水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

スビン・オフ小説 あんたはすごい! (第ニ百八十七回)

2011年04月09日 00時00分00秒 | #小説

 あんたはすごい!    水本爽涼
                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                               
                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                              
    
第ニ百八十七
 三人の話は久しぶりだったこともあり、大いに盛り上がって幕引きとなった。玉は元気そうに、…元気そうという表現も妙なのだが、とりあえずは以前と変わらぬ姿で酒棚に、どっしり構えており、ひとまず私は安堵したのだった。二人に名刺を手渡し、東京に来た折りにはマンションへ寄ってくれるように一応の日本人的招待をして私は店を出た。
 一日ゆっくり骨を伸ばし、次の日の夕刻、私は東京へUターンした。慌(あわただ)しいスケジュールに、芸能界の大変さが少し分かった気がした。戻った翌日は政府閣僚会議がセットされており、帰省する前に成立をみた食糧安定化法にかかる規則、政令と、国連で議決成立した地球語の学習指導要領への必修単位としての配分化の策定書類が目通しされ、議題となった。ニ議題とも私が関与した省庁の事案であり、私抜きでは成立しない会議だった。難しい話になるから端折(はしょ)るが、全閣僚に了承されて閣議決定し、私の顔が立ったことだけは述べておきたい。
「いやあ…塩山さん、ご苦労様でした。これで私の懸案は、ひとまず実現したようです。今後は、少しのんびりと…と、いきたいものですな。ははは…、そうは参りませんが…」
 首相官邸を出る前、小菅(こすが)総理に声をかけられ、他の閣僚が帰る中、私と官房長官の煮付(につけ)先輩だけがそのまましばらく残り、語り合った。総理は、私と先輩の馴れ初(そ)めや民間人としての立場の私に意見を聞きたかった、とのことであった。


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