水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

スビン・オフ小説 あんたはすごい! (第ニ百九十五回)

2011年04月17日 00時00分00秒 | #小説

 あんたはすごい!    水本爽涼
                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                              
                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                              
    
第ニ百九十五
 次の朝、さっそく私は小菅(こすが)総理の官邸を訪ねた。総理も忙しいから当然、事前連絡をとってのことだ。私は、お告げのことだけは伏せて、土の雑菌に纏(まつ)わる話をした。
「ほう…。それは本当ですか? 誰からのお電話かは事情で云えないとのことですが、その方は大学で教鞭をとっておられる方でしょうか? 偉く専門分野のお話をされてますが?」
「ええ、まあそのような立場の方です」
「我が国も家畜伝染が確認されましたし、一刻を争う事態です。世界中が治療法発見に躍起となっておるときですから、この雑菌が、というより、この土への発想と研究が人々に福音(ふくいん)となればいいのですが…」
「分かりました。さっそく味見(あじみ)さんを呼んで、何らかの手立てを講じましょう」
 小菅総理も煮付(につけ)先輩が局長の国家戦略局へ寄る用向きがあるらしく、私との話は、わずか十分ほどだった。それだけ我が国は一刻を争う対応を迫られていたのである。
 私が総理に進言した話は、ことがことだけに、すぐ味見厚労大臣の耳へ伝わり、トントン拍子に実現へ向け動き始めた。まず、厚労省トップから指示が下され、研究機関に特別編成チームが組織され、直ぐに土壌研究が開始された。通常の場合、半年以上はかかる行政対応も、その緊急性からか、わずか一週間という迅速さであった。


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