あんたはすごい! 水本爽涼
第ニ百八十六回
「でもさあ、少しビミョーなのよねえ~」
「えっ? 何がです?」
「だってさあ、沼澤さんが云ってらしたのは、棚に水晶玉を置けば、いいことが起こるってことだったじゃないの」
「ええ、そうです。だから、ママも宝くじが当たって旅行にも行けたんでしょ?」
「まあ、そうだけどさあ~。今はねえ、早希ちゃん」
「はい…。ほんと、鳴かず飛ばすだし。返って、お客の入り、よくないんじゃないですか?」
「そうよねえ~。早希ちゃんだって、この様(ザマ)だし…」
「はあ…。そりゃまあ、そういうことだってあるでしょう。だって沼澤さん、こうも云ってやしませんでした?」
「えっ? どうよお~」
「信じる者は玉もよく承知している…とかなんとか」
「だから、どうだって云うの? まあさ、早希ちゃんはともかくとして、私は信じてるわよ」
「でもママ、以前に比べりゃ、どうです?」
「以前って、沼澤さんがいらした頃とか?」
「ええ…」
「…そう云われりゃねえ、まあ少しは…」
「だからですよ、きっと。玉は、すべてが分かると云いましたから、ママの気持のダウンが幸運をダウンさせたんじゃないですか?」
「…、満ちゃんにそう云われると、そうかも、って思えてきちゃう。まあ、いやだ!」
ママは、オホホ…と笑って科(しな)を作った。そのあと、ツマミに牡蠣(かき)のガーリックオイル焼きがでた。