水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

スビン・オフ小説 あんたはすごい! (第ニ百九十九回)

2011年04月21日 00時00分00秒 | #小説

 あんたはすごい!    水本爽涼
                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                           
                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                              
    
第ニ百九十九
 一躍、脚光を浴びるようになった私は、新聞だけでなく、週刊各誌、テレビを賑(にぎ)わせることになっていった。こうなれば、外出する場合にも人目を気にせねばならなくなる。スターではないが、ある時など、親子連れで歩く母親から、「あら! 塩山さんだわ、文部科学大臣の…。サイン下さい!」などと云われた。私はスターじゃないんだから…と思えたが、断る訳にもいかず、素直に応じる他はなかった。素早く書き終えて手渡すと、他にも数人の通行人がこちらを見ていた。私は逃げるように慌ててその場を去った。多くの芸能人の方々も、こんなご苦労があるんだろうなあ…と、ふと、思えた。
「大臣、お急ぎ下さい。テレビ対談が三十分後にセットされておりますので…」
「ああ! そうだったね…」
 車へ慌てて乗り込んだ私は、テレビ局へと向かった。むろん、私は後部座席であった。
「君、今日の話は何だっけなあ?」
「もちろん、TSS免疫ワクチンの話です」
「そうだった、そうだった…」
 思い出した私は、心を落ちつけようと、静かに両眼を閉ざした。その時、お告げが舞い降りた。
『なかなかお忙しくなりましたね、塩山さん』
 突然のことで、私は聊(いささ)か、面食らっていた。


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