水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

スビン・オフ小説 あんたはすごい! (第ニ百九十四回)

2011年04月16日 00時00分00秒 | #小説

 あんたはすごい!    水本爽涼
                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                          
                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                              
    
第ニ百九十四
「その菌なら、パンデミックを阻止できると?」
『ええ、そのはずです。そればかりか、インフルエンザ、エイズ、結核など、他のウイルスや菌の抗体に、さらには癌治癒の一助ともなることでしょう。…分かりましたか?』
「はい、一応は…。しかし、この話を私がしたとして、人々は信じてくれるでしょうか?」
『一地方の会社の常務だったあなたなら無理な話でしょう。ですが、今のあなたの地位は?』
「…小菅(こすが)内閣の大臣です」
『でしょ? 一国の大臣なのですよ、今のあなたは。内閣の一員のあなたなら、総理を動かして世の人々を信じさせることは可能です』
「そうでした。私は今の地位の自分を忘れてました。さっそく、総理や厚労大臣と協議しますが、なんとかできるかも知れないですね?」
『なんとかできるかも知れない、のではなく、なんとかするのです。塩山さん、あなたが』
「私が、ですか?」
『はい、あなたが…。あなたはすごいんですよ、それをお忘れなく。もう少し、自信をお持ちください』
「分かりました、やってみます。長々と、ありがとうございました」
『いいえ、どういたしまして…』
 それでお告げは途絶えた。浴槽の中に浸かったままの私は、やや逆上(のぼ)せてしまったようで、慌(あわ)てて浴槽から立ち上がって出た。


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