ふろむ播州山麓

旧住居の京都山麓から、新居の播州山麓に、ブログ名を変更しました。タイトルだけはたびたび変化しています……

鞍馬の桜

2008-04-20 | Weblog
 貴船と鞍馬を歩いた。前の日曜十三日の朝、叡山電車の出町柳駅で友人と待ち合わせ、京男三人の日帰り豆旅であった。
 この三月から四月にかけて、あまりにも仕事が忙しく、友人のひとりが口走った。「温泉に行きたい!」。これが発端である。
 この季節、連休もとれないので一泊の旅もできない。ならば鞍馬温泉にでも日帰りで行こうか、ということになった。
 コースは叡電貴船駅で降り、川沿いを歩いて貴船神社を目指す、それから山を登り、鞍馬寺本殿から仁王門に至り、門前でビール昼食をとる。そして温泉の露天風呂につかる。そのような計画であった。

 叡電の車窓から見る桜は、格別であった。出町柳の周辺、鴨川や高野川の土手あたりは、ほとんど若葉桜になっている。一分か二分かの残り咲きとでもいおうか。ただ八重桜と紫紅の枝垂桜だけは、花が多い。しかし電車が北山に向かうとともに桜花が増える。比叡山中腹には白い花の繁みがあちらこちらに見える。あまりにも遠いので咲き具合ははっきりとはわからないが、ほぼ満開なのであろう。
 電車が岩倉を過ぎるあたりから、満開を過ぎたばかりで、いくらか葉の出た桜が増える。二軒茶屋、市原、二ノ瀬と奥に行くほどに、にぎやかである。町なかとはよほどの温度差があるのであろう。

 そして貴船。川沿いのゆるやかな道の横にならぶ桜は、いずれも早咲きの山桜ばかりであった。花はもう、ほとんどない。虚子の句、
  遅桜 なほもたづねて 奥の宮
 この句を楽しみに貴船神社奥の宮に来てみたが、桜花はどこにもない。かつて境内に遅咲きの桜があったのであろうか。いまはない。貴船の花は、藪椿と岩間に咲くスミレが眼に鮮やかであった。
 それから来た道を少し引き返し、左に折れて貴船川を渡り、急坂を登る。杉の根がまるで数千数万のタコの足のように絡まり地を這う。木の根道は何度歩いても好きだが、息が切れる。歳であろうか。いや仕事が忙しすぎたからと、もうひとりの自分がなぐさめたりしてくれる。
 さてついに鞍馬寺金堂前に辿りついたが、境内に数十本ある桜がみな満開。洛中の桜より、一週は遅い。クラマウスザクラと呼ぶそうだが、数本はまだつぼみが固い。虚子の句は、鞍馬山に似合う。
 貴船鞍馬のことは、いつかまた書こう。
<2008年4月20日 書くのが一週も間延びした花紀行>
コメント (2)
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