水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

スビン・オフ小説 あんたはすごい! (第三百四回)

2011年04月26日 00時00分00秒 | #小説

 あんたはすごい!    水本爽涼
                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                           
                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                              
    
第三百四
 受賞式は年も押しつまった頃、とり行なわれた。そして式も滞(とどこお)りなく済み、私は東京へとUターンした。空港へ降り立つと、国外ではまったくなかったフラッシュの放列を浴びた。それは飛行場から移動した駐車場で、車から降りた直後の暗闇だった。記者会見場がセットされていたにもかかわらず、歩く通路で記者達から矢継ぎばやの質問が飛んできた。私は、「ああ…それは、のちほど…」などと口走りながら報道陣を押し退(の)けるように控え室へと退避した。もちろん、露払い役の秘書やSPが私の前後や横にいたことで直接、押されるとかはなかった。
 控え室のドアを閉じ、ようやく人心地つくことが出来た。その時お告げが舞い降りた。
『おめでとうございます。今日は会見があるようですから後日、改めて伺います』
 お告げとしては、もっともシンプルで短いものだった。こちらから返す間(ま)もなかった。その後、私はセッティングされた記者会見に臨んだ。大よその質問は予想できていた。備わった霊感が多少、向上したように自分にも思えた。
「PA通信の黒豆(くろまめ)です。W受賞のご感想をひと言!」
 私は思わず吹きだしそうになった。黒豆はないだろう…と笑えたのだ。


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