ふぶきの部屋

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韓国史劇風小説「天皇の母」26(フィックション!!)

2011-09-25 10:56:06 | 小説「天皇の母1話ー100話

物心ついた時からマサコは、どんよりとした不満を抱えていた。

どんよりとした不満・・・何が不満で自分がこんなに不機嫌だったり悲しかったりするのか

うまく言葉では表せないような。そんな不満。

だからいつも心は乾いていたような気がするし、楽しいと思った事も幸せだと思った事も

ないような気がする。

彼女が3歳の時に双子の妹が生まれた。スイスのジュネーブで。

母は見知らぬ土地での出産に加え、双子の育児できりきりまいになった。

父は・・・どうしていたろう。あまり記憶がない。というか子供たちに興味がないような感じだ。

母はいつも愚痴を言っていた。

「何で私がこんな思いをしなくちゃいけないの」

裕福な家庭で一人娘として育った母は他人が介在する生活が鬱陶しくて仕方なかった。

特に子供は理屈が通らないし意味なく泣くし、世話をしなくてはならないし。

マサコにとって母はいつも背中を見せている人。

「ちょっとまってまあちゃん」

「これが終わったらまあちゃん」

「まあちゃんはお姉さんよね。少しは我慢できない?」

いつも母の膝を独占している双子。何となく憎たらしい。

一度だけあまり泣く妹のおでこをピンと弾いた事がある。すると母は血相を変えた。

「まあちゃん、何て事をするの」

マサコはその一言でおびえた。

叱られる・・・という事がこんなに恐いものだとは。

黙ってしまった娘に母は「ちょっとあっち行ってて」と言った。

後でご本を読んであげるわ

その言葉を頼りにマサコは自分の部屋に入り、ひたすらドアの向こうから絵本を

携えて入ってくる母を待ち続けた。

家族はジュネーブからモスクワ、そしてアメリカへと移っていく。

その度に景色が変わり、言葉や人の顔が変わり・・・それはマサコに大いなる開放感を

与えた。

幼心に「自分は異邦人だ」とわかっていたのかもしれない。

異邦人である事は寂しい事だ。しかし一方で気楽である。

責任がないのだ。

何をやっても「外国人」の一言で済む。それは父も母もそんな考えだったからなのか?

母はお手伝いを雇った。と、同時に父と一緒に外出する機会が増え、マサコと妹達は

お手伝いと一緒に過ごす事が多くなる。

外出する時の母は嬉々としている。それは子供にとってあまりいい光景ではなかった。

この膿のような感情をどこへぶつけたらいいのかしら・・・・

ある日、マサコは食事の中に嫌いな野菜を見つけた。

何だか知らないけど猛烈な怒りが湧き上がってくる。

何で嫌いなピーマンを入れたの?」

お嬢様。好き嫌いはいけませんよ」

何で

栄養がとれません。好き嫌いをせずに召し上がらないと大きくなれません」

何で?何で好き嫌いをすると大きくなれないの?」

それは栄養がいきわたらないからですよ」

じゃあ、大きくならなくていいもん

マサコは怒りに任せて皿を床にたたきつけた。ちょうどその時、チャイムが鳴って

両親が帰って来た。

食堂の床に落ちた皿を見ては母怒鳴った。

これは何?どういう事?」

これはお嬢様が・・床に叩きつけられたのです」

子供のせいにするつもり?マサコがそういう事をするというのは理由があったから

でしょう?ねえ、そうよね?まあちゃん」

マサコはちょっとびくっとした。母に名指しされるのは久しぶりだった。

だってピーマンが入っていたから。私の嫌いなものを入れたからよ」

母は目を伏せた。叱られるのだろうか?それとも・・・・?

母はくるりと背を向けた。

さっさと皿を片付けて頂戴。今後こういう事があったらあなたはクビよ」

これは勝利かも。母は私の味方をしてくれたんだ。マサコは素直にそう思った。

それから気づいた事があった。

自分とお手伝いでは身分が違うという事。それは大いなる発見だった。

その日以来、マサコはほんの少しだけ幸せになったような気がする。

 

けれどどんよりとした不満が消え去ったわけではない。

両親は海外赴任中に観光地はほとんど連れて行ってくれた。

普通の子はこんなに旅行なんか出来ないわ。珍しいものを見たり買ったり

出来ないの。まあちゃんもれいちゃんもせっちゃんも幸せなのよ。

それもこれもパパのおかげね。

パパが出世してくれないと、こんな生活は出来ないもの」

これが幸せ。

誰よりもいい服を着て、おいしいものを食べ、旅行して回る。

それは高度経済成長時代の国民の願いだったかもしれない。

裕福であることは幸せなのだ・・・とマサコは思った。いや、感じた。

 

コメント (3)
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