水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

スピン・オフ小説 あんたはすごい! (第三百一回)

2011年04月23日 00時00分00秒 | #小説

 あんたはすごい!    水本爽涼
                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                          
                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                              
    
第三百一
 そうこうするうちにテレビ局に着いた。放送は対談形式で行われると車内で秘書が説明してくれていた。車を降りると、局長以下、担当プロデューサー、ディレクターなど錚々(そうそう)たるメンバーのお偉い方がエントランスで迎えてくれた。こんなにしてもらわなくても…と、少し照れくさかった。
「控え室は、こちらでございます…」
 うやうやしい態度でディレクターは私を控え室へ案内した。味見大臣はすでに到着し、座っていた。メイクとまではいかないハレーション避(よ)けの顔クリームを軽く塗り、放送に臨(のぞ)んだ。放送の十分ほど前だった。
「おふた方、思いどおりにお話し下さって結構でございます。特に、こちらからの指示などはごさいません。ただ、放送終了五分前にADがカンペを出しますので…」
 ADらしき青年がカンベ用紙を手で示し、ペコリと頭を下げた。ああ、この人がADだな…と思った。その後、質問をする女性アナウンサーが紹介され、収録が始まった。映される私にとっては、生番組でないのが唯一の救いだった。
 収録は順調に進んでいった。そして放送終了五分前となり、カンペがADから出た。
「最後に塩山大臣、国民の皆さんに対し、何かおっしゃられることがあれば…」


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