コノハナノサクヤビメ(木花之佐久夜毘売)が妊娠する話しが『古事記』にあります。「わが妊(はら)める子、もし国つ神の子ならば、産むとき<幸く>(サキク)あらじ。もし天つ神の御子ならば、<幸く>(サキク)あらん」
原文をみますと「吾妊之子、若国神之子者、産時不幸。若天神之御子者、幸」。現代語訳は、国つ神の子であれば、出産のときその子は無事ではありますまい。もし天つ神の御子であるならば、無事に生まれましょう。
ここに<幸>字が出ますが、幸は幸く<さきく>で意味は<無事>にです。
『万葉集』には<サキク>がたくさん出て来ます。意味はやはり<無事>つつがなき、事故なく健在……。以下、日本古典文学全集『万葉集』全4巻(小学館)を参考にしました。
【30】 「雖幸有」 幸(サキク)あれど
サキクは無事健在の意味。
【648】 「奈何好去哉」 いかにサキクや
サキクやはお元気で。「好去」は中国の俗語でさようなら、お元気でなどに当たり、旅立つひとに向かっていう別れの言葉。好去と書いて「サキク」と読んでいます。
【894】 題「好去好来歌」(かうきょかうらい)
「都ゝ美無久 佐伎久伊麻志弓 速帰坐勢」 つつみなく サキクいまして はや帰りませ
ツツミ(怪我・事故)なく、サキクは題詞「好去」(無事に)。
題詞「好来」は、早く帰りませ。好去好来は別れの挨拶。
【1142】 「命 幸久吉」 命(いのち)を 幸(サキ)く良(よ)けむと
サキクは無事で。
【3227】 「好去通牟」 サキク通(かよ)はむ
サキク(好去)は無事に、つつがなく。
【3253】 「辞挙叙吾為 言幸 真福座跡 恙無 福座者」 言挙(ことあ)げぞ我(あ)がする ことサキク まサキクませと つつみなく サキクいまさば
「言挙げをわたしはする お元気に ご無事でいらっしゃいと つつがなくお元気であられたら」
言幸は、祝福の言葉の通りに平穏に。「いませ」は、いらっしゃい。「つつみなく」事故なく、恙無く(つつがなく)。
【3254】 「真福(マサキク)在与具」 マサキクありこそ
ご無事でいらっしゃい。無事の帰着は疑いない。
【3691】 「佐伎久之毛」 サキクしも
つつがなく、無事で。
【3927】 「多比由久吉美乎 佐伎久安礼等」
「旅ゆく君を サキクあれと」(比は女ヘン) サキクは無事で元気で。
【3957】 「和可礼之時尓 好去而 安礼可敝理許牟 平安 伊波比氐待登 可多良比氐」 別れし時に まサキクて 我(あれ)帰り来(こ)む 平らけく(平安) 斎(いは)ひて待てと 語らひて
「別れた時に 元気で わたしは帰って来よう 無事でいて 謹んで待てと 語りあって」
好去はマサキク。元気で、無事で。
【3958】 「麻佐吉久登」 マサキクと
マサキクあれ、元気であれ。
「サキク」無事をみてきましたが、字は「幸」「佐伎久」「幸久」「福」「佐吉久」「好去」などがあてられています。いずれも「サキク」です。「幸」字のことはもう少し考えてみたいと、思っています。
<2012年8月4日>
原文をみますと「吾妊之子、若国神之子者、産時不幸。若天神之御子者、幸」。現代語訳は、国つ神の子であれば、出産のときその子は無事ではありますまい。もし天つ神の御子であるならば、無事に生まれましょう。
ここに<幸>字が出ますが、幸は幸く<さきく>で意味は<無事>にです。
『万葉集』には<サキク>がたくさん出て来ます。意味はやはり<無事>つつがなき、事故なく健在……。以下、日本古典文学全集『万葉集』全4巻(小学館)を参考にしました。
【30】 「雖幸有」 幸(サキク)あれど
サキクは無事健在の意味。
【648】 「奈何好去哉」 いかにサキクや
サキクやはお元気で。「好去」は中国の俗語でさようなら、お元気でなどに当たり、旅立つひとに向かっていう別れの言葉。好去と書いて「サキク」と読んでいます。
【894】 題「好去好来歌」(かうきょかうらい)
「都ゝ美無久 佐伎久伊麻志弓 速帰坐勢」 つつみなく サキクいまして はや帰りませ
ツツミ(怪我・事故)なく、サキクは題詞「好去」(無事に)。
題詞「好来」は、早く帰りませ。好去好来は別れの挨拶。
【1142】 「命 幸久吉」 命(いのち)を 幸(サキ)く良(よ)けむと
サキクは無事で。
【3227】 「好去通牟」 サキク通(かよ)はむ
サキク(好去)は無事に、つつがなく。
【3253】 「辞挙叙吾為 言幸 真福座跡 恙無 福座者」 言挙(ことあ)げぞ我(あ)がする ことサキク まサキクませと つつみなく サキクいまさば
「言挙げをわたしはする お元気に ご無事でいらっしゃいと つつがなくお元気であられたら」
言幸は、祝福の言葉の通りに平穏に。「いませ」は、いらっしゃい。「つつみなく」事故なく、恙無く(つつがなく)。
【3254】 「真福(マサキク)在与具」 マサキクありこそ
ご無事でいらっしゃい。無事の帰着は疑いない。
【3691】 「佐伎久之毛」 サキクしも
つつがなく、無事で。
【3927】 「多比由久吉美乎 佐伎久安礼等」
「旅ゆく君を サキクあれと」(比は女ヘン) サキクは無事で元気で。
【3957】 「和可礼之時尓 好去而 安礼可敝理許牟 平安 伊波比氐待登 可多良比氐」 別れし時に まサキクて 我(あれ)帰り来(こ)む 平らけく(平安) 斎(いは)ひて待てと 語らひて
「別れた時に 元気で わたしは帰って来よう 無事でいて 謹んで待てと 語りあって」
好去はマサキク。元気で、無事で。
【3958】 「麻佐吉久登」 マサキクと
マサキクあれ、元気であれ。
「サキク」無事をみてきましたが、字は「幸」「佐伎久」「幸久」「福」「佐吉久」「好去」などがあてられています。いずれも「サキク」です。「幸」字のことはもう少し考えてみたいと、思っています。
<2012年8月4日>