あんたはすごい! 水本爽涼
第三百一回
そうこうするうちにテレビ局に着いた。放送は対談形式で行われると車内で秘書が説明してくれていた。車を降りると、局長以下、担当プロデューサー、ディレクターなど錚々(そうそう)たるメンバーのお偉い方がエントランスで迎えてくれた。こんなにしてもらわなくても…と、少し照れくさかった。
「控え室は、こちらでございます…」
うやうやしい態度でディレクターは私を控え室へ案内した。味見大臣はすでに到着し、座っていた。メイクとまではいかないハレーション避(よ)けの顔クリームを軽く塗り、放送に臨(のぞ)んだ。放送の十分ほど前だった。
「おふた方、思いどおりにお話し下さって結構でございます。特に、こちらからの指示などはごさいません。ただ、放送終了五分前にADがカンペを出しますので…」
ADらしき青年がカンベ用紙を手で示し、ペコリと頭を下げた。ああ、この人がADだな…と思った。その後、質問をする女性アナウンサーが紹介され、収録が始まった。映される私にとっては、生番組でないのが唯一の救いだった。
収録は順調に進んでいった。そして放送終了五分前となり、カンペがADから出た。
「最後に塩山大臣、国民の皆さんに対し、何かおっしゃられることがあれば…」