水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

スビン・オフ小説 あんたはすごい! (第ニ百八十三回)

2011年04月05日 00時00分00秒 | #小説
 あんたはすごい!    水本爽涼
                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                            
                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                              
    
第ニ百八十三
「それは大したもんだ。すごいじゃないですか。羨(うらや)ましいかぎりですなあ…」
「えっ? この話、信じて下さるんですか?」
「そらもう…。私と塩山さんの仲じゃないですか。まるっきりの出鱈目を云われる訳がないと信じとりますから」
「そうですか? そりゃ、私としても有難いですし、お話しし易(やす)いですが…」
「はい。監視室の時のように、何でも話して下すって結構ですから…。ご相談にも乗りますし…」
「そのときは、よろしくお願いいたします」
 禿山(はげやま)さんのプライドを傷つけないよう、私は下手に出た。そしてその後、二、三時間だろうか。互いの雑事などを語り合い、私は禿山さんの家を退去した。帰りぎわに、「この歳で弓道を始めましてなあ。ははは…」と愉快そうに笑い飛ばされた禿山さんを見て、私より元気だ…と思えた。車に乗り込んだ私は、その足でA・N・Lへとハンドルを切った。みかんの開店までは、しっかりと三時間はあり、食事方々、時間を潰(つぶ)すには、丁度いい…と直感で思え、即決した結果である。まあ、今までの私が、いつもやっていたことを、ただやった、というそれだけのことなのだが…。ただひとつ、マイカーが長い間、乗らなかったせいでバッテリーが上がりぎみだったことである。その代償として、冷や汗もののドライブを余儀なくされたことを憶えている。

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする