水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

明暗ユーモア短編集 (35)粗忽(そこつ)

2022年01月10日 00時00分00秒 | #小説

 いつやらの短編集でもタイトルにした粗忽(そこつ)だが、今回は明るい暗い・・という見方でのお話とした次第である。
 粗忽にコトを成せば、自(おの)ずと結果は暗くなる・・としたものだ。だが、明るくなる場合だってあるのである。例えば、音が出なくなったステレオのスピーカーを無造作にポンポンっ!! と叩(たた)いて音が出た・・などという場合がそうだ。原因も分からず、粗忽に叩いて音が出たのだから、どぉ~~しようもないのだが…。^^
 とある町の、とある普通家庭の夕方である。庭のソラー照明灯が点(つ)かないのを見て、二人の小学生の兄弟が話を始めた。
「兄ちゃん、灯りが点かないから球切れ・・と決めつけるのは粗忽じゃないっ?」
「そんなっ! フツゥ~~はそう考えるだろっ!」
「ああ、まあそうだけどさ…」
「待ってろっ! 今、買ってある予備球を取ってくるから…」
 兄は、バタバタと小走りで奥の間へ予備球を取りに行った。そして、しばらくして戻(もど)ってきた兄は照明灯の球を取り換えた。だが、やはり灯りは点灯しなかった。
「兄ちゃん、だろっ!?」
「ああ、まあな…。なら、お前、原因が分かるのかっ!?」
「僕はさぁ~、コンセントに原因があるように思えるんだっ!」
「じゃあ、外のコンセントを抜いて、中のコンセントで調べてみようじゃないかっ!」
「ああ、いいよっ!」
 弟は自信ありげに返事をした。そして、庭用の外部コンセントからコードを引き抜くと、中のコンセントに差し込んだ。と、途端! 球は点灯したのである。
「だろっ!?」
「ああ、まあな…。お前、電気工事技術者になれるぞっ!!」
「そんなっ! 僕は粗忽に考えただけだから…」
 弟はしたり顔で謙遜(けんそん)した。兄は自分の粗忽を少し反省した。
 粗忽は粗忽になる場合もあり、粗忽の結果、粗忽にならなくなる場合もある・・というお話である。^^

                   完


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする