水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

スビン・オフ小説 あんたはすごい! (第ニ百八十回)

2011年04月02日 00時00分01秒 | #小説

 あんたはすごい!    水本爽涼
                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                           
                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                              
    
第ニ百八十
「えっ? どういうことでしょう?」
「どういうことかは、私の方がお訊(き)きしたいくらいなんですよ。みかんを知らない私が、店の内部やママさん達の名や顔まで分かるんです」
「…それって、怖い話ですよ」
「ええ、怖い話です。私自身、怖いんです。しかしですな、どうしようもありません…」
「それって、突然そうなられたんですか?」
「はい、ふと。目覚めたある日の朝からなんですがな」
「ウ~ン! それは怖い…」
「はあ、元警備総長の私でも怖いですな」
「ママと話してたんですが、サスペンスじゃないスリラーの怖さですね」
「ええ…」
 その時、急に私の携帯がなった。バイブにしておかなかったから、ギクッとしたが、禿山(はげやま)さんが云ったとおりなのだ。禿山さんは私が携帯をバイブにしておかなかったことなど知る由(よし)もなかった。だから、余計に怖かった。携帯に出ると、やはりママだった。これはもう、大玉様の霊力によるもの…と思う以外、説明がつかない事態だった。
「お邪魔だとは思ったけどさあ、ママに云われたから、かけたわ」
「やっぱり、早希ちゃんか…」
「やっぱりって? 変な満ちゃん」
 早希ちゃんは事情をまったく知らないから、怪訝(けげん)な声をだした。


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