人生の目的は音楽だ!toraのブログ

クラシック・コンサートを聴いた感想、映画を観た感想、お薦め本等について毎日、その翌日朝に書き綴っています。

高木綾子フルート・リサイタルを聴く~浜離宮ランチタイムコンサート/10月~12月のチケットを購入する

2016年06月30日 07時25分00秒 | 日記

30日(水)。信じがたいことですが、今年も今日で前半の6か月が終わります。最近つくづく思うのは月日の流れの速さです ということで、わが家に来てから641日目を迎え、何やら不思議な匂いにつられてバンドエイドの匂いを嗅ぐモコタロです

 

          

            ご主人さまが これをかかとに貼っていたな 靴ヅレかな?

 

  閑話休題  

 

昨日、築地の浜離宮朝日ホールで「浜離宮ランチタイムコンサート~高木綾子フルート・リサイタル」を聴きました プログラムは①モーツアルト「ロンド ニ長調K.Anh.184」、②同「アンダンテ ハ長調K.315」、③同「フルート四重奏曲第1番ニ長調K.285」(ピアノ伴奏版)、④ドップラー「バラキエの歌」、⑤バルトーク「ハンガリー農民組曲」。ピアノ伴奏は坂野伊都子です

 

          

 

自席は最後列最左端(今回で最後)、会場は満席です 高木綾子がセンスの良いシックなステージ衣装で登場 さっそく第1曲目のモーツアルト「ロンド ニ長調K.Anh.184」の演奏に入ります モーツアルトは1777年9月から79年1月にかけて母親と二人で求職活動のためマンハイム・パリ旅行に出ましたが目的は達成できませんでした。その後、休暇で1780年11月からミュンヘンに滞在していた1781年3月、折しもミュンヘンに滞在中のザルツブルクのコロレド大司教に呼び出されたのです 大司教は貴族仲間にモーツアルトを召し抱えていることを自慢したくて、彼にいくつかの小品を作曲するよう命じました。その時に作曲した曲の一つが「ヴァイオリンとオーケストラのためのロンド ハ長調K.373」でした。それをフルートとオーケストラ用に編曲したのがこの「ロンド ニ長調」です

高木綾子の軽やかなフルートの音色が会場に響き渡ります まるでオペラのアリアを聴いているような感覚を覚えます

次の曲に移る前に、彼女はマイクを持ってこの日のプログラムについて解説します

「今日のコンサートは前半と後半でテーマが違います。前半はモーツアルトの曲ですが、すべて”コンクールの課題曲”です 今演奏した『ロンド ニ長調』はミュンヘン国際コンクールの第一次予選の時の課題曲でした。次に演奏する『アンダンテ』は別のコンクールの課題曲でした。そして3曲目の『フルート協奏曲第1番ニ長調』はランパル・コンクールの時の本選の課題曲でした

そして、「アンダンテ ハ長調K.315」の演奏に入ります。モーツアルトはマンハイム・パリ旅行中、マンハイムでフルート愛好家の医師ド・ジャンからフルートの作品を数曲注文を受け、2曲のフルート協奏曲と3曲のフルート四重奏曲を作曲しました このうちフルート協奏曲第1番の第2楽章「アダージョ・マ・ノン・トロッポ」が、ド・ジャンが演奏するには高度だったらしく、モーツアルトはそれとは別に第2楽章を作曲しました。それがこの「アンダンテ」です

元々の第2楽章もこの「アンダンテ」も優雅な音楽には変わりありません この曲は、フルートを吹く者なら一度は演奏したいと思う曲です

3曲目は「フルート四重奏曲第1番ニ長調」です 先に紹介したド・ジャンからの依頼で書いた曲の一つです。とにかく明るくスカッとするような曲想です 高木綾子のような名手で聴くと、弦楽合奏によるバックでなくピアノによる伴奏でも何の不満も抱きません

この曲の第2楽章から第3楽章に間断なく移るところは、誰かがエッセイで「泣いていたと思ったら、もう笑っている」と評した有名なパッセージですね 高木綾子の演奏は見事でした

 

          

 

第2部の冒頭、高木綾子はダークブルーの衣装に”お色直し”して登場 後半のプログラムについて解説します

「後半のテーマはハンガリーです。1曲目はドップラーの『バラキエの歌』ですが、変奏曲の形をとっています モーツアルトは優雅な感じでしたが、この曲は、どちらかと言うと、土くさい感じのする曲想です 2曲目のバルトーク『ハンガリー農民組曲』は、現在ではルーマニアの一部になっているハンガリー東部の街で生まれたバルトークが、民謡の採集を行い、それを曲に取り入れたものの一例です。最初の4曲は悲しい旋律です。5曲目はスケルツォです。曲にはそれぞれ詩が付いていますが、この曲には『奥さんは、きれい好き。月に1度しかお風呂に入らない』なんていう詩が付いています 第6曲目以降には、コオロギが蠅にプロポーズするという曲も入っています お楽しみください」 

そしてドップラー「バラキエの歌」の演奏に入ります ドップラーはポーランド系ハンガリー人のフルート奏者・作曲家です。自らフルートを演奏したこともあって、この曲は超絶技巧曲です。高木綾子は何の苦もなく吹き切ります

最後のバルトーク「ハンガリー農民組曲」は、解説にあった通りの曲想で、変化に富んだフルートの音色が楽しめました

アンコールにサン=サーンスの「ロマンス」を演奏、大きな拍手を受けました

 

          

 

  も一度、閑話休題  

 

プログラムと一緒に渡されたチラシの中に、10月以降の「ランチタイムコンサート」の会場先行販売のお知らせが入っていました

 

          

 

手帳で予定を確かめると3公演とも日程が空いていた(10月20日は夕方、渡辺玲子のレクチャー・コンサートがあるけれど、時間がバッティングしない)ので、セット券(3枚=8,000円)を購入しました 座席は初めて2階のバルコニー席を選びました。浜離宮朝日ホールのバルコニー席は1列だけなのでトラブルが生じないと思われます これが大きなホール(例えば東京オペラシティコンサートホール等)だと、2列目、3列目があるので、身体を前倒しして舞台を観たりすると、2~3列目の席から苦情が来る可能性が高くなります

ねらい目は10月20日の上原彩子のピアノ・リサイタルです 11月29日の藤原真理のチェロ・リサイタルは、ショスタコーヴィチの「チェロ・ソナタ」が聴きものかも 12月の上野耕平のサクソフォンは未知数ですが、たまにはサクソフォンも面白いかも知れません

 

          

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相場英雄著「共震」を読む~被災地の現状を訴える

2016年06月29日 07時32分06秒 | 日記

29日(火)。昨日は午前中、マンション管理組合の理事会関係の書類を整理しました 管理会社から届く毎月の業務報告書、電気設備やエレベーター等の定期点検報告書、理事会配布資料、工事関係見積書、工事完成報告書など、2年分の資料を分類してファイルしました まだ次期の理事長は決まっていませんが、いつでも引き継ぎが出来るようにしておきたいと思って重い腰を上げました。たっぷり2時間はかかりました

午後は、リサイクル業者が来て、要らなくなった2台のテレビを査定してくれましたが、2台とも引き取れないとのことで、お互いに徒労に終わりました ブラウン管テレビは、まだ東南アジア地域で売れるそうです

ということで、わが家に来てから640日目を迎え、何やら独り言をつぶやいているモコタロです

 

          

            昨日ご主人は珍しく家に居たから  2000歩も歩いてないんじゃないかな?

 

  閑話休題  

 

昨日、夕食に「鶏もも肉のほったらかし焼き」、「生野菜とサーモンのサラダ」、「ホウレン草のお浸し」を作りました 「ほったらかし」は得意です

 

          

 

  も一度、閑話休題  

 

相場英雄著「共震」を読み終わりました 相場英雄は1967年新潟県生まれ。2005年に「デフォルト」で第2回ダイヤモンド経済小説大賞を受賞しデビューしました このブログでは狂牛病を扱った2012年刊行の「震える牛」をご紹介しました

 

          

 

大和新聞東京本社の記者・宮沢賢一郎は、東日本大震災後、自ら志願して東北総局に復帰し、コラム「ここで生きる」を立ち上げ、被災地の取材を続けていた ある日、東松島市の仮設住宅で他殺死体が発見されたという一報が入る 被害者は宮城県庁震災復興企画部の特命課長・早坂順也だった。彼は県の縦割り社会を乗り越えて復興に尽力してきた人物だった 早坂は亡くなる直前まで各被災地の避難所の名簿を照合していたという。彼は何のために照合していたのか? ある人物が犯行現場から立ち去る”足音”を聞いたことから犯人が特定されていく

この作品は、ミステリーには違いありませんが、東北の被災地の現状をふんだんに盛り込んでいます 震災に対する復興予算にたかる悪徳企業や、「復興」の名目で事業を請け負い補助金を受け取る組織を告発していきます。読んでいると、これはドキュメンタリーではないか、と思えてきます

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立川談四楼著「シャレのち曇り」を読む/ジェフリー・アーチャー「剣より強し(上・下巻)」他を買う

2016年06月28日 07時28分31秒 | 日記

28日(火)。昨日は午前中、池袋まで歩いてJ書店で本を買い、昼食をとって帰ってきました 午後、あまりにも天気が良かったので、久しぶりに窓ガラスの掃除をしました 問題は網戸ですが、ジェット水流で汚れを落としました 水道の蛇口とホース側の器具とがピッタリと合わず、いつも水漏れを覚悟しながら操作しているのですが、今回は比較的スムーズにいきました。普段の心がけが良いからだと思います ジェット水流は気持ちがいいですね

ということで、わが家に来てから639日目を迎え、何やらオヤツみたいな物体を発見し、ぬか喜びするモコタロです

 

          

                オヤツみたいな物体を発見!

 

          

             な~んだ ぼくには食べられないんだってさ

 

  閑話休題  

 

立川談四楼著「シャレのち曇り」(PHP文芸文庫)を読み終わりました 立川談四楼は言うまでもなく、立川談志師匠の弟子です 

 

          

 

この小説を書こうと思った動機について彼は次のように語っています

「弟子入りは就職、つまり入社ではありません。学校に入ること、つまり入学でもありません。あくまでも入門です 修業、徒弟制といい、師弟とは実に不思議な関係です。入門以来、ずっとその不思議を考えてきました。だからこそ、小説のテーマは師弟なのです 自分と師匠、兄弟弟子と師匠、一門とは何か。他の一門における師弟の関係、それらを組み合わせ、一遍の小説を書こうと目論んだのです

物語は「昭和57年、談四楼は落ち込んでいた」から始まります 師匠・立川談志から、談四楼の弟弟子の のらくが新打になったと聞かされたのです。真打昇進試験を受けますが、落とされたわけです 後輩格の春風亭小朝にも先を越され、意気消沈していたのです

この時は「ガッテン!」の立川志の輔は入門直後、名作「赤めだか」を書いた立川談春も”少年時代”でした この小説は、立川談志が落語協会から脱会し、新たに立川流を立ち上げた頃の立川一門の日常生活を生き生きと描いた私小説です これを読むと、師匠の立川談志が相当の利己主義者でありながらも弟子思いの師匠であることや、談四楼が何と芝の増上寺を借り切って”生前葬”の形を取って新打披露パーティーを挙行したことなどが面白可笑しく書かれています

談春の「赤めだか」も超面白かったですが、この「シャレのち曇り」も負けず劣らず面白い小説です 刺激のない日常生活に疲れを感じている人にお薦めします

 

  最後の、閑話休題 

 

本を5冊買いました 1冊目と2冊目はジェフリー・アーチャー著「剣より強し(上巻・下巻)」(新潮文庫)です これは英国のベストセラー作家ジェフリー・アーチャーの「クリフトン年代記 第5部」です ちなみに、第1部は「時のみぞ知る(上・下巻)」、第2部「死もまた我らなり(上・下巻)」、第3部「裁きの鐘は(上・下巻)」、第4部「追風に帆を上げよ(上・下巻)」です。このシリーズは次の発売が待ち遠しいほど面白い小説です

 

          

 

          

 

3冊目は中山七里著「ヒポクラテスの誓い」(祥伝社文庫)です 中山七里の作品は、デビュー作「さよならドビュッシー」をはじめとして、このブログでも数多くご紹介してきましたね

 

          

 

4冊目は斎藤美奈子著「名作うしろ読み」(中公文庫)です この人は2002年に「文章読本さん江」で第1回小林秀雄賞を受賞したことで有名になりました

 

          

 

5冊目は米原万里著「他諺の空似~ことわざ人類学」(中公文庫)です この人はロシア語の通訳として世界的に活躍した人です 本の帯に書かれた「心に効く、愛と毒舌」がいいですね

 

          

 

いずれも、もう読み終わったけれど紹介していない本を紹介し終わったら紹介しようと思います

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ルスティオー二+フランチェスカ・デゴ+東響でショスタコーヴィチ「ヴァイオリン協奏曲」他を聴く

2016年06月27日 07時27分11秒 | 日記

27日(月)。わが家に来てから638日目を迎え、メデュースの輪に取り囲まれ身動きできなくなったモコタロです

 

          

            どこがメデュースの輪だい? ただの電源コードにカバーしただけじゃん

 

  閑話休題  

 

昨日、サントリーホールで東京交響楽団の第641回定期演奏会を聴きました プログラムは①グリンカ「歌劇”ルスランとリュドミラ”序曲」、②ショスタコーヴィチ「ヴァイオリン協奏曲第1番」、③チャイコフスキー「交響曲第6番ロ短調”悲愴”」というオール・ロシア・プログラムです ②のヴァイオリン独奏はフランチェスカ・デゴ、指揮はダニエーレ・ルスティオー二です

 

          

 

今回指揮をとるダニエル・ルスティオー二は1983年イタリア・ミラノ出身の俊英(33歳)です 2014年からトスカーナ管弦楽団の指揮者を務めていますが、2017-18シーズンからリヨン国立歌劇場首席指揮者に就任するとのことです  これで疑問の一つが解消しました。先日のブログで「2018年9月から大野和士氏が新国立劇場の芸術監督に就任することが決まったが、リヨン国立歌劇場首席指揮者を兼任するのかどうか不明である」と書きましたが、ルスティオー二が後を継ぐことになったわけです 大野氏の新国立劇場の芸術監督の受諾はこれが一番大きな動機でしょう

プログラムの中にルスティオー二へのインタビュー記事が載っていますが、その中で、彼はイタリアの若手”三羽烏”の一人として紹介されています 他の2人はボローニャ市立劇場の首席指揮者ミケーレ・マリオッティ(36歳)と、東京フィルでもタクトをとるアンドレア・バッティストーニ(28歳)です

コンマスの水谷晃以下東響のメンバーが配置に着きます。オーボエの合図でチューニングが行われますが、久しぶりに首席・荒絵理子さんの姿を見ました

1曲目のグリンカの歌劇「ルスランとリュドミラ」序曲は、プーシキンの詩に基づく古代ロシアを舞台にしたオペラの序曲ですが、今では序曲だけが有名です この曲の一番の魅力はスピード感です いかに速く演奏するかが指揮者とオケに課せられています。ロシアの巨匠ムラヴィンスキーの演奏スピードを超えることが出来るかどうかが関心の的です 曲自体には大きな魅力はありません

ルスティオー二は期待通りのスピードで東響を煽り立て、全曲を走り抜けました ルスティオー二は演奏後、ティンパ二奏者を立たせていましたが、大活躍でしたね

2曲目はショスタコービチ「ヴァイオリン協奏曲第1番イ短調」です。ソリストのフランチェスカ・デゴは1989年イタリア・レッコ出身の27歳です。相当の長身で、ご主人のルスティオー二よりも背が高く、美人です。黒と白の横ストライプのエレガントなロングドレスで登場します

ショスタコーヴィチはこの曲を1947年6月~48年3月に作曲しましたが、ちょうどこの頃は、スターリン体制の中心人物ジダーノフの検閲が厳しかった時期で、ショスタコーヴィチはこの曲を公表することが出来ませんでした 1953年にスターリンが死去した2年後の1955年10月、友人のヴァイオリニスト、ダヴィッド・オイストラフの独奏で初演に漕ぎ着けました 協奏曲としては珍しい4楽章から成ります

第1楽章は「ノクターン」と名付けられています。その名の通り、静寂に満ちた音楽で、独奏ヴァイオリンが何かを独白しているような曲想です 『静寂』を音で表したらこのような音楽になるのではないか、と思うほどです プログラムのプロフィールによると、デゴの操るヴァイオリンは1734年製のグァルネリ・デル・ジェスと1697年製のフランチェスコ・ルジェーリの2挺ですが、どちらで弾いているにせよ、弱音にも関わらず、明確な音が会場の隅々まで飛んでいきます

第2楽章はスケルツォです。この楽章ではヴァイオリンとオケとの丁々発止のやり取りが聴きものです この曲の一番の聴きどころは第3楽章のパッサカリアでしょう。とくに最後に置かれたカデンツァは、デゴの独奏ヴァイオリンが、咳払い一つない静寂の会場に美しく響き渡ります 集中力に満ちた素晴らしい演奏でした 続いて第4楽章に入りますが、この楽章はショスタコーヴィチ得意のアイロニカルな曲想で、軽妙洒脱な音楽です。デゴとオケとのフィナーレは圧倒的でした

満場の拍手とブラボーに、デゴはアンコールに応え、イザイの「無伴奏ヴァイオリンソナタ第3番『バラード』(全1楽章)」を超絶技巧により演奏しました それでも鳴り止まない拍手に2曲目、パガニーニの「24のカプリース」から第16番ト短調を鮮やかに演奏しました

ロングドレスの裾をたくし上げて悠々と引き上げていくデゴの後を、ドレスの裾を踏まないようについていくルスティオー二が何ともユーモラスで、いいカップルだな、と思いました

 

          

 

休憩後はチャイコフスキー「交響曲第6番ロ短調”悲愴”」です この曲は1893年に作曲されました。1891年時点では「人生」というタイトルが付いていたといいます。その後「悲愴」になったわけですが、チャイコフスキーにとっては「人生=悲愴」で、どちらでも同じ意味だったのかも知れません 初演前には、同性愛の対象であることを認めているコンスタンチン大公に「魂のすべてをかけた」と伝えているので、この作品を「生涯の総決算」と位置付けていたと思われます したがって、それまでの交響曲のように、大団円で終わるようなフィナーレは書けなかったのでしょう

プログラム前半ではタクトを振っていたルスティオー二ですが、チャイコフスキーのこの曲ではタクトを持ちません あたかも両手で音を紡ぎ出すように音楽作りを進めます

第1楽章の冒頭、ファゴットが 憂鬱を音にしたような暗いメロディーを奏でますが、福士マリ子の演奏は素晴らしかったです

第2楽章は、いかにもチャイコフスキーらしいダンスでも踊れるようなメロディーです そして、第3楽章は”行進曲”です。タイトルの”悲愴”はいったいどこにいったのか、と疑問を持つようなあっけらかんとした熱狂が続きます オーケストラの定期演奏会でないコンサートでは、しばしば、この楽章が終わるや否や大きな拍手が起こりますが、そこは東響の定期公演です。シーンとしています

そして、第4楽章フィナーレに移ります。「アダージョ・ラメントーソ」です。この楽章におけるルスティオー二は、気迫の迫る指揮ぶりで、ラメントーソ(哀悼)を念じる彼の呼吸がそのままオケに反映して、オケから深い息づかいが聴こえてきます。東響は渾身の演奏を展開します

最後の音が鳴り終わっても、誰一人拍手をするも者はいません。ルスティオー二の両手が降ろされると、会場のそこかしこからブラボーがかかり、大きな拍手がステージに押し寄せました

ルスティオー二は指揮台から降りて、コンマスの水谷と握手、そしてハグを求めます 指揮者がコンマスにハグを求めるのは極めて珍しい光景です。よほど会心の出来だったのでしょう オケの面々を立たせ、何度もガッツポーズを作っていました

ルスティオー二の東響デビューはかくして大成功裏に終わりました

ところで、さきの「三羽烏」の話に戻りますが、マリオッティはロッシーニやベッリーニなどオペラを、バッティストーニもやはりヴェルディやプッチーニなどオペラを中心に振っているようですが、このルスティオー二は、もちろんオペラも振るものの、チャイコフスキーをはじめとするロシアの音楽を積極的に取り上げているところが他の2人と違うようです

その点、彼はインタビューの中で、

「2008年から09年までの2年間、サンクト・ペテルブルクのミハイロフスキー劇場の首席指揮者を務めたが、近くにテミルカーノフ率いるサンクトペテルブルク・フィルがあった。彼らの演奏を多く聴く中で、自分自身がロシアの交響曲を数多く指揮するようになった

と語っています。3人の若きイタリア人指揮者の中で一番レパートリーが広い指揮者かもしれません まだ33歳と若いので、これからの活躍が楽しみです

 

          

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キュッヒル・クァルテットの「シューベルティアーデⅢ」を聴く~四重奏断章、第9番、弦楽五重奏曲

2016年06月26日 08時49分16秒 | 日記

26日(日)。わが家に来てから637日目を迎え、廊下の本棚の前でくつろぐモコタロです

 

          

            みなさん 本を読みましょうね! ぼくはムリだけど

 

  閑話休題  

 

昨夕、サントリーホール「ブルーローズ」で、キュッヒル・クァルテットの「シューベルティアーデⅢ」を聴きました  プログラムはシューベルトの①弦楽四重奏曲第12番ハ短調「四重奏断章」、②同第9番ト短調、③弦楽五重奏曲ハ長調です 演奏は第1ヴァイオリン=ライナー・キュッヒル、第2ヴァイオリン=ダニエル・フロシャウアー、ヴィオラ=ハインリヒ・コル、チェロ=ロベルト・ノーチから成るキュッヒル・クァルテットに、③ではチェロの堤剛が加わります

 

          

 

自席はC4列10番、センターブロック右から3つ目です

1曲目は弦楽四重奏曲第12番ハ短調「四重奏断章」です これは未完の作品で、第1楽章の全部と第2楽章のはじめの部分まで書いたまま放棄されました 作曲は1820年12月です。この作品は未完ながらシューベルトの弦楽四重奏曲の中では重要な位置を占めています この曲以降、それまでの家庭用の枠から大きく飛躍し、シューベルトの個性を発揮するようになったからです 残念ながら、この曲は長い間演奏されず、シューベルトの死後40年ほど経った1867年になってやっと初演されました

この曲は、この日の後半で演奏される「弦楽五重奏曲」とともに、ウィーン・フィルのメンバーから成る「ヴェラー弦楽四重奏団」のCD(1969~1970年録音)で予習しておきました

 

          

 

4人のメンバーが登場し、配置に着きます。曲は「アレグロ・アッサイ」です。冒頭、第1ヴァイオリンから第2ヴァイオリン、ヴィオラ、そしてチェロへとフーガの様にトレモロが刻まれます。何かが起こりそうな曲想です。彼自身の転換点にある曲だけに完成しなかったのが残念です

2曲目は第9番ト短調です シューベルトが18歳の時の1815年に、家庭音楽会(仲間達から「シューベルティアーデ」と呼ばれた)で演奏されることを前提に書かれました シューベルトの書いた初めての本格的な短調の作品です

この曲は、ウィーン・フィルのメンバーから成る「ウィーン・コンツェルトハウス四重奏団」のCD(1953年録音)で予習しておきました

 

          

 

第1楽章は4人の力強い総奏で入りますが、曲を聴く限り、極めて”モーツアルト的”です 第9番あたりではまだモーツアルトやベートーヴェンの 曲から影響を受けていたのではないかと思いますが、短調特有の魅力に溢れています

休憩時間にロビーの片隅にあるショップで絵ハガキなどを冷やかしていると、同年配ぐらいの見知らぬご婦人が目の前に来て「ちょっと失礼」と言って、手に持ったネクタイを私のシャツに合わせようとしました 私は濃紺のシャツにノーネクタイだったので、たぶん、彼女は濃紺のシャツに合うネクタイを誰かにプレゼントしようとして手近なモデルを探していたのだと思います 当方は、あまりの突然の出来事に、しばらく固まっていたと思います どう対処したらよいか分からないので、あいまいな表情のままその場を立ち去ったと思います ジョークで「プレゼントありがとうございます」とでも返せば良かったのでしょうか? 私は根が真面目なのでジョークは言えません コンサートに来るといろいろな出来事に遭遇します

 

          

 

休憩後は「弦楽五重奏曲ハ長調」です この曲は、1828年8月から9月にかけて作曲されましたが、完成して2か月余り後の11月19日にシューベルトは世を去っています 初演はシューベルトの死後、1850年9月にウィーンで行われました

モーツアルトやベートーヴェンの弦楽五重奏曲はヴァイオリン、ヴィオラが各2本とチェロ1本の組み合わせでしたが、シューベルトのそれはヴィオラの代わりにチェロが2本となっているのが特徴です チェロを2本としたことにより、低音部に厚みが出て規模としては交響曲のような様相を呈しています

キュッヒル・クァルテットの4人とチェロの堤剛氏が登場、さっそく第1楽章に入ります この曲は4つの楽章からなりますが、実に50分以上かかります。まるで交響曲です

この曲を聴いて特にいいなと思うのは第2楽章「アダージョ」と第3楽章「スケルツォ」です 第2楽章「アダージョ」はベートーヴェンの緩徐楽章に通じる美しさがあります そして第3楽章「スケルツォ」は、ブルックナーの先駆けではないかと思わせる勇壮な音楽です

全曲を通して、チェロが1本加わったことにより曲に厚みが増したと感じました 

終演後、キュッヒル氏が堤氏に握手を求め、他のメンバーも次々と握手を求めました 翌日(今日)キュッヒル・クァルテットの4人も堤氏もチェンバーミュージック・ガーデンの「フィナーレ」公演に出場するので(それに、お歳ということもあって)、アンコールはありませんでした 残念ながら私は、今日は東京交響楽団の定期演奏会を同じサントリーホールの大ホールの方で聴くのでチェンバーミュージック・ガーデンの「フィナーレ」は聴けません

これで私にとっての「サントリーホール・チェンバーミュージック・ガーデン2016」も終わりです 今年は全部で15公演聴きました

サントリーホールは来年2月から8月まで大規模修繕を行うのに伴い、来年の「チェンバーミュージック・ガーデン」は9月に10日間に短縮して開催するとのことです そうであれば、今から来年の9月は他のコンサートを出来るだけ入れないように心掛けなければならないと決意しています

 

          

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キュッヒル・クァルテットの「シューベルト・アラカルト」を聴く/読売日響でブルックナー「交響曲第3番」他を聴く

2016年06月25日 08時30分14秒 | 日記

25日(土)。わが家に来てから636日目を迎え、昨日の夕刊の見出しに驚きを隠せないモコタロです

 

          

           予想外な結果になってしまったなぁ 英国は大丈夫かな?

 

  閑話休題  

 

昨日午前11時から、サントリーホール「ブルーローズ」で「ENJOY!ウィークエンド~キュッヒル・クァルテットのシューベルト・アラカルト」を聴きました プログラムはシューベルトの①弦楽四重奏曲第13番イ短調”ロザムンデ”から第1楽章、②弦楽四重奏曲第14番ニ短調”死と乙女”から第2楽章、③弦楽四重奏曲第15番ト長調から第3楽章、第4楽章です このプログラミングは絶妙です 3つの弦楽四重奏曲から聴きどころの楽章を4つ集め、あたかも新しい弦楽四重奏曲を演奏するかのように組み立て直しています

出演は、第1ヴァイオリン=ライナー・キュッヒル、第2ヴァイオリン=ダニエル・フロシャウアー、ヴィオラ=ハインリヒ・コル、チェロ=ロベルト・ノーチです

 

          

 

このシリーズは無料ドリンク券がもらえるのでラッキーです 喉が渇いていたので開演前にホワイエでアイスコーヒーを飲みながらプログラム解説を読みました

自席はC2列12番、センターブロック右通路側です。また前方の席に戻りました やっぱり室内楽は前方の席で聴くのがベストだと思います

この日のプログラムは、すでに「シューベルティアーデ」ⅠとⅡで聴いた曲なので、言ってみれば「復習」です 第1楽章は第13番「ロザムンデ」クァルテットの第1楽章「アレグロ・マ・ノン・トロッポ」です。キュッヒル氏による美しくも悲しい旋律が心を切なくします

第2楽章は第14番「死と乙女」の第2楽章「アンダンテ・コン・モト」です この曲も悲痛なまでに悲しくも美しい旋律が執拗に繰り返されます まるで葬送行進曲です。明らかに死を意識した音楽です

第3楽章と第4楽章は第15番ト長調の第3楽章「スケルツォ:アレグロ・ヴィヴァーチェ」、第4楽章「アレグロ・アッサイ」です 第3楽章の各楽器同士の掛け合いは楽しそうです それにしても、どうしてシューベルトという人は、同じメロディーを何度も何度も繰り返し演奏させるのか、と首を傾げてしまいます 第4楽章も基本は明るい曲なのですが、どこか陰りを感じさせます。これはシューベルト特有の曲想なのかも知れません

 

          

 

会場いっぱいの拍手に4人はアンコールに応えました 主旋律が流れてきて、一瞬耳を疑いました 何とチャイコフスキーの「弦楽セレナード」から第2楽章だったのです てっきり、ウィーンにゆかりの音楽かと思っていた私には驚きのアンコールでした

 

          

 

  も一度、閑話休題  

 

昨日午後7時から、サントリーホールで読売日響の第559回定期演奏会を聴きました プログラムは①ベルリオーズ「序曲”宗教裁判官”」、②デュティユー「チェロ協奏曲”遥かなる遠い世界”」、③ブルックナー「交響曲第3番ニ短調”ワーグナー”」です ②のチェロ独奏はジャン=ギアン・ケラス、指揮はシルヴァン・カンブルランです

 

          

 

この日のコンマスは長原幸太です。オケは読響の通常スタイル、左から第1ヴァイオリン、第2ヴァイオリン、チェロ、ヴィオラ、その後ろにコントラバスという態勢をとります

1曲目のベルリオーズ「序曲『宗教裁判官』作品3」は、未完の同名オペラのための序曲ですが、作品番号が表すように初期の作品です オペラの舞台は中世ドイツで、ある女性が婚約者を秘密法廷から救い出す物語です。このオペラは完成こそしませんでしたが、曲を聴く限り、後の「幻想交響曲」にいくつかの旋律が活かされています この作品で すでにドラマティックな曲作りが聴かれる点で、まさにベルリオーズの管弦楽の原点と言うべき作品です

2曲目のフランスの作曲家デュティユー「遥かなる遠い世界」は、ボードレールの韻文詩集『悪の華』に触発されて作曲されました タイトルは同書第23篇『髪』から採られています。デュティユーは1916年生まれなので今年が生誕100年を迎えました。彼は2013年まで生きていたので ごく最近の人なのですね

この「遥かなる遠い世界」は巨匠ロストロポーヴィチの委嘱により作曲されました 5楽章構成ですが、それぞれの楽章にボードレールの詩のタイトルが記されています。第1楽章「謎」、第2楽章「眼差し」、第3楽章「うねり」、第4楽章「鏡」、第5楽章「賛歌」です。全体は単一楽章のように切れ目なく演奏されます

1967年カナダ・モントリオール生まれのジャン=ギアン・ケラスがカンブルランとともに登場します カンブルランのタクトで第1楽章が厳かに始まります。全体を通して、チェロの静かなメロディーを中心とする、まさに「遥かなる遠い世界」を地でいくような曲想です 第3楽章「うねり」と最後の第5楽章「賛歌」だけがエネルギッシュに演奏されるくらいです

ケラスは弱音を主体として抑制気味にチェロを自由自在に操って美しいメロディーを紡いでいきます ものすごい集中力を見せました

圧倒的な拍手とブラボーに、ケラスは拙い日本語で「どうもありがとうございました。アンコールはプレリュードです」と言って、バッハの無伴奏チェロ組曲第1番から「プレリュード」を軽快に弾きました 休憩時にロビーの掲示を見ると「アンコール曲 バッハ 無伴奏チェロ組曲第1番」と書かれていたので「おやおや!」と思ったのですが、誰かが注意したのでしょう。5分後に見ると、その下に「プレリュード」と書き足してありました

 

          

 

休憩後はブルックナー「交響曲第3番ニ短調”ワーグナー”」(第3稿)です 1874年5月9日、ブルックナーは憧れのワーグナーに交響曲第3番を献呈します 彼は表紙の図案について、ワーグナーの名前は豪華に、自分の名前は控えめにと注文したそうです いかにも素朴で控えめな(もっと言えば、気が弱い田舎者の)ブルックナーらしいエピソードです

さて、プログラムの解説を見て、オヤッと思いました そこには「交響曲第3案ニ短調『ワーグナー』(第3稿)と書かれていました。実は、上のチラシには『第2稿』と書かれていたのです 解説によると「第1稿にはワーグナーの作品からの引用が含まれていたが、第2稿では削除され、第3稿ではさらに終楽章の再現部が大幅に削除された」と書かれています。いつの時点でカンブランが第2稿から第3稿に変更したのか分かりませんが、ブルックナー・オタクでない私にとっては、さほど大きな問題ではありません 要はブルックナーの交響曲を生で聴くことに意義があるのです

オケがスタンバイしますが、ワーグナーの交響曲にしては管・打楽器が少ないように思われます フルート、オーボエ、クラリネット、ファゴット=各2、ホルン4、トランペット3、トロンボーン3、ティンパ二1といった編成です この「交響曲第3番」は後期の交響曲ほど楽器編成が大きくないことに気付かされます

ところが、読響の演奏でこの曲を聴くと、管楽器が上記の編成にも関わらず、とてつもない迫力で迫ってくるのです 弦楽器群の力演と相まって、まるでマーラーの大管弦楽曲を演奏するかのような大迫力です いかに読響の一人一人の演奏者が優れているかが分かります

プログラムに首席フルート奏者の倉田優さんのインタビューが載っていますが、彼女はブルックナーの交響曲第3番の演奏について次のように語っています

「木管のユニゾンも多く、互いに音色やニュアンスを合わせるところが難しいし、面白いです 魅力を感じるのは、オーボエの色が強いとか、フルートが目立ちすぎるとかではなく、木管セクションが一つの楽器の音色を作るようにブレンドすることです 何の楽器が混ざっているのか分からないほどうまく溶け合った時、幸せを感じます

まさに倉田さんが書かれていたような演奏を、この日の読響は実現しました 素晴らしいオーケストラだと思います

常任指揮者のカンブルランについては、これまで読響との相性がいい指揮者だという認識はありましたが、とりわけ大きな魅力を感じるところはありませんでした しかし、この日の3曲の指揮を見て 聴いて感じたのは、カンブルランは音楽の自然の流れを作るのが非常にうまいということです。演奏する側も演奏し易いのではないかと思います

そういう意味で、今回の定期演奏会は読響メンバーの一人一人の実力と、カンブルランの魅力を再発見したコンサートだったと言えます

 

          

 

さて、上記の写真(読響 マンスリー・オーケストラ6月号)に、読響事務局のMさんが「コンサートホールの今」と題するリポートを書いています。それによると

「サントリーホールは2017年2月6日から8月31日までの約7か月間、休館して大掛かりな修繕に入る 改修ではユニバーサル・デザイン(誰にも使いやすい設計)への対応を広げ、2階の客席へ正面玄関から上がれるエレベーターの新設や、女性用トイレの増設を計画 一方、音響特性は変わらないように配慮し、例えば座席の張り替え布地は現在と同じ特別なオーストリア製のものを発注したという

と紹介しています 約10年に一度の大規模修繕です。休館は止むを得ません しかし、どうせ修繕するなら、女性用だけでなく男性用トイレも増設してほしいと思います。絶対数が足りません 休憩時間の行列を見れば分かるはずです。トイレ問題ですが、水に流せません

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キュッヒル・クァルテット「シューベルティアーデⅡ」を聴く/藝大モーニングコンサートを聴く

2016年06月24日 07時35分31秒 | 日記

24日(金)。わが家に来てから635日目を迎え、英国のEU離脱投票結果が気になりテレビのニュースを見つめるモコタロです

 

          

                今日の午後には結果が分かるそうだよ

 

  閑話休題  

 

昨日午前11時から、上野の東京藝大奏楽堂で第6回モーニング・コンサートを聴きました プログラムは①フンメル「ファゴット協奏曲」、②バルトーク「ヴィオラ協奏曲」です ①のファゴット独奏は古谷挙一、②のヴィオラ独奏は有田朋央。指揮は東京シティ・フィル常任指揮者・高関健、管弦楽は藝大フィルハーモニアです

 

          

 

整理番号順の入場のため、小雨が降る中を順番がくるまで待ちました 私の番号は267番。それでも1階14列24番、センターブロック右通路側を押さえることができました

オケの態勢を見てオヤッと思いました いつもは左から第1ヴァイオリン、第2ヴァイオリン、チェロ、ヴィオラ、その後ろにコントラバスという配置なのですが、この日は左奥にコントラバス、前に第1ヴァイオリン、チェロ、ヴィオラ、第2ヴァイオリンという対向配置をとっています これは指揮者が高関健だから、と納得しました

1曲目はフンメル「ファゴット協奏曲」です フンメルは1778年生まれ、ハンガリー王国(現スロヴァキア)出身の作曲家・ピアニストです 彼は何と8歳の時にモーツアルトに2年間住み込みでピアノを習い、ハイドンからオルガンを学んでいます この曲は、ハンガリー王国のエステルハージ家の宮廷楽長として活躍している27歳の時に作曲されました。3つの楽章から成ります

藝大4年在学中で千葉県出身の古谷挙一君が長いファゴットを抱えて登場します 高関健のタクトで第1楽章が開始されます。ヴァイオリンが奏でる流れるような旋律を聴いていると、「まるでモーツアルトを聴いているようだ」と思えてきます。「モーツアルトの新たなファゴット協奏曲を発見」とか言われて、この曲を聴かされたら、本当にモーツアルトが作曲した作品と勘違いしそうな曲想です オーケストラによるかなり長い前奏に続いてファゴットが軽快に登場します 第2楽章から第3楽章へは続けて演奏されますが、こちらもモーツアルト的な曲想です

世に「ファゴット協奏曲」は少ないので、親しみやすいメロディーのフンメルのコンチェルトはもっと演奏されても良いと思います この曲を取り上げてくれた古谷君にお礼を言いたいと思います

オーケストラの規模が拡大して、2曲目のバルトーク「ヴィオラ協奏曲」の演奏に入ります 藝大4年在学中で大阪府出身の有田朋央君が登場します 

バルトークは1881年、ハンガリー生まれの作曲家ですが、晩年の1940年にはナチスの脅威を感じ、アメリカ・ニューヨークに移住します その5年後、ヴィオラの名手ウィリアム・プリムローズの依頼で書かれたのが「ヴィオラ協奏曲」ですが、彼はその年の1945年9月に、未完成のまま死去してしまいました 未完のため補筆完成版が複数ありますが、この日演奏するのは、同じハンガリー出身の作曲家ティポール・シェルイによる補筆完成版です

3つの楽章から成りますが、第1楽章は冒頭、低弦のピツィカートに乗せて独奏ヴィオラがすすり泣くようなメロディーを奏でます 第2楽章の祈る様な音楽に続き、切れ目なく第4楽章に移りますが、ここでは一転、農民の踊りのようなリズミカルな音楽が展開します。フィナーレは独奏ヴィオラとオケとの掛け合いにより華々しく曲を閉じます

この曲を聴くのは初めてでしたが、面白い曲だと思いました 滅多に演奏される機会がない曲が聴けてラッキーでした

 

  も一度、閑話休題  

 

昨日午後7時から、サントリーホール「ブルーローズ」で「キュッヒル・クァルテットのシューベルティアーデⅡ」を聴きました プログラムは①シューベルト「弦楽四重奏曲第14番ニ短調”死と乙女”」、②同「ピアノ五重奏曲イ長調”ます”」です 出演は、第1ヴァイオリン=ライナー・キュッヒル、第2ヴァイオリン=ダニエル・フロシャウワー、ヴィオラ=ハインリヒ・コル、チェロ=ロベルト・ノーチ、②のピアノ=練木繁夫、コントラバス=池松宏です

 

          

 

自席はC7列12番。7列というと「ブルーローズ」ではかなり後方の席ですが、センターブロック通路側席です

1曲目の弦楽四重奏曲第14番ニ短調「死と乙女」は前作・第13番「ロザムンデ」四重奏曲と同じ1824年に作曲されました 「死と乙女」というニックネームは、自作の歌曲「死と乙女」(1817年)を第2楽章の主題の素材に使ったことに由来します 

キュッヒル・クァルテットはウィーン・フィルのメンバーから成りますが、チェロのロベルト・ノーチ氏だけがハンガリー出身で、あとの3人はオーストリア出身です キュッヒル氏は45年間ウィーン・フィルのコンサートマスターを務めてきましたが、いよいよ今年8月に退団することになりました

4人のメンバーが登場し配置に着きます。オヤッと思ったのは、キュッヒル氏のほかに、チェロのノーチ氏も眼鏡を着用しています 前回はキュッヒル氏のみでした

第1楽章冒頭は全員の強奏による第1主題です ベートーヴェンの「ジャジャジャ ジャーン」が”運命の動機”とすれば、「死と乙女」冒頭の「ジャーン ジャジャジャジャ」はシューベルトの”運命の動機”とでも言うべきでしょうか 衝撃的な出だしです。シューベルトは梅毒に罹っていましたが、この曲は発病後に作曲したので、死への恐怖や不安が現れているのかも知れません 第2楽章は歌曲「死と乙女」に基づく主題と変奏ですが、4人の演奏は美しいアンサンブルの極致です 第3楽章のスケルツォを経て、第4楽章のプレストに入ります。タランテラ風の主題によるエネルギーに満ちた音楽です

 

          

 

休憩時間にロビーに出ると、大ホールで開演中のN響定期演奏会も休憩時間で、多くの人でごった返していました ちょうど、大ホールの方からブルーローズの方に、アテンダントのMさんが歩いてきたので、声を掛けました

tora :Mさん、こんにちは。お久しぶりです

Mさん:あら、こんにちは。先日はありがとうございました

tora :キュッヒル・クァルテット良かったですよ

Mさん:それは良かったです その後、ホールには頻繁にいらっしゃっているんですか?

tora :はい。昨日も来ましたし、明日も来ます

Mさん:明日はENJOY!ウィークエンドの公演ですか?

tora :はい、午前はキュッヒル・クァルテットのシューベルトの弦楽四重奏曲の抜粋演奏会です。夕方は大ホールの読響定期演奏会に来ます

Mさん:あら~、そうですか~ (ここで、開演のチャイムが

tora :それじゃ、失礼します

Mさん:はい、お楽しみください。また後ほど

約2週間ぶりでしたが、相変わらず大ホールに行ったりブルーローズに来たりと忙しそうなMさんでした

プログラム後半は「ピアノ五重奏曲イ長調”ます”」です ピアノ五重奏曲というと、通常はピアノ+弦楽四重奏のスタイルが一般的ですが、シューベルトは何故かピアノ、ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ、コントラバスという編成で作曲しました 「ます」というニックネームは、第4楽章の主題に自身の歌曲「ます」(1817年)の旋律を使っていることから付けられたものです また、五重奏だからということではないでしょうが、この曲は5楽章から成ります。演奏者は、第2ヴァイオリンのフロシャウアー氏が抜け、新たにコントラバスの池松宏(都響首席)とピアノの練木繁夫が加わります 

第1楽章が強奏で開始されます。最初から5人のエネルギーが押し寄せてくる感じがします チェロのノーチ氏が時に後ろを振り返って、コントラバスの池松氏に微笑みかけ、池松氏も微笑みを返します 同じ低弦楽器同士で分かり合えるところがあるのでしょう 見ていて実に楽しそうに演奏しています。この楽章に限らず、コントラバスの池松氏の演奏が光ります ピアノの反響版を背にして演奏しているため、低音が会場に響き渡るということもあるでしょうが、今まで何度か生で聴いたこの曲の演奏の中で、今回の池松氏ほど存在感のあるコントラバスは初めてです

第2楽章「アンダンテ」、第3楽章「スケルツォ」を経て、第4楽章「アンダンティーノ」に入ります この楽章が「ます」の主題と5つの変奏と終結部からなる音楽です。弦楽器のみで奏でられる主題に次いでピアノと弦楽器で変奏曲が奏でられますが、キュッヒル氏のヴァイオリンを中心に緻密なアンサンブルが見事です 練木繁夫のピアノも主張すべきところはしっかりと主張しています

この主題を聴くと、中学校時代に昼休みに流れた校内放送を思い出します 「ます」のメロディーに乗って「お昼の時間になりました。給食当番の人は~」というアナウンスが流れていました 「パブロフの犬」ではありませんが、この曲を聴くとお腹がグーッと鳴る時代がしばらく続きました シューベルトも、まさか自分の曲が中学校の給食の時間のBGMとして流されるとは思ってもみなかったでしょう

第4楽章に続いて、民族舞曲風の軽快な音楽の第5楽章に移りますが、演奏者を見ていると楽しそうに演奏しています

こういう超一流の演奏で聴くと、通俗的な「ます」も やはり名曲中の名曲であると再認識させられます

終演後、会場の外に出ようとすると、ちょうどMさんが車椅子対応のため部屋に入ってくるところでした 出入口がごった返していたので、「今日はありがとうございました」とだけ声を掛けました。Mさんは「ありがとうございました。それでは、また」と答えてくれました

前述の通り、今日は午前と夕方の2回、サントリーホールに行きます

 

          

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「ENJOY!ディスカバリーナイト」を聴く/第一生命ホール15周年記念ガラコンサートのチケットを購入

2016年06月23日 07時49分08秒 | 日記

23日(木)。昨日の朝刊各紙を見て、ちょっと驚きました それは、新国立劇場の2018年9月からの芸術監督(オペラ部門)に大野和士氏が選出されたという記事でした。大野氏は現在、フランス国立リヨン歌劇場首席指揮者、スペイン・バルセロナ交響楽団と東京都交響楽団の音楽監督を兼任しています 2年後に現在の3つの指揮者のうちどれかを辞任して新国立劇場の芸術監督を務めるのか、どれも辞めないで4つ掛け持ちするのか、記事だけでは分かりません 「オペラ」という括りで世界的にも通用する日本人の指揮者ということで言えば、大野氏は最適任者だと言えるでしょう それにしても多忙を極めることになりそうです

ということで、わが家に来てから634日目を迎え、この日も仲間たちと戯れるモコタロです

 

          

          英国の投票はどうなるんだろう? ご主人の一番の関心事だよ

 

  閑話休題  

 

チケットを3枚買いました 1枚目は10月30日(日)午後2時から晴海の第一生命ホールで開かれる「トリトン 晴れた海のオーケストラ 第2回演奏会」です オール・モーツアルト・プログラムで①交響曲第35番ニ長調”ハフナー”K.385、②クラリネット協奏曲イ長調K.622、③交響曲第41番ハ長調”ジュピター”K.551です。②のクラリネット独奏はポール・メイエ、指揮者なしでコンマスを都響の矢部達哉が務めます 演奏は在京オケの主要メンバーが中心です

 

          

 

2枚目と3枚目は「第一生命ホール 15周年記念ガラ・コンサート~モーツアルト第1回」と「同・モーツアルト第2回 バボラーク ホルンの室内楽」です 第1回は11月20日(日)午後2時から第一生命ホールで開かれますが、プログラムはモーツアルトの①ピアノ・ソナタK.545、②弦楽四重奏曲K.465から第1・第4楽章ほかで、仲道郁代(P)、佐久間由美子(Fl)、吉野直子(Hp)、矢部達哉(Vn)、川本嘉子(Va) 、横坂源(Vc)、ウェールズ弦楽四重奏団ほかが出演します

第2回は11月26日(土)午後2時から第一生命ホールで開かれますが、プログラムはモーツアルトの①ホルン五重奏曲K.407、②ホルン協奏曲第2番、③同・第3番、④同・4番、⑤ロンドK.514、⑥アレグロK.412です 出演は、ホルンのラデク・バボラークのほか、ヴァイオリン=ダリボル・カルヴァイ、マルティナ・バチョヴァー、ヴィオラ=カレル・ウンターミューラー、チェロ=ハナ・バボラコヴァ、コントラバス=シュテパン・クラトホヴィル(いずれもチェコの演奏家らしい)です

ちなみにS席を単券で買うと2枚で11,000円ですが、セットで買うと10,000円です。ネットで予約を入れる際にはこれを利用しました

 

          

 

  も一度、閑話休題  

 

昨夕、サントリーホール「ブルーローズ」で「ENJOY!ディスカバリーナイト」コンサートを聴きました プログラムは①ヴィヴァルディ「ギター協奏曲ニ長調」、②パガニーニ「15の四重奏曲」から第6番ニ短調、③パガニーニ「協奏的ソナタ イ長調」、④ジュリアーニ「ギター五重奏曲ハ長調」です 出演は、ギター=大萩康司、ヴァイオリン=原田陽、堀内由紀、ヴィオラ=廣海史帆、チェロ=新倉瞳です

 

          

 

自席はC2列12番。前日に続いてかなり前方の席です

1曲目のヴィヴァルディ「ギター協奏曲ニ長調RV93」は、もともとリュートと2つのヴァイオリンと通奏低音(チェンバロ等)という編成で書かれたもので、ソロのパートはリュートのほか、ギターやマンドリンで演奏されることもあるとのことです 3つの楽章から成りますが、「急・緩・急」というイタリア風協奏曲になっています マンドリンということで言えば、ヴィヴァルディの「マンドリン協奏曲」は、ダスティン・ホフマン+メリル・ストリープの主演で一世を風靡した「クレイマー・クレイマー」のテーマ音楽に使われていたのを思い出します 

演奏はヴァイオリン=原田陽、堀内由紀、チェロ=新倉瞳、ギター=大萩康司ですが、原田氏と堀内さんはどこかで見たことがあると思ったら、ともに古楽器演奏集団=バッハ・コレギウム・ジャパンのメンバーでした したがって、彼らが使用しているヴァイオリンからは古楽器特有の柔らかい音が醸し出されます チェロの新倉瞳さんの楽器をよく見ると、楽器にエンドピンが付いていません これも古楽器で、チェロを又に挟んで演奏します。彼女の努力の成果が現れます(努力の『努』を分解してみて)。曲はいかにもヴィヴァルディのコンチェルトといった感じの明るく軽快な曲想です

演奏後、ギターの大萩氏がマイクを持って挨拶をします

「皆さん、今日は ようこそお出でくださいました。われわれが持っている楽器の弦の色がいつもと違うのにお気づきの方もいらっしゃると思います 通常はナイロン、スティールの弦を使用していますが、今われわれが使用している楽器はガット弦という、羊の腸をねじって作った弦を使用しています この「ブルーローズ」のような小ホールで演奏するのに相応しいと思います 次のパガニーニの曲は各楽器の聴かせどころがあるので、ぜひ聴き逃さないようにしていただきたいと思います

そして、パガニーニ「15の四重奏曲」から「第6番ニ短調」の演奏に入ります この曲は、ヴィルトゥオーゾ・ヴァイオリニストのパガニーニが興味を持っていたギターとヴァイオリン等の弦楽器のために書いた4楽章形式の室内楽曲です 演奏はヴァイオリン=原田陽、廣海史帆(この人もバッハ・コレギウム・ジャパンで演奏している)、チェロ=新倉瞳、ギター=大萩康司です

第1楽章「アレグロ」を全員で軽快に演奏し、第2楽章はギターはお休みです 次の第3楽章のためにチューニングが始まったかと思ったら、ギターの弦がプツンと切れる音がしました 大萩氏がマイクを持って

「すいません。弦が切れました 前の楽章ではまったく弾いていないのに切れてしまいましたが、ガット弦では よくあることです ちょっと失礼して弦を張り直してきますので、しばらくお待ちください

と言ってギターを持って舞台袖に消えました。弦楽器の3人も一旦舞台袖に引っ込みましたが、再び登場、第1ヴァイオリンの原田氏が大萩氏の椅子に腰かけて

「どうも、大萩さんに代わってギターを弾くことになりました(会場)。弦が切れた場合、オーケストラだと 後ろの奏者の楽器と弦が切れた楽器を交換して、何事もなかったかのように演奏を続けることが出来ますが、こういう4人しかいない場合はどうしようもないのです ところで、今演奏した第2楽章「モデラート」は3人の奏者がまったく同じメロディーを弾いていました、少しずつずらして これを”カノン”と言いますが、バッハの曲で有名ですね。それをパガニーニが採用していたのを知って、パガニーニもちゃんと勉強していたんだな、と新鮮な驚きを感じました

と時間を稼いでいるところに、弦を張り直した大萩氏が戻り

「代える弦をオリーブ油に漬けてきました。これが切れたらもうお終いです

と解説して第3楽章に移りました。その後、第4楽章に移るときもチューニングをするので、聴いているわれわれは、あまり強く張ってまた弦が切れないだろうか、と心配していました 幸い何とか無事に演奏が終わりました

 

          

 

休憩後の1曲目はパガニーニの「協奏的ソナタ イ長調」です この曲は1803~04年に作曲された3楽章から成る作品ですが、当時22歳だったパガニーニがパトロンの奥さまに献呈した作品です 演奏はヴァイオリン=原田陽、ギター=大萩康司です この曲は2人の奏者が対等に演奏する曲で、メロディーを弾いていたと思ったら、今度は伴奏に回り、といった具合に主役が変わっていきます。明るく軽快な曲でした

ここで、5人全員が揃ったところで大萩氏がマイクを持ちます

「先ほど、弦が切れたのは、パガニーニがどこかにいたのではないか、と思います やっと5人が揃ったのでメンバーを紹介したいと思います。ヴァイオリンの原田氏は15年ほど前に共演したことがありますが、他のメンバーは初共演なので名前をまだよく覚えていません

と言い訳をして、一人一人紹介していきました そして、最後の曲、ジュリアーニ「ギター五重奏曲ハ長調」について

「この曲は、元々パイジェルロの歌劇『水車小屋の娘』のアリアをテーマとして作曲したものです

と解説し、演奏に入りました 

ジュリアー二はパガニーニの前年にナポリ王国(イタリア)で生まれ、ギタリスト兼チェリストとして活躍しました この曲はギターと弦楽四重奏のために1812年ごろ作曲されました この曲もナポリ生まれの作曲家に相応しい明るく軽快な曲です

5人はアンコールにボッケリー二「ギター五重奏曲第4番 ファンタンゴ」から第4楽章を軽快に演奏しましたが、途中、チェロの新倉瞳が楽器を下に置いたかと思ったら、カスタネットを持って演奏を始めました そのリズム感の素晴らしいこと カスタネットに転向したら と思いましたが、カスタネットでは食べていけませんね

ギターはとりわけ好きな楽器という訳でもないし、この日のコンサートは、正直言ってあまり期待していませんでした  しかし、実際に聴いてみると演奏が素晴らしく、十二分に楽しむことができました

 

          

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キュッヒル・クァルテットの「シューベルティアーデⅠ」を聴く/ノット+東響「コジ・ファン・トゥッテ」のチケット購入

2016年06月22日 07時41分59秒 | 日記

22日(水)。わが家に来てから633日目を迎え、「夏限定 オリオン 沖縄だより」にするか、「期間限定 カルビー じゃがりこ 20周年記念 おめで鯛味」にするか迷っているモコタロです

 

          

                              ぼく じゃがりこ食べらんないし オリオンビール飲めないし

 

  閑話休題  

 

昨日、夕食に「鶏肉とホウレン草の卵とじ」と「生野菜とワカメのサラダ」を作りました 「鶏肉と~」は自分で言うのも何ですが、美味くできました

 

          

 

  も一度、閑話休題  

 

昨日、池袋の東京芸術劇場ボックスオフィスに徒歩で行き、12月11日(日)午後3時から東京芸術劇場大ホールで開かれる東京交響楽団のモーツアルト「コジ・ファン・トゥッテ」のチケットを購入しました これは12月9日(金)ミューザ川崎と11日(日)の2日間、演奏会形式により上演されるものです 指揮とハンマーフリューゲルはジョナサン・ノットが務め、ソプラノのミア・パーションなどが出演します アンサンブル・オペラの傑作「コジ・ファン・トゥッテ」は観て 聴いて楽しいオペラです。今から楽しみです

 

          

          

 

  最後の、閑話休題  

 

昨夕、サントリーホール「ブルーローズ」で「キュッヒル・クァルテットのシューベルティアーデⅠ」を聴きました これはサントリーホール・チェンバーミュージック・ガーデンの一環として開かれたコンサートです プログラムは①シューベルト「弦楽四重奏曲第13番イ短調”ロザムンデ”」、②同「弦楽四重奏曲第15番ト長調」です。演奏は第1ヴァイオリン=ライナー・キュッヒル、第2ヴァイオリン=ダニエル・フロシャウアー、ヴィオラ=ハインリヒ・コル、チェロ=ロベルト・ノーチです

 

          

 

自席はC1-8番。つまり1列目のセンターブロックの中央に近い席です。こんなに良い席は滅多に取れません

さて、今回の公演タイトルとなっている「シューベルティアーデ」というのは、シューベルトは毎晩のように友人、知人たちと集まって、ダンス・音楽・文学に興じており、その集まりは、いつしか参加者たちの間で「シューベルティアーデ」(シューベルト仲間)と呼ばれるようになったというものです

1曲目の「弦楽四重奏曲第13番イ短調」は1824年3月に、ベートーヴェンの多くの作品を手掛けたシュパンツィヒ弦楽四重奏団によって初演されました この曲は「ロザムンデ」という愛称が付いていますが、これは第2楽章のテーマが自作の劇付随音楽「ロザムンデ」(1823年)の間奏曲からとられていることによります 同じ1824年に作曲された第14番「死と乙女」とともに、シューベルト(1797-1828)が27歳の充実した時期の作品です

キュッヒル氏以下4人のメンバーが登場します 椅子は高さが調節できるようになっていますが、全員が高めに調節しています。とくに背丈の高い4人の中でも頭一つ抜けているチェロのノーチ氏は一段と高く設定にしています 第1ヴァイオリン、第2ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロという並びですが、私の席のすぐ前はヴィオラのコル氏です。ウィーン・フィルのメンバーがこんなに近くで演奏するのを聴くのは生まれて初めてです

4人を見て驚くのは、それなりの年齢に達していると思われるのに、眼鏡をかけて演奏するのはキュッヒル氏だけだということです また、4人の顔にはそれぞれの歴史が刻まれており、顔を見ただけで”芸術家”を感じるということです

「ロザムンデ」の第1楽章に入ります。第1ヴァイオリンのキュッヒル氏の奏でる憂いを帯びた旋律が会場に広がります ナイーヴなシューベルトを感じます。精緻なアンサンブルが展開しますが、第3楽章の冒頭、チェロが強いアタックで入り、ちょっとビックリしました というのは、この曲はすべての楽章がピアニッシモで入るからです。ノーチ氏の演奏は、これからドラマが起こる前兆のように聴こえました

 

          

 

休憩時間にロビーに出ようとすると、後方の席にクァルテット・エクセルシオの第1ヴァイオリン・西野ゆかさんがいらっしゃいました その前日にはヴィオラの吉田有紀子さんの姿が見えました やはり、日本を代表する弦楽四重奏団の演奏者としては世界のウィーン・フィルのメンバーによるクァルテットの演奏が気にかかるのでしょう

プログラム後半は「弦楽四重奏曲第15番ト長調」です この曲は1826年6月に作曲されましたが、最後の弦楽四重奏曲となりました 今現在が2016年6月ですから、ちょうど190年前に作曲された作品ということになります。演奏時間にして50分を要する超大曲です 交響曲でなくて弦楽四重奏曲ですよ、奥さん

4つの楽章から成りますが、第1楽章だけで20分以上かかります この楽章と第2楽章に、弦楽器を細かく擦る”トレモロ”奏法が使用されますが、この弦楽四重奏曲の一つの特徴になっています 「トレモロ」というと想い起すのがブルックナーの交響曲です

この曲を聴くにあたってウィーン・コンツェルトハウス四重奏団によるCDで予習しておいたのですが、その曲目解説の面白いことが書かれていました。超訳すると

「シューベルトは1828年に31歳で亡くなったが、もし彼がもっと長生きしていたらどんな曲を書いただろう? ブラームスやワーグナーが活躍し始めた1857年のシューベルト(60歳)が弦楽四重奏曲や交響曲を作曲したとしたら・・・・ちなみに、ドイツの音楽好きは、ブルックナーの交響曲がシューベルトの延長線上にあると感じるらしい シューベルトのハ長調交響曲の”天国的な長さ”とワグネリズムを掛け合わせたのが、ブルックナーだというわけである・・・・シューベルトの最後の弦楽四重奏曲第15番は文字通りブルックナー風で始まる 秘めやかなトレモロを背景にして、チェロとヴァイオリンが、まるで種子から植物が育つようにゆっくり歌を育む箇所は、いわゆるブルックナー開始を先取りしているかのようだ

          

          

 

これは興味深い見解だと思いました ただ、「トレモロ」を考える材料として自説を繰り広げるのには限界があるようにも思いました

話を戻します。50分にも及ぶシューベルトの最後の「弦楽四重奏曲第15番」を聴き終わって思うのは、なぜシューベルトは執拗に同じメロディーを繰り返し繰り返し持ち出すのだろうか、ということです ただ、今回のキュッヒル・クァルテットで聴いた第15番にまったく飽きが来なかったのは、やはり演奏者のレベルが高かったということに尽きるのだと思います

会場割れんばかりの拍手に4人はアンコールに応え、メンデルスゾーンの「弦楽四重奏曲第1番」から第2楽章を演奏しました 今度は是非全曲を演奏してほしいと思いました 鳴り止まない拍手に、どこかで聴いたことのある日本的なメロディーの曲を演奏しました。あとでロビーの掲示で確かめたら「弦楽四重奏のための日本民謡から”佐渡おけさ”」でした

超一流の演奏を間近で聴けたという意味でも、この日のシューベルティアーデは思い出に残るコンサートになるでしょう

 

          

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鶴見俊輔著「限界芸術論」を読む/英国のEU離脱問題、EUユースオーケストラのゆくえに影響も

2016年06月21日 08時01分01秒 | 日記

21日(火)。昨日はコンサートも映画もない平穏な一日でした。たまにはこういう日もないと身体が持ちません ということで、わが家に来てから632日目を迎え、白ウサちゃんの気を引こうと芸能ネタを耳打ちするモコタロです

 

          

           モコ:指原が連覇してさぁ 白ウサ:ユビハラがどうしたって? 

 

  閑話休題  

 

昨日、夕食に「豚肉の生姜焼き」と「生野菜サラダ」を作りました あとは「男前豆腐の食べるラー油乗せ」です

 

          

 

食べようとしたとき、娘がウイスキーのボトルを出して、

「昨日は父の日だったので、本当は昨夕渡そうとしたんだけど、パフュームのコンサートを聴きに行って帰りが遅くなってしまったので、今プレゼントするね

と言って「DARK  BATCH」というカナダ産の高級ウィスキーをプレゼントしてくれました アマゾン・ネットで高い評価を得ているウィスキーを選んだと言っていました 娘と二人でオン・ザ・ロックで飲んでみましたが、確かにマイルドで美味しいウィスキーでした 親としては、そんなことに気を遣ってくれるよりも、早く就職してほしいというのが本音ですが、せっかくの好意なので、口には出せませんでした 一方、息子は土曜日も日曜日も大学に通っていて帰りが遅く、昨夕も帰りが深夜になってしまったので、残念ながら仲間には入れませんでした みんなが好きな「We 好きー」なのに残念です

 

          

 

  も一度、閑話休題   

 

昨日の日経朝刊の国際面のコラム「地球回覧」は「英楽団騒動 混迷EUの鏡」という見出しを掲げて、英国のEU離脱騒動が音楽界にも影響を及ぼしていることを報じています。超訳すると

「英ロンドンにEUを象徴するような楽団がある。EUユース・オーケストラだ 40年にわたり活動してきたが、EU離脱を巡る国民投票を控える中で、活動資金の廃止通告が出された 背景には文化支援の効率化を図るEUの政策変更がある。このオーケストラは毎年オーディションで選ばれる16~26歳のメンバー約120人から成るが、EU加盟全28か国の出身者が揃っている。国籍も育った文化も様々な若者がEUの旗の下に集い、旋律を奏でる 『多様性の中の統合』をモットーとするEUを体現してきた。ベルリン・フィルの首席指揮者サイモン・ラトルらがEUに方針転換を要求し、世界中の音楽家や楽団のOB、聴衆らによる楽団存続への支援の輪が広がった あまりの反響の大きさにEUのユンケル欧州委員長は5月末、一転して支援継続を探るよう事務方に指示し、土壇場で廃止を免れた

1つの国が、所属する共同体から離脱するかどうかという問題は、政治・経済面に限らず、音楽をはじめとする文化面にも波及することを表した端的な例だと思います 英国のEU離脱を巡る国民投票は2日後の23日に実施されますが、果たしてどういう結果になるのか? 個人的にも無関心ではいられないテーマです

 

  最後の、閑話休題  

 

鶴見俊輔著「限界芸術論」(ちくま学芸文庫)を読み終わりました 鶴見俊輔は1922年 東京生まれ。1942年、ハーヴァード大学哲学科卒。46年に丸山真男らと「思想の科学」を創刊。65年には小田実らとべ平連を結成・・・・と、日本の思想・言論界で常に第一線で活躍してきた偉人です 昨年93歳で他界しました

 

          

 

まず最初に「限界芸術」とは何か、ということですが、「芸術と生活の境界に位置する広大な領域、専門的芸術家によるのではなく、非専門的芸術家によって作られ大衆によって享受される芸術」のことを言うのだそうです 別の言葉でいえば「サブカルチャー」と言えるでしょう

鶴見氏の関心領域は、民謡、漫才・落語、漫画・落書き、時代劇映画にまで及びますが、明治25年に絵入り日刊新聞「万朝報」を創刊した黒岩涙香(くろいわ・りゅうか)に相当のページを割いています

「万朝報」は涙香翻訳による探偵小説・裁判小説・法廷小説、涙香脚色によるスキャンダル記事によって明治の新聞界の王座にのし上がったと言われています 新聞は芸術ではなく非専門的な芸術家によって様々なテーマを取り上げている意味では「限界芸術」の最たるものなのでしょう

1894年、日清戦争の頃の新聞発行部数は次の通りだったといいます

万朝報     5万部

東京朝日新聞  2万5千部

報知新聞    1万5千部

東京日日新聞  1万5千部

読売新聞    1万2千部

中央新聞    1万部

いかに「万朝報」がダントツに売れていたかが分かります 私は大学時代「新聞学科」に在籍していたので、黒岩涙香と万朝報の名前は「日本新聞史」の授業で教わりました。懐かしい思いで90ページに及ぶ「黒岩涙香」の項を読みました

一種のサブカルチャー論として読むべき本ですが、細かな字で埋まった460ページを読みこなすのは相当の努力が必要です サブカルチャーに興味のある方にお薦めしておきます

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