水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

めげないユーモア短編集 (93)めげた方がいい

2023年01月02日 00時00分00秒 | #小説

 負けても負けてもめげないでやる人がいる。勝てないのに、やるのだから、どうしようもない。^^ そういう人には、アンタっ! 勝てないんだから、やめた方がいいよっ! と、忠言したいくらいのものだ。こういう人の場合は、めげないよりめげた方がいい・・ということになる。^^ まあ、楽しく憂さを晴らす程度なら個人の勝手でいい訳だが、依存症的になれば問題だという他はない。
 とある碁会所である。
「もう一番っ!」
「やめた方がいいですよ。これだけハンデつけて勝てないんですから…」
「これ以上は置けませんか…?」
「星目風鈴中四目(せいもくふうりんなかしもく)ですよ。…これ以上となれば、25子(し)局というのが、あることはありますが…。私、時間の都合がありますので…。もう少し勉強されてからの方が…」
「あの…私、勝ちたいんですっ!」
「無理でしょ!!」
 上段者は、はっきりと言い切った。それもそのはず、この碁会所に来訪した対局者は時のプロ棋士、熊鮭名人だった。熊鮭名人は、この地の出身で、出生の地に碁会所を開いていたのである。この日、久々に帰省した名人は、碁会所に来たアマチュアと記念対局をしたのだ。
 勝ちたいのは分かるが、勝てないのであれば、あっさりとめげた方がいい・・という結論になる。^^

                   完


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