水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

スビン・オフ小説 あんたはすごい! (第ニ百八十五回)

2011年04月07日 00時00分00秒 | #小説

 あんたはすごい!    水本爽涼
                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                              
                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                              
    
第ニ百八十五
「いつもので、いいわよね?」
「はい…」
「ゆっくりしていけるの? 今回」
 ママが水割りを作りながら、それとなく訊(たず)ねた。早希ちゃんはカウンター側へ回って私の隣へ座った。
「えっ? ああ…そうもしてられないんですよ。二日ほどで帰ります。って云うか、帰らねばならないんです。帰らないと偉いことになりますから…」
「ふ~ん、そうなの? 大変なのねえ、国のお仕事は…。会社なら、なんとでもなってたわよねえ~」
「ええ…、それはまあ」
 その時、携帯を弄(いじく)っ画面を見ていた早希ちゃんが、大きな溜息をつきながら云った。
「ダメだわぁ~。ママ、全然ダメ!」
「だから云ったでしょ。そんなボロい話なんて、ある訳ないんだから」
「何かあったんですか?」
「満ちゃんからも云ってやってよ。この子、本当に懲(こ)りないんだから…。この前もコレで損したのよ~」
 ママがそれとなくカウンターへ置いたのは、出来た水割りのグラスと新聞の株式欄だった。
「ほう…、早希ちゃん、一攫千金(いっかくせんきん)はまだ諦(あきら)めちゃいないんだな?」
「そらそうよ。私は、それが生き甲斐なんだから」
「でもな。今、ママが云ったとおり、少しは懲りんとなあ。土壺(どつぼ)に嵌(はま)るぞ、そのうち」
 私はお灸(きゅう)をすえるつもりで、少し驚(おどろ)かした。


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