がクラシック音楽界まで直接的な影響を及ぼすとは思いもしませんでした

ワレリー・ゲルギエフ(1953年・ロシア生まれ)はレニングラード音楽院(現サンクトペテルブルク音楽院)でイリヤ・ムーシンに師事し指揮法を学び、同院在学中にカラヤン指揮者コンクール第2位、全ソ指揮者コンクール第1位の栄誉に輝いています 1977年にレニングラード音楽院を卒業し、テミルカーノフの助手としてキーロフ劇場(現マリインスキー劇場)の指揮者となり、1988年同劇場の芸術監督に就任しました 彼は同劇場を世界的な地位へ引き上げるとともに、アンナ・ネトレプコら新人歌手を発掘したことでも知られています

日本にはマリインスキー劇場管弦楽団、ロッテルダム・フィル、ウィーン・フィル、ロンドン響を率いてしばしば来演しています また、N響、読響、都響、日本フィル、東響などの在京オケをはじめ、バーンスタインが創設したPMFオーケストラを指揮しています

彼の指揮の特徴はタクトを持たず、両手の微妙な動きで音を紡ぎ出すところですが、時に極端に短い指揮棒で指揮を執ることもあります

ゲルギエフ氏はコンサートなどを通じて国際平和を訴えたりする機会が多かっただけに、今回の同氏を巡る動きは残念です

今回の件は、直接ゲルギエフ氏に何かの罪があるわけではありませんが、旧来の友だちが悪かったということでしょう 友だちは選ばなければなりませんね ただ、まだプーチン大統領にウクライナから軍隊を引き揚げるべきだと進言するチャンスは残されています。ゲルギエフ氏の今後の動向が注目されます

 

     

     ワレリー・ゲルギエフ指揮ロンドン響によるプロコフィエフ「交響曲全集」のCD

 

         

 

ミューザ川崎「モーツァルト・マチネ2022‐2023」の5回セット券を取りました 実は、ミューザの会員優先販売が1月上旬に始まっていたのを見逃してしまい、一般発売日も過ぎてしまいました もはや1階席や2階センターは残っていません。何のためにミューザの会員になったのか、と反省しきりです

 

     

 

新シーズンで一番の楽しみは9月3日(土)の小菅優の弾きぶりによるモーツアルト「ピアノ協奏曲第13番」とメンデルスゾーン「ピアノと弦楽のための協奏曲」です 私にとって最高の組み合わせプログラムです

 

     

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

井上道義 ✕ 大井浩明 ✕ 東京フィルでエルガー:序曲「南国にて」、クセナキス「ピアノ協奏曲第3番”ケクロプス”」、ショスタコーヴィチ「交響曲第1番」を聴く ~ 第964回サントリー定期

2022年02月26日 07時26分40秒 | 日記

26日(土)。わが家に来てから今日で2604日目を迎え、ロシアのプーチン大統領は24日、大企業幹部との会合で、「ほかの選択肢はなかった。我々が世界経済の一部である限り、(世界経済に)打撃を与えない。だから(欧米は我々を)追い出してはならない」と述べ、ウクライナ侵攻を正当化したというニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

     

     欲しいものを盗んでおいて「ほかに選択肢はなかった」と言うのと同じ理屈だよね

 

         

 

昨日、夕食に「チキンステーキ」「生野菜とアボカドのサラダ」「舞茸の味噌汁」を作りました 「チキンステーキ」は2週間に一度のローテ入りしました

 

     

 

         

 

昨夜、サントリーホールで東京フィル第964回サントリー定期演奏会を聴きました     プログラムは①エルガー:序曲「南国にて」、②クセナキス「ピアノ協奏曲第3番”ケクロプス”」(1986年)、ショスタコーヴィチ「交響曲第1番 ヘ短調 作品10」です 演奏は②のピアノ独奏=大井浩明、指揮=井上道義です

チョン・ミョンフン指揮によるマーラー「交響曲第3番」が演奏されるはずだった1月度定期公演が新型コロナ・オミクロン株感染拡大を受けて中止となったことから、今回の2月度定期公演が新シーズン初コンサートとなります 今シーズンから新しい席に移りました。2階の前の方です。残念ながら通路からかなり入った席で、出入りが面倒です

 

     

 

オケは左から第1ヴァイオリン、第2ヴァイオリン、チェロ、ヴィオラ、その後ろにコントラバスといういつもの東京フィルの並び。コンマスは依田真宣です

1曲目はエルガー:序曲「南国にて」です この曲はエドワード・エルガー(1857-1934)が1903年末から翌04年初めにかけて家族で旅行した北イタリアの地中海沿いの町アラッシオに滞在した時の印象をもとに作曲した作品で、1904年3月16日にロンドンでエルガー自身の指揮で初演されました

井上の指揮で演奏に入りますが、冒頭から明るいイタリアに着いた時のワクワクする気分を表すかのような軽快な音楽が展開します 中盤で須田祥子のヴィオラ独奏で演奏された 哀愁を帯びた牧童の歌が 静かに染み渡りました

2曲目はクセナキス「ピアノ協奏曲第3番”ケクロプス”」(1986年)です この曲はイアニス・クセナキス(1922-2001)が1986年に作曲、同年11月13日にニューヨークで初演されました   本公演が日本初演です

プログラム冊子掲載の音楽評論家・野々村禎彦氏の特別記事によると、クセナキスはアテネ工科大学で土木工学を学び、ナチスドイツ侵攻に際して抵抗運動に参加、その後フランスに亡命しル・コルヴュジェの建築事務所に就職、そしてオリヴィエ・メシアンに師事し作曲を学んだという変わり種です

同氏のプログラムノートによると、この曲の作曲技法は「まず全体構造を音高と経過時間の2次元グラフでスケッチし、順次細部を埋めてゆく。その際に数学やコンピュータを駆使するが、あくまで細部を埋める便宜的手段であって本質ではない」というもので、この曲は「ギリシャの民族音楽と現代ヨーロッパ音楽の融合という課題に紆余曲折して辿り着いたもの。ケクロプスとはギリシャ神話に登場する半神半龍の初代アテネ王である」とのことです 私には何が何だかさっぱり分かりません

ピアノ独奏の大井浩明は京都市出身、ベルン芸術大学ソリストディプロマ過程修了。内外のコンクールに多数入賞しています かなり体格のがっちりした柔道家のようなピアニストです

井上の指揮で演奏に入ります 咆哮する金管楽器、悲鳴を上げる木管楽器、炸裂する打楽器、忙しなく刻まれる弦楽器、オケの強音に埋もれるピアノ・・・・といった具合で、私が題名を付けるとすれば「カオス(混沌)」です この曲は指揮者にとっても演奏家にとっても「非常に困難な曲」であると同時に「都合の良い曲」ではないかと思います 複雑怪奇な上に今回が日本初演なので誰も知らない作品。途中で演奏が崩壊しても誰も気が付かないからです せいぜい崩壊の原因を作った本人とその周囲ぐらいしか気付かないのではないか 実際、この日の公演もどこかで崩壊していたのかもしれません 井上は演奏者を煽り立て、必死の演奏も当然と言うがごとく、時に指揮をしながら踊っています 第4機動隊出動 井上ミチヨシを騒乱教唆罪でカクホせよ

 

     

 

プログラム後半はショスタコーヴィチ「交響曲第1番 ヘ短調 作品10」です この曲はドミトリー・ショスタコーヴィチ(1906-1975)が1924年から翌25年にかけてレニングラード音楽院作曲科の卒業制作として作曲、1926年5月12日にニコライ・マルコ指揮レニングラード・フィルにより初演されました 

増田良介氏によるプログラムノートによると、当時のショスタコーヴィチは、父の急死により経済的困窮に陥り、映画館で伴奏ピアニストとして働くなど苦しい生活を送っていたそうで、そうした経験がこの曲に反映しているとのことです 第1楽章「アレグレット ~ アレグロ・ノン・トロッポ」、第2楽章「アレグロ」、第3楽章「レント」、第4楽章「レント ~ アレグロ・モルト」の4楽章から成ります

井上の指揮で第1楽章がトランペット独奏により開始されます 行進曲風であったり、ワルツ風だったり、すでに19歳のこの作品からショスタコーヴィチらしさが表れた曲想が展開します 第2楽章では、ピアノのソロが素晴らしい演奏を繰り広げました ファゴットの演奏も冴えていました 第3楽章ではホルン・セクションとチェロ・セクションの渾身の演奏が光りました 第4楽章は不思議な音楽です アレグロの部分に移ってから、抒情的な部分と激しい部分が目まぐるしく交代しながら音楽が進行しますが、全休止のあと、ティンパニのソロの強打があります この意味は何なのか? それまでの演奏を否定するかのようです    その後は一気にフィナーレになだれ込み、高揚感のままあっという間に曲を閉じます    何をそんなに急ぐのか、と言いたくなるような終わり方です。実に不思議な楽章です

満場の拍手が井上 ✕ 東京フィルの面々に押し寄せます 何度かのカーテンコールのあと、井上は拍手を制して、「ショスタコーヴィチは19歳でこの曲を書いた。凄いことです 当時 彼が活躍していたソ連は大変だった 今はロシアになっているけど・・・。ケクロプスって戦闘的でしょ。でも戦闘は舞台の上だけでいい(と言って、その場で倒れ込む。そして起き上がって)「こんなことは舞台の上だけにしてもらいたい そのための芸術だ」と語り、ロシアのウクライナへの侵攻を暗に批判しました 井上道義がステージの上で倒れたのは、1999年9月30日にすみだトリフォニーホールで新日本フィルを指揮したマーラー「交響曲第1番」の第1楽章冒頭近くでの転倒以来、22~3年ぶりではないか あの時は、新日本フィルとのマーラーツィクルス全曲ライブ録音CD化プロジェクトの第1日目で、演奏開始早々、客席からケータイ着信音が聴こえてきて、井上はライブ録音が頭にあったため、指揮台から転げ落ちることによって演奏を中止し、最初からやり直す道を選んだのでした その時のライブCDが下の写真です

井上は「今日は『南国にて』という曲で始めましたが、もう一つ南国の曲があるのでちょっとだけ アンコールに演奏します」として、ヨハン・シュトラウス2世のワルツ「南国のバラ」よりコーダを優雅に演奏、演奏後その場でクルクルっと羽生結弦の4回転半に挑み、聴衆の笑いと大きな拍手の中コンサートを締めくくりました

 

     

     

コメント (3)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

高関健 ✕ 南紫音 ✕ NHK交響楽団でチャイコフスキー「ヴァイオリン協奏曲」、ブラームス「交響曲第1番」を聴く ~ 2022都民芸術フェスティバル参加公演

2022年02月25日 07時15分44秒 | 日記

25日(金)。昨日の日経朝刊第1面のコラム「春秋」がロシアの国旗について書いていました 超略すると「白、青、赤の3色のロシア国旗は17世紀末のピョートル大帝の時代に定められたとの説が強い。軍事や行政で西欧化を推し進め、列強の一角に食い込んだころだ。その後、18世紀の女王エカテリーナ2世によって領土はさらに広がり、帝国は強大化した。ちなみに旗の白はベラルーシ人を、青はウクライナ人、赤はロシア人を示しているという 最近では歴史書を読みふけっていると聞くプーチン大統領、かつて強権で国を拡張した王たちの魂に魅入られたかのようである

プーチン大統領がウクライナ東部の親ロシア派が支配する地域の独立を承認し派兵命令を下した背景には、ロシア国旗に込められた3つの民族の統一への熱望があるのではないか と思っていたら、東部に限らず ウクライナ全土の空港や発電所にも攻撃を仕掛けました    まさか、これが第3次世界大戦のきっかけだったなんて後で言わないでほしいな

ということで、わが家に来てから今日で2603日目を迎え、ロシアのプーチン大統領がウクライナ東部地域の「独立」を承認したことについて、トランプ前米大統領が22日に出演した保守系のラジオ番組で「天才だ。抜け目のない男だ。プーチンはウクライナの広い地域を『独立した』と言っている。私は『なんて賢いんだ』と言ったんだ。彼は(軍を送って)地域の平和を維持すると言っている。最強の平和維持軍だ。我々もメキシコ国境で同じことができる」と話したが、ホワイトハウスのサキ報道官は22日の会見でトランプ氏の発言について問われ、「プーチン大統領の軍事戦略を讃えるような人物からの助言は受けないようにしている」と話した  というニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

     

     天災だ 抜け目だらけの男だ こんな男が米国大統領をやってたなんて信じられない

 

         

 

昨日、夕食に「豚バラこんにゃく」「生野菜とツナのサラダ」「具だくさん味噌汁」を作りました 豚バラこんにゃくは久しぶりに作りましたが、美味しく出来ました

 

     

 

         

 

昨夜、東京芸術劇場コンサートホールで2022都民芸術フェスティバル参加公演「NHK交響楽団演奏会」を聴きました プログラムは①チャイコフスキー「ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 作品35」、ブラームス「交響曲第1番 ハ短調 作品68」です 演奏は①のヴァイオリン独奏=南紫音、指揮=高関健です

自席はセンターブロック前から8列目。会場は文字通り満席です N響でチャイコフスキーとブラームスなら当然でしょう

 

     

 

オケは12型で、左から第1ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ、第2ヴァイオリン、その後ろにコントラバスという対抗配置。コンマスはマロこと篠崎史紀です

1曲目はチャイコフスキー「ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 作品35」です この曲はピョートル・イリイチ・チャイコフスキー(1840-1893)が1878年に作曲、1881年にウィーンで初演されました 当初レオポルト・アウアーに捧げるつもりでしたが、演奏不能として拒否されたため初演者のアドルフ・ブロツキーに献呈されました 第1楽章「アレグロ・モデラート」、第2楽章「カンツォネッタ:アンダンテ」、第3楽章「フィナーレ:アレグロ・ヴィヴァーチッシモ」の3楽章から成ります

南紫音はロン=ティボー国際音楽コンクールとハノーファー国際ヴァイオリン・コンクールの双方で第2位を受賞している実力者です

南紫音が濃紺のステージ衣装で登場、高関の指揮で第1楽章に入ります 南は一音一音を丁寧に演奏している様子が窺え好感が持てます。カデンツァは見事でした 第2楽章は弱音の美しい演奏が続きます。かなり抑え気味に演奏しているように聴こえますが、弱音でも音楽はちゃんと会場の隅々まで届いているという確信の元に演奏しているかのようです その意味では彼女は使用楽器ストラディヴァリウスを信じています 第3楽章は一転、超絶技巧でオケと丁々発止の演奏を展開、エモーショナルな一面を覗かせました

満場の拍手に南は、とてつもない難曲(曲名不明)を超絶技巧で演奏し、会場の温度を2度上昇させました

 

     

 

プログラム後半はブラームス「交響曲第1番 ハ短調 作品68」です この曲はヨハネス・ブラームス(1833-1897)が1855~62年、1868年、1874~76年にかけて作曲、1876年にカールスルーエで初演されました 第1楽章「ウン・ポコ・ソステヌート ~ アレグロ」、第2楽章「アンダンテ・ソステヌート」、第3楽章「ウン・ポコ・アレグレット・エ・グラツィオーソ」、第4楽章「アダージョ ~ ピウ・アンダンテ ~ アレグロ・ノン・トロッポ、マ・コン・ブリオ」の4楽章から成ります

譜面台にはスコアブックが置かれていますが、高関氏は演奏中一切見ません 指揮者の中には譜面台も置かず、いかにも自分は暗譜で指揮をするのだということをアピールする人もいますが、高関氏がスコアブックを置くのは作曲家に対する敬意の表れです

高関の指揮で第1楽章がティンパニの52連打で開始されます かなり速いテンポです。私はクラウディオ・アバド指揮ベルリン・フィルのCDで予習しておいたのですが、その泰然自若たるゆったりした演奏に比べ、前へ前へと推進力に満ちた演奏です これが現代のブラームスの標準的なテンポなのかもしれません 首席チェロの辻本玲の身体を張った演奏が印象的でした 第2楽章ではフルートの神田寛明、オーボエの吉村結実、クラリネットの伊藤圭、篠崎コンマス(ソロ)が素晴らしい演奏を展開していました 牧歌的な第3楽章を経て、第4楽章では今井仁志のホルンが冴えていました 中盤の有名なテーマが出てくる直前のホルンからフルートへと続くパッセージの演奏が素晴らしく、ここから一気呵成にアクセルを踏む高関の指揮は躍動感に満ちていました 第1楽章冒頭と第4楽章フィナーレにおける植松透のティンパニは胸のすくような爽快な演奏でした

会場いっぱいの大きな拍手に、まさかのアンコールがありました ブラームスのハンガリー舞曲(何番かは不明)を濃厚に演奏、再び満場の拍手を浴びました

この日のプログラムはチャイコフスキーが1878年に完成した「ヴァイオリン協奏曲」と、ブラームスが1876年に完成した「交響曲第1番」という組み合わせで、2人の偉大な作曲家が同時代に活躍していたことを再認識させるプログラミングでしたが、ブラームスが7歳年上です

 

     

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

蔭山克秀著「経済学の名著50冊が1冊でざっと学べる」を読む ~ 予備校ナンバー1講師が分かりやすく面白く解説した経済理論案内書

2022年02月24日 07時18分55秒 | 日記

24日(木)。新型コロナワクチン3回目接種により一昨日38.7度あった熱は昨日朝には37.6度まで下がり、今朝は36.7度まで下がりました ただ注射した腕はまだ痛く、腰痛もあるので油断大敵です

ということで、わが家に来てから今日で2602日目を迎え、ウクライナ情勢を巡って、ロシアのプーチン大統領が東部に軍の派遣を命令したと海外メディアが報道した  というニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

     

     主張を通す時は 話し合いでなく 武力に訴えましょう:ロシアの新改訂教科書より

 

         

 

昨日の夕食は、娘が外食だし 私は腕も腰も痛いので、簡単に作れる けんちんうどん にしました 食べ終わった後に卵を入れるのを忘れていたことに気が付きました 最近こういうことが多いな、と思いますが後の祭りです

 

     

     

         

 

蔭山克秀著「経済学の名著50冊が1冊でざっと学べる」(角川文庫)を読み終わりました 蔭山克秀は代々木ゼミナール公民科(政治経済、倫理)講師。愛媛県出身。早稲田大学政治経済学部卒。代ゼミでは「公民科ナンバー1講師」という評価を受けているそうです

 

     

 

本書は、とっつきにくい経済学の名著50冊を「分かりやすく・面白く・テンポよく」解説した労作です 正直言って、私はこの種の「これだけ読めば経済学は分かる」といった『要約本』は好きではありません しかし、内容が固くて読みにくい「経済学」の本はなかなか読む気が起きません そうかといって主要な経済思想については一般常識として知りたいと思います そういうことで経済理論案内書として購入しました

本書は次の4章から構成されています

第1章「『経済学』の基本が分かる名著13冊 ~ そもそも経済学って何?」=アダム・スミス「国富論」、マルサス「人口論」、リカード「経済学および課税の原理」、ケインズ「雇用・利子および貨幣の一般理論」、サミュエルソン「経済学」ほか。

第2章「経済発展と自由主義が分かる名著13冊 ~ 人間は経済をコントロールできるのか?」=ハイエク「隷従への道」、シュンペーター「経済発展の理論」、フリードマン「資本主義と自由」、クルーグマン「クルーグマン教授の経済入門」、ドラッカー「企業とは何か」、グリーンスパン「波乱の時代」ほか。

第3章「『資本主義』が分かる名著13冊 ~ 経済学を考える上で欠かせない最重要テーマ」=マックス・ウェーバー「プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神」、マルクス「資本論」、ピケティ「21世紀の資本」、レーニン「帝国主義論」ほか。

第4章「『豊かさ』と『貧困』が分かる名著11冊 ~ 経済学は『格差』をどう考えるか?=ガルブレイス「ゆたかな社会」、ミル「経済学原理」、サロー「ゼロ・サム社会」、ソロス「ソロスの錬金術」ほか。

私もン十年前、大学受験に当たり1年間浪人生活を送り予備校に通ったので分かりますが、予備校講師はもろに生活がかかっているので必死です 教え方が巧い講師のところには多くの学生が集まります。それにより給料が上がり生活が安定します(するはずです) 本書を読むと、蔭山克秀氏の公民の授業は楽しく分かりやすいだろうと容易に想像できます 本書では、理論の重要ポイントをゴシック体で強調するなど読者の印象に残るように工夫を凝らしています

「分かりやすい解説」の一例を挙げると、第1章の中の「ケインズ『雇用・利子および貨幣の一般理論』」については13ページにわたり解説していますが、要点を次のようにまとめています

「政府のテコ入れで消費と投資が活性化すれば、生産は活発になり、企業は活性化する。そうすると新たな労働需要が起こって非自発的失業はなくなり、『完全雇用』が実現する これがケインズ経済学だ。ケインズのこの発想は、従来なかった画期的な発想だ なぜなら個人でも国家でもそうだが、ふつうは失業者が増えるほどの大不況に見舞われたら、人は本能的に『ヤバい!節約しなきゃ』と思う。でもケインズは、不況だからこそ政府は『ヤバい!金をばらまいて有効需要を作らなきゃ』という発想だ

また、第3章の中のピケティ「21世紀の資本」については11ページにわたり解説していますが、要点を次のようにまとめています

「本書は『富の分配と格差の原因と対策』について書かれた本だ。彼が注目したのは『資本所得、あるいは相続財産からくる格差』だ 彼は格差拡大の原因を、1つの式で表している。それは『r > g』。つまり『資本収益率 > 経済成長率』。おおざっぱに説明すれば、『財産持ちの不労所得(利潤、利子、配当、賃料、株の売買益など)の方が、国民が働いて得た収入よりにかなり大きい』ということだ。21世紀は世界的に経済成長が鈍化しつつある時代だ もしこれが事実なら、経済成長率が下がれば下がるほど、資産家と労働者の間の格差は拡大する 彼は格差是正の解決策として『世界的な規模での累進資本税』を提唱している

本書は2018年に角川書店から単行本として刊行され、その後文庫化されましたが、「おわりに」で筆者は本書の執筆がいかに大変だったかを「こんなタフな執筆、もう2度と引き受けないぞ!」と毒づきながらも、「苦し楽しい経験だった」と書いています それは読む方の立場も同様で、腰痛とワクチンによる腕の痛みに悩まされながら 読了まで5日間もかかってしまいました しかし、得たものは大きいと思います

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ルパート・ワイアット監督「囚われた国家」をNetflixで観る ~ エイリアンから地球を取り戻すレジスタンスの闘いを描く / 新型コロナワクチン3回目接種完了 ~ 3回ともモデルナ

2022年02月23日 07時26分31秒 | 日記

23日(水・祝)。昨日2022年2月22日に新型コロナワクチン3回目の接種を受けてきました 私にとっては世間で騒いでいた「猫の日」ではなく「ワクチンの日でした」(実に覚えやすい日付ですね)。1回目と2回目は大手町の自衛隊・大規模摂取会場でしたが、今回は豊島区のHPから予約を入れて近所の旧A中学校が取れたので近くて良かったです 3回ともモデルナです。昨年7月4日の2回目は翌日38度台の熱が出ました    今回は接種前に36.1度ありましたが、2時間後に 腕が痛くなり、夕食後の8時には38度まで上がり、10時には38.7度まで上がりました 前回とほどんど同じですが、今回は腕の痛みに加え腰の痛みがあるので寝返りが苦しかったです 今朝はまだ37.6度あるので今日は大人しく寝ていようと思います

ということで、わが家に来てから今日で2601日目を迎え、北朝鮮の秘密警察、国家保衛省の「反社会主義捜査チーム」は1月下旬、平壌市内で10代の学生ら数人に、韓国の男性アイドルグループBTSのダンスステップやディスコダンスなど「資本主義的な思想・行動」を教えていたとして30代の女性高校教師と学生らを逮捕したことが明らかになった  というニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

     

     ダンスを教えたり踊ったりするだけで逮捕されるなんて  国民は国に踊らされてる

 

         

 

昨日の夕食は腕も痛いので簡単な「もやし鍋」にしました 材料は、豚バラ肉、もやし、ニラ、シメジ、エノキダケ、人参、豆腐です。寒い夜は鍋料理です

 

     

     

     

         

 

Netflixでルパート・ワイアット監督による2019年製作アメリカ映画「囚われた国家」(109分)を観ました

2019年、イリノイ州シカゴ。地球がエイリアンに占領されてから同市では戒厳令が敷かれていた そんな中、ドラモンド一家は監視の目をかいくぐってシカゴから脱走しようとしたが、エイリアンに見つかってしまい両親は殺害されてしまう しかし、長男レイフ(ジョナサン・メジャース)と次男ガブリエル(アシュトン・サンダース)は生き残った。時は流れ2027年、地球は以前としてエイリアンたちの統治下にあり、体制に反抗的な人間は容赦なく殺されていた。それでも、エイリアンの強権的な支配に対抗すべく、レジスタンスを結成する人々もいたが、エイリアンたちは地下空間のどこかに隠れており、彼らの居場所を突き止めることも困難だった 成長したガブリエルもレジスタンスの一員として活動していたが、そんな彼に、シカゴ市警に所属するマリガン(ジョン・グッドマン)は目を付けていた。世間はレジスタンスは無力だと考えていたが、マリガンはガブリエルがエイリアンに対抗できる驚異の存在だと認識していた ガブリエルは警察のマリガンを支配者側の者として反発しているが、最後に彼の真の目的を理解する

 

     

 

レジスタンスがチームワーク良く作戦を成功させたかと思いきや、失敗してしまいます しかし、それも実は作戦のうちで、透明爆弾を身に着けたマリガンを統治者(エイリアン)の元へ送り込むのが最終目的だったことがラストで分かります

疑問に思ったことがいくつかあります 物語の時代設定が2019年と2027年なのに、レジスタンスの通信手段が何と「伝書バト」だったり、「公衆電話」だったり、「新聞の案内広告」だったりするのはどう考えても時代錯誤が甚だしいと言わざるを得ません 「いや、情報戦の中では、盗聴の恐れがあるから、あえて古典的な通信手段を使ったのだ」ということかもしれませんが、説得力に欠けます 統治者であるエイリアンがほとんど出てこないのも拍子抜けです 残念ながら期待外れの作品でした

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

コパチンスカヤのチャイコフスキー「ヴァイオリン協奏曲」(CD)を聴く / 国連WFP協会から年次報告書届く ~ 飢餓から世界の子供たちを救おう! / ウクライナ問題を考える

2022年02月22日 07時08分34秒 | 日記

22日(火)。昨日の日経夕刊「ニッキイの大疑問」コーナーのコラム「ちょっとウンチク」に、ウクライナ危機に関して「なるほど」と思う見解が載っていました 編集委員の池田元博氏の見解は以下の通りです

「プーチン大統領は2000年からの1,2期目、原油高を追い風に高い経済成長と国民生活の改善で人気を集めた 3期目は大国路線を進め、14年のウクライナ領クリミア半島併合で支持率は頂点に達した だが、現在の4期目はさしたる成果がない。経済の停滞、社会の閉塞感、そして長期体制への嫌気・・・・。国民の間では政権への不満もくすぶる プーチン氏がNATOの不拡大などを要求して強気の外交を展開するのは、24年の次期大統領選も視野に、米欧と対峙する強国ロシアを国民に誇示し、国内の不満をそらす思惑もありそうだ

この記事を読んで、懸命な読者は「なるほど」と思うと同時に「ちょっと待てよ 」と思ったはずです。「 『24年の次期大統領選も視野に』ということでは、アメリカのバイデン大統領も同じ立場ではないか」と まさか、プーチンもバイデンも 自分の政権の延命を目的にウクライナを犠牲にしようとしているのではないだろうな    もしそうだとしたら、とんでもないことです いずれにしても、武力によって独立国家を脅かすのは許されない行為で、犠牲になるのは”普通の生活”を送っているウクライナ国民です 国際社会はウクライナのクリミア化を許してはなりません

ということで、わが家に来てから今日で2600日目を迎え、2021年1月6日に起きた米連邦議会襲撃事件を巡り、当時のトランプ大統領が暴力をあおったとして提訴された裁判で、ワシントンの連邦地裁は18日、訴えの却下を求めていたトランプ氏の申し立てを退けた  というニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

     

     アメリカの司法にはまだ良心が残っている証拠 トランプは神妙にお縄を頂戴しろ!

 

         

 

昨日、夕食に「トンテキ」「生野菜サラダ」「エノキダケの味噌汁」を作りました    トンテキの味付けは醤油、砂糖、味醂、オイスターソース、塩コショウ、生姜、ニンニクです

 

     

 

         

 

24日(木)にN響でチャイコフスキー「ヴァイオリン協奏曲ニ長調作品35」を聴くのでCDで予習しました 選んだのはパトリツィア・コパチンスカヤのヴァイオリン独奏、テオドール・クルレンツィス指揮ムジカエテルナによるCD(2014年5月録音)です

 

     

 

この組み合わせによるこの曲の演奏は、私が今まで聴いてきたどの演奏とも違います 古くはハイフェッツ、イダ・ヘンデルからチョン・キョンファ、アンネ=ゾフィー・ムター、ヒラリー・ハーンに至るまで、彼らとは全く異なるアプローチです コパチンスカヤの演奏は強弱とテンポの起伏が大きく、まさに自由自在で、今生まれたばかりの音楽のように響きます それは言うまでもなく、バックを務めるクルレンティス ✕ ムジカエテルナとの息の合ったコンビネーションがあって初めて成り立つパフォーマンスです 私は2019年2月11日にすみだトリフォニーホールでコパチンスカヤのヴァイオリン独奏、テオドール・クルレンツィス指揮ムジカエテルナによるベートーヴェン「ヴァイオリン協奏曲」を聴きましたが、起伏の大きな刺激的な演奏でした その時、なぜかコパチンスカヤは素足で弾いていたのを思い出しました コパチンスカヤは東京都交響楽団の第971回B定期演奏会(2023年3月27日)でリゲティ「ヴァイオリン協奏曲」を弾く予定です 私はB定期会員を継続したので聴きに行きます

 

     

 

         

 

国連WFP協会(特定非営利活動法人 国際連合世界食糧計画WFP協会)から「年次報告書2020」、「THANKYOUカード」が届きました これは、今年1月19日に池袋駅西口広場で国連WFPのスタッフに声を掛けられ、その場で寄付行為の契約を結んだことから送られてきたものです その頃、「自分や家族のことだけを考えて生きていて良いのか? 何か少しでも世の中に役立つことが出来ないか」と思っていたところに話があったので、タイミングが良くその場でサインをしたのです     国連WFPは「飢餓との闘いに尽力してきたこと、紛争地域で平和に向けた状況改善に貢献したこと、飢餓が紛争の武器として利用されることを阻止する原動力となったこと」に対し、2020年のノーベル平和賞を受賞しました 「年次報告書2020」によると、2020年は84か国1億1550万人に420万トンの食料を届けたとのことです 主な内訳は①学校給食支援としてアフガニスタンに9千万円、ニカラグアに約4400万円、ブルンジに約6100万円、ミャンマーに1億5100万円他を、②緊急支援としてコンゴ民主共和国に約1300万円、パキスタン、グアテマラ、イエメン、ナイジェリアに各3000万円他の支援を行いました このほか③母子栄養支援、④使途指定なしを含め総額14億7739万1712円の支援を行っています 私の場合は月2000円の寄付に過ぎませんが、私にとって年24000円は決して小さくありません この種の寄付は継続することが大事だと思っています 世界の子どもたちを飢餓から救うため、少しでもお役に立てるのなら嬉しいです

 

     

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

鈴木優人 ✕ 中江早紀 ✕ 櫻田亮 他 ✕ バッハ・コレギウム・ジャパンでモーツァルト「戴冠ミサ曲 K.317」&「第一戒律の責務 K.35」を聴く ~ B.C.J 第146回定期演奏会

2022年02月21日 07時01分09秒 | 日記

21日(月)。わが家に来てから今日で2599日目を迎え、昨年1月の連邦議事堂襲撃事件を受けて、ツイッター、フェイスブック、アルファベット傘下のユーチューブのアカウントを凍結されているトランプ前米大統領の新たなソーシャルネットワーキングサービスアプリ「トゥルース(真実)・ソーシャル」が、米国のプレジデンツデーに当たる2月21日にアップルのアップストアでリリースされる見通しとなった  というニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

     

     「トゥルース・ソーシャル」が聞いて呆れる 「フェイク・ソーシャル」だろうが!

 

         

 

昨日、東京オペラシティコンサートホールでバッハ・コレギウム・ジャパン「 第146回定期演奏会」を聴きました プログラムは①モーツァルト「第一戒律の責務K.317」、②同「戴冠ミサ曲K.317」です 演奏は、ソプラノ=中江早紀、澤江衣里、望月万里亜、アルト=青木洋也、テノール=櫻田亮、谷口洋介、バス=加来徹、合唱・管弦楽=バッハ・コレギウム・ジャパン、指揮=鈴木優人です

1曲目はモーツァルト「第一戒律の責務K.35」です この曲はウォルフガング・アマデウス・モーツァルト(1756-1791)が1766年から翌67年にかけて作曲した1幕ものの「宗教的ジングシュピール」(宗教的音楽劇)です    ザルツブルクの大司教シュラッテンバッハが、同地で活躍していた作曲家たちの中からミヒャエル・ハイドンとアントン・アードルガッサーと、当時11歳のモーツアルトの3人を選び、ドイツ語による宗教劇の共作を命じたのを受けて作曲したものです モーツアルトが第1部を、ミヒャエル・ハイドンが第2部を、アードルガッサーが第3部を担当しました

モーツアルトが作曲した序曲と第1部は、優柔不断だが熱心な「キリスト信徒」が、「キリスト信徒の霊」、「正義」、「慈愛」の勧めにより改心しようとするが、「世俗の霊」の誘惑に負けそうになるまでが描かれています

拍手の中、オケの面々が入場し配置に着きます 第1ヴァイオリンと第2ヴァイオリンが左右に分かれる対抗配置を採ります。コンミスは若松夏美です ソリスト4人が登場しますが、合唱はありません

鈴木優人の指揮で軽快な序曲が演奏されます 「キリスト信徒」の谷口洋介が椅子に座って寝ている間に、「キリスト信徒の霊」の櫻田亮、「正義」の望月万里亜、「慈愛」の澤江衣里が代わる代わるキリスト信徒に「寝てたらあきまへんで。真面目にやんなはれ」と説得しますが、彼は起きる気配はありません すると「世俗の霊」の中江早希が登場し、「世俗の世界は、酒は美味いし姉ちゃんはきれいだよ~ん」と誘惑します(あくまでも個人の想像です)。

テノールの櫻田亮が絶好調です この人は今やB.C.Jを牽引するテノールに成長しました。そして、中江早希が素晴らしい 声にパワーがあり美しいコロラトゥーラが冴えわたっていました 演技力も抜群です。下手の舞台袖に2人のフルート奏者を従えて、キリスト信徒をパンとワインで誘惑する小芝居には思わず笑ってしまいましたが、「彼女のような霊なら是非”饗応接待”されたいものだ」と魅了されました。「正義」の望月万里亜、「慈愛」の澤江衣里も大健闘でした オケでは、キリスト信徒のアリアに伴奏を付けるナチュラル・トロンボーンの息の長いソロが素晴らしかった 福川伸陽(N響)と藤田麻理絵(新日本フィル)のナチュラル・ホルンの演奏も素晴らしかったです

約85分の”楽しい”宗教的音楽劇を聴き終わって思ったのは、モーツァルトは本当に11歳の時にこれを作曲したのか、ということです おそらく教育パパであるレオポルド・モーツァルトのアドヴァイスがかなりあったのではないか、と想像します それにしても天才は天才です

 

     

 

プログラム後半はモーツアルト「戴冠ミサ曲K.317」です この曲は1779年3月23日に完成し、同年4月4日の復活祭の祝日に初演されました 「戴冠式ミサ」という名称は1791年にプラハで行われたレオポルド2世の戴冠式でサリエリが指揮して以降定着しました 第1曲「キリエ(あわれみの賛歌)」、第2曲「グローリア(栄光の賛歌)」、第3曲「クレド(信仰宣言)」、第4曲「サンクトゥス(感謝の賛歌)」、第5曲「ベネディクトゥス(ほむべきかな)」、第6曲「アニュス・デイ(平和の賛歌)」の6曲から成ります

オケの後方にB.C.J自慢の合唱団がスタンバイします

この曲でもテノールの櫻田亮とソプラノの中江早希の歌唱が素晴らしい 櫻田は高音が無理なく伸び、中江はノンヴィブラートの透明感のある歌唱が印象的です アルトの青木洋也、バスの加来徹も安定感があります

鈴木優人は速めのテンポでサクサクと音楽を進め、モーツアルトらしい軽快感を前面に出しました この曲でもナチュラル・ホルン、ナチュラル・トロンボーンの好演に加え、ナチュラル・トランペット、三宮正満のオーボエが素晴らしい演奏を展開しました また、固いマレットで打ち込まれるバロック・ティンパニが心地良いリズム感を与えていました

特筆すべきは、正確なドイツ語、クリアな歌唱が発揮されたB.C.J自慢の混声合唱団のパフォーマンスです

約30分の演奏を聴き終わって思ったのは、「まるでオペラだな」ということです 一例を挙げれば、中江早希が第6曲「アニュス・デイ」で歌ったソプラノ・ソロは、モーツァルト「フィガロの結婚」第3幕でアルマヴィーヴァ伯爵夫人が歌うアリア「楽しい思い出はどこに」によく似ています

ここ数年、プログラム冊子を購入していないので、曲の内容が分からなかったり 名前が分からない演奏者がいたりして、このブログを書くのに苦労します 2000円を投資してプログラムを買えば済む問題ですが、私の場合はブログ執筆のために買うわけですから、どうしてもコスパを考えてしまいます もう少し安価にならないかなと思いますが、後戻りはできないでしょうね

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

藤岡幸夫 ✕ 宮田大 ✕ 小林沙羅 ✕ 東京シティ・フィルで吉松隆「チェロ協奏曲」、V.ウィリアムズ「交響曲第3番」、ディーリアス「2つの水彩画」を聴く ~ 第349回定期演奏会

2022年02月20日 07時18分54秒 | 日記

20日(日)。わが家に来てから今日で2598日目を迎え、緊張が高まっているウクライナ情勢について、アメリカのバイデン大統領は「ロシアのプーチン大統領が侵攻を決断したと確信している」と述べた  というニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

     

     かつてはトランプだった 次は習近平だった 今はプーチンだ 世界で一番危険な人物

 

         

 

昨日、東京オペラシティコンサートホールで東京シティ・フィル「第349回定期演奏会」を聴きました プログラムは①ディーリアス(フェンビー編)「2つの水彩画」、②吉松隆「チェロ協奏曲 ”ケンタウルス・ユニット” 作品91」、③ヴォーン・ウィリアムズ「交響曲第3番 ”田園交響曲” 」です 演奏は②のチェロ独奏=宮田大、③のソプラノ独唱=小林沙羅、指揮=藤岡幸夫です

 

     

 

プログラムに「出演者変更のお知らせ」が挟み込まれていました それによると、「(V.ウィリアムズ「交響曲第3番」に)出演を予定していたソプラノの半田美和子氏が前日のリハーサル後、急な体調不良に見舞われ出演を断念することになった。代わって小林沙羅氏が出演する」旨が書かれていました 開演に先立って指揮者・藤岡幸夫氏のプレトークがあり、演奏曲目に懸ける強い思いを語りましたが、最後に半田美和子さんの降板について説明しました それによると、前日のリハーサル終了後、夜9時半ごろ半田さんから電話が入り、急な胃腸炎のため出演できなくなったとの話があった 急きょ代役を選ぶことになり、小林沙羅さんに連絡を入れたところ 当該曲は歌ったことはないが 日程が空いているので代役を引き受けるとの快諾を得た 小林さんは夜10時頃、急きょピアニストを呼んで一緒に譜読みを行い、本日午前のリハーサルに臨み、午後2時からの本番を迎えた」とのことです 藤岡流に言えば「昨日・今日の話じゃなくて、昨夜・今日ですよ 大変なんてもんじゃありませんよ、アータ

会場は、いつもより客入りが多いようです 3階席まで入っています。この調子で増えて行ってほしいと思います

拍手の中、オケの面々が配置に着きます オケは左から第1ヴァイオリン、第2ヴァイオリン、チェロ、ヴィオラ、その後ろにコントラバスという並び。コンマスは戸澤哲夫です

1曲目はディーリアス(フェンビー編)「2つの水彩画」です この曲はフレデリック・ディーリアス(1862-1934)が1917年に書いた無歌詞・無伴奏の2つの合唱曲「夏の夜、水の上にて歌える」をエリック・フェンビーが弦楽合奏曲に編曲した作品です 第1曲「レント・マ・ノン・トロッポ」、第2曲「陽気に、だが速くなく」です

藤岡の指揮で演奏に入りますが、第1曲はディーリアスらしい抒情的な曲想、第2曲は明るく楽し気な曲想です シティ・フィル自慢の美しい弦楽合奏が夏の夜を彩ります

2曲目は吉松隆「チェロ協奏曲 ”ケンタウルス・ユニット” 作品91」です この曲は吉松隆(1953~)が、交響曲第2番の録音時(1995年)にソロを弾いて吉松を感嘆させたBBCフィルの首席チェロ奏者ピーター・ディクソンのために書いた作品で、2003年に完成、同年10月20日の関西フィル定期演奏会でディクソンの独奏、藤岡幸夫の指揮で初演されました 吉松氏によると「ケンタウルス・ユニット」とは「チェリストを半人半馬のケンタウルスに見立てた命名」とのことです 第1楽章「アレグロ」、第2楽章「アダージョ」、第3楽章「フィナーレ:ロンド、アレグロ・モルト」の3楽章から成ります

ソリストの宮田大は2009年、ロストロポーヴィチ国際チェロコンクールで日本人として初めて優勝 これまで参加したすべてのコンクールで優勝している逸材です

藤岡の指揮で第1楽章が開始されます 目先がクルクルと変わる変化に富んだ曲想で、ダイナミックな音楽が展開、独奏チェロが力強くエネルギッシュな演奏を繰り広げます 第2楽章は独奏チェロが琵琶のような音色を響かせ、ハープとのコラボにより力強くも美しい演奏を展開します 第3楽章はまさに東洋と西洋の融合による音楽です 宮田は超絶技巧で躍動感溢れるスケールの大きな演奏を繰り広げ、オケと絡み合いながら圧倒的なフィナーレを飾ります

演奏後、満場の拍手が宮田氏に送られ、藤岡氏から会場のほぼ中央に座っていた吉松隆氏が紹介され、大きな拍手に包まれました

鳴りやまない拍手に、宮田は宮沢賢治(宮田大編)「星めぐりの歌」をアンコールに演奏しました バッハの無伴奏チェロ組曲の有名な「プレリュード」のメロディーがアレンジされて出てくる小品ですが、宮田は軽やかに演奏、再び満場の拍手を浴びました

 

     

 

プログラム後半はヴォーン・ウィリアムズ「交響曲第3番 ”田園交響曲” 」です この曲はレイフ・ヴォーン・ウィリアムズ(1872-1958)が1921年に作曲、1922年1月26日にロンドンでエードリアン・ボールト指揮ロンドン・フィルにより初演されたソプラノとオーケストラのための作品です 第1楽章「モルト・モデラート」、第2楽章「レント・モデラート」、第3楽章「モデラート・ぺザンテ」、第4楽章「レント」の4楽章から成ります

実は、ここ数日、ボールト指揮ロンドン・フィルのCDで予習していたのですが、どうも掴みどころのない曲でどうしたものか、と思っていたのです それはこの曲の全楽章が「モデラート(適度に)」か「レント(遅く)」で書かれており、「アレグロ(速く)」楽章がないからであることに気が付きました プレトークで藤岡氏は「演奏中、絶対に眠らせない」と決意表明していましたが、全体的にゆったりした曲を どのような演奏をするのでしょうか。興味津々です

 

     

 

藤岡氏の指揮で第1楽章が開始されます 冒頭、木管楽器のアンサンブルが幻想的な音楽を奏でます この楽章ではフルートの竹山愛、オーボエの本田啓佑、コーラングレの高橋舞の演奏が光りました 第2楽章では中盤における松木亜希のトランペットが第一次世界大戦で犠牲になった兵士への追悼のように響き渡りました 終盤には同じメロディーが谷あかねのホルンによって抒情的に演奏されました 第3楽章は全曲の中で異質な曲想で、スケルツォのように激しい音楽が展開します 「モデラート」の割には速めのテンポだと感じました この楽章の終盤に、小林沙羅が2階正面パイプオルガンの上手に白いドレス姿で現れ、スタンバイします 第4楽章に入ると、小林沙羅のソプラノ独唱(レチタティーヴォ)が2階席から降ってきます なんと美しくノーブルな歌声だろうか 彼女は歌い終わると一旦引き上げ、渾身の管弦楽の演奏が続きます。すると今度はパイプオルガンの下手に小林が現れ、オケと共にフィナーレに向かいます 第1ヴァイオリンの弱音とソプラノとが交じり合って静かに会場の空間に消えていきます 藤岡がタクトを降ろすと、会場溢れんばかりの拍手が小林沙羅と藤岡 ✕ 東京シティ・フィルの面々に押し寄せます    背筋が寒くなるほどの感動のフィナーレでした

この日のコンサートは、大好きなディーリアスの小品が聴けたし、宮田大のスケールの大きな演奏も聴けたし、滅多に演奏される機会のないヴォーン・ウィリアムズの交響曲が藤岡幸夫の指揮で聴けたし、大満足です それにしても、前日の夜に代演の依頼を受けて、その日の夜10時にピアニストを読んで譜読みを行い、翌日午前のリハーサルに臨んで、午後の本番を迎えた小林沙羅さんのプロ根性には敬服するしかありません 歌う内容が歌詞ではなく(分かりやすく言えばスキャットのようなもの)歌う時間も短いとは言え、初めて歌う歌を短時間で本番まで持っていくには、高度な歌唱力に加え、普段から「いつ何があっても対応できる準備」が出来ていなければなりません その意味では小林沙羅こそ真のプロフェッショナルと言えるでしょう

 

     

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

原田マハ著「常設展示室」を読む ~ ピカソ、フェルメール、ラファエロ、ゴッホ、マティス、東山魁夷の絵画をモチーフにした6つの物語 / 新型コロナワクチン3回目接種券届く

2022年02月19日 07時20分14秒 | 日記

19日(土)。昨日、豊島区から「新型コロナウイルスワクチン接種券(3回目)」がやっと届きました 2回目接種が昨年7月4日だったので7か月以上経ったことになります さっそく豊島区のホームぺージにアクセスして来週火曜(22日)午前9時45分に近所のA中学校跡地で摂取するよう予約しました 1回目、2回目と同様モデルナにしました。また熱が出るんだろうな、と思いますが、当然 この日と翌日はコンサートの予定は入れていません

ということで、わが家に来てから今日で2597日目を迎え、ニューヨーク州の最高裁判所は17日、ドナルド・トランプ前米大統領と息子のドナルド・トランプ・ジュニア氏、娘のイヴァンカ氏の3人に対し、トランプ一族が経営する「トランプ・オーガニゼーション」が「資産評価で詐欺や誤情報」を通じて税制優遇措置や融資を獲得した疑いで、民事調査で証言するよう命じた  というニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

     

     トランプ一族のことだから 不服申し立てをしたり 黙秘権を行使したりするんだろ

 

         

 

昨日、夕食に2週間に一度のローテにより「鶏の唐揚げ」を作りました 今回は栗原はるみ先生のレシピによる「うまみ醤油」に半日漬け込んでから揚げたので、とても美味しく出来ました

 

     

     

         

 

原田マハ著「常設展示室」(新潮文庫)を読み終わりました 原田マハは1962年東京都生まれ。関西学院大学文学部日本文学科、早稲田大学第二文学部美術史科卒業。伊藤忠商事、森ビル森美術館設立準備室、ニューヨーク近代美術館勤務を経て、2005年「カフーを待ちわびて」で日本ラブストーリー大賞を受賞し作家デビュー 2012年「楽園のキャンヴァス」で山本周五郎賞、17年「リーチ先生」で新田次郎賞を受賞しています

 

     

 

本書は著名な画家の描いた絵画をモチーフにして書かれた6つの短編から成ります

ピカソ「盲人の食事」をモチーフに書かれた「群青 The Color of Life 」は、ニューヨークの古いアパートで暮らす美術館のキュレーター(学芸員)をしている35歳の独身女性・美青(みさお)が主人公です 美青は障碍者向けのワークショップに力を入れますが、急激に視力の衰えを感じます 美術を扱うキュレーターに緑内障は致命的でした。障碍を持った子供たちと一緒にピカソの「盲人の食事」を前にした美青は、子供の頃に見た時に「あの水差しには何が入っているんだろう」と思い、「ワインが入っていますように。そうしたら、きっとこの男の人は嬉しいはずだ」と願ったことを思い出します この文章を読んだとき、「絵画というのはこういう風に観るのか」と新たな感慨を覚えました 私は目に見える”物としての水差し”しか見ていなかった、つまり何も見ていなかったのだと自覚しました

フェルメール「デルフトの眺望」をモチーフに書かれた「デルフトの眺望  A  view  of  Delft 」は、現代アートを扱う大手ギャラリーの営業部長をしている40歳の独身女性・七月生(なづき)が主人公です 仕事で世界中を飛び回っていますが、介護施設で寝たきりの父親のことが気にかかります 父親の死後、弟のナナオがポケットから何かを出してなづきに見せます。それはオランダのデン・ハーグ駅から出した「デルフトの眺望」の絵葉書でした そこには自分の字で「帰ったら、いっぱい話したいことがあります。話そう。3人で」と書かれていました 残念ながら一人欠けてしまいましたが、姉弟でいっぱい話をしたのでしょう

ラファエロ「大公の聖母」をモチーフに書かれた「マドンナ  Madonna 」は、大手ギャラリーでクリエイターをして世界中を飛び回っている46歳の独身女性・あおいが主人公です 大切な商談の真っ最中に一人暮らしをしている母親から「あのね、湯飲みが割れちゃったのよ」と電話がかかってきます 時々こういうことがあるのであおいは困っています。母親からハーモニカが壊れたので修理に出してほしいと頼まれますが、あおいは仕事で忙しく、口約束だけで失念してしまいます 訪問先のイタリアで時間が出来たので、ふと美術館に行ってみようと思いパラティーナ美術館を訪ねたあおいはラフェエロの「大公の聖母」と相対します この絵を観たあおいは、母親が病院の受付のデスクの前に貼っていた「大公の聖母」の古雑誌の切り抜き写真を思い出します そして、ハーモニカを修理に出すのを頼まれていたことを思い出します

この物語を読んで思ったのは、同じ芸術でも音楽と美術とでは大きな相違点があることです 音楽は再現芸術なので、ベートーヴェンだろうがマーラーだろうが、楽譜があり演奏者がいればいつでもどこでも再現できますが、絵画や彫刻などの美術は、本物は世界で1つしかないということです 本物以外はコピーか偽物かどちらかということ。本物を観るには、たとえ海外であっても展示してある美術館に観に行くか、日本で展覧会が開かれたときに観に行くかのどちらかしかありません

ゴッホ「ばら」をモチーフに書かれた「薔薇色の人生  La  vie  en  rose 」は、県の地域振興局内「パスポート窓口」で働く45歳バツイチの柏原多恵子が主人公です 窓口の後ろの壁には色紙が1枚飾られており、それには La  vie  en  rose と書かれています そこへフランス語ペラペラの中年男性・御手洗が現れ、この色紙をネタになぜか多恵子に思わせぶりな態度を見せます 1週間後、パスポートを受け取りに来た御手洗に誘われ一夜を共にします。パスポートがあるので身元はしっかりしているし、話によると親から受け継いだ有名な画家の絵を売ったお金で優雅に暮らしているということで、すっかり信じ込んでいました しかし、朝起きてみると、財布から現金が抜き取られ、ゴッホ展のチケットが入っていました もしや・・と思い、美術館に行ってみるとゴッホ展は終わっていました 手の込んだ新手の結婚詐欺ですが、「 La  vie  en  rose 」というよりも 「 C’est  la  vie 」(人生なんて、こんなもの)かもしれません

マティス「豪奢」をモチーフに書かれた「豪奢  Luxe 」は、現代アートギャラリーで働いていた時に、若手でIT企業を上場させたやり手の谷地に引き抜かれ、2号的な存在となっている24歳の女性・下倉紗季が主人公です 何でも買ってもらい不自由のない暮らしをしていた紗季は、パリのホテルで谷地と落ち合うことになっていました しかし、「急な仕事が入ったからそっちに行けなくなった」というメールが届きます 紗季は何度もメールをしますが返信がありません 紗季は谷地からプレゼントされたミンクのコートを羽織ってパリの街へ出ます。そして、ポンピドー・センターの近代美術館に立ち寄ります そこで、マティスの「豪奢」に出合います。「水辺に集まる3人の女性たち。中心になっているのは、一糸まとわぬ女性像。海の泡から、たったいま、ヴィーナスが誕生したのだ」。紗季は毅然と立ち上がった女神の前に佇んで、画家がこの絵に「豪奢」と名付けた真意を思います・・・この世で最も贅沢なこと。それは、豪華なものを身にまとうことではなく、それを脱ぎ捨てることだと そして、彼女はクロークの預けたミンクのコートを引き取らず、ワンピース姿で木枯らしの中へ走り出ます

これは一人の若い女性の喪失と再生の物語と言えるかもしれません。この作品を読んで思ったのは、バッハの音楽です 余計な要素をそぎ落とし 音の本質だけを残したのがJ.s.バッハの「無伴奏チェロ・ソナタ」や「平均律クラヴィーア曲集」ではないのか

東山魁夷「道」をモチーフに書かれた「道  la  Strada 」は、美術評論家でイタリアの大学の客員教授も務める42歳の既婚女性・貴田翠が主人公です 翠は「新表現芸術大賞」の審査員をしていますが、エントリーナンバー29番の作品が登場したとき、翠の心は大きく動かされます 100号の大きさの厚紙に書かれた水彩画で、画用紙をつなげて1枚の絵にしており、一本の道が描かれていました 翠は40年前の幼い頃に暮らした東京郊外の真新しい道の風景を思い出します。母親の死により、翠は一緒に暮らしていた兄と別れ、養女となって資産家に引き取られていったのでした 翠はその作品の作者・鈴木明人を探します。果たしてそれは幼い頃に生き別れた兄=本名・鈴森明人の作品でした 翠は兄を訪ねて故郷に戻りますが再会は果たされてませんでした しかし、兄には一人娘・彩が残されていました

この物語のラストは、親は死んでもその才能なり生きざまは子に引き継がれていくことを暗示していて希望が持てます

本書の「解説」を女優の上白石萌音さんが書いていますが、文章がとても上手で驚きました 「一芸に秀でる者は何とか」と言いますが、まさにマルチタレントと言えるかもしれません 彼女は「この本は美術館への招待状だ」と書いていますが、まさにその通りで、読んでいるうちに美術館に行って本物の絵を観たくなります 絵画好きだけでなく幅広く推薦できる本です

 

本日、toraブログのトータル閲覧数が680万ページビューを超えました(6,801,244 PV)。トータル訪問者数は2,062,366 IPです これもひとえ読者の皆さまのご愛読のお陰と感謝いたします これからもよろしくお願い申し上げます

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする