次の日の研究所である。
「やあ! 海老尾じゃないかっ!」
会議室前を歩いていた海老尾は、突然、後ろから呼び止められた。ギクッ! として思わず振り返ると、そこには大学同期の赤鯛進が笑顔で立っていた。
「おおっ! 赤鯛じゃないかっ!」
思わず海老尾も笑顔になっていた。
「君っ! どこのっ?」
海老尾は赤鯛の所属を訊(たず)ねた
「俺かっ? 俺は獣医科学部だよ、君はっ?」
「獣医か…。僕はウイルス2科だ」
「蛸山所長が兼務されている科だったな?」
「ああ、そうだ。毎日、所長には突っつかれてるよ、鶏が餌を突っつくようにな…」
「そりゃ、難儀な話だ。毎日、ヘルメット、被ってた方がいいんじゃないかっ? ははは…。どうだっ!? 今夜あたり…」
赤鯛は右手で猪口(ちょこ)を傾ける仕草をした。
「ああ、いいぜ…」
海老尾は快(こころよ)く応諾(おうだく)した。
「じゃあ、仕事が終わったあと、6:00にエントランスで…」
「ああ…」
二人は左右に分かれ、歩き去った。
続