あんたはすごい! 水本爽涼
第三百五回
「…失礼しました。正直申しまして、過分の受賞でございまして…」
「…と、申されますと?」
「はい。ですから、私にとりまして、ノーベル賞などという賞を頂戴するのは誠にもって、おこがましい限りでして…。しかも、平和賞を頂いただけでも過分でございますのに、無学の身に医学賞を併せて頂けますとは…」
多少、上がっていたこともあったのだが、それ以上に私は感、極(きわ)まっていた。進行役のアナウンサーが、「次の方、どうぞ」と云った。
「読富士(よみふじ)新聞の朝月(あさづき)です。近々、小菅(こすが)総理が内閣改造をされるとの情報が巷(ちまた)に流れておりますが、その点については?」
「いやあ…そうなんですか? こちらがお訊(き)きしたいくらいのもので、まったく知りません。皆さんの方がよくご存知ですねえ」
私は嫌味をひとつ吐いた。これが功を奏したのか、それ以上、朝月さんは突っ込まなかった。私としては、やれやれで、してやったり・・だった。
「お時間も遅くなってまりました。これで最後にしたいと存じます。どなたか?」
「はい、毎回テレビの矢吹です。先ほどの質問に関連してなんですが、改造内閣で入閣されなかった場合、いかがされるご所存でしょうか?」
核心を突く鋭い質問が私に浴びせられた。