あんたはすごい! 水本爽涼
第ニ百七十九回
国会が閉会すると、大臣としての様々な所用はあるものの、議会に関しては、まるで学校の夏休みである。いや、議員ではない民間人の私だから云えることで、議員の皆さんは地元の後援会やら何やらで多忙の日々は続くのだが…。まあそんなことで、年末前に閉会した国会は、幸いにも重要法案が軒並み成立し、小菅(こすが)ブームは益々、増幅する勢いを見せていた。社会論調では政府批判の多いメディアでさえ、このブームにはお手上げで、やんやの喝采(かっさい)を送って報道した。小菅総理の施策が、ことごとく成功して軌道に乗ったことも、このブームを助長する一因だった。そんな中、久しぶりに眠気(ねむけ)へ戻った私は、禿山(はげやま)さんの顔を見ようと自宅を訪れた。禿山さんは至って元気そうで、以前と少しも変わらない丸禿頭を照からせて私を迎えてくれた。
「昨晩、妙な夢を見ましてな。やはり、正夢でした。塩山さんが来られる夢なんですが、この今と、まったく同じ夢で、夢のとおりですと、あと数分ほどで塩山さんの携帯が鳴り、みかんの早希さんから電話があるはずです」
「早希ちゃんからですか? …それにしても禿山さん、よく早希ちゃんの名を知っておられましたね。お話ししましたっけ?」
「いいえ、一面識もなく聞いてもいないのですが、どういう訳か知っておるのです」