あんたはすごい! 水本爽涼
第ニ百九十三回
当然、発生地域周辺の家畜は(とさつ)処分された。このウイルスの強力さは鳥、豚、牛など一切の家畜に伝染性をもつ点で、今までの単一性の家畜のみに留まらない異常さにあった。しかも多剤耐性のウイルスなのだから、人類は、まったく手の施しようがなかったのである。
『お待たせしました。大玉様の了解が得られました。塩山さん、とうとうあなたのすごさを全世界の人々に示す時が来たようです。この今が最大かつ、ただ一度のチャンスなのだと大玉様は申されました。あなたを手助けせよ、とも…』
「私のことなど、どうだっていいのです。世界の人々が救われれば…。ただ、それだけです」
『はい、まずそのことでした。私は結果を先に云ってしまったようです。すみません…。では、ウイルスの蔓延(まんえん)を静止する方法をお教えしましょう。一度しか云いませんから耳を欹(そばだ)てて、よ~くお聞きください』
「はい…」
『土はご存知ですよね?』
「えっ? 土ですか? …そりゃ、もちろん。土ですよね? 地面の」
『そうです。その土です。世界のどこにでもある土です。その土の中に、ある種の雑菌がいるのです。その名は申せませんが、頭のいい人類なら、すぐ発見できるでしょう』