水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

めげないユーモア短編集 (98)負ける

2023年01月07日 00時00分00秒 | #小説

 勝った場合には起こらない気分が、負けるとめげる。対戦を前にめげないためには、心構えとしてどうすればいいか? だが、こればっかりは、申し訳ないがどうしようもない。対戦は、どちらが一方が勝つか負けるかだから、めげるか、めげないか・・という結果が、対戦前に分かっているからである。分からないのは、どちらが? という点だけなのだ。対戦する以上は、双方ともプラスマイナス半々の%[パーセンテージ]がある訳だ。
 とある競馬場である。一度も勝ったことがない馬、オールハザクラが次のレースで走ろうと、パドックでゆったりと回り歩いている。その姿を客二人が見ながら話をしている。
「今日も負けるんでしょうな…」
「ああ、見る限りでは他の馬を圧倒してるんですがな…」
「なぜ負けるのか…いや、勝てんのかが分かりません…」
「ですな…」
「負けるのが分かっているのに乗る騎手の心境はどうなんでしょう?」
「そりゃまあ、今日も負けるんだろうな…くらいの気分じゃないんでしょうか」
「馬の方は、どうなんでしょうな…」
「皆さん、お速い…くらいじゃ」
「なるほどっ! めげませんか…」
「負けるとめげるのは、人だけですよ、人っ!」
「なるほど…」
 負けるとめげるのは人だけで、他の生物はめげない。^^

                   完


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