人生の目的は音楽だ!toraのブログ

クラシック・コンサートを聴いた感想、映画を観た感想、お薦め本等について毎日、その翌日朝に書き綴っています。

福田定一とは?~三上延著「ビブリア古書堂の事件手帖《2》~栞子さんと謎めく日常」を読む

2012年07月31日 06時55分04秒 | 日記

31日(火)。早いもので7月も今日で最後ですね。月日の流れの速さを感じます

日曜日の日経朝刊最終面に西洋史家の樺山紘一さんが「欧人異聞」というコラムを連載していますが、先日は「ふたりのグスタフ、世紀末の不満」と題して書いていました 二人のグスタフとは「グスタフ・マーラー」と「グスタフ・クリムト」です。ともに100年前の”ウィーン世紀末”をリードした芸術家です 樺山氏は書きます。

「マーラーは1897年には37歳でもうウィーン宮廷歌劇場の芸術監督、ついでは、ウィーン・フィルの指揮台に。のちに招かれて、ニューヨークのメトロポリタン・オペラ座の指揮者への道をたどる。栄光そのものだ だが不満だった。マーラー本人は、正道を行く作曲家と自認していた。けれどもウィーンでは、あくまでも指揮者としてのみ尊重された

そう、その通り。マーラーはウィーンで成功するため、ユダヤ教からキリスト教に改宗までしています。それでも作曲家として正当な評価を受けることはありませんでした

「クリムトはある年、ウィーン大学講堂を飾る天井画の委嘱を受ける。この作品はあまりにラディカルで挑発的だとしてスキャンダルを巻き起こす 酷評に嫌気がさしたクリムトは、これを撤回し、仲間に呼びかける。”分離派”の出発である

クリムトは”ウィーン分離派”で活躍したものの、やがて同志と諍いをして脱退します。彼の不平不満はいつまでも収まらなかったようです 樺山氏は次のように結んでいます。

「クルムトはマーラーより2つ年下だった。ウィーンっ子の二人が親しく語り合った形跡はない。だが、百年後となってみれば、不平不満足も人生の隠し味といえようか。仲間らしい連帯感さえもほのみえる

マーラーは当時、こう言ったといわれています。

「やがて私の時代が来る

その通り、100年後の今、マーラーの時代が続いています

 

  閑話休題  

 

三上延著「ビブリア古書堂の事件手帖《2》~栞子さんと謎めく日常」(メディアワークス文庫)を読み終わりました 第1巻に続いて北鎌倉の老舗古本屋「ビブリア古書堂」の女主人・篠川栞子(しおりこ)とアルバイト店員・五浦大輔が主人公となり,古書にまつわる謎を解いていくミステリー小説です

この巻で収録されているのは①坂口三千代「クラクラ日記」,②アントニイ・バージェス「時計じかけのオレンジ」,③福田定一「名言随筆 サラリーマン」,④足塚不二雄「UTOPIA 最後の世界大戦」の4冊です

「時計じかけのオレンジ」はレーザー・ディスクで観たことがあります.一人の若者が麻薬,暴力をやりたい放題やるストーリーで,どこが面白いのか,と疑問に思いながら観た記憶があります この本を読んで初めて「時計じかけのオレンジ」には結末の違う2つのバージョンがあることを知りました

福田定一と言われても小説に縁のない人には誰だかさっぱり分からないと思いますが,デビュー前の司馬遼太郎だと言われれば,なるほどと思うのではないでしょうか 彼はデビュー当時,産経新聞大阪本社の文化部次長でした 

古書をテーマにミステリーを展開する珍しい手法ですが,なかなか読ませます.取り上げられている本を読んでみたくなります

 

          

 

司馬遼太郎さんと一度だけ話したことがあります もう30年以上も前,元の職場の国際部にいた時のことです.約10名のアメリカの新聞記者団に同行して大阪に出張した際,司馬遼太郎さんを囲む会(要するに司馬さんに自由に話をしてもらい,通訳を通して聴く会)を開きました.司馬さんと大阪ロイヤルホテルのロビーで待ち合わせをしたのですが,司馬さんは約束の時間よりも前にお見えになっていてコーヒーを飲んでいらっしゃいました 伝票を取って「これは当方でお支払いさせていただきます」と言うと,「それ,私が払いますわ」と関西弁でおっしゃいました.そういう訳にもいかないので「いや,こちらで・・・」と言ってレジに持っていきました.その時の司馬さんの話しぶりや仕草などから、気さくな人なんだな,と思いました 「囲む会」は日本の昔の話で歴史の専門用語が頻繁に出てきたせいか通訳がうまく記者団に通じなかったようでした.日本人の私にも相当難しい内容だったので無理もありません。たった10人足らずのために司馬遼太郎さんの話を聴くという贅沢な企画だったのですが、残念なことをしました

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世界をめぐる音楽の夏旅~新日本フィル「サマーコンサート」を聴く

2012年07月30日 06時54分08秒 | 日記

30日(月)。昨日、すみだトリフォニーホールで「新日本フィル・サマーコンサート2012~世界をめぐる音楽の夏旅」を聴きました プログラムは2部構成で、第1部が「熱い夏」、第2部が「涼む夏」となっています。指揮は小松長生、曲の合間のナレーションは堀江一眞です

自席は1階11列27番,右の島の通路側.会場はほぼ満席です オーケストラのメンバーがカラーTシャツを着て登場します.グリーン,オレンジ,淡いグリーン,一人だけイエローがいます.第2ヴァイオリンには我らが篠原英和さんがスタンバイしています コントラバスの村松裕子さんの姿が見えないのはちょっと寂しいかな

トレーナーのようなパジャマ姿の人が出てきたと思ったら指揮者の小松長生さんでした(笑) 指揮者だけはTシャツ代わりに上下お揃いの”普段着”を着てきたようです たしかに指揮者はオーケストラのトレーナーですから,トレーナーを着て登場しても不自然ではないのですが,あまりにも普段着すぎたような気がします

第1部は「熱い夏」というテーマのため,舞台後方のパイプオルガンが照明で赤くなっており,太陽を象徴しているようです さっそく,第1曲めのガーシュイン「キューバ序曲」の演奏に入ります.オープニングに相応しい”ノリのいい”ラテン・ミュージック”です マラカスの音が何ともいい感じです.管楽器も弦楽器も,もちろん打楽器群もノリノリの演奏です

続いてアンダーソン「セレナ―タ」がラテンのリズムで始まります.クラリネットの重松希巳子さん,イングリッシュ・ホルンの森明子さんのソロが冴えています 続いて演奏されたアンダーソンの「クラシカル・ジューク・ボックス」は,ワーグナーの「タンホイザーの行進曲」,ベルリオーズの「妖精の踊り」,リストの「ハンガリー狂詩曲第2番」が,懐かしい”レコード自動演奏装置”ジューク・ボックスから流れるごとく,途中で同じメロディーを繰り返し演奏(レコードの”針飛び”を再生)したりして,楽しく再生されました

次の小山清茂「管弦楽のための木挽歌」より「盆躍り」では,日本の大太鼓とピッコロ(横笛の代わり)によって民謡のメロディーが演奏され,オーボエ,サクソフォン,トロンボーンなどの楽器で受け継がれていきます こういう曲は日本人の感性に合いますね.次いでファリャ「恋は魔術師」より「火祭りの踊り」が勇ましく演奏されます

次のヴィラ・ロボス「ブラジル風バッハ第2番」より「トッカ―タ」は汽車の汽笛や走る時の車輪の音などが再現される面白い曲です

そして前半の最後はグローフェ「グランド・キャニオン」より「山道を行く」です.冒頭のヴァイオリン・ソロはコンマスの西江辰郎さんがなかなか聴かせてくれました あとはユーモラスなリズムとメロディーが続いてロバの背に揺られる気分になります

休憩時間には,ロビーでTシャツや地元の名産品,スカイツリー・グッズなどが売られていて凄い人だかりができていました

 

          

 

第2部「涼む夏」に入ります.舞台後方のパイプオルガンは真夏の太陽から一転,ブルーのライトが当たって涼しげです

最初のベートーヴェン「交響曲第6番”田園”」より第1楽章はあまりにも有名ですが,何度聴いても感動的な音楽です ここでもクラリネットの重松さんの演奏が素晴らしいです

演奏後,インタビューに応えて小松氏が「田園というと日本では”田んぼ”を思い浮かべますが,私は長い海外生活の経験から,牧場,牛や羊が放し飼いになっている広大な牧場を思い浮かべます」と解説しました.なるほど,そうでしょう

次はヨーゼフ・シュトラウス「ポルカ:休暇旅行で」です.ヨーゼフはヨハンⅡ世の弟ですが,とにかく楽しい曲です 兄弟そろって後世に残るたくさんのワルツやポルカを作曲しました

3曲目はグリーグ「ペール・ギュント」第1組曲より「朝」と「山の魔王の宮殿にて」です.これもあまりにも有名ですね.オーケストラはメリハリをつけて演奏します

次のアンダーソン「サマー・スカイズ」はまるで古き良き時代の映画音楽のような気持ちの良い曲です次いでレスピーギ「リュートのための古風な舞曲とアリア第3組曲」より「イタリア―ナ」が演奏されます.冒頭の,チェロのピチカートに乗って,ヴァイオリンがメロディーを奏でるところは最高にいいですね.気分が良くなります

そしてフィナーレはスメタナの「わが祖国」より「モルダウ」です.目を瞑って聴いていると,山あいの清水が集まって小川になり,街を流れるにしたがって川幅を広げ大河となって滔々と海にそそいでいくシーンが目に浮かんできます.名曲です

アンコールに応えて,ヨハン・シュトラウスⅡ世の「芸術家のカバリーユ」という曲を演奏しました この曲は,クラシック音楽のパロディー名演集といった感じの曲で,メンデルスゾーンの結婚行進曲で始まり,モーツアルトの「ト短調交響曲」の有名なテーマ,リストの「ラ・カンパネラ」,ウェーバー「魔弾の射手・序曲」,モーツアルト「魔笛~パパゲーノのアリア」などがメドレーで演奏されます.初めて聴きましたが,とても楽しい曲でした

たまにはこういう肩の凝らないコンサートもいいものです

 

          

 

コンサート帰りに秋葉原の電気街に行って,新日本フィルのヴァイオリン奏者・篠原英和さんご推奨のCDレンズクリーナーを買ってきました 最近,CD再生時に急に演奏が止まってしまったり,音が濁ったりしていたのですが,篠原さんからブログのコメントでアドバイスをいただき,早速買ってきたものです 家に帰って試してみました.CDを再生する時と同様に機械にかけるだけなので簡単です.その結果,何のトラブルもなくCDの音を再生してくれるようになりました.篠原様ありがとうございました

 

          

 

それにしても,最近の秋葉原は凄い かつて電気街で有名だった街が,今やアニメとAKB48の街にすっかり変身しています(今さら何を,という声あり).メイド姿の女性が道の両サイドでチラシやティッシュを配ったりしています なぜか分からないのですが,あちこちで若い男の子が行列を作っていますこういう所へはあまり行きたくないですね.息切れしそうで・・・・・・

 

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最近話題の「ビブリア古書堂の事件手帖」(三上延・著)を読む

2012年07月29日 06時54分32秒 | 日記

29日(日).昨日は「JTアートホール室内楽シリーズ10月~2月」のチケット発売開始日だったので,朝から暑い日だったのですが神保町のチケットぴあに出かけました なにしろ256席しかないので聴きたいコンサートがある時は早めに手配しないとすぐにソルド・アウトになってしまいます 幸い聴きたい3公演のチケットは入手できました

①10月3日(水) 「堀米ゆず子 モーツアルト革新の室内楽」 ①モーツアルト「ディヴェルティメント変ホ長調K.563」,②同「クラリネット五重奏曲イ長調”シュタードラー”K.581」 クラリネット=ナイディックほか これはとにかくモーツアルトが聴きたいのです

②11月29日(木) 「ロータス・カルテットのブラームス」 ①ブラームス「弦楽四重奏曲第1番ハ短調」,②同「弦楽四重奏曲第2番イ短調」,③クラリネット五重奏曲ロ短調」 クラリネット=マンツほか これはとにかくブラームスの室内楽を聴きたいのです

③1月9日(水) 「音楽家からの年賀状」 ①コダーイ「二重奏曲」,②メンデルスゾーン「ピアノ六重奏曲」,③シューベルト「ソナチネ第1番」,④シューマン「ピアノ五重奏曲変ホ長調」 ヴァイオリン=徳永二男,チェロ=向山佳絵子,ピアノ=田村響,ハープ=吉野直子ほか これはとにかくメンデルスゾーンとシューマンの室内楽が聴きたいのです

 

 

          

 

  閑話休題  

 

三上延著「ビブリア古書堂の事件手帖~栞子さんと奇妙な客人たち」(メディアワークス文庫)を読み終わりました この本は2012年本屋大賞文庫初ノミネート作品とかで,書店の文庫本売り場に平積みになっています

鎌倉の片隅でひっそりと営業している古本屋「ビブリア古書堂」の主人は,篠川栞子(しおりこ)という若くてきれいな女性です この女性,初対面の人とは口もきけない人見知りなのですが,話が古書のことに及ぶと急に生き生きとして立て板に水のように語り始めます.感性も胸も豊かな女性のようです

古書店の主人・栞子のところに無職の五浦大輔が,自宅にあった夏目漱石の「漱石全集」の鑑定を依頼にくるところから,この物語は始まります この本で取り上げられるのは①夏目漱石「漱石全集・新書版」,②小山清「落穂拾ひ・聖アンデルセン」,③ヴィノグラードフ・クジミン「論理学入門」,④太宰治「晩年」の4冊です.これらの本をテーマに事件が起こり,栞子さんが解決していきます

古書だけをテーマに,しかもあまり馴染みのない書籍も取り上げながら魅力あるミステリーをが書けるのか?と思って読み始めたのですが,予想外に読みごたえがあります

本の表紙のイラストは越島はぐという人が描いていますが,”ジャケ買い”ならぬ”表紙買い”をする向きも少なくないのではないかと思えるほど,思わず手に取って読みたくなるイラストです

 

          

          

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いつまでも続けて欲しい~飯野ビル「ランチタイムコンサート」を聴く

2012年07月28日 07時00分00秒 | 日記

28日(土)。昨日の昼休み、近隣の飯野ビル1階のエントランス・ロビーでランチタイムコンサートがあり、初めて聴きに行きました

元々このコンサートは、イイノホールを新築するに当たり、ホール据え付けのピアノを一新したことから、古いピアノを新ビルの1階ロビーに飾っておいたのを、「ピアノは弾かなければダメになる」ということで、昼休みにコンサートをやることになったと聞きました

私は今までいつやるのか知りませんでしたが、先日、飯野ビル関係者が来社された際に、私がクラシック音楽好きであることを良くご存じのKさんが7月は27日に開かれると教えてくれたのです 今回は第4回目とのことでしたが、毎月1回12時5分から12時55分までの50分間、定期的に開かれているとのことです

昨日は同ビル地下の定食屋さんで昼食を取ってから1階エントランス・ロビーに行ったので、プログラム前半の4曲目の途中から聴くことになりました

ロビーに着くと、ワインレッドのドレスを着た若い女性ピアニストがベーゼンドルファーでドビュッシーを弾いています 手元のプログラムを見ると、すでにドビュッシーの「アラベスク第1番」、同「亜麻色の髪の乙女」、同「子供の領分より”ゴリウォークのケークウォーク”」が終わっていて、池村京子さんが「喜びの島」を演奏しているところでした ちょうど前から2列目のイスが空いていたので座って聴きました。イスは50席位用意されていました。池村さんの演奏は音楽の流れが良く、フランスの香りが漂う素晴らしい演奏でした プロフィールを見ると「桐朋女子高校を卒業後、パリ国立高等音楽院とジュネーブ音楽院を卒業した」と書かれていて、なるほどと納得しました

もう一人のピアニスト宮本玲奈さん(白いドレス)が司会をして「次から連弾曲に入る」旨をアナウンスしました。彼女は東京音楽大学を卒業後、パリ国立高等音楽院とマルメゾン国立音楽院を卒業したとのことです 残念ながら今回は彼女のソロは聴けませんでした

二人の連弾で最初にサンサーンス「動物の謝肉祭」から”白鳥”を優雅に、”フィナーレ”を弾むような軽快なテンポで演奏し、拍手喝さいを浴びました

次にドビュッシーの「小組曲」を4曲とも演奏しました。この曲は、モーツアルト「フルート協奏曲第2番」とともに私のクラシック音楽入門曲の一つです その時私が聴いたのは管弦楽曲版でしたが

最後にシャブリエの「スペイン舞曲」をカラフルな音色で演奏、圧倒的な拍手がロビーを満たしました わずか4曲を聴いただけですが、この二人の実力はかなり高いレベルにあると思いました

飯野ビルのこうした取り組みは、いわゆる企業メッセと言われる文化事業、企業の社会的貢献の一環としての活動と位置づけられますが、素晴らしい試みなので、関係者のご理解とご努力により、これからもビルが存続する限り続けていただきたいと思います

 

               

 

 昨夕、その飯野ビルのKさん、Tさん、当ビル地下テナントW夫妻と当社のいつものメンバー4人で飯野ビル地下のベトナム料理店YBで会食しました ベトナム・ビールやベトナム焼酎(ココナッツの味がした.非常に美味しかった)を飲みながら,ベトナム春巻きやファイブ,じゃなくてフォーを美味しくいただきました この日,W夫妻の10年目の結婚記念日ということで,X部長の発案で花束贈呈のサプライズを挙行すると,涙を流して喜んでいました(ウソです)

その後,タクシーに分譲(分乗とも言う)して六本木のカラオケ・スナックOに移動し,歌合戦をやらかしましたが,最初は点数が出ていなかったのに,途中から画面に点数が表示されるようになっていて心底驚きました 飯野海運のKさん,Tさんは絶好調でハイスコアを記録,W夫人はいつものように得意の演歌で周囲の聴衆を歓喜の渦に巻き込んでトップ・スコアを出していました W夫人はカラオケの世界ではエンターティナーの向こうを張って”演歌ティナー”と呼ばれています.当社の4人(約1名は初登場)はここに記録するまでもなく,いつものように歌って,いつものようなスコアに終始しました 地下鉄を乗り継いで家に帰り着いたのは午前O時を回っていました.風邪のためここのところお酒を飲んでいなかったのに,大量のアルコールを摂取して歌まで歌ったので,今日も朝から頭痛が痛いのです

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ベルリン芸術大学とともに~東京藝大「世界の芸術大学」演奏会から

2012年07月27日 06時57分21秒 | 日記

27日(金).昨夕,上野の東京藝大奏楽堂で「世界の芸術大学~ベルリン芸術大学とともに」公演を聴きました この公演は東京芸術大学と世界の芸術大学との交流を深めるための企画で,今回ベルリン芸術大学が選ばれたものです.演奏曲目は①古川聖「それはほとんど歌のように~弦楽四重奏と脳波楽器のための」,②ユオン「アラベスク」,③モーツアルト「オーボエ四重奏曲ヘ長調K.370」,④ベートーヴェン「ピアノ三重奏曲第4番変ロ長調」,⑤シュポーア「大九重奏曲ヘ長調」の5曲です

自由席のため開演30分前の6時半にはすでに50メートル以上の列が出来ていました.とは言うものの1階13列13番というかなり良い席が取れました.会場は5割~6割の入りでしょうか

 

          

 

1曲目の古川聖「それはほとんど歌のように~弦楽四重奏と脳波楽器のための」は本邦初演です どういう曲か誰も分からないので,作曲者自らが解説しました 誤解を恐れずに要約すると,

「人にヘッドギアを取り付けて8つの電極から脳波を取る.それをコンピュータに取り込んでそれぞれの脳波を音の波として音楽化する.その音を約2メートル間隔で置かれた8つのスピーカーから出して,その音と弦楽奏者4人の演奏する音楽と共演させる」

というものです その通り,濱野君(研究者)がヘッドギアを付けて現われ,弦楽四重奏が彼をはさんで座ります.最初の4分は濱野君の脳波をコンピュータに取り込む作業があるため,無音の状態が続きます 聴衆は2つのスクリーンに映し出された脳波の波などの映像を観て過ごします(シーン1).そしてシーン2に移り,8つの小さなスピーカーからそれぞれコンピュータを通して解析された脳波の音楽が流れてきます グラスハーモニカのようでもあり,弦楽器をこするような音でもあります それに合わせるように弦楽四重奏が楽譜を見て演奏します.再生は約8分でした.よく分からなかったのは,脳波の音楽と,楽譜を見て演奏する弦楽四重奏の音楽との関係です.偶然のようでもあり,予定調和のようでもありました

次の「アラベスク」は,モスクワ生まれでベルリンで活躍したパウル・ユアンの最晩年の作品です オーボエのブルクハルト・グレッツナー,クラリネットの下路詞子,バスーンのユストゥス・マッヘによる演奏ですが,ロシアを感じさせない曲想で,演奏自体は3人とも自由自在に吹いていて,なかなか面白い曲でした

3曲目のモーツアルト「オーボエ四重奏曲K.370」はこの日一番聴きたかった曲です この曲はモーツアルトが1780年秋からミュンヘンに滞在した時,当地の宮廷楽団のオーボエ奏者,F.ラムに出会い,彼のために書いた曲です オーボエ=グレッツナー,ヴァイオリン=玉井菜摘,ヴィオラ=ハンス・ヨハヒム・グライナー,ヴィオラ=河野文昭で,何と言っても主役のオーボエが気持ちよさそうに演奏しているのが手に取るように分かりました

この曲の演奏中,自席の3列斜め前の席の中高年女性が,身を乗り出し,演奏に合わせて頭を前後左右に動かしているのが目に入り,困りました ただの前後左右ではなく,演歌歌手がこぶしを回すときに頭をくるっと回すときの要領でやるので,なおさら目立つのです 大きな花模様の髪留めがひっきりなしに揺れていました.一種の演奏連動型シンドロームかもしれません.そんなの無いですが

休憩後の1曲目,ベートーヴェン「ピアノ三重奏曲第4番」は“街の歌”という呼び名があります.これはむしろ”流行歌”という意味のようです 最終楽章の変奏主題として当時流行していたヴァイグルのオペラ「船乗りの愛」の旋律を借用していることから,そう名付けられたとのことです

ピアノ=仁上亜希子,クラリネット=植川志保,ヴィオラ=カタリーナ・イェックレというメンバーです 3人のバランスが良く,初めてマナで聴きましたが,曲の素晴らしさが良く分かる演奏でした とくにイェックレという女性は,プロフィールでは「1989年生まれ.2012年からベルリン・ドイツ交響楽団フィリッチャイ・アカデミー奨学生」としか紹介されていませんが,音楽性に優れた人だと思います

最後のシュポーア「大九重奏曲」は管5部と弦4部という珍しい編成による曲です シュポーアはベートーヴェンとほぼ同じ時代に生きた作曲家でありヴァイオリニストですが,交響曲9曲,ヴァイオリン協奏曲15曲,弦楽四重奏曲36曲を作曲するなど,かなりの多産家でした

舞台向かって左からヴァイオリン=玉井菜摘,ヴィオラ=ムラートヴァ,チェロ=河野文昭,コントラバス=永島義男,バスーン=マッヘ,ホルン=ベンダー,クラリネット=山本正治,オーボエ=小畑善昭,フルート=ヘラ・ソンという編成です

4つの楽章から成りますが,各楽章に共通しているのは,コントラバスが通奏低音のように全体のメロディーを支えていること,そして,最初は弦楽器から入って,その後に管楽器が加わってくることです弦楽器と管楽器の掛け合いも面白く,最後はまるでオペラのフィナーレのような華々しい終わり方でした.大げさなタイトルの曲ですが,親しみのある曲で十分楽しむことが出来ました

来年はどこの大学と交流するのか,今から楽しみです

 

          

 

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シューマン「ピアノ協奏曲イ短調」,モーツアルト「ピアノ協奏曲第20番二短調」を聴きにいくぞ!

2012年07月26日 06時53分22秒 | 日記

26日(木).なでしこジャパン,やりましたね 今朝のニュースで知りました.数日前の新聞で「ロンドン入りの飛行機は,男子サッカーチームはビジネス・クラス,女子サッカーチームはエコノミー・クラスだった」というニュースを見て,「なんで差別をするのか」と腹が立ちましたが,そんなことにもめげずに結果を出して関係者を見返してやればいいと思います.ガンバレ・ニッポン ガンバレ・ナデシコ 

 

  閑話休題  

 

チケットぴあでチケットを2枚買いました 1枚は8月31日(金)午後2時からトりフォニーホールで開かれる新日本フィル・クラシックへの扉シリーズです.プログラムは①シューマン「ピアノ協奏曲イ短調」,②ベートーヴェン「交響曲第6番”田園”」,指揮は常任指揮者クリスティアン・アルミンク,ピアノ独奏は弓張美季です

これは休暇を取って聴きに行きます.演奏家は2の次で,とにかくシューマンの「ピアノ協奏曲」をナマで聴きたいのです ロマン派のピアノ協奏曲ではこの曲が一番好きです このシリーズでは8月11日(土)の萩原麻未のラヴェル「ピアノ協奏曲」他と,来年3月9日(土)のシン・ヒョンスのブラームス「ヴァイオリン協奏曲」他のチケットをすでに購入済みです

 

          

 

もう1枚は10月19日(金)午後7時から池袋の東京芸術劇場で開かれるクラシカル・プレイヤーズ東京のコンサートです プログラムは①モーツアルト「交響曲第25番ト短調K.183」,②同「ピアノ協奏曲第20番二短調K.466」,③ビゼー「交響曲ハ長調」で,指揮は有田正広,ピアノ独奏は仲道郁代です

これも演奏家は2の次で,モーツアルトの「ピアノ協奏曲第20番」をオリジナル楽器の”フォルテピアノ”で演奏するというので,是非聴いてみたいと思いました 今ならまだ良い席が取れます.S席4,000円ですから安いものです

 

          

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フルートは嫌われ者?~茂木大輔著「オーケストラ楽器別人間学」を読む

2012年07月25日 06時59分20秒 | 日記

25日(水)。昨日のマリナーズのイチロー選手がヤンキースへ移籍したニュースには驚きました ヤンキースの25歳の2人の若手投手と1対2のトレードとのことで、ヤンキースは、レフトのレギュラーを固定できない状態が続き、一方のイチローは、若返りを目指すマリナーズの現状を踏まえ、新たな刺激を求めて自ら移籍を志願したとのことです 今回のトレードは23日、シアトルでマリナーズとヤンキースが直接対戦する試合の3時間前に電撃的に発表され、イチローはさっそくヤンキースのユニフォームを着て試合に出場、ヒットを打っています

驚いたのは、トレード交渉が極秘に進められ、発表までマスコミに気づかれなかったことと、トレードの当該選手が発表直後には敵のチームで戦っているということです 日本のプロ野球では有り得ないことです。イチローの凄いところは他の日本人メジャーリーガーが移籍のたびにランクを落としていくのに,上位のチームに移籍していくところです.今でも超一流ですが,さらに進化を続け,その上を目指してチームの優勝に貢献してほしいと思います

 

  閑話休題  

 

昨夕は,本来,テナントとの暑気払いで飲む予定だったのですが,体調がいま一つすぐれないので,代わりに同僚に出席してもらいました もう1週間以上アルコールを飲んでいません.普段は夜,コメのご飯は食べずビールとおかずだけなのですが,最近は必ずといっていいほどゴハンを食べています.これが本来の生活なのだなあ,とつくづく思います

 

  閑話休題  

 

茂木大輔著「オーケストラ楽器別人間学」(新潮文庫)を読み終わりました 著者の茂木さんは1959年東京生まれ.シュトゥットガルト・フィルの首席オーボエ奏者を経て,1990年からNHK交響楽団の首席オーボエを務めています.最近では指揮者としても活躍しています

もともとは管楽器の雑誌「パイパーズ」に連載中の「楽隊新書」の中で特集してきた「楽器別人格形成論」に,あらたに加筆して1996年3月に出版したもので,2002年に文庫化したものです

著者が身近に観察してきたオーケストラのメンバーの性格を材料に,どういう楽器がいかなる性格をつくるのかを考察した”研究論文”です 例えばフルートは「冷たさも軽みもそなえた貴族的エリート」と捉えています 自らが吹くオーボエは「ストレスに苦しみ,くよくよと細かい?」と分析,クラリネットは「複雑さを秘めた万能選手」と持ち上げ,ファゴットは「愛すべき正義派」,ホルンは「忍耐強い寡黙の人」と賞賛,トランペットは「単純明快,やる気満々のエース」,トロンボーンは「あけっぴろげな酒豪,いつも上機嫌」,ティンパ二は「いたずら好きでクールな点的思考者」と観ています.

一方,弦楽器の方は,ヴァイオリンは「陰影に富んだユニバーサルの人」,ヴィオラは「しぶく,しぶとく,”待ち”に強い」,チェロは「包容力とバランス感覚にすぐれた,ゆらぎのない人間性」,コントラバスは「泰然自若,唯我独尊」,ハープは「夢見がちな深窓の令嬢」と一方的に解釈しています

面白いのは第4章の「フィールドワーク楽隊論」で,相性の良い楽器,相性の悪い楽器について調べた結果です 例えば,フルートは相性の良い楽器として弦楽器を上げていますが,相性の悪い楽器として同じフルートを上げています 相性別一覧表をよく見ると,フルートはほとんどの楽器から”相性の悪い楽器”として見られています.相手は,同じフルート,クラリネット,ファゴット,ホルン,トロンボーン,チューバ・・・・・・要するにフルートはほとんどの管楽器から嫌われているのですね.意外でした フルート可哀そうです.私も昔ヤマハ・フルート教室で1年間お勉強しましたので

著者の軽妙洒脱な語り口で騙されそうになりますが,よく読むと矛盾点を見出すことができます

上の調査によれば,相性の悪い楽器として「フルート×フルート」が挙げられていますが,後の章「楽器別人格・相性論」(楽器の組み合わせによるよい宴会・悪い宴会)では,フルート×2は「クラリネットと並び,管楽器でほとんど唯一2ショットが成立する楽器だろう」と言っています それって演奏上の相性と飲み会での相性とは違うと言うことでしょうか 茂木さんに聞いてみたい気がします

 

          

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コンサート会場における「にくきもの」とは~荻野文子著「ヘタな人生論より枕草子」を読む

2012年07月24日 06時55分48秒 | 日記

24日(火).昨夕は元の職場の旧友会(OB会)があり,幹事団の一人として参加しました 会議は30分で終了,その後,場所を移して懇親会が開かれました.私は風邪薬を飲んでいるのでアルコールは一切飲まず,ウーロン茶を8杯飲んで料理を食べながら話をしました.職場を中途退職して何年か経つM君と話していたら「いつか友人がウーロン茶の一気飲みをしていたら,そばにいた中国人に”危険だからやめた方がいい”と言われた.どうもウーロン茶は一度に飲みすぎると身体に良くないようだ」と言うので驚きました ビールやお酒の一気飲みが良くないのは誰でも知っていますが,まさかウーロン茶の”一時集中摂取”が健康に良くないと言うのは初めて聴きました 本場中国の人が言うことなので間違いないのでしょうが,どうせなら2~3杯飲んだところでM君の話を聴けば良かったと思いました

 

  閑話休題  

 

昨日の日経夕刊・文化欄に「英国クラシック目覚める 日本人音楽家,積極的に紹介」という記事が載りました 記事では,「新国立劇場が,尾高忠明芸術監督の第3シリーズの幕開けに,来年生誕100年を迎えるベンジャミン・ブリテンの”ピーター・グライムス”を上演する」ことなどを紹介していますが,今年生誕150年を迎えたフレデリック・ディーリアス(1862~1934)についても触れています

私はLP時代に,一時,ディーリアスを集中的に聴いていた時期があります.「春初めてのカッコウを聴いて」,「ブリッグの定期市」,「楽園への道」(歌劇”村のロメオとジュリエット”の間奏曲),「フロリダ組曲」,「北国のスケッチ」,「夏の歌」などの管弦楽曲です

ディーリアスの曲は,どれもが静かで,詩的で,郷愁を誘い,日本人の感性に合っているのではないかと思います 最初に「春初めてのカッコウを聴いて」を聴いた時は,どこか懐かしい感じがして心穏やかになりました いまでも時々CDで聴いています.

下のCDはディーリアスの「楽園への道」,「”イメルソン”前奏曲」,「夏の歌」などを収録したジョン・バルビローリ指揮ロンドン交響楽団による演奏です.ディーリアスはバルビローリの演奏を高く評価していたと言われていますが,すごく良く分かります

 

          

 

  も一度,閑話休題  

 

予備校講師・荻野文子著「ヘタな人生論より枕草子」(河出文庫)を読み終わりました

「枕草子」と言えば高校の時の古典の授業で習った,例の「春は曙,やうやう白くなりゆく・・・・」で有名な随筆です その平安時代の有名なエッセイを,長い間予備校で「マドンナ先生」として古典を教えてきた荻野文子さんが独自の視点から捉えたのが本書です

今から約1千年前,貴族が雅(みやび)な文化を作った平安時代に,清少納言と呼ばれる才気あふれる女性がいました 彼女は中宮(天皇の后の最高位)である定子という女性に,20代の終わりから30代の半ばにかけての約7年間仕えました 定子は彼女よりも10歳ほど年下で自身も教養が深かった女性です.日々の生活の中で清少納言の感性を書きつづったのが「枕草子」です

本書では「にくきもの」(しゃくにさわるもの),「ありがたきもの」(めったにないもの),「あぢきなきもの」(どうしようもないもの)など,普段の日常生活で使われる言葉を取り上げて,現代の生活に置き換えて分かりやすく解説しています

思わず「そうだ,その通りだ」と膝を打ったのは一番最初に取り上げられている「にくきもの」です 荻野さん自身の経験が書かれています.

「バレエ公演を観に行ったとき,前席の女性が夢中になって身を乗り出したため,トゥー・シューズが観えなくなった 無理な姿勢を我慢して腰を横にくねらせた.しかし,今度は音楽に合わせて身体を左右に揺らし始めた.それにしたがって私も逆へ逆へと頭を振るしかない・・・・このような”無遠慮な善人”はどういう訳か,中高年に多い」

この話を導入部として,「枕草子」に書かれている「にくきもの」を取り上げて解説していきます 荻野文子という人は実に文章がうまいし,文章の組み立て方,つまり,読ませ方もうまいと思います.まるで清少納言が現代に生まれ変わって書いているかのようで”いとをかし”です

私はこの本(235ページ)を一日で読み終わりましたが,それは著者の読ませる力が優れていたからだと思います

 

          

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ベートーヴェン「Vn協奏曲」,マーラー「第1交響曲」を聴く~新交響楽団第218回演奏会

2012年07月23日 06時56分36秒 | 日記

23日(月).昨日,東京オペラシティコンサートホールで新交響楽団第218回演奏会を聴きました プログラムは①ベートーヴェン「ヴァイオリン協奏曲ニ長調」(Vn独奏=松山冴花),②マーラー「交響曲第1番ニ長調」の2曲,指揮は飯守泰次郎です

新交響楽団は1956年創立のアマチュア・オーケストラです.音楽監督・故芥川也寸志の指導のもと旧ソ連への演奏旅行なども敢行したこともある本格的なアマ・オケです 現在,年4回演奏会を開いていますが,私は新響によるマーラー演奏の大ファンで,とくに高関健,飯守泰次郎の指揮するマーラーは欠かさず聴くようにしています

 

          

 

自席は1階21列10番,センターの左サイド通路側,会場は文字通り満席です 照明が落とされ,楽員が登場します.全員が立ったままコンマスを迎えます.こういうスタイル,ドイツのオーケストラで見た記憶があります コンマスは女性です.そういえば,先日のアマ・オケ「ザ・シンフォニカ」も女性のコンマスでした.アマチュア・オーケストラは女性上位なのでしょうか まったく異議ありません

1曲目のベートーヴェンの「ヴァイオリン協奏曲ニ長調」は,ブラームス,メンデルスゾーンの作品とともに「三大ヴァイオリン協奏曲」と呼ばれ,その堂々たる曲想はヴァイオリン協奏曲のキング・オブ・キング的な存在です 

ダーク・パープルの衣装をまとった松山冴花が指揮の飯守泰次郎とともに登場,さっそくティンパ二の5連打で曲が始まります 松山は自然な動きでベートーヴェンを奏でます.第3楽章に短いカデンツァがありますが,松山は色彩感豊かに表現しました

終演後,圧倒的な拍手 を受けた松山は,何を思ったか,舞台奥の女性ティンパ二奏者の方に行って握手を求めました センターに戻ったかと思うと,オーボエ奏者とファゴット奏者を指名して立たせて拍手 をしていました.よほど,彼女自身,会心の出来だったのでしょう

休憩後のマーラー「交響曲第1番ニ長調」は,もともと5つの楽章(1終わりなき春,2花の章,3順風に帆を上げて,4座礁,5地獄から天国へ)から成り,「巨人」というタイトルが付けられていましたが,1896年のベルリンでの演奏時に”花の章”が外され,これらの表題やタイトルは破棄されました

飯守のタクトにより第1楽章が始まります.静かな森の中の中,カッコウの鳴き声が聞こえてきます どうも,管楽器群の調子がいま一つ乗っていないようです.徐々に調子を上げていきましたが,本調子まではいきません 舞台上をよく見ると,第1ヴァイオリンの4列目の最後部席に,先ほどソロを弾いた松山冴歌が黒のステージ衣装でヴァイオリンを弾いているのが見えました.ほとんどの聴衆は気づいていないようです

第2楽章の冒頭,低弦による力強い演奏から全体が引き締まってきました.管楽器も調子を上げてきました

第3楽章は有名な,コントラバス1本による哀愁を帯びた旋律で始まります 日本では「グーチョキパーでなにつくろう」で知られている旋律です.途中,ハープとチェロによって導かれ「さすらう若人の歌」の第4曲「彼女の青い目が」のメロディーがヴァイオリンによってやさしく奏でられます こんなところもマーラーの魅力です

そして,第4楽章に突入します.「嵐のように激しく揺れ動いて」の副題のように,シンバル,ティンパ二の乱打,うねるような弦楽器に乗って,管楽器がテーマを高らかに奏でます フィナーレでは,ホルン8人,トランペット1人,トロンボーン1人が立ち上がり勇壮なメロディーを強奏します マーラーの指示はホルン全員が立奏することになっていますが,飯守はトランペットとトロンボーンを追加して演奏効果を狙いました.最近はこういうスタイルが多いようです.マーラーはこの高揚感がたまらないのです

この日のマーラーは第1楽章の不振を最後の楽章で名誉挽回したといった感じでした.また新交響楽団でマーラーを聴きたいと思います

 

          

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マーラー「さすらう若人の歌」,リスト「ファウスト交響曲」を聴く~東京交響楽団第602回定期演奏会

2012年07月22日 07時43分48秒 | 日記

22日(日).昨夕,サントリーホールで東京交響楽団の第602回定期演奏会を聴きました プログラムは①マーラー「歌曲集:さすらう若人の歌」,②リスト「ファウスト交響曲」の2曲,①のバリトン独唱はヴォルフガング・ホルツマイア,②のテノール独唱はチャールズ・キム,男声合唱は東響コーラス,指揮は常任指揮者ユべール・スダーンです

 

          

 

1曲目のマーラー「歌曲集:さすらう若人の歌」は作曲者初めての本格的な連作歌曲集です 第1曲「恋人の婚礼の日」,第2曲「朝に野原を往けば」,第3曲「ぼくは燃える刃を抱え」,第4曲「恋人の碧い二つの瞳」の4曲からなりますが,作詞はマーラー自身が手掛けました きっかけは,マーラーが音楽監督を務めていたカッセル歌劇場のコロラトゥーラソプラノ歌手ヨハンナ・リヒターに失恋したことだと推測されています 彼が友人に当てた手紙でほのめかしているとのことです

バリトンのオーストリア生まれのヴォルフガング・ホルツマイアは,ウィーン,ベルリン,ロンドンなどの主要な歌劇場に出演しているとのことですが,マーラーの失恋の歌を軽くも深いバリトンで表情豊かに歌い上げます

マーラーの交響曲第1番に出てくるメロディーが,第2曲と第4曲に出現します.マーラーは,「さすらう若人の歌」と「交響曲第1番」をほぼ同時並行的に作曲していたのです

ゲーテの「ファウスト」はドイツやフランスの作曲家にも大きな影響を与えました 1840年にはワーグナーが「ファウスト序曲」を,1844年にはシューマンが「ファウストからの情景」を,1846年にはベルリオーズが「ファウストの劫罰」を,そしてリストが1857年に「ファウスト交響曲」を完成しています 

管弦楽器,打楽器を中心に,第3楽章ではオルガン,テノール独唱,男声合唱が加わって大規模な編成に拡大,約70分にわたり演奏が続きます 第1楽章「ファウスト」,第2楽章「グレートヒェン」,第3楽章「メフィストフェレス」からなりますが,ゲーテの「ファウスト」の筋を描写したものではなく,ファウスト,グレートヒェン,メフィストフェレスの3人の人物像を描くことに重きが置かれています

とにかく,滅多にナマで演奏される機会のない曲なので,あらかじめホーレンシュタイン指揮BBCノーザン・シンフォニー・オーケストラによるCDで予習をしておきました にもかかわらず,非常に複雑な(いや,逆に単調な?)曲のようで,なかなかすんなりと頭に入ってきません 聴き馴染みがないので仕方がないのですが,メロディーを追っていくのが非常につらい曲でした マーラーではこんなことはまったくありません.まあ,要は”慣れ”の問題だと思いますが・・・・・・

 

           

 

演奏の方は,オーケストラの総力をあげた白熱の演奏で,とくに最終楽章のフィナーレでは,テノールと男声合唱約100人が両サイドから入場して演奏に加わり,マーラーの「千人の交響曲」を凌駕するかのような迫力で聴衆を圧倒しました

終演後,会場割れんばかりの拍手とブラボーが,滅多に取り上げられない大曲=「ファウスト交響曲」を見事に再現した指揮者とソリストとコーラスとオーケストラを包み込みました

 

          

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