ふぶきの部屋

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韓国史劇風小説「天皇の母」31

2011-11-13 17:18:36 | 小説「天皇の母1話ー100話

1978年、ヒロノミヤは無事に学習院高等科を卒業、アヤノミヤは初等科を卒業

した。

ハマオは感慨深い面持ちで「お二人の卒業を祝う会」を見守っていた。

音楽が流れる中、皇太子夫妻も出席し、これまでの二人の宮が関わった人達が

多数招待されて華やかに宴席は続く。

アヤノミヤは日頃のやんちゃ坊主の姿はどこへやら、ちょっとしっかりした顔つきで

恩師に挨拶をしたり、時々は面白い事を言って周囲を笑わせている。

そんなアヤノミヤを見るにつけ、ハマオの心に一抹の不安がよぎる。

(アヤノミヤ様は利発すぎるのだ)

それが何だかわからないが不愉快でしょうがない。

かつてイリエが「ご優秀なヒロノミヤさん、やんちゃなアヤノミヤさんの印象を植え付けない

とヒロノミヤの地位が危ない」と語った事がある。

イリエの考えは的を得ている筈だ。

なんと言っても天皇の側近中の側近。

天皇がヒロノミヤよりもアヤノミヤを心から可愛がっている事はウラでは

公然の秘密である。

アヤノミヤは生物好き。小さい頃から動物も爬虫類も昆虫も、ありとあらゆる

生き物に興味を持って実際に飼ってみたり、手にとってみたり、いわゆる

「研究者の真似事」が大好きだ。

それは父、皇太子も祖父、天皇も好ましく思い、ついついアヤノミヤに会うと

自分の研究の段階がどの程度なのか専門的な話をしてしまう。

それをまた興味津々の顔でよく聞くから、一層可愛く思える・・・らしい。

アヤノミヤはまた書道の腕もたいしたものだった。

タカマツノミヤ妃から直々に有栖川流を伝授され、

その上達の速さを妃が気に入っているという話。

キク君は皇后やセツ君らと共に皇太子妃排除に動いた妃の一人だったが

アヤノミヤと、またその下のノリノミヤを非常に可愛がり、特にノリノミヤは

「実の娘のように」扱われているという話。

数々の確執も、アヤノミヤ、ノリノミヤ二人の存在で和らいで来ているのは事実。

そうなると、ヒロノミヤは?

 

ヒロノミヤの誕生は四面楚歌の皇太子妃にとって唯一の救いだった。

もしあの時、生まれたのが内親王だったらどれ程妃は苦労しただろう。

そういう思いもあったし、皇太子誕生までの長い年月を苦労した天皇にとって

結婚1年目での皇孫誕生は心から暗雲を吹き消す慶事だった。

だからこそ、自分のようなものが側について厳しくも優しく仕えて来たのではないか。

しかし・・・・

元々ヒロノミヤは感情表現に乏しい面があり、「利発」とは程遠い子供だった。

万博にアヤノミヤと二人だけで見学した時は「一度だけ」の約束だった乗り物に

もう一度乗りたいと言い出し、きかなかったので許したが、おかげで大勢の客に

迷惑をかける結果になり、それをその後皇太子夫妻に叱られた。

父宮に叱られても「なぜか」とは考えず、その場をやりすごす事を先に考える。

高等科の時は教師に「窓を少しあけて」と言われたら全開し、「閉めて」と言ったら

全部閉めた・・・というのは有名な話になりつつあるし、

他にも給食でみかんが出てきたら皮がむかれてないので、そのまま持ち帰ったとか

高等科の第二外国語のフランス語を早々に放棄してしまった話など・・・

なんと言うか「ご優秀」には程遠いエピソードだらけである。

しかし、それらは今の所「人間らしいヒロノミヤ様」という仮面に守られて

国民にもそこそこ人気である。

このまま大学にすすめばすぐに「お妃」候補の話が出てくるだろう。

ハマオはため息をついた。

どんな女性が宮のお妃になるのやら・・・・とにかくしっかりしたお妃を貰って

くれないと自分達が一生懸命に固めたメッキがはがれてしまう。

 

津軽海峡冬景色を歌います」

と、ヒロノミヤが大声で言い、回りは一瞬「ギョッ」となった。

祝宴で演歌?それも「津軽海峡冬景色」?

(殿下・・・歌うならもう少し明るくてポピュラーな歌を・・・・)

もう遅い。ヒロノミヤは歌いだしてしまった。

それも延々と二番まで。

周りはどんな顔をしたらいいのかわからず、ひたすらにこにことしているしか

なかった。皇太子夫妻も笑って拍手している。

微妙な空気が流れた。

それを破ったのはアヤノミヤだった。

僕、ピアノを弾きますね」

すぐに軽快なテンポの曲が流れる。決して難しい曲ではなかったが、その場の

雰囲気を変えるには十分すぎた。

わかっている・・・ヒロノミヤは思いやりのつもりで歌ったのだ。

今日いる恩師の中に石川さゆりのファンがいたのだ。ヒロノミヤはそれを

知って喜ばせようとしただけだ。

それにしても・・・・殿下は自分の感情に正直すぎる。

感情が回りにどういう影響を及ぼすかを計算出来ない性質なのだ。

おまけに臨機応変に対応するのが苦手ときている。

それをさりげなくフォローするアヤノミヤ・・・まだ12歳だ。

恐ろしい。

 

「オーちゃん、ほら飲んで」

ヒロノミヤが楽しそうにワインをついでくれた。

殿下、大学にお入りになるのですから朝は早起きしてご両親殿下と

ご一緒にお食事を召し上がるようになさらないといけません。

大学では人の目が多いのですから、決して隙を見せないようにして・・・」

わかったわかった。オーちゃん、何もこんな席で言わなくても。ただでさえ

内舎人がうるさいのに。僕、今度生まれてくるときは内舎人にするよ。だって

始終怒ってばかりいればいいんだもの」

そんな。それはそれは全部殿下の為を思えばこそ」

にいさま、僕も内舎人になるね」

いつの間にかアヤノミヤが来て一緒に笑っていた。二人は無邪気に

よーし、生まれ変わったら内舎人になるぞ」と言い合っている。

(頭痛が・・・・・)

ハマオは頭を抱えた。12歳にフォローされる18歳。

自分が施した教育の何かが間違っていたのかもしれない・・・・

でもそれが何だったのかわかららないまま、ハマオは酒をあおった。

 

 

コメント (5)
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